BUCK-TICKのオリジナルアルバムをレビューしてみた!「HURRY UP MODE」から「No.0」までの魅力を紹介
BUCK-TICKのオリジナルアルバムの魅力をまとめました。インディーズの頃に発表した『HURRY UP MODE』から『No.0』までの収録曲はもちろん、その作品に込められた想いや、発表当時の状況なども紹介しています。気になる楽曲があった方は、ぜひ聴いてみてください。
BUCK-TICKというすごいバンドがいるんですよ。
出典: www.facebook.com
BUCK-TICK(バクチク)というバンドをみなさんご存じでしょうか。
「名前だけ知ってる」「まだやってるの?」という人が多いかもしれませんが、まだやっているも何も、なんと1987年のデビューから30年間メンバーチェンジはもちろん長期の活動停止もなく超元気にずっと活動しています。
1~2年に1枚アルバムを出し、ツアーで全国を回り、年末には毎年武道館公演。これを30年ずっとやっていて、しかもいまだに打ち上げではメンバー全員朝まで飲むくらい仲良し。
30年間解散や休止、メンバーチェンジなくメジャーシーンに居続けているバンドは、日本ではBUCK-TICKの他には、スピッツとエレファントカシマシくらいではないでしょうか。
出典: buck-tick.com
スピッツやエレカシほどメジャーではないかもしれませんが、BUCK-TICKの凄いところは30年間雑食に音楽的実験を続け、常に刺激的なアルバムを作り続けていること。
見た目のイメージから「V系の大御所」と位置付けられることが多いですが、BUCK-TICKの音楽性はV系的なゴシック要素も含むものの、ひとくちにV系とは言い難いです。
主な要素は、ロック、テクノ、ゴシック、インダストリアル、ニューウェイブ。
さらに、アコースティック、ディスコ、歌謡曲、シューゲイザーっぽさもあるし、時にはドラムンベースやEDM、さらには沖縄やラテンまで入ってきます。30年間常に実験精神旺盛で、V系どころか邦楽全体で見ても、BUCK-TICKは最も「ジャンルが説明できない」バンドと言えるでしょう。
そしてその結果、30年目にして本当に”ジャンル=BUCK-TICK”としか言えないアルバムをリリースしました。それが、2018年3月14日に出た『No.0』です。
リリース直後から、多くのBUCK-TICKファンが「30年目にして大傑作!」とざわめいている本作。これのすごさを伝えたい!そして同時に、ここに至るまでのBUCK-TICKの名作・傑作・迷作・怪作の歴史も知ってほしい!
……と思い、全オリジナルアルバムレビューまとめを作ってみました。
BUCK-TICK未聴の人や興味がある人には、ディスクガイドになれば幸いです。(なにせ20枚以上あるし)
BUCK-TICKガチ勢のみなさまにつきましては何卒暖かく見守っていただければ……。(ファンによってアルバムの好みや評価が大きく変わるバンドだと思います。あくまで私の好み・考察で述べているため、そのあたりご理解いただけると幸いです)
では、BUCK-TICK全オリジナルアルバムレビュー、極東より愛を込めて!!!!!
オリジナルアルバム【22枚】
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原点。まだ20才そこそこということもあり、BOOWY直系の素直な8ビートロックです。
ぶっちゃけ演奏も歌もドヘタで、歌詞も音もペラペラ。しかし、そのヘタさとペラさが良い方向に作用して、8ビートロックなのになぜかニューウェイブパンクっぽくなっているのが聴き所。Joy DivisionがJ-ROCKをやってみた(しかし決してNEW ORDERにはならなかった)みたいな。
アルバム通してメロディーがキャッチ―で、「HURRY UP MODE」「FLY HIGH」「MOON LIGHT」といったここぞのライブで演る人気曲も入っています。
今のBUCK-TICKからは考えられないほど素直なJ-ROCKアルバムなので、「最初にこれを聴け!」という感じではないですが、ハマってきたらぜひ押さえてほしい一枚。
ちなみに、87年に出たインディーズ盤には上記に加え「VACUUM DREAM」「NO NO BOY」も入った13曲入り。90年盤はMIXし直して11曲入りに整えたバージョンで、現在出回ってるのは90年盤です。
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メジャーデビュー作。
とにかくジャケがクソダサいです。失敗したシザーハンズの集合写真かよ。
『HURRY UP MODE』の延長線でこれも8ビートロック路線。メジャーを意識してか前作よりさらに明るく激しく、また歌詞は若干エロくなっています。
しかしそれにより前作にあったニューウェイブパンクっぽさが薄くなり、軽薄なJ-ROCK感が増してしまった印象。前作よりも歌や演奏の未熟さがやたら耳についてしまいます。
ファン人気投票で必ず上位に入る名曲「MY EYES & YOUR EYES」はじめ、初期の定番曲「 SEXUAL×××××!」「HYPER LOVE」が入っているというポイントはあるものの、他の聴き所はあまりないかも。
ちなみに本作と次作の間に『ROMANESQUE』という耽美寄りの5曲入りミニアルバムが出ていますが、そちらも近い印象なので割愛。
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メンバーにもファンにも語られることの少ない、若干影の薄い2ndアルバム。
メジャーデビュー後の超過密スケジュールの中で急いで作ったことや、コンポーザー・今井さんの実験精神が開花し始めるも、本人もメンバーもまだ技術や知識が全く追い付いてないことなどから、完成度やまとまりが低くなってしまった印象です。曲はポップですが、前作・前々作の方がメロディーも立っていますし、そういう意味でも中途半端。
「BUCK-TICKの30年300曲、全曲聴きます!」というバベルのように高い志を持った人が、他のアルバム全部聴いてから最後に聴くくらいでいいんじゃないかな……。
ちなみに、数年後に出るリアレンジアルバム『殺シノ調ベ』で、本作収録曲はどれも超化けてかっこよくなります。
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チャート1位を獲得した3rdアルバム。バンド最大のヒット曲「JUST ONE MORE KISS」が入っており、また唯一の海外レコーディング(ロンドン)作品でもあります。
平凡なビートロック路線を捨てて、自分たちが表現したいゴシックで退廃的、ニューロマンティックな方向性へ舵を切った作品。しかし、前作ほどではないものの、まだやりたいことに技術や知識が追い付いていない感じが強いです。「ICONOCLASM」など、めちゃくちゃかっこいい曲もあるんですけどね。
また、ダークな方向に向かったことでポップな「JUST ONE MORE KISS」が浮いてしまって最後に入れるしかなく、ヒット曲なのにちょっと扱いが可哀想な感じも。(実際ファン人気もそんな高い曲ではないしね……)
こちらも、他のアルバムを色々聴いてからさかのぼって聴いてみるくらいでいいのではないでしょうか。
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ギターの今井さんが麻薬で捕まって、半年活動休止した後に出た4thアルバム。
ここからやっとメインコンポーザー・今井寿のアタマの中が楽曲に昇華されていきます。ダークで退廃的で刹那的で、どこの国のものか分からない変なメロディー。現在のBUCK-TICKにつながるサウンドの萌芽が見られます。
「悪の華」「NATIONAL MEDIA BOYS」「LOVE ME」「KISS ME GOOD-BYE」などの名曲も収録。ただ、他の曲はまだちょっと弱い。
さらに惜しいのは、録音やミックスが微妙で世界観を表現しきれていない感じがすること。そこに関してはメンバーやスタッフも後悔があったのか、本作は2015年に発売25周年を記念して、再ミックスバージョンが発売されています。
次作『狂った太陽』以降ミックスを手掛けるエンジニア・比留間整さんが徹底的にミックスし直しており、別物といったレベルでかっこよくなっています。2015年ミックスはApple Musicで聴けるので、未聴の方はぜひ!
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初期の最高傑作!!
人にBUCK-TICKを薦めるなら、私は「まず『狂った太陽』聴いたらいいよ~!」と言うことが多いです。捨て曲がなく、アルバムとしてまとまりも良いし世界観も強固。これ聴いてピンと来なかったら、BUCK-TICK向いてないです。
内容は『惡の華』までのダークさを残しつつも、シンセの音や打ち込みが加わり実験精神がさらに旺盛になっています。きらびやかさが増しているため、前作よりポップさもありますね。今井寿の天才っぷりを充分に味わえるアルバムです。
今井さんのリミッターが外れると同時に、あっちゃんの歌詞が「櫻井敦司の死生観」という今後ずっと続くテーマに辿り着く(「さくら」「太陽ニ殺サレタ」)、もう一人のコンポーザーであるヒデさんが確変する(「JUPITER」)、以降ずっとミックスを手掛けるエンジニア・比留間整さんと出会うなど、さまざまな面で大きな変化が起こったアルバムでもあります。
オススメは全曲です。聴こう。
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