シャドウハーツII(Shadow Hearts: Covenant)のネタバレ解説・考察まとめ

『シャドウハーツII(Shadow Hearts: Covenant)』とはノーチラス開発アルゼ発売のPlayStation 2専用ソフトのロールプレイングゲーム。『Shadow Hearts: Covenant』は北米または北欧で販売された時の別名称である。
舞台は第一次世界大戦只中、主人公ウルが本当の幸せを見つけていく物語を描く。一見暗そうだが明るく表情豊かなキャラクターが繰り広げるマジメかつギャグ満載の楽しい作品だ。史実通りではないものの、歴史上の実在の人物も多数登場している。

アナスタシアは「まるで、子供の頃読んだ絵本に出てきた、イーダルフラーム(偶像の神殿)そのものだわ。」と言った。ウルは楽しそうだ。この手の建物を壊すのは大好きである。ウルは「アナスタシア、安心しな。ラスプーチンのヤツを倒して、こんな神殿、キレイさっぱり消し飛ばしてやるから。」アナスタシアは「うん!」と答えた。行く先々でギーガフィラリアの卵が邪魔をする。この神殿自体が生き物だ。マジメルたちがイーダルフラーム神殿の途中まで先回りして店を開いてくれた。ジェラールは「ウっル~!」と呼ぶ。ウルは「げっ!?なんでお前らがいんの?どこから入ってきた!?」と驚いた。ピエールも「やあねえ、なに言ってるのよ!皆のことを見てたら、アタシ達もいてもたってもいられなくなっちゃって!」と言いジェラールも「自分達で出来る事で応援しよって決めたの!もう、命がけなんだから~!感動したでしょ?見直したでしょ!?」と言った。ウルは「う、うん、まあ。と言う。」マジメルの2人はウル達とはもう会えないだろうからお金やビルダーカードを全部使えとのこんたんだった。するとピエールは「はっ!バ、バカ!なに本当のこと言ってんのよ、このヒト!」と焦る。ジェラールも「ア、アンタこそ!」とお互い言い合う。ウルは「お前ら。」とあきれる。ピエールは「ああーん!私ったら何口滑らしてんのかしら~!嘘よ、嘘!気を悪くしないでちょうだい。そうだ、帰りたくなったら声かけて!入り口まで車で乗っけてってあげるから!ね!?」とフォローした。ジェラールも「そ、そうだわ!遠慮しないで、ウフフフー!ガっハっハっハー!」と言った。神殿を進んでいるうちにアナスタシアは驚いた。ゼペットじいさんは「心臓のように脈打っているぞ。むっ!?」2体の魔物が出現する!マザーフィラリアとの戦い。戦いに勝つと、真ん中にあった心臓のようなものの動きが止まった。ラスプーチンはすぐそこである。ラスプーチン「遅かったな。」と言う。」ウルは「寄り道とかしてたんで。」と言った。アナスタシアは「観念する気になった?」と言うと、ラスプーチンは「ヒッヒッヒ。」と笑う。ヨアヒムは「なってないみたいだら。」と言う。ラスプーチンはヤドリギを呼び覚まさせようとするもウルは「へへ、もう効かねえよ。」と余裕な表情を浮かべる。ゼッペットじいいさんが「お前さんのバリヤーもすでに破られた。勝ち目は無いぞ。」と言うが余裕だ。ラスプーチンは「ヨウィスに会ったか?」と聞いた。ウルは「ああ。あんたより幸せそうだったぜ。」と言った。ラスプーチンが挑発してくるもウルが「遺言だろ。」と一掃。いよいよ、アスモデウスと戦いが始まる。ラスプーチンは「そ、そんな、信じられん。」と戦いに敗れたラスプーチンは倒れ驚く。ウルが「アルバートはあんたの百倍強かったぜ。」と告げた。ラスプーチンはヤドリギの呪いは解くことはできない。ニコルがバチカン、アポイナの塔へ向かったと言った。息を引き取るラスプーチン司教。ウルjは「まだ、終わっちゃいない。」と仲間に言った。

第二十一章 アポイナの塔

ウルは「ニコルは、一体ここで何をしようとしているんだ?」と仲間に聞いた。ゼペットじいさんが「その昔、義弟のエリオットから聞いたことがある。バチカンには罪人たちの怒りや憎しみを封じた塔があり、その最上階には、開けてはならぬ柩が安置されていると。」と言った。アナスタシアは「それを開けたらどうなるの?」と聞く。ゼペットじいさんは「人の心に悪しき欲望や、怨嗟を植え込む力となるそうじゃ。」するとウルは「みんなケンカっ早くなるっつうこと?」と問うとカレンが「ケンカで済む問題じゃないでしょう!」と返した。天秤を使って開ける扉やレバーを上げ下げして道を作り出すなど、アポイナの塔には始めよりも奥に道があったのだった。最上階にニコルはいて「久しぶりだな。」と言う。ニコルはラスプーチンが死んだことを知っていた。ウルが「ニコル、おまえは何をしようとしているんだ?何が望みなんだ?」と聞くと、ニコルは嘆きの柩(ひつぎ)を開けて、憎みを世界中の人々の心の中へ入り込ませ、人々が殺し合いをさせるというのだ!扉をこじ開けてしまう。ニコル、つまりアスタロトとの決戦!ニコルは「く、認めろと言うことか、堕天使アスタロトをもってしても。」と言った。なんとすぐそこには加藤がいた。加藤が柩の扉を閉めた。加藤はウルに「この者の命、大日本帝国が預かる。あなたとはやりたくない、引いてくれるか?」と聞く。ウルは「イヤだ。」と拒否する。加藤によるとニコルはロシア皇帝の後継者であり、同盟国として退くわけにはいかないという。マリスはすでに人の心に降り注いでしまっている。だから手遅れだと。加藤は「あなたの戦いは終わったのだ、別に生きる道を探してくれ。」そう言って消えていった。

第二十二章 横浜レンガ倉庫

ウルたちは1915年5月、日本の横浜レンガ倉庫まで来ていた。ウルが船酔いで倒れててみんな困り果てていた。ルチアは「飛行艇は平気なのにねぇ。」と言った。ヨアヒムは「不思議な奴だっち。」と言う。アナスタシアは「大体、その飛空艇が根性無しだからいけないんだわ!」と言うと、ゼペットじいさんは「操縦して、墜落させたのはおまえさんじゃろ。」と叱る。アナスタシアは「不時着よ、不時着。」と可愛い熊の親子を近くで見るために飛空艇を墜落させた。ロジャーは北海道で飛空艇を修理中。ロジャーが生きているか心配なみんな。ウルの調子が戻るまでしばらく倉庫にいることにする。ブランカが外に出てみると、若き剣客が赤城達に追われているのを目にする。加勢するブランカ。戦いを終え、老人と少女のもとへ急ぐ男。どうやら墓参りに来ていたところを追われていたようである。少女はブランカに「ありがとう。」と感謝する。ブランカは「ガル!ガルガル!(気にするな、ただの通りすがりだ。)」と言う。青年は「おまえ、名前は?」と言うとブランカは「バウバウ!(つむじ風のブランカ、とでも呼んでくれ。)」と答えると少女は「そうね、白いから、ポチがいいわ!」と名前を決めた。ブランカは」「ガルガル!!(意味わかんねえよ、意味が!!)」と本当は気に入ってない。青年は「気に入ったらしい。」と言った。少女も「ええ!」と言った。ブランカは「バウ!(違う!)」と吠えるも青年は「さ、参りましょう、宿はすぐそこです。」と先導する。男は「うむ。」と言い、青年は「助けてくれた事、礼を言うよ。」とブランカに言う。ブランカは「グ、グルル(そ、それより)」と困る。少女は「さようなら、ポチ。」別れる。ブランカはまだ「クウン、クウーン(ちがう、ちがうんだ)グルルル(ねえちょっと)バ、バウ!?(こ、これは!?)」と少女が髪飾りを落としていったのでブランカが拾うのだった。

第二十三章 横浜市街

ブランカは横浜市街の宿の前にいた。アナスタシアが「あ、いたいた!」と見つける。ウルは「何やってんだ?」と言った。アナスタシアは「ブーラーンーカー!!」と呼んだ。ブランカは「クゥン」と鳴いた。日本の少女も「ポチ!」とやってきた。ブランカは「バウ!(おはよう!)」とあいさつする。すると黒い車がやって来て、ブランカが「バウ!!(ハニーっ!!)」と助けに向かうも少女は「キャーッ!」と叫んだ。青年は「お嬢様!」と呼ぶも車の者が少女を連れ去ってしまう。周りのみんなに銃を発砲する敵。その後男が「とんだ世話をかけたな。」と謝る。ルチアは「いいえぇ、だけど病院とかに運ばなくてもいいのぉ?」と心配するが男は「大丈夫。見てくれはやさ男だが、頑丈に出来ているのさ、あれは。」と言う。カレンが「さらわれたのは、おじいさんの娘さんですか?」と聞いた。男は「ああ。」と答える。ヨアヒムは「すぐに助けに行くだっち!」とあわてる。男は「助けに行くと言ってもな、大事な人質だ。そう手荒な扱いはせんだろう。」と落ち着いて答える。アナスタシアは「娘が誘拐されたってのに、ずいぶんとのん気なじじいね?」ともらす。ヨアヒムは「シ!聞こえるだっちよ!」ひそひそ語る。アナスタシアは「平気よ、どうせ耳も遠いに決まってるんだから。」と言う。男は「ワシはまだモウロクしとらんよ、お嬢ちゃん!」と聞かれアナスタシアは「あ、あらやだ!」と焦る。青年が起きて男は「おう、大丈夫か?」と話す。青年は「はい、ご心配をおかけしました。」と目を覚ます。アナスタシアが男にウットリ。青年は「親方さま、この方々は?」と男に聞き、男は「おまえをここへ運んで来てくれたお人たちだ。」と答えると青年は「そうでしたか。助けていただき、かたじけない。」と感謝する。アナスタシアは「そ、そんな、いいんです!気にしないでください!」と恥ずかしがる。ウルは「それより、さっきは死んだかと思ったぜ。」と心配する。青年は「はあ。」と気まずそうである。男は「ここから先は面倒ごとだ。お前様方は、旅を続けてくだされ。」と答えた。ウルは「えっと、それなんだけど。あんたはさ、娘が誘拐さる心当たりも、犯人のことも、わかってるみたいじゃん?」と聞くと男は「ふふ、その通りだ。さればさ、つまらぬもめ事に首をつっこみなさんな。」とまた言う。カレンは「ところが、そうもいかないんです。」と言う。男は「どういうことだね?」と聞く。ウルは「俺の相棒、相棒っつても狼なんだけれど。そいつが車を追っかけて行っちゃって。」と言うと青年は「ポチのことですか?」と聞く。ウルは「ポチ?そう、それそれ!」と喜ぶ。アナスタシアが「ブランカでしょ!?」と突っ込む。青年は「あの狼は、夕べも私たちを助けてくれたんです。」と言うとウルは「つうことで、俺たちとしても放っておけないんだよ。」と答えた。男は「うむ。」と考える。ブランカが戻ってきてウルが「ポチ!」と言うとウルにアナスタシアが「ブランカ!!」とまたつっこむ。ブランカは櫛を置いた。青年は「これは、お嬢様の!?」と驚く。ウルは「奴らのアジトをつきとめたんだな?」と聞くとブランカは「バウっ!(そうだ!)」と吠える。ウルは「これで決まりってわけだ。」と答えた。男は「では、手を貸してもらおうか!?」と頼み、青年も「はい。」と答える。マジメルの2人もいた。ウルは「な、なんでここにいるの!?日本だよ、ここ!?」と聞くとピエールは「あ~ら、つれないじゃない!?せっかくシルクロードを走って、あなた達をつけて来たっていうのに!?」と答えるもそれを聞いてウルは「ス、ストーカーか!?」とつっこむ。

第二十四章 戦艦三笠

寺田が「艦長、船の用意は?」と聞いた。艦長は「もう少し待ってくれ、じきに出向の準備ができる。」と戦艦三笠で話す。寺田は「もう三時間も待っているのですよ!」と聞くと艦長は「いきなり武装した兵を引き連れ、高速艇を一隻用意しろと言われても、そんな簡単に準備できるものではないよ、寺田中佐。」と答えた。寺田は「我々は石村閣下、直々の命で動いているのです!一刻を争う有事という場面で、あなたという方は。」と呆れると艦長は「そう意気込むな。船は用意すると言っているのだ。しかし、最新鋭の駆逐艦をタクシー代わりに使うなどとは、後々面倒な問題にならぬことを祈るよ。」と心配する。寺田は「心配ご無用。」と言う。艦長は「それに小娘を一人、連れ込んだそうだな?」と聞くが、寺田は「詮索も無用に願います、将軍!」と言い、艦長は「わかったわかった。つまらぬいざこざに首を突っ込む気は無い。」と話す。艦長の艦長の部下が「失礼します!」と入ってくる。艦長は「ん!?何事だ?」と聞いた。すると艦長は「わかった。乗組員には手を出させるな。」と答えた。艦長は寺田に「どうやら、小娘目当ての輩が侵入したそうだ。中佐、君に始末をつけてもらおう。」と頼む。寺田中佐は「わかりました、望むところです!」と言った。一方、ウルたちは三笠の中が広いので、2手に分かれて進むことに。戦艦三笠の最深部には寺田中佐が「じじいの飼い犬が、小娘を取り戻しに来るとは!」と言った。蔵人は「やはり、お前の仕業か。お嬢様を返してもらおう!」と言う。寺田は「そうはいかん!!我が鉄奇兵(くろがねきへい)の力、思い知らせてやるっ!!」と言って赤城たちと寺田中佐との戦い。勝利して少女のいる扉を開ける。少女は「ポチ!!蔵人も!!」青年蔵人は「お嬢さま!!」と呼んだ。ブランカは「クウン、クウン」と安心する。蔵人は「お怪我はありませんか?」と聞くも少女は「うん、大丈夫。」と答える。ウルは「良かったな、無事で!」と安心すると少女が「あなたは?」と聞くウルは「俺はウル。そいつはポチじゃねえよ。ブランカって俺の相棒さ!」と言った。少女は「ブランカ?」と聞くとウルは「ああ。」と答えた。少女は「そうブランカというのね?ありがとうブランカ!」と言う。ブランカも「バウっ!」と吠える。少女は「私は芳子。川島芳子よ!」と聞いてウルは「か、かわしま、よしこ!?」と慌てる。蔵人は「はい。私の主、川島浪速さまのご息女、芳子さまです。」と答えた。ウルは「じゃあ、あのじいさんが?」と聞くと蔵人は「ええ。」と答えた。ウルは「そ、そうなんだ。」と言う。するとカレンが「ウル!」と呼ぶ。艦長が「私はこの三笠の艦長、金田だ。」手荒なことはしたくない。おとなしくしてもらおう。」と銃を向ける。捕まってしまうのだった。

大日本帝国首相官邸にて雅藍が「お呼びでしょうか、閣下。」と聞く。石村は「寺田がしくじった。」とつぶやく。雅藍「はい?」と聞くも石村は「川島の暗殺、娘の誘拐、共に失敗よ。なにやら凄腕の用心棒を飼っておるらしい。」と答えた。雅藍は「噂には聞いておりましたが、まさかそれほどとは。」と驚く。石村は「次の手を打たねばならん。」と言うと加藤に石村は「特佐、サルどもは全部目覚めたのか?」と聞いた。加藤は「間もなく、最後の桜花が完成いたします。」と言った。石村は「三番目には、ずいぶんと、時も金もかけておるな?」と聞くと加藤は「申し訳ありません。」と謝罪する。石村は「よいわ。では雅藍(がらん)に命じるとしよう。お前は下がれ。特佐。」と言って加藤は「はい。」と言う。石村は「あまり熱を入れ込むなよ。人の形をしていようとも、所詮、サルはサルだ。」とも付け加えた。加藤は「は、肝に銘じております。」と一礼して去る。雅藍は「閣下、あやつめは信用なりませぬぞえ。ロシアから戻って以来、ずっと研究所に閉じこもり、何やら怪しげな魔術に没頭してまする!」と心配する。石村は「あれはヨーロッパから良い土産を持ち帰った。玩具(おもちゃ)で遊ぶ時間くらい大目に見てやれ。」と答えた。雅藍は「閣下!閣下はあやつめに甘うございます。大陸帰りで軍法会議までかけられた男を、みずから引き取られた上に、特別の階級まで与えて重用なさるとは!」と憤る。石村は「加藤は大陸、欧州、様々な場所を見て来た者だ。日本から離れたことの無いおまえとは、違った見方も考え方もしよう。それが面白いのだ。」と感心する。雅藍は「まろには理解できませぬ!」と言った。石村は「ふふ、おまえは川島を討つ準備に取り掛かれ。清王朝の娘を養女とし、大陸への足がかりを固めてきておる。袁世凱に対抗する、ゲリラどもの支援まで行う気だ。万が一それらが事をなした後では、こちらの付け入る隙も無くなるゆえな。」と頼む。雅藍は「はい。」と言う。石村は「大陸に創るクニの実権、いかなる事があろうとも、川島に握らせるわけにはいかぬ。奴がまだ横浜にいる間に抹殺するのだ!」と命令した。雅藍は「承知しました。この雅藍の術界にて、やつらめをあの世に送って参りましょうぞ!!」と豪語する。石村は「はっはっは、頼もしいな!」と笑った。雅藍(がらん)が姿を消す。

仰向けの女性が眠っている。加藤の声が「目覚めよ、桜花。」と響く。桜花は「お・う・か。」と言う。加藤は「そうだ桜花、それがお前の名だ。立つのだ。」と言った。桜花は起き上がった。加藤は「お前の任務は、そこから脱出すること。いかなる障害物をも排除し、見事、私のもとまでたどりついてみせよ。」と命令し、桜花は「はい、お頭さま。」と答え、仲間との対戦や射撃訓練が始まる。桜花は飛燕、雷伝と相手をしてその後3人で協力して装甲機兵・水無月と戦闘。加藤は「よくやったな、三人とも。」とねぎらう。三人は「はっ。」と言う。加藤は「桜花、気分はどうだ?具合の悪いところはあるか?」と聞くと、桜花は「少し頭痛が。」と言う。加藤は「最初は、みなそうだ。じきに痛みは消えよう。おまえは、まだ未完成なれど、ほかの二人同様、十分に働くことはできる。励めよ。やがて完全な力を発揮する時まで。」とさらに命令し、桜花は「はっ!」と答えた。

ウルたちは解放されていた。ヨアヒムは「なんだっち!?三日も閉じ込められたあげく、急にもう出てっていいぞってのは!?」と驚く。ルチアも「ろくな取り調べもなかったもんねぇ。きっとぉ、どうでもよくなっちゃったのよぉ。」と言った。ウルは「蔵人も薄情だよなあ、自分だけさっさといなくなっちまって。」と呆れるも、アナスタシアが「蔵人さんは、そんな人じゃないわよ!」と否定する。ウルは「え?なになに、なんだよ?まさか、もしかして?」と楽しそうに聞く。アナスタシアは「なによ、やらしい目つき!?」とほほを赤らめる。ウルは「赤くなってるじゃんよ!」といじる。アナスタシアは「殺すわよ。」と怒る。ゼペットじいさんは「やめんか、二人とも。」と仲介する。カレンは「ねえ、あれ!」と指さす。男の浪速がウルは「おう、爺さん!」と浪速に挨拶した。浪速は「よう!出すまで時間がかかってしまった、ゆるしてくれ。」と謝る。カレンは「あなたが私たちを?」と聞くと、浪速は「うむ、身元引受人よ。なあに娘を助けてもらったお礼さ。」ウルは浪速に「じいさん、俺たちは、」と言うと浪速は「ああ、わかっとる。そちらのお嬢さんが持っていた、ロシアの親善大使の証明書を金田君に見せられた時からな。わざわざこの日本までやって来た理由は、いずれ詳しく話してもらうとするさ。」と答える。ルチアが「親善大使の証明書ぉ?」と驚く。ゼペットじいさんも「お前さん、そんなもん持っておったん?」とアナスタシアに聞く。アナスタシアは「お父様がくれたの。外国で何かあったらって!」と答えた。ルチアは「さすが皇帝ねぇ!」と喜ぶ。ウルが「水戸黄門みてえだな。」言うとアナスタシアは「もっとエライわよ。」と言った。浪速は「さて行くか。ウルに、アンヌ、それから」と言うとカレンは「アンヌ?」と聞く。アナスタシアは「カレンはそういう名前にしておいたのよ。ドイツ人だってバレると面倒だから!」と答えた。カレンは「アンヌって?」とウルに聞いた。ウルは「俺のお袋の名前。」と言う。浪速は「アンヌ。じゃないのかい?」と聞き、カレンは「あ、いえ、カレンです。」浪速は「ふむ。まあ、どちらでもいいわ。それ!」と皆を連れていく。

横浜市街の宿で蔵人は「お帰りなさい、みなさん。」と待っていた。アナスタシアは「あ、蔵人さま!」と見つける。ウルは「よう。」とあいさつする。浪速が芳子に「さ、おまえからも礼を言いなさい。」と言い、芳子は「はい。助けてくださり、ありがとうございます。」と感謝した。ゼペットじいさんは「いやいや、こちらこそ。お役に立てて何よりじゃ!」と言う。カレンは「おじいさまたちは、これからどうするのです?」と聞くと、浪速は「ワシらがこの横浜に来た目的はな、ただの墓参りなのさ。」と答えた。ウルは「墓参り?」と言った。カレンも「命を狙われるような思いまでして?」と聞くと浪速は「はっはっは、そう。驚いたかい?町を出た先に、外人墓地がある。そこへ行くために、帝都から汽車に乗って来たんだよ。よかったら、皆も来るかえ?にぎやかな方がアレも喜ぶだろ。」と笑う。カレンは「あ、あのでも」と言うと、浪速は「ん?また敵が襲ってこないかって?」と聞く。蔵人は「大丈夫です、僕がついていますから。」と言った。ウルは「兄ちゃんが強いのは、よくわかってるんだけどさ。」と心配した。浪速は「なあに、奴らはしばらく現れないだろう。ワシだけにかまっていられるほど、ヒマではなかろうし。では、先に行くとしようか。」と安心させた。

第二十五章 外人墓地

外人墓地に来ると何だか様子がおかしいことにきづくカレンとゼペットじいさん。ルチアが蔵人が仰向けに倒れていることに気づく。蔵人は起き上がり、フュージョンして仲間と戦うことになる。正気に戻る蔵人。ウルは心配しつつも理由を聞いた。どうやら誰かがウルたちを結界に閉じ込め、蔵人は操られていたようである。お札の仕掛けをくぐりぬけ、たどり着いた先に雅藍がいた。雅藍は「ホホホ!」と日の本、日本を守護する陰陽師である。ウルは「な、なんだ!?」と怖がって口もきけないのかと雅藍は思うが、ウルとアナスタシアが「キモっ!!」と言い放つ。戦いに。雅藍が退くと異界は消えていく。浪速と芳子は向こうで座って眠っていたのだった。ウルは浪速からもう一人の娘である良子の墓の事を聞く。ウルは以前出会った川島中佐こそがもう一人のよしこであることに気がつく。芳子はどんな人か教えてほしい言うので、ウルは「頭がよくて強情で、いつも男まさり。俺には、少し無理して生きているように見えたな。でも、いい女だったよ。」と答えた。芳子は「ふうん。」と言った。

とある実験所でニコルが藤堂博士によって実験にかけられていた。その様子を加藤は聞く。ニコルの精神から怪物を取り出すよう石村から要請があったのだ。ニコルに宿った能力を実権の器である犬に移すのだが、途中でいっぱいになる。加藤の部下、三猿衆が近くで観察していると、犬は巨大化して怪物に藤堂博士は能力の強さに大喜び。加藤は三猿衆に反撃させ脱出しろと命令。しかし、なかなかうまく脱出できない。そんな時、桜花が怪物をどこかへテレポートさせる。そのおかげで3人は無事ではあったが加藤は命令に背いた桜花のことを怒った。急いで三猿衆に移動した実験体の器を探させるようにする。

1893 年の帝都。浪速の家に軍服を着た客人がやってくる。浪速に男は「お久しぶりです、先生。」とお辞儀をする。日本に昨日戻ってきたばかりだった。家にいるのは浪速。軍服の男に例の件が決まったのかと聞く。男は「ええ。来週にも日本を発ちます。」と妻のアンヌと息子を一緒に連れて行くという。浪速は「しかし、あのせがれ名は、えっと、」と言うと男は「ウルです。」となんとウルのお父さんだった!彼によると広大な大陸で、のびのびと育ててやるつもりであるとか。浪速も良いことだと嬉しそう。しかしウルの父親は二度と日本には帰ってこれないかもしれないと告げる。上海を根城にしている仙術師の強敵である徳壊と戦うというのだ。ウルの父は「仕損じたときは、お願いします。」と覚悟を決めている。ウルのお父さんは日向。浪速は「おう、武運を祈っとる。戻ったら、1やろう。」と言った。

第二十六章 日本橋

日本橋の公園のベンチに2人きりのウルとカレン。ゆっくりと時間が流れる。カレンが「お父さんの事思い出しているの?」と言う。ウルは「ああ。赤ん坊の頃の事なんて、ほとんど覚えてないけど、お袋と3人で、大陸に渡った船の汽笛の音だけは、なんとなく耳の奥に残ってる。」と答えた。カレンは「お父様は、呪術で日本を破壊しようとした仙人と戦って死んだのよね?」と聞いたウルは「ああ、俺が十歳の時にね。」と言うカレンは続けて「お母さんは?」と聞くとウルは「親父が死んで、俺んちに化け物どもがやって来た。あの仙人の下っ端たちが。お袋も、そのときにね。」と答える。カレンは少しうつむく。それを見たウルが「不思議なもんだよ!親父は命をかけて日本を守るために戦い、俺は命をかけて、その日本と戦ってる。」と言った。カレンは「私、少しだけわかるわ。」と言ったウルは「ん?」と聞くとカレンは「あなたのお父さんは、日本のためではなく、あなたと、お母さんのために戦ってたんじゃないかしら。」と言う。ウルは「俺と、お袋のため?」と聞くとカレンは「私の家がミュンヘンの貧乏貴族だってことは話したでしょ?私、家名を汚してはいけないと、まわりの男にも負けないように必死で頑張ってた。軍隊で手柄を立てれば、痩せた土地から出す税金も少なくて済む。それは、国のためなんかじゃなく。館に残してきた、寝たきりのおばあちゃんを守るためだったの。でも、もう故郷には戻れない。サピエンテス・グラディオによって何もかも、奪われてしまったから。だから、きっとあなたのお父さんは、愛する家族を守って、生きてきたんだと思うわ!」と答えた。ウルが「ごめん。」とうつむく。カレンは「やだ、ちがうの。私は元気!こうなってしまった運命を呪っても、未来を辛く過ごすだけ。今を精一杯に生きれば、少しは明るい希望を持てるでしょう!」と言った。ウルは「強いな、カレンは。」と言うとカレンは「そうよ!甘く見ないでちょうだい!」と強く言った。

2人の間に微笑みがわく。後ろにはアナスタシアとヨアヒムが隠れてウルとカレンを見ている。アナスタシアは「ちょっとー、アダルちーなムードじゃない!?」とヨアヒムに聞くとヨアヒムは「しっ、声がでかい!みつかるだっち!」と答えた。アナスタシアは「なに、やってんのかしら、じれったいわね!がばっと抱き寄せてチューよチュー!一気に押し倒しなさい!こう、ガバーっと!」と言うとヨアヒムは「お、オッサンみたいだらな!」と言った。カレンは「お母さんのことは、おぼえてる?」とウルに聞くとウルは「もちろん。仕事で日本に来た時に親父と出会って、お袋のほうが一目惚れしたんだってよ。」と答えた。カレンは「綺麗だった?」と聞いた。ウルは「顔は、薄ぼんやりとしか思い出せない。」と言った。カレンはさらに「どんな人?」と聞く。ウルは「なんだよ急に。」と言った。カレンは「いいから、知りたいの。」と言う。ウルは「大陸に渡ってからも、あちこち転々としてじきに木蘭(いりん)の村に落ち着いてからは、親父の仕事の都合で、毎年一年の半分を2人だけで過ごすことになったんだ。お袋は強がってたけど、いつも寂しそうだった。もう、いいだろ?恥ずかしくなってきたぜ!」と照れて言う。カレンは「ダーメ、ほら、つづけなさい!」と言った。ウルは「な、なんだよ。若いうちは苦労人で、親父と一緒になって俺が生まれ、日本で過ごした何年かが、人生で一番幸せだったって、時々愚痴ってた。」と言う。カレンは「ふうん。」と言った。ウルは「でもその後にさ、必ず言うんだ。母さんはあなたといれば幸せよ!って。」と言った。カレンは「まあ。」と言った。ウルは「でもそれを聞く度に、家を留守にしている親父に腹を立てたっけ。」と言う。カレンは「そう。」と言った。ウルは「ウルムナフって名前も、お袋がつけたんだ。」と言うとカレンは「どうしてその名を?」と聞いた。ウルは「それがさ、初恋の男の名前らしいんだよ!」と答えた。後ろのアナスタシアとヨアヒムもはこっそり聞いていた。アナスタシアは「うーん」と言う。ヨアヒムは「良く聞こえないだっち。」と言った。アナスタシアは「母子家庭の十字架を語っているらしいわ。」と答えた。ヨアヒムは「聴こえるだらか!?」と聞くとアナスタシアは「しっ、声がでかいわよ。」と言った。ヨアヒムは「は、はい。」と言う。カレンは「ねえ、最後にもう一つだけ聞いてもいい?」と言うとウルは「はいはい、もー何でもどうぞ!?」と答えた。カレンは「アリスのことは、愛していたの?」と聞くとむせこむウル。ウルは「あ、痛てっ、痛ててっ、急にお腹がいたくなってきちゃった!うんちもれそう!」と言った。カレンは「ちょっと!真面目に聞いてるのよ!」と言った。

カレンは「こらー!」と追いかける。ウルは「や、やめて!本当にもれちゃう!」と言って逃げる。すると、突如地震が!!4人の前に怪物が現れる。ニコルか!?と戦闘になる。勝つと姿を消す。怪物の血から増殖する。仲間が全員揃うと蔵人が「ご無事でしたか!皆さん、怪我はありませんか?」と言うとアナスタシアは「だ、大丈夫ですわ!蔵人さま。」と言った。日本兵が怪物の餌になってしまっている。建物の上で観察する三猿衆。加藤がやって来た。桜花が「いかが致しましょう、このままでは市民の犠牲も増えるばかり。」と言った。雷電が「我ら三人なれば、ヤツを始末できます。」と言うと加藤は「ふむ。」と言った。飛燕は「お頭、あれを!」とウルたちを見つけた。ウル「こいつら、横浜の兵隊たち。」と言った。怪物は炎をはいて街を壊そうと暴走する。あの怪物からニコルの意識をウルは感じている。三猿衆がと加藤が来て今は争う気はないとのこと。三猿衆が突破口を開き、ウルたちが首領を倒すことに。加藤は「彼らの戦いをよく見ておくのだ。いずれ雌雄を決する相手ゆえな。」三猿衆に言うと三猿衆は「はっ!」と答えた。片付くと加藤が「さすが、見事だ。」と言った。ウルは「聞かせてもらおうか。ニコルはどこだ?今の化け物、ニコルと同じニオイがしたぜ。あんたはエミグレ文書を手に入れ、ニコルまで利用し、一体何を企んでいるんだ!?」と聞いた。加藤は「あなたには、関係ないこと。」と答えるとウルは「そうはいかねえ!」と言う。加藤は「これ以上、深入りすれば、命のやり取りになる。日本を去ってくれ。」と加藤は何も言わない。ウルは「ダメだ。この帝都って伏魔殿(ふくまでん)に隠れている、うす汚ねえ黒幕を追い詰めるまではな!」と言った。加藤は「どうしてもか?」と聞くとウルは「のうのうと安全な所から、みんなの平穏を奪っていくそいつを、俺は絶対に許せない!」と言った。加藤は「陸軍の藤堂技術研究所。ニコルはそこにいる。」と答える。ウルは「生きているのか?」と聞くと加藤は「無論だ。しかし一歩でも踏み込んだ時は我ら全力で相手となる。忘れるな。」と言うとウルは「上等だ。」と答えた。加藤は「わかった。待っていよう。」と言って加藤たちは去って行った。

その後浪速が「ふうむ、そうであったか。お前さんたちは、そのニコルと言う男を追ってきたのだね?」と言う。カレンは「はい。」と答えた。浪速は「ロシアを掠め取ろうとした秘密結社の残党で、皇位継承権まで持つ男を、石村は手に入れたわけか。」と言った。ウルは「石村?」と聞いた。浪速は「外務大臣、石村貫太郎だ。今の大隈内閣を、影で支配している男よ。」と答えた。ウルは「そいつが、加藤の親玉?」と言った。浪速は「そう。財界も従え、頭も切れる。最近じゃ、鉄隊(くろがねたい)なんて名前の新選組まで組織して帝都を牛耳っていやがる。藤堂技研もやつの持ち物だ。」と言う。カレンは「三猿衆も、あの怪獣も、みんな?」と聞いた。浪速は「多分その怪獣は、実験に失敗したか何かで、表に出てきたのであろう。」と答える。蔵人は「藤堂技研は、以前から怪しい実験をくりかえし、兵器を専門に開発している研究所です。」と補足した。浪速は「石村は、ニコルをネタにロシアを揺さぶる気だな。」と言うとウルとカレンは「ロシアを?」と聞いた。浪速は「場合によっちゃ、また戦争を仕掛ける気さ。」と答える。これを聞いて蔵人が「む、無茶な!?」と驚く。浪速は「妾腹(めかけばら)のせがれだろうが、皇太子には変わりない。そいつを傀儡(かいらい)に、新政権を担ぎ上げりゃ、今、落ち目の皇帝一家から政権をもぎ取る事だって夢じゃない。」と言った。カレンは「まさか」と言い、ウルは「できるのかよ、そんな事?」と聞いた。浪速は「似たような企みなど、いくらでも、ころがっておるさ。」と答えた。アナスタシアは「これ以上戦争が大きくなったら、もっと沢山の人が死ぬわ。」と言った。浪速は「本当に恐ろしいのは、怪物すら利用しようとする、人の業だな。」と言う。ウルは「だ、だけど」と言った。浪速は「ん?」と聞いた。ウルは「俺には、あの加藤が、何も考えなく、石村の言われるがまま、謀略に手を染めているとは思えないんだ。きっと大きな目的を持っている。」と言った。浪速は「なぜ、そう思う?」と聞くとウルは「ヤツは真面目で、気の優しい男で、上海でも最後まで川島中佐を守っていた。それなのに、わざわざヨーロッパまで来てサピエンテス・グラディオに手を貸し、エミグレ文書を奪っていくなんて。」と言った。浪速は「え、えみぐ、えみぐれ?」と困惑した。カレンは「エミグレ文書。死者を生き返らせる魔術書です。」と答えた。ウルは「今までそれを手にした者はみんな、悪魔的な研究の末に、とんでもねえ大事を引き起こしているんだ。」と言う。浪速は「信じられんな。あの男は、よし子の遺骨を、上海から持ち帰ってくれた恩人だ。」と言った。カレンは「加藤特佐もそれを使って、死んだ人間を生き返らせようと?」と言うと浪速は「うーん」と言った。アナスタシアは「なによ、なにか思い当たる節でもあるの?」と聞いた。ウルは「あの桜花って女」と言った。カレンは「三猿衆の桜花かがとうかした?」と聞いた。ウルは「声を聞いたとき、どっかで聞いたことがあると思ったんだ。」と感じたことを口にする。浪速は「以前に会ったことがあるのか?」と聞いたウルは「ううん。さっきが初めて。」と言う。カレンは「じゃあ、どうして?」と聞いた。ウルは「似てたんだよ、川島中佐の声に。」と言うと一同騒然。浪速は「よ、良子の声に!?」と気を失うのだった。

カレンが蔵人に「先生、大丈夫?」と聞いた。蔵人は「はい、今お休みになられました。」と答えた。ウルは「急に倒れるんだもんな、焦ったぜ。」と言った。アナスタシアは「死んだ人間が生きてるって言われたんだもの、ビックリしても仕方無いわよ。」と言った。蔵人がウルへ「でも、あの桜花が、本当によし子さまなのですか?」と聞いた。ウルは「どうかな。川島中佐が死んだところを見たわけじゃないから、確信は持てないけど。」と答えた。少し考えてカレンは「研究所に乗り込んでみればわかることじゃない?」と提案する。ウルは「そうか。そうだよな!直接本人に、あんた川島さん?って聞けばいいんだ。なんだ、簡単な話しじゃんよ!」と言う。蔵人は「そ、そうですか?」と驚く。カレンは「そうよ!」と言った。ほどなくして浪速先生が気を取り戻す。カレンは「大丈夫なの?先生。もう起きたりして。」と聞くと浪速は「おお、心配をかけたな。もう大丈夫だ。なあに、少し動転してしまっただけさ。」と言った。ウルたちは浪速にちょっと出かけてくると告げる。ところが浪速先生も分かっているようで、浪速は「いいかい?止めはせんが、無茶はいけねえぜ?」と告げた。藤堂技研へつづく。

第二十七章 藤堂技研

ウルたちは藤堂技研着いたが警備が厳重だ。蔵人が警備隊の服を着て潜入するのはどうかと提案しその通りにすることに。三猿衆の桜花が「間もなくアスタロトの分離実験が始まります。」と加藤に告げる。加藤は「わかった。」と言った。桜花は「いかがいたしました?お加減でも悪いのですか?」と心配する。加藤は「いいや、なんでもない。少し、昔のことを思い出していたのだ。」と言った。桜花は「昔のこと。」と言う。加藤は「上海で死んだ上官、川島中佐のことをな。思えば、中佐との出会いが、私の人生を変えたきっかけであろう。ただの地質分析官として大陸に赴任した私が、よもや、このような人生を歩むことになろうとは、夢にも思っていなかった。」と答える。桜花は「後悔、なさっているのですか?」と言うと加藤は「はっはっは!!いや。」と悲しそうに笑う。桜花は「お頭。」と言う。加藤は「あの人はウルの生き方に、とても焦がれていた。心のおもむくまま、たとえ傷ついても、の意思を貫いて生きていく。自分は、誰にでも出来ることだと言ったが、それがいかに難しいか、今になって良くわかった。」と言う。桜花は「お頭も、ご意思を持って生きていらっしゃいます。それは。」と言った。加藤は「私は、時々自分の進む道が怖くなる。」と言った。桜花は「え?」と聞く。加藤は「今まで石村閣下の理想を具現化させようと、覇道を進み、露はらいを行ってきた。しかし、それは、閣下の力をかりて、自分の望みを叶えるため。そのためには、悪となり、手を汚すこともおぼえた。しかし、悲しみを忘れる、ということは、いまだに覚えられぬ。」と答えた。桜花は「上海で亡くなった川島中佐は、お頭の愛したお方なのですね。」と聞いた。加藤は「フっ、情けない話だ。」と言った。桜花は「お頭が苦しむのは、色々な思い出があるから?でも、私は、それがうらやましい。私の顔も、私の声も、その方の写し身。」と言う。加藤は「言うな。おまえは我が創りし、けがれ無き魂。決して誰かの」と言うと桜花は「良いのです!私はその方の代わりでもかまいませぬ。」と言う。加藤は「桜花。」と言った。桜花は「桜花の願いは、少しでもお頭のお役に立つこと。お頭のそばに居て、一緒の時を過ごすこと。その思い出だけが、欲しい。」と言い加藤の背中に寄り添った。

カレンは「奴ら、ニコルを使って何をしようとしているのかしら!?」と言う。急に実験室の明かりが消えた。ゼペットじいさんは「始まるぞ。」と言った。藤堂博士は「フフフ、今回は上手く分離させてやるぞ。」と言う。アナウンスが「これより、第二次アスタロト分離実験を開始。」と入る。ニコルに電流がはしる。アナウンスは「被験者、脈拍、血圧ともにセーフティーゾーンをキープ。意識喪失。脳波睡眠状態へと誘導完了。血圧低下。」と言うと藤堂は「よし、遊離波動照射!」と言った。アナウンスは「サイコウェーブ照射開始。自我崩壊点まで、のこり70パーセント。予測探索可能時間は、約2分です。」と言う。藤堂は「十分ではないか。」と言った」
。アナウンスは「深層意識の中にアスタロトスピリットを確認しました。」と言う。藤堂は「追尾を開始しろ。無意識レベルへ逃げ込む前に捕獲するのだ。」と言う。苦しむニコル。アナウンスはさらに「意識内B2へ進入。活発な動きです。」と言うと藤堂は「怪物め、よほど、この魂の居心地が気に入ってると見える。」と言った。またアナウンスは」「意識内B3へ侵入!自我崩壊点まで、残り45パーセント。」と言った。アナスタシアはゼペットじいさんに「ねえ、何やってるのよ、アア!?」と聞くもゼペットじいさんも「何と言ってるんじゃ!?」と困る。ウルも「それがさ、日本語なんだけど全然わかんねえ!」と言った。アナウンスは「自我崩壊点まで、残り30パーセント。」と言った。いらだつ博士。藤堂は「まだ拘束エリアに捉えられんの!?」助手は「実態がぼやけており、核を断定できません。」と言うと藤堂は「うぬぬ。」と言った。アナウンスは「自我崩壊点まで、残り20パーセント。」と言う。すると加藤が「博士。これ以上は危険です。被験者の人格が失われてしまう。」と言うも藤堂博士は「この機会を逃せば、次は半年先だ。なんとしても。」とあきらめない。加藤は「二度目の過ちを犯す気ですか!?」と言う。藤堂は「やかましいっ!」といらだつ。アナウンスは「自我崩壊点まで、残り10パーセント。」と告げる」。助手は「標的は無意識下に潜入!」と言うと藤堂は「かまわん!自我が崩壊しようが怪物を捕まえるんだ!」と命令する。加藤は「博士!」と呼んだ。藤堂は「!?」と驚き、光が姿を現すのだった。加藤は「電源を落とせっ!実験は中止だっ!」と命令すると藤堂博士は「何をする特佐!」と焦る。加藤は「分からないのですか、博士!あなたは被験者の自我という檻を破壊し、怪物を解き放ってしまったんです!」と教えると藤堂博士は「なにぃ!?」と言った。

ニコルは怪しい笑みを浮かべた。ヨアヒムは「おい、様子が変だっち!!」と言った。カレンは「ニコル。」と不安そうに言う。ウルは「やつの意識が、食いつぶされていく。」と感じた。ニコルは「愚かな人間どもよ。我を抑圧する邪魔な理性を取り除いてくれるとは、礼を言わねばな。」と言った。ウルは「まさか」と驚く。ゼペットじいさんは「アスタロトが目覚めたんじゃ!」と言った。兵隊たちが銃を発砲する。兵隊は「全員、撃てーっ!!」と命令するもまったく効いてない。アスタロトがゆっくり降りてゆく。怯える藤堂博士は「あ、ああ、ああ」と焦る。アスタロトは「この世を地獄へと導くため、今、我は復活を遂げた。」と言う。加藤は「三猿衆!」と3人を呼ぶ。三人は「はっ!」と言った。ウルは「出てきたらどうだ?」と中に入る。アスタロトは「意外な展開だね。しつこい男だな。」と言った。ウルは「寝覚めが悪くてさ、あんたに消えてもらわないと。さて、どうする?どっちが先?」と言うとアスタロトは「残念だが、それはまたの機会にしてもらおう。」と答える。ウルは「そんなこと言うなよ。せっかく会えたのに。」と言った。アスタロトは「フッ!」とニコルごとアスタロトは光に包まれて消えていった。ウルは「野郎。」と言い、加藤は三猿衆に「追え!」と命令。ウルは「お、おい?みんなも行っちゃうの!?」と言った。加藤は「博士、我らはアスタロトを追う。後の始末は、ご随意につけられよ。」と言うと、藤堂は「ま、待ってくれ、特佐!?」と言った。カレンも「私たちも、長居は無用よ!」と言い、ゼペットじいさんは「そうじゃ、早いところ脱出して、ニコルを追わんと!」と言い、ウルは「ちぇ!本当に予想外な展開だぜ!」と言った。取り残された藤堂博士は「おのれぇ!こうなったらヤツらだけでも生かしては返さんぞ!!」と言う。しかし、藤堂技研はとても広く入口まで戻るのが一苦労だった。入口までたどり着くと、藤堂博士が最終兵器の富嶽に乗ってウルたちを始末しようとするのだった。

石村大臣が「研究所は全焼、藤堂博士は死亡し、加藤は怪物の後を追ったまま行方知れずか。」と言った。雅藍は「は、はい。」と言った。石村は「藤堂め、とんだしくじりだっ!!」と言う。雅藍は「ご、ごもっともで。」と言う。石村は「バカめがっ!!ゴホゴホっ。」と咳をする。雅藍は「閣下!?大丈夫でありますか?」と言う。石村は「ええい」と言った。雅藍は「お気をお静め下さい、御身体にさわりまする!」と焦る。石村は「ゴホッ、ゴホッ、うるさい、何でもないわ、これぐらい!うう。」とこらえる。雅藍は「お静まりくだされ、お静まりくだされ!」と言った。石村は「雅藍。」と言った。雅藍は「はい!」と言う。石村は「そのウルとかいう小僧ども、一体何者なのだ。」と聞くと雅藍は「ロシアで皇帝転覆を策していたラスプーチンの秘密結社を倒し、ニコルを追って、日本へやって来た輩と存じておりまする。」と言う。石村は「加藤の話では、特務にいた日向大佐の息子だそうだな?」と言った。雅藍は「御意。」と答えた。石村は「祖国のために命をかけた男の息子が、なぜ同じ志を持つ私の邪魔をし、苦しめるのだ。もはや、この身体に残された時間はわずかだというのに。」と言った。雅藍は「閣下、弱気な事を申されますな!」と言う。石村は「雅藍、ウルを始末しろ。我が覇道の前に立ちはだかる者は、なんぴとたりとも許すことはできぬ。」と言った。雅藍は「ご安心ください。この雅藍、命に代えましても。」と答えた。石村は「行け。」と命令すると雅藍は光と共に姿を消す。石村は「日向、私を恨むなよ。」と一人残り口にした。続けて石村は「たとえ友の忘れ形見であっても、情けはかけぬ。」と言った。浪速と蔵人が無響庵で話し合っている。浪速は「事の成り行きは、ようわかった。おまえは、今しばらくウルたちと行動を共にしろ。力を貸してやるがよい。」と言った。蔵人は「しかし。」と言う。浪速は「ワシと芳子の事なら心配いらんよ。帝都におる限り、石村は手出しはできまい。」と少し間を置き浪速は「もっとも話を聞けば、今のやつにそんな余裕があるとも思えんが。」と言うと蔵人は「わかりました。それでは皆と一緒に。」と言った。浪速は「うむ。」と言う。ウルは落ち着きがない。ウルは「どこへ行きやがったんだ、あの野郎。」と言った。カレンは冷静に「落ち着きなさい。焦ったってニコルの居場所はわからないわ。」と言うとウルは「わかってるよ、そんなこと。母ちゃんみてえなこと言うな!」と言った。少し落ち着いてウルは「今のニコルはアポイナで戦った時の奴じゃねえ。ケタ違いにパワーアップしてやがる。」と言った。カレンは「アスタロトの闇に、心が捕らわれてしまったから?」と聞くとウルは「あいつは化け物の魂を支配し、自分の力として使おうとした。でも、取り込んだ魂のほうが強い場合、こっちの心が逆に喰い潰されちまうんだ。」と言う。カレンは「今のニコルはアスタロト自身だということね。」と言った。ウルは「ああ。ニコルの意識もあるだろうが、支配しているのはアスタロトさ。制御できない悪魔の力。そいつが暴走しちまったら。」と言った。すると浪速が「おい、日向のせがれ。」と言った。カレンは「先生。」と言った。浪速は「しょぼくれておるな。」とウルに言った。ウルは黙ったまま。浪速は「打つ手なしか?」と聞くとウルは「けっ。」と言った。カレンは「こら。」と叱る。浪速は「怪物を探し出してどうする?」と又聞くとウルは「ぶっ倒す。」と言った。浪速は「勝つ自信があるのか?」と言うとウルは「まあな。」と言う。浪速は「ならば、葛城(かつらぎ)へ行け。」と言った。カレンは「葛城?」と聞くと浪速は「葛城の風の森に、おまえを待ってる者がおる。」と言うとウルは「俺を?誰だよ?」と聞くと浪速は「行けばわかる。その者であれば、必ずや求める手がかりを見つけ出してくれよう。」と言った。ウルは「葛城。」と言う。カレンは「元気出して!さあ行き先が決まったのだから、街にいるみんなに知らせに行きましょう!」と言うとウルは「あ、ああ。」とうなずく。

帝都の日本橋にある公園みんなが集まっていると突然忘れられていたロジャー・ベーコンとばったり。ロジャーは「やっとみつけましたよお!」と言った。ルチアは「あはっ、生きてたんだぁ!?」と言う。ゼペットじいさんは「よく、あの雪山から脱出できたのお!」と言った。ロジャーは「まったく。みなさんに一言いってやるまでは、死んでも死にきれませんからね!」と言った。ウルが「あの場合仕方がな無かったんだよ。飛空艇の修理はじっちゃんしかできないし、クマだって食ってマズそうな相手なら、きっと手を出さないだろうと踏んだわけ。」と説明すると、ロジャーは「そんな深い考え無かったでしょ!?みんな、わーって逃げちゃったじゃない!!全力疾走で、振り向きもせず!!わーって!!」と言うもカレンは「そうだった?」と聞く。ロジャーは「そうだった!」と言ったアナスタシアは「まあまあ。気にしちゃだめ、生きてたんだから!」と言う。ルチアも「そぉよぉ、また楽しくやりましょぉ!」と言う。ロジャーは「ひ、ひどーいっ!!なんて人たちだー!!」と嘆いた。仲間たちには楽しいひとときになったのであった。ウルたちは風の森へ向かう。

第二十八章 風の森

カレンは「ここは、あの時の場所と同じね。」と思い出す。ウルは「ああ。俺の遠い記憶の中に会った故郷へへっ、変わってないね!」と言った。アルバートと再会した場所である。蔵人が「二人ともどうかしましたか?」と言うと、ウルは「あ?いや、ちょっとな。」と言った。アナスタシアは「わぁー、キレイなお山!!」と言う。デート状態のアナスタシア。蔵人は「葛城山。このあたりを守護する霊峰です。」と言うとアナスタシアは「れいほう?」と聞く。蔵人は「神の鎮座する山、ということだよ。」と答えるとアナスタシアは「すごーい!」と言った。カレンは「誰が待っているのかしらね?」と聞く。ウルは「さあな。」と言った。ブランカは「グルルル」と何かに気づく。アナスタシアは「なによー、ブランカー!」と聞くとブランカは「グルルル(気をつけろ、様子が変だ。)」と警戒するもアナスタシアは「ぐるるるー。」と気づかない。蔵人は「鈴の音だ。」と気づく。ゼペットじいさんは「風が凪(な)いだのお!」と言った。地震が起き、ウルたちは全員引き込まれてしまう。ウルは「なんだ、ここは!?」と聞くとルチアは「きっとぉ、あの陰陽師の仕業よぉ!!」と考える。ゼペットじいさんは「気をつけるんじゃ。前回よりも強い邪気で満ちておる!!」と言う。マジメルたちが煉獄でお店を開いている。門と蝋燭(ろうそく)の仕掛けをくぐり抜け、お札の結界を破る。最深部であの声がした。雅藍は「待っていたでおじゃるよ、ここは地獄の一丁目。」と言った。ウルは「あっ!とっちゃん坊やの陰陽師。」と見つける。雅藍は「ここまで来る間、まろの恐ろしさを思い知ったでおじゃるか?」と聞くもルチアは「何度見ても不思議よねぇ、ふわふわ浮いているんだもん!」と聞いていない。アナスタシアも「なんで浮いているのかしら?」と不思議に思う。雅藍は恐ろしいシリアスなことを説明しているのだが、ヨアヒムは「あの座布団に秘密があるだっちよ、きっと!」と考えた。ウルは「マジかよ!?」と驚く。雅藍は「さあ、命乞いをすのなら最後の機会じゃ、言いたい事あらば申してみよ?ん?」と聞くとウルは「その座布団どこに売ってんの?」と聞いてしまう。雅藍は「全員、打ち首獄門ぢゃーーーーっ!!」とカンカンに怒り閻魔・雅藍と戦闘。

静かで穏やかな森に戻るのであった。ウルは「結局、どこに売ってるか教えてもらえなかったな。」と言うとカレンは「本当に知りたかったんかい!」とツッコむ。蔵人は「みなさん、着きましたよ!あそこが犬神の里です!」と言った。ここは蔵人の故郷。蔵人は「幸ばあや!相変わらず元気だったかい?」幸ばあやは「へえ、へえ。」と言った。蔵人は「御前はどこに?」と聞くと幸ばあやは「咲様なれば、今、宿禰 (すくね)の泉におりますわ。ゆんべから不吉な予兆を感じたとかで、ずっと祈りを奉げておるんですじゃ。」と言った。蔵人は「母さまが?」と聞いた。幸ばあやは「へえ。しかし、まあ、若が戻られるなんて、良いことの間違いじゃったね!どれ、あたしゃ一足先に戻ってお迎えの準備をせねばよ。」と答えた。アナスタシアが「蔵人さま、どうしました!?お腹でも痛いのですか!?」と聞く。蔵人は「え?」と言う。アナスタシアは「具合が悪いのであれば、何でもアナスタシアに言いつけてください!」と言うと蔵人は「いえ、どこも。大丈夫ですよ。」と答える。アナスタシアはさらに「本当ですか?遠慮はなりません、妻となる者、針のように小さなことでも、夫の心配事は分かち合って、キャーはずかしい!アナスタシアったら何言ってんのかしら。アハ、アハ、私って、幸せ者。」と言うとすでに目の前はブランカに。アナスタシアは「てやぁ!」とけとばす。ブランカは「キャウン!」と声を上げた。

蔵人は「蔵人ただいま戻りました。」と言うと少し間をおいて咲は「よく来たわね、みなさん。私が犬神の頭首、咲です。この泉は、宿禰(すくね)の泉といって、古(いにしえ)より霊力を宿し、様々な不思議を映し出してくれる聖魔の鏡。いく度と戦乱や凶兆を知らせてくれたこの霊泉が、数日前から、未だかつて無いほどの危機を啓示しています。日の本全体の地脈に大きな乱れを生じさせ、星をも揺るがす天変地異を、招き寄せようとしている存在があると。みなさんがこの葛城に来たのも、それと関係がある。そうですね?」と聞くとウルがうなずいた。咲は「あなたがウルムナフ?」と聞く。ウルは「ああ。」と答えた。咲は「そう。みなの探しているもの、何処にいるか見つけ出してあげましょう。」と言うと咲が舞い踊り、泉を鏡として映し出す。カレンは「あの山は?」と聞くとウルは「富士山だ。」と言った。山の中には加藤たちが。そしてさらに奥の溶岩にはニコル。いや、アスタロトであった。アスタロトは「邪悪な意志が鎧となり、姿を隠している。」と言いアスタロトの目が開く。咲は「いけない、見つかったっ!?」と言った。蔵人が「危ない!」と叫ぶ。アスタロトは「コザカシイ。」と咲はアスタロトに捕まってしまった!蔵人は「母さま!」と叫ぶ。アスタロトは「ミナ、シヌガヨイ。」と言う。アナスタシアは「身体を乗っ取られたんだわ!!」と言う。紅艶姫と戦う。気を失う咲。一方で三猿衆の飛燕は「雷電。」と言う。雷電はと答えた。「おう。」と答える。飛燕が「そろそろ戻ろう。」と言う。雷電は「うむ。」と言う。飛燕は「あの怪物は、確かにこの先にいるな。」と言うと雷電は「ハハ、まるで我らを待っているようだ。」と言った。飛燕は「恐ろしいか?」と聞くと雷電は「バカを言え。お前も俺も、上海で一度死んだ身だ。今さら何も怖いものなどない。」と答える。飛燕は「フフ、そうだったな。」と言う。雷電は「飛燕。」と聞く。飛燕は「ん?」と言った。雷電は「医者も見放した我らを、救ってくれたのはお頭だ。このような我らを、家族同然に扱い、とても大事にしてくれる。この死にぞこないの俺をだ。」と言うと飛燕は「そういう方だからこそ、懸命に働き、命を捧げられる。」と答える。雷電は「その通りだ。しかし。」と言う。飛燕は「しかし?」と聞くと雷電は「桜花は別よ。桜花は我らと違い、機械の改造を受けていない。あれは、お頭の好いた方の生まれ変わり。子を生み、家庭をつくって、睦まじく余生を送ることもできよう。」と言うのだった。飛燕は「お前。」と言う。雷電は「俺は、万が一の時があった場合、なんとしても2人だけは死なせたくないのだ。」と言った。飛燕は「雷電。」と言う。雷電は「おかしいか、俺の言っていることは?」と聞くも飛燕は「いや。」と言った。雷電は「どうだ、お前は?」と聞くと飛燕も「もちろん。同じ気持ちだ!」と答えた。別の火口で加藤は桜花に「?呼んだか?」と聞く。桜花は「いえ。いかがいたしました?」と言った。加藤は「いや、声が聞こえたような気がしたのだ。だが、気のせいであろう。結界はまだ持つか?」と聞くと桜花は「はっ、ご心配はいりませぬ。ですが、ここは時の流れが違います。我らには数時間でも外界では何日たっているか。」と答えると加藤は「もたもたしてはいられぬな。手こずっているうちに、ウルたちが現れるやもしれぬ。」と言う。飛燕は「ただいま戻りました。」と言った。加藤は「どうであった?」と聞くと雷電は「この先、天も地もなく、も手前もありませぬ。」と答える。飛燕も「間違いなく、ヤツの本体がいるものと思われます。」と言うと加藤は「そうか。」と言った。すると突然溶岩から道が切り開かれるのだった。加藤は「フッ。ニコルめも、我らを迎え入れてくれるらしい。二度と生きて戻れぬかもしれぬ。皆の命預かるぞ。」と言うと三猿衆は「はっ!」とニコルのもとへ向かう。

ゼペットじいさんはが咲に「どうですかな、お加減は?」と聞いた。咲は「ええ。もうこの通り。」と答えた。咲は続けて「ろくに挨拶もしないうちに、みなさんに迷惑をかけちゃったわね!」と言った。ゼペットじいさんは「とんでもない。」と言った。咲は「助けてくれてありがとう。」と感謝した。ウルは「こっちこそ。ニコルの居場所を教えてもらえたからな。」と言うとウルは「ん?」と聞くと咲は「フフ。」と笑みを浮かべる。ウルは「なんか俺の顔についてる?」と聞くと咲は「ええ。目とか鼻とかね。」と答えた。ゼペットじいさんは「な、なんか気さくなお人じゃのお。」と聞いた。蔵人は「はい、いつもこんな感じです。」と答える。咲は「気を悪くしないで。お父さんによく似てるなと思ったのよ。」と言った。ウルは「親父に?」と聞いた。咲は「ええ。」と言う。ウルは「会ったことあんの?」と聞くと咲は「ええ。」と答えた。ウルは「親父のこと知ってんの?」とさらに聞いた。咲は「ええ。」言った。ウルは「なんで?」と尋ねた。咲は「妹だから。」と答えた。ウルは「いも。」と言った。一同は「ええーっ!」と騒然。アナスタシアは「じゃあ、ウルの叔母さん!?」と驚く。ヨアヒムは「おばさん?」と言うと咲は「オバサン。」と言った。アナスタシアに腹を蹴られて陰でうなだれるヨアヒム。咲はウルに「蔵人からは聞いていたけど、あなたを最初に見たとき、大陸に渡った兄が、不良になって帰ってきたのかと思った。」と答えた。ウルは「不良って。」と言った。咲は「ゆっくり向こうでの話を聞きたいのだけれど、今はそれどころじゃないわね。」と言うとウルも「ああ。」と言う。日本には昔から国を護る家系が犬神や日向など様々にあると咲は言う。蔵人やウルが持っている化身術は一族が持つ特殊な力であるとか。フュージョンはウルのお父さんからの遺伝でもあるが、少し特殊なものらしい。一方アスタロトは富士山を噴火させ、日本を消し飛ばそうともくろんでいる可能性が高い。ウルは咲に礼を言って富士山に急いで向かう。

第二十九章 不死山

不死山の山の中。あちこちに足場があり、そのくぼみに水晶をはめると道に進めるようになっている。みんなは溶岩の流れる火口にたどり着く。ウルは「加藤たちのいた場所だ。」と言う。カレンは「みんなどこへ行ったのかしら?」と考えた。すると突然地震が起こり、道が出来上がる。ウルは「こっちらしいぜ。」と言った。アスタロトはクリスタルの中で眠っている。ウルは「加藤!」と呼んだ。加藤は「フっ、やはり現れたか。」と傷を負っている。ウルは「どうなの?元気?」と聞くと加藤は「見ての通りだ。」と答えた。ウルは「へへっ、おめえらもしぶといじゃんよ。」と言った。アスタロトは「オソカッタナ。」と言った。ウルは「ニコル!?」と言うと加藤は「もはや、人の心は持たぬ化け物だ。」と言った。アスタロトは「フフフ」と笑う。ウルは「なあ、寂しかった?」と聞く。アスタロトは「マモナク、コノヨノ、ホロビガ、ハジマル。」と告げる。ウルは「滅び!?」と驚く。アスタロトは「セカイニ、ミタサレタ、マリスニヨッテ、ハジマル、ホロビノ、ジダイ。」と答えた。加藤がウルに「どうする気だ?」と聞くとウルは「ぶっ倒すさ。」と答える。加藤は「気をつけろ、ヤツの爪にはマリスの毒がある。くらったら最後だ。」と伝える。飛燕も「かすっただけでも、この有様でさ。」と言った。ウルは「わかった。」と答えた。アスタロトは「スベテハ、ヒトノ、ノゾミシ、ミライ。ワガ、タマシイヲ、フッカツサセシ、オロカナ、ニンゲンタチノ、マネイタ、ミライ。ナゲキ、カナシミ、モガク、ウツクシキ、セカイヲ、ジツゲン、サセヨウデハ、ナイカ。」と述べるとウルは「その前にさあ、一つ頼みがあんだけど。」と尋ねる。アスタロトは「ヒトガ、ナニヲ、ネガウ?」と聞くとウルは「消えて、無くなれよ。今すぐ。」と吐き捨てる。ラストアスタロトとの戦闘。正気を取り戻したニコル。ニコルは「カ、カレン。」と言う。カレンは「ニコル?はっ!」と言うとウルは「どけっ!」と言った。ニコルは「ヤドリギの呪いから、逃げられると思うな。」と言う。ウルは「う、うう。」と苦しむ。ニコルは「キサマのおかげで、私は、皇帝にもなれず。」と話を続ける。ウルは「ぐっ!くっ!忘れて、たの、に。」とさらに苦しむ。ニコルは「こんな形で、朽ち果てる、などと。」と言うとウルのむなぐらをつかんだニコルから加藤は手を放させる!ニコルは毒の爪を持って加藤に「邪魔だあ!!」と襲い掛かる。するとなんと、桜花が加藤をかばって猛毒の爪が桜花に突き刺さってしまうのだった!!加藤は「おのれぇーっ!!」とニコルの顔面をつかみニコルは「カ、カレーーンっ!!」と怯え、ニコルはそのまま潰し殺される。桜花は「お、かしら。」と加藤に言う。加藤は「桜花!?」と心配する。桜花は「お怪我は!?」と聞くと加藤は「ない。無事だぞ!」と答えた。桜花は「よ、か、った。」と息をひきとった。加藤は「っ、桜花!?おうかーーーっ!!!」と悲しんだ。ウルはグレイヴヤードに来てアリスの声をきく。アリスは「ウル。」と言った。ウルは「おい、アリス?いんのか?行かなくちゃ、この向こうへ。あれ?開かない。なんで開かないんだよ!行かなくちゃ、いけないんだよっ!!なんだよ、こいつっ!!なんでだよー!?ばーーかっ!!」とグレイヴヤードの中でヤケになる。

仲間たちは犬神の里の滝の所でウルを寝かせていた。アナスタシアは「!?気が付いたわ!!」と気を失ったウルを見て言った。ヨアヒムは「ばか!?」と驚いた。アナスタシアは「なんでやねん!?」とつっこむ。ヨアヒムは「寝言だっち。」と言った。カレンが「ウル!?」と呼びかける。ウルは「ここは?」と聞くとカレンは「宿禰(すくね)の泉よ。」と答えた。ウルは動こうとするも「!?」とよろめく。アナスタシアは「だめよ!?じっとしてなくちゃ!」と言った。ヨアヒムも「無理するなっち。」と言った。カレンも「そうよ、三日も眠ってたのに、いきなり起きれるわけないわ!」と答えた。ウルは「三日?加藤は?死んだのか?」と聞いた。カレンは「いいえ。外に出たときは、もう私たちだけだったわ。」と答えた。ウルは「そうか。」と言った。カレンは「生きていたら、外人墓地に来い。と、あなたに伝えてくれって。」と言う。ウルは「外人墓地?横浜の?わかった。」と答える。犬神家の屋敷に戻ると咲が「うる、気が付いたのね!?よかった、皆の願いが通じたんだわ。」と身を案じた。咲によるとカレンは一睡もしないでウルの看病をしていたという。そしてアスタロトよりももっと深い怒りと悲しみを感じ取ったという。加藤のことだ。ウルは己の宿命に向かって受け止めに行くという。

第三十章 外人墓地

ウルは一人で外人墓地へ、仲間たちは横浜の宿で待つことに。ある一つのお墓の前で加藤は立っていた。加藤は「生きてたな。」と言うとウルも「お互いに。」と返す。ウルは「桜花は?」と聞いた。ゆっくりと頭を横にふる。ウルは「そうか。」と言った。加藤は「私は、愛する人を二度も失いました。憧れとは共に道を歩めず、安らぎとは永遠に引き離されてしまった。もはや、己が行く道に王道も覇道も無く。ただ虚しく哀しい未来が広がるのみ。」と話す。ウルは「加藤。」と言うと加藤は「麻布の暗闇坂、上屋敷。そこに石村閣下はいます。もはや誰も邪魔しません、会って話をしてみるのが良いでしょう。」と言った。ウルは「お前はこれからどうする気だ?」と聞く。するとそっと加藤はウルに書物を渡す。ウルは「これは、エミグレ文書!?」と驚く。加藤は「うむ、確かに返しました。」と言った。ウルは「お、おい!?」と動揺している。加藤はさらに「アリスに会いたくはありませんか?」と聞く。ウルは「!?」とまた驚く。加藤は「その本に記された秘術を用いれば、また彼女に会えます。」と話す。ウルは「ま、まってくれよ、俺は魔術師じゃないんだぜ!?」と言うと加藤は「ロジャー殿なら、たやすいはず。私がそうしたように生き写しを誕生させられます。」と言った。ウルは「そ、そんなのって。」と驚きを隠せない。加藤は「ウル。私は今から、あなたの敵となる。」とさらに告げた。ウルは「!?」とまた驚く。加藤は「語り合い、心を通じ合わせるのも、これが最後。」と話す。ウルは「どういうことだよ?」と聞くと加藤は「私は今の世の全てを消し去る!私が行おうとしている、呪われた所業を阻むのであれば、全力で来ることだ。私はニコルやラスプーチンのように邪神を頼ったりしない。自分の意思で、自分の力で破滅を呼び起こす。」と覚悟を告げる。ウルは「はっ、冗談はやめろって!」と切り返すも加藤は「冗談ではない!呪われた所業が何であるか、ヒントはその秘術書の中に。残り時間は、わずか。」とさらに言う。ウルは「加藤!!」と言った。加藤は「さらばだ、友よ。」と言って加藤は立ち去って行った。ウルたちは麻布暗闇坂・上屋敷へ。

第三十一章 麻布暗闇坂・上屋敷

石村はひとりどこにも逃げも隠れもしないつもりだ。寺田中佐のもとに銃声が聞こえる寺田も死んでも閣下をまもるつもりである。次々に現れる銃を持った兵士たち。ウルも本気でかかる。起動兵器・神無月との戦闘。寺田は倒れ、石村外務大臣のもとへ。石村は「とうとう来たか。」と言った。ウルは「外務大臣、石村貫太郎?」と話す。石村は「いかにも。」と答えた。ウルは「会いたかったぜ。」と言う。石村が「日向の息子だな?」と聞くとウルは「ああ。」と答える。石村は「どこの国の刺客だ?ロシアか?中国か?」と言うとウルは「どこでもない。」と言った。石村は「では、なんのために俺の命を狙う?」と尋ねるとウルは「あんたが罪のない人たちの命を奪うからだ。」と告げた。石村は「フッ、馬鹿な。」と言う。ウルは「自分の野心のために、ニコルを利用してロシアに戦争を仕掛けるつもりだろう!?」と聞くと石村は「日本を、西洋の列強から護るためだ。」と言った。ウルは「なに!?」と言う。石村は「アジアの中で誰かが力を示さねば、西洋の国々に武力で従えられ植民地にされてしまう。大陸も、半島も、この日本とて同じだ。愛する者の祖国を、断じてそんな目に合わせるわけにはいかん!」と答える。ウルは「だからって、なぜだっ?なぜロシアに戦争を仕掛ける必要がある!?」と聞いた。石村は「大陸は、欧米に対抗するには百年出遅れた。その中で、先の戦争に勝利した我が国だけが、唯一列強どもに脅しがきく。だが、その国の力を維持するためには、もっと強く、もっと大きくならねばいかん!今のうちに大陸に根を張り、国力を蓄える必要がある。そしてロシアに侵攻する口実が成ったあかつきには、疲弊した大国を討ち果たし、日本がユーラシアの覇者として立つことも、決して夢ではない!!」と言い放つ。ウルは「そ、それが進出の理由!?」と驚く。石村は「そうだ。」と答えた。ウルは「加藤を使って、ニコルを誘拐させたのも。」と言うと石村は「あの男には、私が創る新生ロシアのミコシになってもらうつもりだった。」と言った。ウルは「そんな事をしたら、また新しい戦争の火種になるんだぞっ!?」と聞くと石村は「戦争は必ず終わる。苦しいのは一時だけだ。」と答えた。ウルは「多くの人が血を流してもか!?」とさらに聞くと石村は「やむを得ぬことだ。」と告げた。ウルは「おまえっ!!」と怒る。石村は「私を殺ったところで、流れは止められぬぞ。後をつづく誰かが、必ず現れる!」と言うと小さな男の子がドア越しに様子をうかがっている。石村は「あ、来るなっ!小助っ!!」と言った。小助は石村をかばうのだった。ウルは「!?」と驚く。石村は「小助、向こうへ行っておれっ!!」と小助を守ろうとする。小助は「お、おじいちゃんに近寄るなっ!!」と言った。ウルは「な。」とさらに驚く。小助は「おじいちゃんに、ひどいこと、するなーっ!!」と石村をかばう。ウルは「どけっ!」と小助をよける。石村は「小助ーっ!!た、頼む、その子は関係ない!どうか命だけは。命だけは。た、頼む!!」と懇願する。ウルは「ガキの命乞いなんかするなっ!!これまで、おまえみたいなヤツが送り込んだ軍隊のために、たくさんの人々が犠牲になっていったんだ。今のように、戦場で兵士たちに命乞いをした親が何人いると思う!?」と言い放つ。石村は「!!」と驚く。ウルは「みんな涙を流し、自分はどうなってもいいから、子供は助けてくれと。そう言って死んでいった!友達や、大切な人を護るために死んでいった!」と何度も倒れた石村の腹を蹴りつける。石村は「ぐあっ!」と声をあげる。ウルは「権力者の語る理想や野心のために、何人もの人が犠牲になっていったんだ!!」と何度も蹴りを入れながら告げる。石村は「うう、ゲホゲホ。」と苦しむ。ウルは「列強から護るだと!?ふざけやがってっ!!なにが愛する者のためだ!!おまえだけじゃない!誰にだっているんだぞ!!」と蹴りを続ける。ウルは「ふざけやがって、ちくしょう。」と蹴りを止める。石村は「ゲホゲホ。」と苦しみ続ける。ウルは「ちくしょう。ちく、しょう。」と床をたたいて嘆いた。

葛城の森に戻ったウルたち。ロジャーが「ウルは?」と探しているところだった。カレンは「それが。」と言うとロジャーは「ふむ。大分こたえてるようですね。どれ、私がいじって来ましょう!」と言った。カレンは「あ、ロジャー。」と言うとロジャーは「カレン、あなたの事を犬神の御頭首さまがさがしてましたよ。」と言う。カレンは「私を?」と聞いた。ロジャーは「ええ、宿禰(すくね)の泉にいるとおもいます。」と言ってウルの隣に座るロジャー。ロジャーは「殺せなかったそうだね?」と聞いた。ウルは「ああ。」と答えた。ロジャーは「ずっと追いかけてきた相手なのにね?」と聞いた。ウルは「ああ。」とまた言った。ロジャーは「くやしい?」とさらに聞くとウルは「ああ。」と言った。ロジャーは「でも、それで良かったんじゃないですか。石村大臣には、鉄の兵隊も、マッドサイエンティストも、ニコルも、加藤も、何もかも無くなり、残っているのは生い先短い人生だけ。それでも自分のしてきたことを考えるには、十分な時間だ。」と言うとウルは「やつもさ、自分の信じた通りに生きて来ただけなんだよな。国や孫を守るために生きてきただけ。俺は何を守るために生きているんだろう。あのガキににらまれた時、それがわからなくなっちまった。」と答えた。ロジャーは「アリスの思いを守るため、じゃないかな?」と聞くとウルは「!?」と驚いたロジャーは「あの娘が愛したこの世界。未来。あなた自身。その気持ちを大切にしたいから。人の嘆く世を、少しでも変えていきたいから。ちがうかな?」とさらに聞いた。ウルは「アリス。」とつぶやく。ロジャーは「ウル、元気を出すのです。あなたらしくない。立ち止まり、振り返っても、歩んできた道は変えられないのだから!」と励ます。ウルはうなづいて「わかってるよ。分かってるんだけれどさ。」と言う。ロジャーは「後悔しないように生きるのは、とても難しいことです。私なんか、この七百年、ずっと後悔の連続です!」と言った。ウルはやっと「ははっ。」と笑顔になるロジャーは「そう!笑って!笑って進んでいく!これが一番!そうすれば、辛いことも、いつかはみんな楽しい思い出になります。ウル。」と言うと。ウルは「ん?」と聞いた。ロジャーは「アリスに会わせてあげます。」と答えた。ウルは「え!?」と驚く。ロジャーは「加藤特佐が行ったエミグレの秘術。多くの魔術師が試み失敗してきた秘術。私も魔術師のはしくれ。何度その暗い魅力にとらわれんとしたことか。」と言うとウルは「で、でも!?」とためらう。ロジャーは「その秘術を見極め、彼の行おうとしている破滅とは何なのか、正体をつきとめてやろうじゃないですか!」と言う。ウルは「あんたが、禁忌を犯すって言うのか?」と驚いた。ロジャーは「二人で、です。片方がおかしくなったり、怪物と化したら、その時はお互い命を奪い、秘術は中断する。どうです?」と交渉するとウルは「分かった。その条件、のむぜ。」と承諾した。ロジャーは「では、さっそくヨーロッパへと出発しますよ。魔術に必要な道具を、調達してきてもらわねばいけませんからね。」と言ってヨーロッパへ向かう。

一方、宿禰の泉では咲がカレンを待っていた。カレンは「私に話が?」と咲に問う。咲は「あの子の様子はどう?」と聞いた。カレンは「まだ落ち込んでます。」と答える。咲は「ま、そのうち元気になるわね!兄にね、よく似ているみたい。顔も考え方も。」と言った。カレンは「そ、そうです、か。」と言う。咲は「あの子のこと、好きなの?」と聞くとカレンは「は!?」と少し驚く。カレンは「大好きです。とっても!!」と答えた。咲は「そう。」と言う。カレンは「わ、私みたいな、女は、あの、ダ、ダメですか?」と聞くと咲は「え?」と言った。カレンは「ご、ご親族の方としては。」と言うと咲は「やだ、ちょっと待って!ダメなわけ無いでしょう!」と答えた。カレンは「ありがとうございます!」と感謝する。咲は「あなたの気持ち、とてもありがたいと思っているわ。どうしたの?」と聞くとカレンはうつむいて「いえ、でも。」と言う。咲は「?」と疑問に思う。カレンは「あの人の心の中には、私はいません。」と答えた。咲は「ウルの?」と聞く。咲は「今も、アリスを愛しているから。」と言った。咲は「アリス?」と言うとカレンは「あの人を守って死んだ、恋人です。でも、大好きです!負けないくらい!あの人、分かってないだろうけど。」と言った。咲は「その愛情を、大切にしてあげて。」と答えた。カレンは「はい。」と言う。咲は「あの子は不思議な星の下に生まれた子。一生自分の宿命と対峙しながら、生きていかなければならない。」と言うとカレンは「宿命?」と聞いた。咲は「ええ。どんなことをしても、逃げられない宿命。カレン、あなたも、宿命を背負って生まれた人なのよ。」と答えた。カレンは「私も?」と聞くと咲は「そう。こんな所に呼び出したのはね、あなたにこれを渡しておきたかったから。大陸に渡る直前、あの子の七五三に撮った写真よ。あなたの宿命はね、必ずあなたを幸せにしてくれるわ。」と話した。その後ウルとカレンはチューリッヒに行く。カレンは「ここが?」と聞くとウルは「ああ。アリスの墓さ。しばらく見ねえうちに、薄汚れちまって。へへっ、もう一年も経つんだもんな。」と答えた。カレンは「どうして、私を連れてきたの?」とさらに聞くとウルは「これだよ。」とカレンにウルが手渡す。カレンは「十字架?」と言った。ウルは「お袋のかたみさ。カレンが持っててくれ。」と言う。カレンは「いいの?」と言う。ウルは「俺の大事な人が手にして来たものなんだ。お袋に親父、そしてアリス。あはは、持ってた人は、みんな死んじゃったんだけど!」と言った。カレンは「あ!?そ、そう。」と言った。ウルは「だ、大丈夫だって!呪いの十字架じゃないんだから。」と焦る。カレンは「うふふっ!」と笑みがこぼれる。ウルは「記憶を失くしちまったらさ、その十字架に込められてきた想いも、忘れられちゃうだろ?」と言う。カレンは「ウル。」と言った。ウルは「だから、想いが消えてしまわないように、カレンに持っててほしいなって。お袋や、親父、アリス、それに俺の心がこもってるから。身勝手なお願いで悪いと思ってるんだけどさ。カレンじゃなきゃダメなんだ。」と答えた。カレンは「うん、わかったわ!」と言うと二人に笑みがこぼれる一時だった。

第三十二章 女王の庭園

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