夜廻三(ゲーム)のネタバレ解説・考察まとめ

『夜廻三』とは、日本一ソフトウェアから発売された夜道探索アクションゲーム『夜廻』シリーズの3作目にして、夜廻6周年記念作品。デフォルメされたポップなデザインとは裏腹に、ダークな世界観と物悲しいストーリーが特徴のゲームだ。
学校で苛烈ないじめを受けている主人公が、呪いを解くために夜の町を歩き回り、忘れていた記憶を拾い集めるという物語。おばけをやり過ごすアクションが「隠れる」から「目を閉じる」に変更された。
「ファミ通・電撃ゲームアワード2022」のホラーゲーム部門にて最優秀賞を受賞した。

『夜廻三』の概要

『夜廻三』とは、日本一ソフトウェアから発売された夜道探索アクションゲーム『夜廻』シリーズの3作目にして、夜廻6周年記念作品。キャッチフレーズは「まぶたの裏で、君が死ぬ」。デフォルメされたポップなデザインとは裏腹に、ダークな世界観と物悲しいストーリーが特徴のゲームだ。
学校で苛烈ないじめを受けている主人公が、呪いを解くために夜の町を歩き回って学校、墓地、廃船、廃屋といったスポットを巡り、忘れていた記憶を拾い集めていく。
過去作では「隠れる」ことでおばけをやり過ごしていたのに対し、本作では「目を閉じる」というアクションに変更された点が特徴。また主人公の名前一人称をプレイヤーが決定し、髪型や服装などの着せ替えができるようになったのも大きな変更点だ。
「ファミ通・電撃ゲームアワード2022」のホラーゲーム部門にて最優秀賞を受賞した。

『夜廻三』のあらすじ・ストーリー

呪い

不思議な森に迷い込んだユズ(上)と、そこで出会ったおねえさん(下)。

海辺の町に住む小学生、ユズ(デフォルト名)はひどい苛めを受けていた。トイレに入っていると扉を殴られ、廊下を歩くだけで笑われ、バケツの水をかけられる。ある夏の日、とうとう生きた芋虫を食べさせられたユズはふらふらと屋上へ出た。そして破れたフェンスの向こうへ出ると、夕暮れの空を見上げ、身を投げた。
気が付くと、ユズは雪に覆われた暗い森の中にいた。困惑しながら歩き出したユズだったが、森は得体の知れない何かの気配に満ちている。おばけに襲われて何も見えなくなってしまったユズがうずくまっていると、「どうしてここに」という女の子の声が聞こえ、鈴の音でユズを誘導してくれた。視力が回復したユズの前には、年上のおねえさんがいた。おねえさんはユズに「私を覚えていないの?」と尋ねる。初対面のはずのおねえさんにそんなことを言われたユズは混乱する。おねえさんはユズを森の出口へと案内しながら、「学校の屋上で空を見上げてしまったんだね」「君は呪われているんだ」と語った。夜明けまでに呪いを解かなければ、体の自由がきかなくなり、頭の中がぐちゃぐちゃになり、大切な思い出をすべてなくしてしまうのだという。怯えるユズに、おねえさんは「呪いを解くには私のことを思い出すんだ」と言い聞かせた。そして「待っているよ」と言い残して、森の奥へと戻っていく。
おねえさんに言われたとおりに目を閉じて森の出口へ歩くユズの耳に、「思い出せ」「鈴を返せ」という何者かの声が響いた。
気が付くと、ユズは町にある廃ビルの屋上にいた。迎えに来てくれた飼い猫のムギと一緒に家に帰ったユズは、呪いを解くために夜の町を歩き回って、なくしていた思い出を探すことになる。

思い出を探して

人気がなく、不気味なおばけでいっぱいの夜の町を、ユズは懐中電灯だけを頼りに歩き回る。思い出の品を見つけて過去を思い出すと、ユズは幼い頃にいつもおねえさんとふたりで遊んでいたことがわかった。そして1年前にも、ユズはおねえさんを目撃していたことがわかった。
1年前、ユズは友達と3人で夜の学校に肝試しに出かけた。友達に「絶対おいていかないでね」と言われたユズだったが、なぜか学校の中で飼い猫のムギに出くわす。慌ててムギを追いかけたユズは、そこで屋上から身を投げるおねえさんを見てしまう。大慌てで校舎から出たユズだったが、落ちていったはずのおねえさんはどこにもいない。そこに、怒り心頭の友達が追いかけてきた。ムギやおねえさんの姿を見ていない友達はユズの言うことを信じず、徹底的に糾弾する。すると、泣き出してしまったユズに寄り添うように鈴の音が響いた。友達は「(ユズは)呪われてるんだ!」と叫んで逃げていった。それ以来、ユズは学校で苛烈ないじめにあうようになった。
肝試しの後、家にいたユズの前に大きな目を持った人面鳥のおばけが現れる。そのとき、おねえさんの「呪いを解くカギはムギなんだ」「私は廃ビルの屋上にいるから、そこで会おう」という言葉が聞こえてくる。
忘れていたことを思い出したユズは、おねえさんに会うために廃ビルの屋上へ向かう。そこには呪いのせいで人面鳥になってしまったおねえさんがいた。ユズが人面鳥から逃げ惑いながら必死におねえさんに呼びかけると、おねえさんは人と鳥が混ざったような姿に変わった。すると、おねえさんは「君は思い出せなかったんだね」と言った。ユズが混乱していると、おねえさんは「今の君を私は救えない」「君が思い出すまで私はここで死につづけるの」「正しい記憶を思い出して」と言い残し、ユズの記憶の中の姿と同じように飛び降りてしまった。
途方に暮れたユズがビルを出ると、ムギが待っていた。ユズが話しかけるとムギは背中の毛を逆立ててうなり、逃げ出してしまう。ユズが後を追おうとすると、とつぜん体の自由がきかなくなり、血が流れ、髪が鳥の羽のように変化していった。それは屋上で見たおねえさんの姿とそっくりだった。
意識を失ったユズは、幼い頃におねえさんと過ごしたある日のことを思い出す。廃ビルで雨宿りをした後、ユズが「お母さんからもらったおもちゃの懐中電灯」の話をしている場面だ。もらってからずいぶん経っているため壊れそうになっているが、根気よくスイッチを押していると明かりがつくのだ。

本当の思い出

おばけになりかかったユズは、本当の思い出を探さなくてはいけなくなる。集めた思い出の品を見返していくうちに、ユズは1年前におねえさんと出会ったときのことを思い出した。
ムギを探して廃ビルに入ったユズは、屋上で写真を撮っているおねえさんに出会った。おねえさんはユズを知っていたが、ユズはおねえさんのことを覚えていない。だが、おねえさんは「君に会えてうれしい」と微笑んでくれた。おねえさんは、いなくなった母親を探してこの町にやってきたのだという。母親はこの町のどこかで「上から半透明の紐のようなものが伸びている空」の写真を撮っていた。おねえさんはその写真が撮られた場所を探して、廃ビルの屋上にいたのだ。
おねえさんはユズがムギを探していることを聞くと、1枚の写真を取り出した。そこには幼いユズとムギが写っていた。おねえさんのお母さんが撮ったものだというが、ユズは覚えていない。
ユズはおねえさんとふたりでジュースを飲みながら、おねえさんの話を聞いた。おねえさんのお母さんは、1年ほど前にとつぜんいなくなってしまったのだという。その話を聞いても、ユズは自分とムギの写真がいつ撮られたのかわからなかった。そんなユズに、おねえさんは霧がかかったような記憶を思い出すときのコツを教えてくれた。ユズが「これから友達と学校に肝試しにいく」と言うと、おねえさんは「自分をこっそり入れてほしい」と頼み込んでくる。写真が撮られたのが学校の屋上かどうか、確かめたいのだそうだ。ユズは友達に隠れておねえさんを学校に入れることを約束する。
夜、ユズは友達と学校に侵入すると、こっそりと裏門を開けておねえさんを敷地に入れた。おねえさんは「怖いと声がでなくなっちゃう」と言うユズに、「勇気が出るおまじない」を教えてくれる。手の中に見えない小さな鈴があることを想像して、それを鳴らすのだ。自分にしか聴こえないその音を聞くことで、勇気を出せるという。ユズはおねえさんと別れて、友達と学校へ入っていった。
ユズが学校に入ると、なぜかそこにムギがいる。ユズが慌てて後を追うと、屋上の鍵が開いており、壊れたフェンスの向こうにおねえさんが立っていた。ユズがびっくりしていると、おねえさんは「ある場所」に行くための手順を始める。屋上のふちに立って、空を見上げて「それ」を見る。それから身を投げるのだ。ユズは大慌てでおねえさんを追って校舎を出たが、どこにもおねえさんが見つからない。混乱していると、「ユズが約束を破って肝試しを投げ出した」と憤慨した友達が追いかけてくる。友達はユズを厳しく責めたて、ユズは泣き出してしまった。「ユズが呪われた」と言って友達が立ち去った後、おねえさんが現れた。安心したユズだったが、とつぜんおねえさんが顔を覆って苦しみだす。ユズはおねえさんに言われるがまま、おねえさんが落とした鈴をひろって鳴らした。すると、おねえさんは落ち着きを取り戻す。
おねえさんによると、おねえさんのお母さんの写真に写っていたものは学校の屋上にしか現れない。それを肉眼で見てからある場所に行った者は呪われてしまうが、おねえさんが見つけた鈴の音で呪いの症状を抑えることができるという。呪いを解くには、ふたつの鈴を神様に返す必要がある。1つは今おねえさんが持っており、もう1つはこの町のどこかにある。朝までに2つをそろえなくてはならない。ユズはおねえさんを手伝って鈴を探そうとしたが、おねえさんは「もう遅いから帰った方がいい」と言って、ユズを家まで送った。
その日の真夜中、ユズの家のインターホンが鳴らされた。ムギは扉にむかってしきりにうなっている。ユズが玄関へ行くと、鳥のような姿に変貌したおねえさんが駆け込んでくる。呪いのせいで鳥のおばけになりかけているのだ。おねえさんは「鈴のかたわれはムギの首輪にもあるはずなんだ」「ムギは今どこにいる?」とユズに尋ねる。ユズは意味が分からず、すぐそばにいるムギを見た。おねえさんは「ごめん。本当のことを思い出してほしいんだ」「私はもう鈴のありかを思い出せない」と言って、ユズとムギが写った写真を渡した。そして「よく見て思い出して」「鈴を見つけて廃ビルの屋上に持ってきてほしい」とユズに言い残して立ち去った。

夜明け

エンディングの後、あるイベントを起こすことでユズ(右)はおねえちゃん(左)にお礼を言うことができる。

1年前のできごとを思い出したユズのかたわらには、いつものようにムギがいる。部屋の壁にはおねえさんからもらったユズとムギの写真が飾ってある。おねえさんとの約束を守るため、ユズは本当のことを思い出さなくてはならない。決心したユズの前から、ムギが煙のように消えていった。
ユズが「おねえちゃん」とよく遊んでいた幼い頃、ムギが死んだ。ユズは泣きじゃくりながらおねえちゃんに連れられて、神社の奥の空き地に向かった。ムギのお墓はおねえちゃんが作った。しかしユズは、どうしてもムギの死を受け入れられなかった。そしてムギが死んだことと、ムギが死んだときにそばにいたおねえちゃんのことを忘れてしまったのだ。
ユズが神社の空き地に向かうと、記憶のままのムギのお墓があった。ユズがお墓を掘り返すと、くちかけた首輪についた鈴があった。ユズはムギを丁寧に埋め直し、鈴を持って廃ビルの屋上に向かった。屋上には鳥のおばけになったおねえちゃんがいて、「あの森で待ってる」と言ってユズに2つ目の鈴を託した。
学校に向かったユズは屋上に出て、おねえちゃんがやっていたのと同じように空を見上げ、身を投げた。すると、おねえちゃんと再会した不思議な森に転移した。そこにはおねえちゃんが待っていた。
ユズはおねえちゃんとふたりで危険な森を進み、とうとう神様に鈴を返した。気が付くと、ユズは廃ビルの屋上で、ひとりで朝日を見上げていた。おねえちゃんの姿はどこにもなかった。

小学校の教室で、ユズはいじめっこに虫を食べさせられそうになっていた。しかしユズはおねえちゃんに教わったように鈴を鳴らして勇気を出し、いじめを拒絶して教室の外へ向かうのだった。

『夜廻三』のゲームシステム

キャラクターメイク

主人公の見た目を選ぶ画面。

ゲーム開始と同時に、プレイヤーは主人公の名前と一人称、髪型、服装を決定する。主人公のデフォルト名は「ユズ」だ。
集めたアイテムによっては髪飾りやバッグなどの装飾が増える。ゲーム開始以降は、主人公の自室にあるクローゼットで着せ替えができる。

アクション

歩く・走る

通常のスティック操作で主人公が歩く。Rボタンを押したままスティック操作で走ることができるが、スタミナがなくなると走れなくなる。

スタミナ

主人公にはスタミナが存在する。走ると消費され、なくなると走れなくなる。
おばけに追われている状況で走ると急速にスタミナを消費する。

ひろう

オブジェクトに対してAボタン(〇ボタン)でひろうことができる。10円玉などの消費アイテム、コレクションアイテムはひろって取得する。

shuichi
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@shuichi

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