零〜濡鴉ノ巫女〜(Fatal Frame V)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『零~濡鴉ノ巫女~』は任天堂発売の和風ホラーゲーム『零』シリーズの第6作目(通算9作目)である。キャッチコピーは「死の山、幽婚、神隠し すべては水でつながっている。」。不来方夕莉、雛咲深羽、放生蓮の3名が操作キャラクター。日上山という水をご神体として崇める霊山が舞台。夕莉は消えた恩人や依頼人を、深紅は母を、蓮は死者を写した弔写真を追い、それぞれの事情から怨霊が徘徊する日上山へ踏み込んで怨霊との戦闘や探索をくり広げる。映画さながらの美麗グラフィックと陰鬱な雰囲気がファンを集めている。

九ノ雫 柩籠(操作キャラクター:雛咲深羽)

深羽にとって夕莉は救出してくれた恩人であり、行方不明になった彼女を放っておくことはできない。母の捜索も譲れなかった。射影機を手に日上山へ急いだ深羽は幽ノ宮の前で夕莉を発見、追いかける。
夕莉を追跡して忌谷へ行った深羽は、深紅の残影を射影機で捉える。さらに進むと以前夕莉を襲った黒装束の老婆に襲撃され、これを撃破すると文献を入手。それを読むと巫女が入る箱には二つあり、匪には四肢を砕いた巫女を入れ、その苦痛で柱としての力を獲得させる。匪より大きい柩籠にはより強い柱を入れるのだが、これは幽婚したマレビトと共に沈める為であった。
彼岸湖に着いた深羽は沖へ分け入る夕莉を発見、慌てて連れ戻しに行く。彼女の肩を掴んだ瞬間影見が発動、夕莉が密花に自殺を止められた光景が甦る。学生時代の夕莉は真っ赤な残照に染まる断崖に立ち、そこから身を投げようとしたところを密花に抱き締められたのだ。

密花はかつて同じような状況で捜索対象の少女・成海あかりに死なれていた。故に絶望のどん底にいる夕莉をどうしても救いたかったのだ。心ここにあらずの夕莉を後ろから抱き締めた深羽は、「ダメよ 許さない」と当時の密花とまるで同じ言葉で説得する。

過去と現在が呼応して正気を取り戻した夕莉に安堵する深羽だが、そこへ大柱として沈められた巫女・逢世が現れて戦闘に突入。射影機が利かないのでまた逃げる羽目になるが、帰りのケーブルカーの中で夕莉と対話した深羽は、互いに影見の力を有し、この世にあらざる現象を見聞きする孤独を分かち合い距離を縮める。

十ノ雫 幽婚(操作キャラクター:放生蓮)

一方蓮は累を追い、単身日上山へ向かった。もし自分が見た夢が本当なら累は霧深いマヨイガに連れ去られたはずだ。
マヨイガへの経路を辿り形代神社へ行った蓮は、白菊の手記を入手する。それによると彼女は7歳になる前に柱として沈められたらしい。白菊はアルビノ特有の虚弱体質故か、元々長くは生きられないと予言されていた。そんな自分が永久花となって生きられるとしても、それは永遠の孤独と同じではなかろうかと幼心に怯える言葉が蓮の心に焼き付く。胎内洞窟を抜けてマヨイガに到着した蓮は渡会の手記を発見。過去に日上山で大災害が起きて山を流れる水が穢れ、黒い水に変化し、それが黒い霧と化して全体を包み、霧を通した陽の光は夕暮れのように赤く濁ったと書かれていた。霧の中では現世と幽世の境が曖昧になり全てが混じりあうそうだ。

三階に続く梯子の部屋を開けると黒い箱が鎮座している。注意深く箱を開けると、中に朦朧とした累がいた。早速救いあげようとする蓮だが、反対に引きずり込まれる。箱がしまって暗闇に覆われると同時に、蓮は見知らぬ家に移動していた。

目覚めた和室で蓮は友人・榊の手帳を発見。そこには蓮に電話をかけたこと、あの時蓮が止めていたら自分は今頃ここにいなかったこと、もうすぐ式が終わって自分が終わると記されていた。別室を探索した蓮は射影機の生みの親・麻生邦彦の手記を読む。それによると麻生は西洋から伝来した死後写真に魅了されたのがきっかけで、和製の死後写真でもある弔写真を撮り始めた。彼は写真に見えないもの、即ち霊や魂を写し取る行為に執着し、幽世と繋がるカメラ作りや撮影にのめりこんだ。麻生は各地を探訪し亡骸を写真に収め続け、その魂を永久に現世に留めたと遺族に感謝された。完全な弔写真を求める麻生はそれでも飽き足らず、日上山に訪れたのだった。

別の文献には幽婚の詳細な作法が記されている。幽婚の婿は山の外より迎えられる。彼は永久花の姿を描いた絵馬から嫁を選び、意中の相手を告げる。仲人となる結女(むすびめ)がおり、この人物が婿が指名した永久花を手引きし、幽婚の間で二人をめあわせる。永久花になった巫女は、己と共に終わってくれる殿方を待ち続けるのだ。
榊は弔写真の花嫁に一目惚れした。美しいと思った時に契りは成立する。彼は幽婚の相手に選ばれたのかと推理した蓮は、いなくなった友人の姿を捜す。

廊下に出ると向こうから謎の老婆がしずしずと歩いてくる。彼女の正体は幽婚の儀を取り仕切る結女だった。老婆は蓮に相手は決まったかと問い、花嫁の控えの間に案内する。

蓮がそこで見たのは綺麗な化粧を施され、花嫁の白無垢を纏った累だった。驚いて近付く蓮の眼前で累は漆黒の女へ変わり、気付くと累を抱き締めたまま渡会邸へ戻っていた。わけがわからぬままとりあえず脱出することにすると、一階で榊の霊に襲われる。榊は蓮が結婚を止めてくれなかったことを逆恨みしていた。彼は逢世に選ばれず、幽婚に失敗していたのだ。
なんとか渡会邸を脱出した二人はケーブルカーで下山するが、少年だとばかり思っていた累の美しすぎる花嫁姿は、女性が苦手な蓮の心をかき乱したのだった。

十一ノ雫 夜泉子(操作キャラクター:雛咲深羽)

日上山から帰還後、深羽は「くろさわ」に身を寄せていた。山中で深紅の残影を目撃した深羽は、今度こそなんとしても母親を見つけだす為に夕莉の射影機を借りる事にする。射影機がおかれた机上には深紅の依頼書があり、密花が捜索を引き受けていた事実が判明。同時に読んだ夕莉の日記には、死んだ人間の姿が見え声が聞こえる苦悩が切々と綴られていた。深羽は寝ている夕莉を起こさないようにそっと「くろさわ」を出る。
ケーブルカーで山を上り忌谷の無縁塚に至った深羽は、さらに奥へ行く深紅を追うが、そうすると以前来た時は塞がっていた道が何故か通れるようになっている。道の先には結ノ家という幽婚の祭場が存在した。蓮と累が渡会邸から移動したのがこの家だった。家の前で拾った深紅のメモで、失踪当時の状況がわかる。そこには深羽を授かった事、しかし自分の余命は短い事、もうすぐ終わってしまうなら幼い娘をおいてでも最愛の兄に会いたい願望が記されていた。結ノ家には榊の霊がおり、出してくれとしきりに深羽に訴える。続けて拾った深紅のメモには、幼い頃から霊が見えた自分の孤独を唯一の肉親である兄だけがわかってくれたこと、そんな兄への禁断の想いが綴られ、最期の瞬間に誰と終わるかだけは自分のものにさせてほしいと懇願していた。深紅は兄への気持ちを断ち切れず、死者と結ばれる幽婚をしに行ったのだ。
控えの間で入手した白い手記は結女の日記らしい。それによると、逢世の契りはいずれもマレビトの心変わりで失敗してきたそうだ。どんなに逢世に心惹かれていても、彼女と同じ箱に入り、永遠の苦痛に耐えるのは恐ろしい。一方で幽婚の失敗は世が麻生に心を残しているからともあり、逢世と麻生が相思相愛だった事実が汲めた。

老婆を追って進んだ深羽は遂に深紅が眠る箱を発見する。十数年越しに母に触れた深羽はその記憶を読み、彼女が唯一の理解者だった兄と幽婚によって結ばれようと日上山に足を運んだ経緯がわかった。深紅は幼い娘を捨て兄を選んだのだ。
実は深羽は深紅と兄の間にできた子供だった。死霊と接触する事でごくまれにその子を授かる事がある。深紅は写真家の助手を務めていた時期(『刺青の聲』本編)に兄と感応して孕み、深羽を産んだ。この時の子を夜見子というが、夜見子を産んだ女性は寿命を大幅に削られる為に長生きできないのが常だった。

箱に閉じ込められていた深紅は、失踪当時の若く美しい姿のままだった。自分勝手な母を許せない気持ちはあれど、こみ上げる再会の喜びに泣きじゃくって抱擁する深羽。うっすらと目を開けた深紅は一言、娘に許してと呟く。

深羽は母を連れて下山し、「くろさわ」で与えられた自分のベッドで共に安らかな眠りに落ちるのだった。

十二ノ雫 彼岸舟(操作キャラクター:不来方夕莉)

目覚めた夕莉が密花の部屋へ行くと日記が落ちていた。それには夕莉にも決して話せない秘密がある事、即ち力及ばず死なせてしまったあかりへの後悔が綴られていた。同時に入手した資料には、日上山に伝わる「水上ノ宮」という場所の伝説が書かれている。そこは全ての源であり、陽の神が眠りに就く聖域。他にも人々の想いや魂をそこへ沈めることで苦しみから解放されると言われている。場所は特定されてないが、水上ノ宮というからには日上山の水源、彼岸湖の奥にあるはずだ。
密花もまた心の奥底に葛藤を抱え、日上山に呼ばれたのではないかと推理した夕莉は捜索の再開を決意。「くろさわ」から出ようとしたところで深羽と鉢合わせ、「あなたは帰ってこない」と意味深に告げられる。夕莉と過ごした短い時間で自分と同じ苦悩を抱えていると理解した深羽は、また日上山に魅入られてしまうと警告していた。かと言って恩人の密花を放ってはおけない夕莉は、深羽に留守を頼んで幽ノ宮へ赴く。
幽ノ宮で手に入れた資料には、水上に向かうには二人の巫女を倒して許しを得なければいけないとあった。船着き場にて夕莉は流水紋の手記を入手、どうやら生前の黒澤逢世が遺したものらしく彼女の薄幸な生い立ちが綴られていた。災害で家族を亡くし天涯孤独となった逢世は、その時より霊と交信する力に目覚め、大柱に選ばれた。しかし巫女の末路を知る周囲は泣くばかりで、逢世が慰め役に回らねばならなかった。大柱に抜擢された逢世は黒澤の姓を授かったが、密花との関係はわからない。
怨霊を撃破し目的の鍵を入手した夕莉は引き返す途中で文献を入手。そこには看取りの説明があり、看取りとは本来人の想いと感情を引き受ける力で、力の弱い巫女は直接触れて初めて、力の強い巫女はただ見るだけで対象の想いと感情を取り入れるとあった。看取りは幽世の力であり、山の水に濡れ、水に心を融かして一部となることでより霊力が強化される。看取った想いが強いほど巫女も強くなるが、内に溜め込んだ最期の想いが溢れだしたら世界も滅ぶ。

全ての鍵を回収すると水門が開き、その先に巨大な鳥居が見える。幽ノ宮の水門は水上ノ宮の鳥居への近道だったのだ。
途中で拾った文献には、過去の災厄が記されている。それによると日上山では昔夜泉が溢れだし、三人の強い柱が身を投げ入れて黒キ澤を鎮めた。その三人の柱はやがて夜泉へと融け流れ、今でも幽ノ宮に祭られている。三人の柱が潰えた後、新たに五人の柩籠の柱で結界を張った。この結界が保たれているうちは夜泉は日上山に留められる。結界が破れたら夜泉が際限なく溢れ出し世界が滅ぶ。
夕莉は船に乗って水路を漕ぎだし鳥居をめざす。霧深い水上ノ宮の本殿に着くと箱があり、密花が黒い水に浸かっていた。

密花を助け出そうとした夕莉は、彼女に触れた瞬間そのトラウマを垣間見る。それは密花が成海あかりを助けられず、夕焼けの崖から投身するのを目撃してしまった瞬間だった。
だが依頼者であるあかりの母親は密花を責めず、死んでいるかどうかもわからないよりは悪い事実でも知る事ができてよかったと礼を述べる。密花は許されてしまったのが辛かった。あかりを見殺しにした自身を許せず、人知れず罪悪感に苦しみ続けていた密花は、あかりが自殺したのと同じ断崖で、同じように自殺を企てていた夕莉に故人の面影を重ねてしまったのだ。
夕莉と密花が出会った断崖にたたずむ密花は、こっちに来てはいけない、自分は柱になったのだと夕莉を追い返そうとする。

自分がここに残れば夕莉は助かると判断しての選択だったが、夕莉は全てを一人で抱え込もうとする密花を後ろから抱き締め、「ダメよ 許さない」と囁く。
夕莉にとっても密花は決して譲れない大事な人だった。
崖から身を投げようとした夕莉を止めた密花は辛かったら一緒に死んであげる、だから自分といる間だけでも思いとどまってと約束していた。夕莉の決死の説得でそれを思い出した密花は漸く彼女の手を取るが、その袖口から大量の黒髪が這い出して逢世に取って代わる。なんとか逢世を撃退した二人は日上山をおりる。

さんざんな目に遭いながらどうにか「くろさわ」に帰り着いた密花に夕莉はコーヒーを出す。しばらく優しい時間が流れ、夕莉は初めてここに来た日の出来事を回想する。密花に保護された夕莉は他に行くあてもなく、「もうしばらく…ここにいてもいいですか」と縋り、密花はそれを快諾したのだ。互いへの信頼を再確認し、夕莉と密花は束の間の休息に浸るのだった。

十三ノ雫 禍津陽(操作キャラクター:放生蓮)

累、深羽、深紅、密花、夕莉の四人は深い眠りに落ちていた。それは霊との戦闘や夜の山歩きによる消耗もあったが、日上山の呪いの影響も無視できない。唯一の男性であり、その為か影響を受けにくい蓮は山で今起きている事を正確に把握する為、監視カメラで彼女達の様子を見張り続ける。

すると窓の外が夕焼けに呑まれ、世界が赤一色に染まっていくではないか。まだ真夜中のはずなのにと驚愕した蓮が振り返ると、店の入り口から怨霊が入ってくる。どうやら深羽と深紅の部屋を目指しているらしい。途中密花の部屋にも怨霊が入ろうとしていたので撃破し日記を読む。密花はあかりを追い詰め最後のきっかけを作ってしまった自分を責め、夕莉も同じように失ってしまうのではないかと怯えていた。
深羽と深紅の部屋に行ったが怨霊の姿はなく、安堵して事務所に戻った蓮だが、続々と殺到する怨霊との死闘を余儀なくされる。
怨霊を倒すのに躍起になっていた蓮は累の手帳を発見、目を通す。そこには蓮がもう逃げられないこと、彼がマレビトとして見込まれたこと、誰かを選ばなければいけないことが書かれている。遂には友人だった榊の怨霊まで襲ってきて、蓮の精神状態はどんどん追い詰められていく。榊を倒した蓮が近くを撮影すると一冊の本が浮かび上がる。そこでは黒キ澤が幽世、即ち死後の世界との境界である事実が明かされていた。
「くろさわ」の内部はどんどん異界化していくようだ。再び監視カメラをチェックした蓮は、忘我状態の過去の自分が徘徊し、倉庫へと入っていくのを目撃する。過去の自分の行動をなぞるように倉庫の扉を開けると、結ノ家に繋がっていた。

結ノ家の襖を開けると、そこには白無垢に身を包んだ美しい花嫁が一堂に会していた。
蓮はこの中から誰か一人を選ばなければいけないのだ。

終ノ雫 夜泉ノ花嫁(操作キャラクター:不来方夕莉・放生蓮・雛咲深羽)

真夜中にもかかわらず店を照らした夕焼けは禍津陽(まがつひ)と言い、日上山の終焉、そして災厄の到来を告げる予兆だった。
目が覚めた夕莉は、自殺を企てた時に見た夕日の美しさを回想する。密花を無事助け出したものの、夕莉の心は既に死に親しんで日上山に囚われてしまっていた。家の中を探索すると夕莉以外は全員眠っているようだ。ソファーに横たわる累に触れた夕莉は、彼改め彼女が悪夢にうなされる蓮を案じ、秘めた恋情を口にできなかった事を知る。
最後の永久花・黒澤逢世に呼ばれた夕莉は、彼女がいる水上ノ宮の奥を目指す。途中で拾った手記には逢世が巫女の務めを全うしようとしたこと、しかし最期の想いを引き受け続けんと酷使した心が壊れて溢れてしまった苦悩が綴られている。
幽ノ宮に入ると蓮に視点が変わる。

蓮は夢を見ていた。夢の中で彼は麻生邦彦になりきっていたが、その風貌は蓮と生まれ変わりの如く酷似していた。生きている人の姿を写し取る機械を持っていた麻生邦彦は、結女の老婆に招かれ、逢世の弔写真を撮りに訪れる。
共に過ごしたのはほんの僅かな時間だったが、麻生は逢世の楚々とした振る舞いや巫女の使命を務め上げようとする高潔さに惚れ、逢世もまた麻生の実直な人柄に恋心を抱く。二人は恋に落ちたが、逢世が濡鴉ノ巫女であり、次の大柱に定められている以上叶うことない悲恋だった。

時はさらに遡り麻生の幼少時代に飛ぶ。形代神社の境内を白菊に手を引かれ走る麻生。白菊に隠し部屋に案内された彼はギュッと腕をとられて、明日は祭りだと聞かされる。蓮が自身の記憶と混同していた白菊の最期の光景は、麻生が体験した出来事だったのだ。

夢から覚めた蓮は、まだ朦朧としている累のうわ言で書斎へ導かれる。書斎を漁っていると、実家の蔵で発見した箱から白髪の束を入手する。この箱には元々複眼射影機が入っており、蓮は幼い頃この白髪の束に触れた日からあたかも麻生邦彦の後悔を引き継ぐように例の悪夢にうなされるようになった。大人になった麻生が日上山を訪れたのは、近在で遊んだ白菊の消息を求めたからかもしれない。しかし彼は中腹の形代神社を守る白菊に気付かず、別人に恋してしまった。
白髪の束を寄香に形代神社に向かった蓮は白菊の手記を読み、彼女が蓮と麻生を勘違いしていること、幼い頃に出会った初恋の相手をまだ待ち続けていることを知る。白菊はアルビノであり、その容姿から敬遠されていたが、唯一麻生とだけは友達になれた。白菊の出身である陽炎山は日上山の近在に位置し、日上山信仰に似た風習が伝わっていたが、白菊は結界を強める特別な柱として七歳を迎える前に箱に沈められたのだ。それでも麻生を忘れられずにいた白菊は結ノ家に行き、今度こそ初恋の男の子と幽婚を果たそうとしている。
蓮は麻生の残影を追って結ノ家に赴く。

気付くと深羽は船に揺られていた。周囲には霧が立ち込めている、どうやら彼岸湖らしい。困惑する深羽は、すれ違う舟に座す母親を見るが、彼女は既に白無垢に着替え婚礼の場に向かっていた。
暗い部屋で目覚めた深羽は隣に寝ているはずの母親がいないのに慌て、残影を追って彼岸湖へ。

結ノ家に辿り着いた蓮は、結女の老婆に麻生本人と誤解される。分家の子孫であるせいか、それとも生まれ変わりなのか、蓮と麻生は非常によく似ているらしい。
家の中で白菊と逢世、両者の手記を拾った蓮は、二人とも麻生を慕っており彼と共に終わりたいと強く望んでいるのを知る。蓮の手の中には逢世の写真と白菊の遺髪があり、どちらを選ぶか決断するしかない。

放生蓮篇エンド

死後ノ恋

終ノ雫の雛咲深羽を操作する大禍境以降、各キャラの行動によりエンディングの分岐が発生。本作では難易度によるエンディングの違いはない。
放生蓮篇のエンドは白菊2種、逢世2種の計4種。婚礼の間の襖を開ける直前に逢世の写真と白菊の髪束、どちらの寄香を選択するか問われ、こちらは逢世の写真を選んだあとに「一緒に終わってくれますか?」と聞いてくる彼女を抱擁した場合のエンド。

麻生邦彦の無念と一体化した蓮は、醜い怨霊になりはてた逢世を抱き締めて「好きだ」と伝える。共に終わる為にここに来たと続けられ、逢世の未練はみるみる浄化されていく。

麻生と出会った頃のままの美しい容貌を取り戻した逢世は、そんな事は心を読めばわかるが言って欲しかったと呟き、これで思い残すことはないと最愛の人の腕の中で薄れて消えていく。

孤独ノ箱

婚礼の間の襖を開ける直前に逢世の写真と白菊の髪束、どちらの寄香を選択するか問われ、こちらは逢世の写真を選んだあと「一緒に終わってくれますか?」と聞いてくる彼女を射影機で攻撃した場合のエンド。
写真を撮られた逢世は麻生に拒絶されたと思い、自分と別れる為にここに来たのですねと諦念に至る。逢世は大柱として引き受ける苦痛は覚悟したが、麻生と恋に落ち、彼が自分の心の一部を持って行ってしまった苦しみを吐露する。
永遠に閉じる前に美しい花嫁として覚えていてほしいと乞われ、当時の姿に戻った彼女を写真に撮ると、麻生への想いを閉じた逢世は薄れて消えてしまった。

箱ノ中

部屋に入る前に寄香として遺髪を選択し、白菊と戦闘中に箱の近くで無抵抗でいると訪れるエンド。
白菊は幼い日の約束を信じて麻生を待ち続けていた。遺髪の寄香を頼りに訪れた彼が、自分の伴侶となってくれるのだけが彼女の支えとなった。しかしいざその瞬間が訪れた白菊の脳裏に、幸せだった日々の思い出が過る。特異な容姿と体質に加え、7歳で人柱となる運命を背負った白菊は誰とも友達になれなかったが、麻生だけが遊び相手になってくれた。白菊は麻生と一体化した蓮を箱へ引きずりこみ、永遠にこの中で生き続けようとするが、それは彼にも永遠の孤独を背負わせることを意味していた。
自分と同じ苦しみを大事な人に味わせるなんてできないと土壇場で翻意した白菊は、力一杯蓮を突き飛ばし、「お前はゆっくり死ね」と拒絶。それは長生きしてほしい願いの裏返しに他ならない。
我に返った蓮は、無人の廃墟と化した形代神社に一人取り残されるのだった。

花冷え

部屋に入る前に寄香として遺髪を選択し、白菊との戦闘に勝利すると訪れるエンド。
麻生と一体化した蓮に射影機で攻撃された白菊は傷心のまま、これでやっと終われると呟く。麻生との幽婚は果たせなかったが、彼が来てくれただけで彼女の孤独は報われたのだ。
もう一度会えて嬉しかった、私を忘れてと告げて箱の中へ消えていく白菊。幼い日々を回想する彼女の脳裏に桜散る里の風景と、自分に向かって満面の笑顔で手を振る麻生が像を結ぶ。最期に綺麗なものを見て終わるのが彼女の望みだった。気付けば蓮は無人の部屋に立ち尽くし、白菊が消えた箱はどこにもなかった。

雛咲深羽篇エンド

夜泉子

雛咲深羽篇のエンドは2種。こちらは彼岸湖で深紅の写真を撮らずタイムアウトすると訪れるエンド。
深羽は黒キ澤に踏み入っていく深紅を引き止める。そこへ禍津陽が訪れ湖面が真っ赤に染まる。周囲には日上山で死んだ大量の死霊が湧き出し、夜泉へ帰ろうとしていた。
深紅に付き添い歩きながら深羽は自分の事をどう思っていたかずっと気になっていたと本心を明かすが、もういいと母親の身勝手さを許す。
しかしいざ深紅が夜泉へ渡ろうとする時、母恋しさから「行かないで」と絶叫する深羽。深紅は娘の手を優しく握り締めてどこにも行かないと諭すが、次の瞬間彼女の姿は残照に飲み込まれるように消滅していた。深羽が救出した時には既に母はこの世の人ではなかったのだ。一人湖上に残された深羽は幼い子供のように慟哭するのだった。

chika7777
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@chika7777

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