死もまた死するものなれば(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『死もまた死するものなれば』とは、2018年11月よりドラゴンコミックスエイジにて連載した全4巻のクトゥルフ神話をモチーフにした漫画作品。『がっこうぐらし!』原作の海法紀光と『Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ』の著者である桜井光によるストーリー、そして漫画家の狛句作画によるオリジナル作品。地球温暖化が進んで多くの都市が水没した近未来の日本を舞台にしたコズミックホラー。漫画の世界観でクトゥルフ神話TRPGを遊ぶ外伝が、公式からリプレイ動画で公開されている。

世界観

感染呪文

宇宙からの色を捕らえるために呪文を唱える小海(さうみ、右上)。

感染呪文とは、神話存在等の強い影響力によって習得する呪文のこと。通常の呪文は魔導書などの狂気に満ちた文章から長時間の解読を通して入手するが、神話存在の影響力が増した世界においては精神汚染の一つとして呪文を習得する。感染呪文にはいくつかの制限がある代わりにほとんど即時に効果を発揮する。具体的には、神話存在の体の一部や、事件現場、犠牲者の遺体、古代の工芸品などが媒介となる。

狂信者

遺体が目の前にあっても平然と話し続ける台田独歩(だいだ どっぽ、右上)。

神話的な存在をあがめる狂信者、カルティストが一定数存在する。彼らは人の善悪の規範から外れて邪神を信奉し、その影響力を広げようとする。多くの狂信者はカルト組織全体の目的や実態を知らず、教祖のカリスマ性に惹かれて破壊衝動を発散するだけの人間だ。あるいは、不老不死や超能力、組織の持つ権力など、現世的な利益を目的とする。カルトの教祖や幹部クラスの狂信者になると、超常的な力を身に着けて長い年月を生きている者もいる。

探索者

神話的な事件に関わり始めた一望寺晴(いちぼうじ はるか、右下)を探索者と呼ぶ小海(さうみ、上段)。

探索者とは、怪異の存在を知った上で、怪異を探り戦う者のこと。多くの人は世界に神話的な存在がいるということを知らないが、知ってしまって対処しようとする探索者と呼ばれる人々によって人々や日常生活は守られている。しかし一方で、探索者として長く活動している内に深淵の知識に魅了されて道を踏み外してしまう者も多い。探索者は過酷な職業、あるいは生き方であり、無事に引退できることは珍しい。

怪神

一望寺晴(いちぼうじ はるか、画像手前)を追い詰めつつも、人の姿を失いつつある杉鎬京(すぎ こうけい、画像奥)。

怪神とは、神話的な存在を食らってその能力や権能を取り込んでしまった超人をさす。人間が邪神を食べるというのは、元々は邪神を封印するための儀式だった。しかし、取り込んだ力があまりにも強大であるため、元の人間の人格や精神は保てず、別の目的で動くようになってしまう場合が多い。怪神は普段人間としての姿を持つが、好きな時に神話的な存在としてのステータスを使用することができる。その際に姿を変えることも、そのままでいることも可能。ただし力を使えば使うほどに精神は元の人間から逸脱して行ってしまう。

『死もまた死するものなれば』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

久々湊錠「探偵は依頼人の味方なんだ」

死後も一望寺晴(いちぼうじ はるか、右下)を守り続ける久々湊錠(くぐみ じょう、上段左と下段中央)。

一望寺晴に「探偵は誰の味方なのか」と問われた久々湊錠は「探偵は依頼人の味方だ」と答える。この台詞は作中で何度も登場する重要な台詞になっている。はじめは久々湊錠の信条を表した言葉だったが、その後は久々湊錠に助けられて憧れの気持ちを抱いた晴が自分の信条としても使うようになる。久々湊錠はあくまで小海やるぅのことを助けて欲しいという依頼をした晴を守り、助ける場面でこの台詞を使っている。一方で晴は、探偵助手として探偵である小海やるぅを助ける時や、コミックス最後で怪奇事件に巻き込まれた少年を助けるためにこの台詞を使っている。

見てはいけない

直視すると気が狂ってしまうというくねくねが徘徊する街から逃げ出した一望寺晴(いちぼうじ はるか、下段中央)と小海(さうみ下段左)、るぅ(下段右から3番目)。

物語全体のテーマとして、「目を逸らす」のか「まっすぐに見つめる」のか、ということは重要な選択として描かれている。その選択が登場する最初の事件が、くねくねという怪物に関するもの。くねくねは都市伝説としても有名で、直視していると気が狂ってしまうというエピソードで知られている。ここでは非現実的なものを見るかどうかということを問われているが、物語としては非現実的なものや恐ろしいものに向き合うかどうかという、内面的な意味も含まれている。

『死もまた死するものなれば』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

クトゥルフ神話TRPGを『死もまた死するものなれば』の世界観で遊べるルールを公開

コミックス巻末に収録されている怪物などのゲーム的なデータ。

クトゥルフ神話TRPGとは、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトという作家が中心になって作り上げた「クトゥルフ神話」という創作神話の世界を冒険するテーブルトークゲームの一種。パソコンやゲーム機を使うのではなく、進行役とプレイヤーの役割に分かれて、会話とサイコロを使って物語を進めていくアナログゲームであり、プレイヤーは探索者と呼ばれるキャラクターをロールプレイする。『死もまた死するものなれば』で出てくる独自の世界観は、クトゥルフ神話TRPGでも遊べるようにコミックスの巻末にゲームに応用できるデータが付属している。連載コラムでは検閲版として多くが黒塗りとなっているが、コミックスでは無削除版として全データを掲載。実際に遊ぶためには、漫画のデータだけではなく角川書店から出版されているクトゥルフ神話TRPGそのものの基本ルールブックが必要。

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