アリー/ スター誕生(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『アリー/ スター誕生』とは、歌手に憧れる女性の成功と苦悩と愛を描いた、2018年公開のアメリカ映画。主演は、本作が初主演となるレディー・ガガ。監督は、俳優で本作でもジャックを演じるブラッドリー・クーパー。1937年の同名映画4度目のリメイク。劇中の音楽も高い評価を受け、サウンドトラックは全米1位を獲得。自信のないシンガーが才能を見出され、スターダムを駆け上がっていく。単なるシンデレラストーリーだけではなく、依存症や家族のあり方を含めた人の苦節や愛情という側面も深く描いた作品。

ステージで初めて歌うアリー

トレーラーでも登場し、評価の高い楽曲「shallow」の支えもあり、印象に残るシーン。生演奏で撮影され、臨場感もある。映画やドラマを様々な角度からランキング形式で紹介するYou Tubeチャンネル、Ms Mojoでは、本作で一番印象に残ったシーンとして、二人で初めて歌う「shallow」のシーンを挙げている。

「Just wanted to take another look at you」「君をもう1度見ておきたかった」

ジャックがその場を去ろうとするアリーを呼び止めるためにかけるセリフ。劇中に2度登場する。1度は二人が初めてあった日の別れ際、もう1度はジャックの自殺前、アリーが部屋から立ち去るとき。往年のスター誕生で繰り返し使われている。

「All you gotta do is to trust me」「僕を信頼してくれれば良いんだ」

歌うことに喜びがありながらも、初めて大観衆の前で歌う際に不安を抱えるアリーに、ジャックがかけた言葉。これは実際の撮影現場でも、映画初主演で慣れないガガにクーパーがかけた言葉でもある。

「Music is essentially 12 notes between any octave – 12 notes and the octave repeats, It’s the same story told over and over, forever. All any artist can offer this world is how they see those 12 notes. That’s it.」

「どの曲も12音の繰り返しだ。アーティストはその12音をどう見るか、それだけだ(ジャックは君の見方に惚れ込んでいた)。」

ボビー(サム・エリオット)が、ジャックの死後、自分を責めてしまうアリーに向かってかけたことば。やめることのできないヨーロッパツアーをキャンセルする、その余裕があるくらい売れてマネージャも喜んでいると嘘をついてしまったアリーにボビーは、ジャックの死は誰のせいでもなく、誰かのせいだとすればそれはジャック自身に他ならないと告げながら、このセリフを続けた。直接的なセリフはないものの、ボビーはジャックが言ったとされるこのセリフを引用することで、今は辛い気持ちばかり募るジャックへの想いも、12音と同様、どう見るかによって意味合いが全く変わってくる。ジャックはアリーの12音の見方を素晴らしいと好んでいたのだから、アリーのジャックへの想いも12音と同様、美しい音楽のように見ることもできるだろうということを暗に伝えようとしていたものと思われる。

ジャックの自殺シーン

直接描かれることはなかった、ジャックの自殺シーン。アリーに会うためにアリーのコンサート会場へ向かおうとするジャックだったが、ガレージで車を降り、おぼつかない足取りで歩き回ったのちに、自身のハットを棚に置き、画面は暗転する。この時、画面はジャックの胸から下、足元あたりを側面からアップで捉えており、ジャックの表情が見えない、独特で不穏な雰囲気となっている。最終的に最後に少しだけ現れるジャックが、その後のシーンの悲しみを際立たせる。

『アリー/ スター誕生』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

初監督クーパーの作品への意気込み

初監督、そして主演として本作の制作に挑戦することになったクーパーは、4年間他のプロジェクトから身を引き、制作の準備と役作りに専念。クーパーは歌手でないため、撮影の1年半前からボーカルレッスンをスタート。元々ガガが驚くほどの歌唱力をもっていたクーパーだが、アリーの初ステージシーンの撮影では、ガガが嘘のない演技でクーパーをミュージシャンとして見ていたため、自分は本物のミュージシャンになりきれたとインタビューで語っている。また、ジャックとボビーの兄弟の関係性に説得力を持たせるため、クーパーは兄役のサム・エリオットに似せた喋り方の訓練もコーチをつけて行ったという。サムが、クーパー演じるジャックの声を初めて聞いたときは、自分そっくりで驚いたそうである。

主演二人と主人公たちの人生が重なった、ある意味自伝的とも言える映画

アリーはなかなか芽が出ない歌手、ジャックは依存症で苦しむミュージシャンとして描かれているが、実際二人を演じているガガとクーパーも、主人公たちと似たような境遇を体験している。ガガはなかなか売れない中、ストリップクラブでダンサーを続けていた。そのときの体験が活きた、あの時の自分を昇華させる映画になった、と本人は語っている。さらには、自身が成功するたびに、恋人と破局していく苦しみを3度も味わっている。また、ジャックの追悼コンサートの撮影日の当日に、親友を癌で亡くし、そのいっときは歌えないとさえ思ったそうだが、歌うことが親友への弔いになると、撮影に臨んだという。またクーパーも、現在では酒を絶っているが、アルコール依存症に苦しんでいた時期があった。

レディー・ガガは最初女優志望だった

本作初主演となるレディー・ガガは、ポップミュージシャンとして有名だが、 最初は女優志望であり、また以前にも女優として映画やテレビに出演(アーサー・フォーゲル ショービズ界の帝王、マチェーテ・キルズ、ハンティング・グラウンドなど)していた。過去出演作は話題作りのためであるという見方もあり、実際主演で話題となったのは本作が初めて。ガガが銀幕の中でも熟練俳優と遜色なく演技ができたのは、女優志望の頃、ニューヨークの有名演劇学校リー・ストラスバーグで学んだ経験があったからだそう。

ガガがクーパーを主演に推薦した

癌関連のチャリティパーティーで初めて出会ったガガとクーパーは、東海岸出身でイタリア系という似たルーツを持つことからも直ぐに意気投合。そのパーティーでガガはラヴィアンローズを歌い、その姿を見てクーパーは彼女に主演のオファーをしたという。翌日クーパーはガガ宅にやってきた。一緒に食事をした後、彼女の家でリラックスしたクーパーはガガと一緒に歌を歌いたいと言い、クーパーが希望した『ミッド・ナイト・スペシャル』をガガがピアノで演奏し歌い始めたところ、ガガはクーパーの歌唱力に驚いてピアノ演奏をやめて彼の顔をまじまじ見てしまったという。
そこでガガは、素晴らしい声を持つクーパーが本作のジャックにふさわしいと確信したと語っている。

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