スーパーロボット大戦(任天堂携帯機シリーズ)のネタバレ解説・考察まとめ

スーパーロボットアニメ作品によるクロスオーバーシミュレーションRPG『スーパーロボット大戦』のシリーズの1つ。
任天堂が販売している携帯ゲーム機向けに制作されているためこのように呼ばれる。
若者向けのスパロボを目指し、シリーズとしては珍しい作品、新しい作品が多数参戦している。
2001年発売の『スーパーロボット大戦A』からシリーズが始動。2018年1月現在9作品がリリースされている。

21世紀のファーストガンダムと謳われ絶大なる支持を獲得した『機動戦士ガンダムSEED』。その重要キャラクターにミゲル・アイマンがいる。主人公キラ・ヤマトの駆るストライクガンダムの初陣を勤め、わずか2話で戦士するもドラマCDで主役を張るなど人気を得た彼だが、スーパーロボット大戦シリーズには殆ど出演していない。
その殆どの例外に当たるのが任天堂携帯機シリーズであった。機動戦士ガンダムSEEDが参戦したJでは敵中ボスとしてプレイヤーの前に何度も立ちふさがり、Wでは条件次第でプレイヤー部隊を助けるなどの活躍ぶりを見せる。
ミゲル・アイマンと同様の境遇のキャラに『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』のハイネ・ヴェステンフルスがいる。物語中盤で主人公、アスラン・ザラたちの仲間として登場し、複数回に渡って戦場をかけ、壮絶な最期を遂げたたキャラなのだが、スーパーロボット大戦シリーズでは戦闘せずにフェードアウトしてしまう。
彼もまた、任天堂携帯機シリーズで活躍した。Kでは生存フラグが存在し、戦況を斜に構えて俯瞰する姿が描かれ、説得で自軍に加わる。Lでは序盤から味方として登場し、死亡イベントもなく出番も多く、シリーズファンやキャラクターファンは歓喜したのであった。

この2キャラの登場や生存に関しては、任天堂携帯機シリーズ特有の事情が密接に絡んでる。両者ともに声優がT.M.Revolutionの西川貴教なのだ。形式的には両作で主題歌を担当したアーティストのゲスト出演なのだが、かなりの人気を獲得するとともに西川自身もアニメや作品のファンであるためキャラクターそのものが大事に育てられ、シリーズに欠かせない存在となった。
西川は『ガンダムSEED』シリーズが単独で取り上げられたゲームにも快く出演しているが、声優ではない売れっ子アーティスト故にスケジュールやギャランティの問題が発生しており、2018年1月現在他のゲームへの出演は主題歌を手掛けた1作のみにとどまっている。
当然スーパーロボット大戦シリーズもこの影響から西川のボイスを収録できず、戦闘ボイスが収録されていない任天堂携帯機シリーズ以外ではこの2キャラはなかなか活躍できなかったのである。
なお、任天堂携帯機シリーズにボイスが付いて以降は放映から年月が経ったこともあり、作品のストーリーが終了した後の参戦のみとなっていて、自然と両キャラともに登場する機会がなくなっている。
諸々の事情をわかっていてもなお、活躍が見たいのがファン心理というもの。彼らが登場し、更に活躍するシーンの印章が強いプレイヤーは非常に多い。

運命の翼

スーパーロボット大戦UXより。
知性体の考えを「読心」し、接触した対象と「同化現象」を起こす人類の天敵、フェストゥム。彼らへの対策の1つとして人型機動兵器モビルスーツが誕生した。しかし、程なくして始まった戦争により、モビルスーツは通常兵器として運用される事となってしまう。
戦争により家族を失い、エースパイロットとして活躍したシン・アスカは、竜宮島にて愛機デスティニーガンダムを駆りフェストゥムとの戦いに挑むが不覚を取り敗北。大破したデスティニーガンダムを修理する間、旧型機となったインパルスガンダムに乗り込んで人類の新たな脅威に対抗するプレイヤー部隊アルティメットクロスに合流する。フェストゥム対策に特化した兵器ファフナーのパイロット、真壁一騎はシンを先輩として尊敬していた。
アルティメットクロスが宇宙に上がっていた時、彼らの不在を狙った人類軍が竜宮島を占拠する。地球軍の中でも急進派として警戒されていた人類軍の目的は、ファフナーの接収にあった。
故郷である竜宮島を取り返そうと逸る一騎に、どうすれば島を救えるかを皆で考えようと諭すシン。ただ無闇に突撃してしまえば、人類軍に一騎の家族や友人を攻撃する口実を与えてしまうからだ。
竜宮島をフェストゥムが襲う。人類軍の兵器の殆どはフェストゥムに対して刃が立たず、アルティメットクロスを頼る羽目になった。竜宮島に駆けつけ、戦闘態勢に入ったアルティメットクロスはフェストゥムに対し共同戦線を張る事となるが、フェストゥムは人類軍の防衛戦を突破し竜宮島へ侵攻する。フェストゥムを迎撃するために無理をしたシンのインパルスガンダムは脚部とスラスターを失い、身動きが取れなくなり、フェストゥムの同化の対象となってしまう。
シンをかばいフェストゥムと接触する一騎。一騎のファフナー、マークザインは若干ながら同化現象に耐えることができるが、シンが離脱するだけの時間を稼げば一騎が同化されてしまう。一騎には本当に命をかけて守るべき人がいるはずだ、だからここは下がれというシンに対し、一騎はシンも守るべき大切な仲間だと答え、インパルスガンダムを遠くへと移動させる。
このままでは一騎が助からない。どうすればいいのかと悩むシンに、「大丈夫、運命はあなたの味方だよ」と語りかける竜宮島のシステムを遠隔操作できる少女、皆城乙姫の声。
そこへ無人のデスティニーガンダムが現れ、一騎と交戦中だったフェストゥムを撃破する。修理が完了しシンの上司、アスラン・ザラの手で移送されてきたデスティニーガンダムを、島のシステム同様に動かしたのだ。
アスランからも激励を受け、シンはデスティニーガンダムに乗り換える。この命が在る限り、自分たちで「運命」を切り開くという決意とともに。
シンとデスティニーガンダムのお陰で体制を立て直した一騎は見事な連携を決め、島に迫るフェストゥムを薙ぎ払うのだった。

版権スーパーロボット大戦の特徴であり他の作品でも多々見られるクロスオーバーシナリオ。本シナリオでは『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』と『蒼穹のファフナー』がクロスオーバーしている。
この件で真に特筆すべき点は、クロスオーバー要素が入念かつ丁寧すぎることにある。モビルスーツの開発経緯も根本から異なっている(『機動戦士ガンダムSEED』シリーズに『蒼穹のファフナー』の敵であるフェストゥムが関係しているわけがない)のだが、ゲームシステム上でも一部モビルスーツはフェストゥム相手に相性が良くなるように設計されているため、プレイヤーは違和感を抱きにくくなっている。また、この2作品のキャラクターデザインを手掛けたのが平井久司で在ることも手伝い、絵面にも違和感がない。セリフには両作品の主題歌や独特の言い回しが散りばめられており、これらの改変に気づける原作ファンがニヤリとできる要素も多い。
ほぼ全編に渡りこれに親しいクロスオーバーと熱い展開が繰り広げられるUXだが、この場面がユーザーに与えた感動とインパクトはこと更に大きかった。ファンは本作のデスティニーガンダムに「マークデスティニー」(『蒼穹のファフナー』の主要機体の名前には「マーク○○」という共通点がある)という愛称をつけ、スーパーロボット大戦シリーズ公式ラジオ『うますぎWAVE』でも言及されるほどの反響を産んだ名場面である。

『スーパーロボット大戦(任天堂携帯機シリーズ)』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

任天堂携帯機シリーズの原点『スーパーロボット大戦64』

任天堂携帯機シリーズ第1作にあたるAのオリジナル機体には、元ネタが存在する。それがNINTENDO64で発売された『スーパーロボット大戦64』に登場したオリジナル機体群だった。
ゲーム中の没データには明確につながりが書かれたシナリオもあり、当初は同作のオリジナル機体をそのまま出す予定があったことが伺える。
同作はシリーズとしては珍しく任天堂子会社の招布(まねぎ)が主導し、任天堂携帯機シリーズを開発するエーアイとバンプレストの3社共同て開発された作品であるため、一部版権が同社に帰属しているために64オリジナル機体は使用できなくなったと言われている。事実はともかく、Aのオリジナル機体は64のオリジナル機体のリビルドであり、64の機体は使用できないとシリーズスタッフが証言している。
64との繋がりは機体やハードウェア・ソフトウェアの開発会社だけではなく、シリーズコンセプトにもつながっている。64はコアユーザー向けを志向して制作されており、主人公たちの所属組織さえも変化するルート分岐という実験的な要素が投入され、ロムカートリッジを活かしたテンポの良い演出や(当時としては)多くのデータを使用する合体攻撃システムが初めて採用された。
本作の「特定ユーザーに向けた制作姿勢」を「ライトユーザー」に置き換えると、後の任天堂携帯機シリーズの方向性と非常に親しくなるのである。

若者向けのスパロボを! シリーズ三本柱の1作に

2000年に発売された『スーパーロボット大戦α』がシリーズ最大のヒットを飛ばした後、バンプレストは今後のシリーズ展開について、3つのラインを設けた。
1つは『スーパーロボット大戦α』の流れを引き継ぐフラッグシップ的な据え置き機作品、そしてスーパーロボット大戦シリーズに登場するオリジナル機体を使用した独立作品、そして3つ目に上げられたのが若者向けの携帯機作品、すなわち任天堂携帯機シリーズだった。
この発表を受け、ユーザーは任天堂携帯機でリリースされる版権スパロボを「任天堂携帯機シリーズ」という一連の作品群として捉えるようになった。
若者向けという要素はBXまで継承されており、更に開発に必要なリソースの少なさを活かした実験的な要素が新たな特徴となり、任天堂携帯機シリーズは独自の存在感を発揮するようになった。

幻の名曲『億千光年の彼方へ』

スーパーロボット大戦シリーズでは主題歌や宣伝用の楽曲が複数制作されている。そんな中、Wの宣伝に使われた『億千光年の彼方へ』は幻の名曲として知られている。
本楽曲はアップテンポなトラックに意味深な歌詞が散りばめられており、シナリオとのシナジーも高い楽曲なのだが、一切公式リリースされていない楽曲となっている。
同様の境遇にある楽曲としては『スーパーロボット大戦64』の「熱き魂」が存在するが、そちらはゲーム内BGMを使用した歌だったのに対し、「億千光年の彼方へは」宣伝のために書き起こされた曲だったため、ゲーム中には全く登場しない。宣伝PV以外では聞けないという点が、本楽曲を幻足らしめていると言える。
本楽曲のボーカルはバンプレスト社員が勤めており、本人が積極的なリリースを望んでいなかったことからCD化が見送られたという。
視聴する機会に恵まれた際には、ぜひとも堪能していただきたい名曲である。

スーパーロボット大戦KのBGM盗作問題について

『スーパーロボット大戦K』に収録されているBGMの中に、株式会社タイトーのスーパーファミコン用ソフト『エストポリス伝記2』及び株式会社スクウェア・エニックスのスーパーファミコン用ソフト『クロノトリガー』のBGMを盗用したものが存在していた。
バンダイナムコゲームスは社内調査を行いこの事実を認め、両作品の版権管理者と協議の上で和解を成立させ、正式に謝罪した。
『スーパーロボット大戦K』の音楽担当者は末村謙之輔である。
末村は『スーパーロボット大戦W』の音楽も担当しており、同作のBGMに関しても盗用疑惑が持ち上がったことがあった。また、女性向けR-18『冤罪』では正式に盗用を認め謝罪している問題の多い人物である。
以降末村は『スーパーロボット大戦』シリーズに関わっておらず、『スーパーロボット大戦L』では彼を担当から外した上で楽曲が全面的に差し替えられた。
なお、『スーパーロボット大戦W』のBGMに関しては明確に盗用と発表されたものではない。また、盗作とされたBGMは参戦作品との関係は無く、各参戦作品の版権元には全くの責任が存在しないことにも留意が必要である。

nao34
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