ふしぎ遊戯(朱雀・青龍編)のネタバレ解説・考察まとめ

『ふしぎ遊戯』とは、渡瀬遊宇による漫画作品及び、それを原作とするアニメ、ゲーム作品である。高校受験を控えた少女・夕城美朱は、図書館の書庫で見つけた四神天地書という書物に吸い込まれ、本の中で朱雀を呼び出す巫女となる。鬼宿を始め、巫女を守る七星士と共に朱雀召喚を目指す一方、敵対国で青龍の巫女となった親友の本郷唯と対立する。1992年から1996年まで『少女コミック』で連載され、1996年にテレビアニメ化された。後に、前日譚に当たる『ふしぎ遊戯 玄武開伝』及び『ふしぎ遊戯 白虎仙記』が発表される。

四神の伝説

紅南国の守護神・朱雀(奥)と朱雀星君(手前)。

四正国に伝わる伝説。「国滅亡の危機に、異界より一人の娘が現れ、巫女として七星士と共に神獣の力を得て国を救う」というもの。
本に選ばれ吸い込まれた少女は、否応なくいずれかの神獣を呼び出す巫女の役目を担うこととなる。神獣召喚の儀式は、身を清めた巫女が七星士全員が居並ぶ中で各神獣を呼び出す詔(みことのり)を読み上げ、各国に伝わる四神天地之書の巻物を火にくべる。巫女、七星士、天地書が揃っていないと神獣は召喚出来ない。これは基本的な条件で、巫女が神獣を召喚した時に身に着けていた神座宝があれば、巫女単体でも神獣の召喚は可能である。
巫女は神獣と交わり、三つの願いを叶える神通力を得る。力を使う際、巫女の額には四神の紋章が現れる。願いを叶える度、巫女の体は神獣に蝕まれ、体に神獣の特徴が現れる。青龍は鱗、朱雀は翼が出現する。
巫女は生け贄であり、神獣は巫女の命と引き換えに願いを叶える。強い精神力があれば願いを叶え終わっても死ぬことはない(白虎の巫女・大杉鈴乃は老人になるまで生きた)。
基本的にどんな願いでも叶うが、死者の蘇生と天地書に留まる願いだけは叶えられない。白虎の巫女だった鈴乃は、天地書内部で七星士の婁宿と恋に落ちたが、この世界に留まりたいとの願いは叶えられないと白虎に却下され現実世界に戻された。
星君(せいくん)と呼ばれる人型が存在し、巫女の前では星君の姿で現れる。朱雀星君は赤い髪と翼を持った若い男性の姿で登場した。

巫女(みこ)

神獣を呼び出すことのできる少女。天地書の世界では別の世界から来た娘として認識される。七星士に守られて儀式を行い神獣を呼び出すのが役目だが、呼び出された神獣は巫女の体内に宿り食い荒らす。強い精神力を持っていない限り、巫女は神獣に取り込まれてしまう。
絶対条件は処女(おとめ)であることで、愛し合っていても男性と深い仲になることは許されない。天地書内部で想い人ができ相思相愛になろうと神獣を呼び出すまでは純潔を保たなければならず、召喚し願いを叶え終わったら強制的に元の世界に戻される。「この世界にとどまりたい」との願いだけは叶えられない為、天地書内部で誰かを愛しても決して結ばれない。

巫女は現実世界で天地書を知る人間と何かの媒介で通じ合っており、美朱のみで天地書に入った時は唯と美朱の制服が媒介となった。唯が青龍の巫女になってからは美朱のリボンが媒介になっていた。媒介を通して、巫女は外にいる人物といくらかの会話ができ、奎介は「生け贄にされるから戻って来い」と声をかけた。

七星士(しちせいし)

朱雀七星士。

巫女を守る宿命の星を持った七人。それぞれが玄武、白虎、青龍、朱雀の星を形作る星(二十八宿)と同じ文字が体のどこかに証として浮かび上がる他、何らかの特殊な能力を持つことが多い。全員が揃った状態でないと神獣の召還はできない。巫女とは違い純潔を保つ決まりはなく、既婚者や元娼婦の七星士もいる。
神獣が封印されると七星士の力も封じられて字が出せなくなり、特殊な能力も使えない。字は各神獣を象徴する色に光り(青龍→青、朱雀→朱)、神獣召喚の際、巫女の体にも七星士と同じ証の字が浮かび上がる。

神座宝(しんざほう)

玄武の神座宝。

巫女単体でも神獣を呼び出すためのアイテム。巫女が神獣召喚時に身に着けていたものが神力を宿し、神座宝となる。
玄武召喚より200年(天地書内部の時間)という長い年月が経過した為に、伝承や神座宝の正体そのものに尾ひれがつくようになった。「母のいとこの友人から聞いた」とのまた聞きもあれば、老人が祖父から聞いたという話ですら真実ではなかった。
玄武は多喜子が身に着けていた首飾り、白虎は鈴乃が持っていた鏡、青龍は唯のピアス、朱雀は美朱の指輪が神座宝となった。『永光伝』では、美朱の胎内の子が神座宝となり、真夜の胎内に移動することで朱雀を呼び出せた。

媒体(ばいたい)

巫女となった少女が、本の内と外を行き来する目印となるもの。巫女が肌身離さず身に着けているものと同質のものが媒体(もしくは媒介)となる。媒体を持つ者同士なら、本の内と外で別れても、現実世界で本を読んでいる者が呼び掛けることで念話が通じることが稀にある。
媒体を持つ者同士の絆が強くなければ意味をなさない為、序盤の媒体で合った美朱の学校制服は唯にとってのみ媒体となった(本の中で美朱のスカートに返り血がついた時、唯のスカートにも同じ現象が起きた)。唯が四神天地書に吸い込まれてからは、美朱のお団子頭を結っていたリボンが媒体となる。

『ふしぎ遊戯』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

柳宿「生きてりゃあねぇ!!つらいことでもいつか笑って懐かしく話せる時が来るのよ!」

「生きてりゃあねえ!!つらい事でもいつか笑って懐かしく話せる時が来るのよ!そうなれる日まであんたたちは死なせないよ!!」は、激流に流されそうになった鬼宿、美朱を救う際の柳宿のセリフである。
自身の身を案じ、「手を放せ」という二人に柳宿は落雷の危険を口にし、二人を救うと言った。かつて最愛の妹を失った哀しみと、その死を悼む気持ちから女装を始めた柳宿が、七星士として巫女を守るという役目を歩き出し、多くの幸せを知ったからこそのセリフである。

柳宿の死

埋葬される柳宿。

柳宿が、神座宝を守るべく青龍七星士の尾宿と戦い死亡したシーン。登場時は女装をしていた彼だが、美朱との出会いで男性の服装を着始め、徐々に男性としての自分を取り戻していった。美朱への想いを自覚しながらも、柳宿は七星士としての役目を果たす為に戦い命を落とす。美朱たちは柳宿の死に涙したが、柳宿の死に顔は笑っていた。朱雀七星士として生まれて、美朱や仲間と出会い、彼らの為に戦えたことを満足して逝ったと思われる。
想い人が星宿から美朱へと変わった心の移り変わりや、強さや優しさの描写、名言故に人気の高い柳宿の死は、リアルタイムで読んでいた読者に衝撃を与えた。

美朱「『逃げる』と『挑む』って字は、『しんにょう』と『てへん』が違うだけでまるで変わっちゃうって。(中略)あたしは『挑む』よ!!」

「『逃げる』と『挑む』って字は、『しんにょう』と『てへん』が違うだけでまるで変わっちゃうって。できないから、不可能だからやらないって逃げてたら…そのまま大人になってひきょうな人間になるって。そりゃ怖いよ。逃げたいけど…。ひきょうな大人にはなりたくないから…あたしは…『挑む』よ!!」は、美朱のセリフである。
心宿の策略にはまり、鬼宿の前から去った美朱は、死亡したと思われていた亢宿と再会する。亢宿は七星士としての記憶を失い、息子を失くした夫婦に引き取られて懐可の名で暮らしていた。実際には記憶を失くしたのは演技で、両親の為懐可として生きていくことを決意したのだった。

心に傷を負っていた美朱は、亢宿からすべてを忘れてこの村で暮らそうと言われ、忘却草を煎じた薬を渡される。しかし、美朱は薬を飲まず、心宿の下へと向かい唯を救って青龍を呼ばせ手紅南国の平和を祈ってもらうと言った。
亢宿の制止に対し、美朱は「挑む」と「逃げる」という字を例えに話をする。逃げるのも挑むのも、ほんの少しの差であり、わずかな気構え一つでその後の運命が変わることもある。逃げて卑怯者になるより、怖くても挑みたいと美朱は決めたのだった。
結果、房宿と再会した美朱は自分が心宿に汚されていないことを知り、鬼宿や皆と合流することができた。逃げずに挑んだ結果、様々な苦難はあったが最終的に朱雀召喚を成し遂げるに至ったと言える。

婁宿と鈴乃の死と再会

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