イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

第二次世界大戦中に、ドイツのエニグマ暗号の解読に挑んだアラン・チューリングの実話を、グレアム・ムーア脚本、モルテン・ティルドゥム監督により2014年に映画化した、歴史ミステリー映画。解読不能と言われたエニグマ暗号を、万能マシン「クリストファー」によって解読し、イギリスを勝利に導いたものの、同性愛者であることから不遇の人生を送ったアラン・チューリングをベネディクト・カンバーバッチが熱演している。

『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』の概要

『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(The Imitation Game)』は2014年公開のイギリス・アメリカ合作映画。アンドリュー・ホッジスの伝記『Alan Turing: The Enigma』を、モルテン・ティルドゥム監督が映画化した。

第二次世界大戦中にエニグマ暗号の解読に挑んだアラン・チューリングをベネディクト・カンバーバッチが演じ、第87回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞など8部門にノミネートされ、脚本を手掛けたグレアム・ムーアが脚色賞を受賞した。

『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』のあらすじ・ストーリー

1939年、イギリスがヒトラー率いるドイツに宣戦布告し、第二次世界大戦へと突入した頃、天才数学者のアラン・チューリングは、ブレッチリー・パークにある無線機器製造所を訪れていた。ドイツ軍の暗号解読という最高機密の計画に参加するためだ。英国海軍のデニストン中佐は、チューリングの傲慢な態度に早々と面接を切り上げようとするが、解読不能と言われる「エニグマ」を必ず解読するという言葉に、チューリングをチームに入れることを決断する。

精鋭チームのメンバー6人の前に置かれたのは、ポーランド情報部が手に入れた1台のエニグマ暗号機。イギリスは毎日数千もの通信を傍受していたが、それを解読するにはエニグマ暗号機を通す必要があった。しかしドイツ軍が0時になる度に設定を変えるため、毎日18時間以内に設定を解かなければならないのだ。しかもその設定の可能性は実に159000000000000000000通り。チューリングは個人で仕事することを望んだが、MI6(秘密情報部)のスチュアート・ミンギスに説得され、チェスチャンピオンのヒュー・アレグザンダーをリーダーとし、途方もない暗号解読への挑戦が始まった。

チームが地道に分析を行うなか、チューリングは一人、どんな暗号文も瞬時に読み解くマシンを作ろうとしていた。しかしそれには莫大な費用が掛かり、ヒューはその請求を却下。チームに全く協力しないチューリングへの不満を、デニストン中佐に報告した。請求を却下されたチューリングは中佐に抗議するが、「指揮官に従え」という言葉をうけ、中佐の指揮官であるチャーチル首相に直接手紙を書く。それによって首相から責任者に任命されたチューリングは、即座にメンバーのうち2人を「能力がない」とクビにしてしまう。

足りなくなった人手を補うため、チューリングは新聞にクロスワードパズルを掲載。「10分以内で解けた方にすばらしい仕事のチャンス」と書かれたそのパズルに、多くの人が挑戦した。そしてパズルを解いた候補者たちが集められ、最終試験が行われた。与えられた時間は6分間。しかしチューリングでさえ、そのパズルを解くのに8分かかるという。彼が見たかったのは、不可能な問題にどう対処するかだったのだ。しかしそれを5分半で解いた女性がいた。彼女の名はジョーン・クラーク。彼女を含む2名が試験に合格し、ミンギスからその「すばらしい仕事」が国家機密である暗号解読だと告げられた。

1940年。合格した新人がブレッチリー・パークにやってきたが、そこにジョーンの姿はなかった。チューリングはジョーンの家を訪ね、男性ばかりの職場では体裁が悪いという彼女に、事務仕事をする女性たちとともに来るよう提案する。しかし機密情報を扱えるのは暗号解読チームだけであるため、チューリングは資料を服の下に隠し夜中にこっそりジョーンの元を訪れ、彼女に暗号解読の仕事をさせた。チームに馴染もうとせず、軍からもスパイと疑われ孤立してしまったチューリングに対し、「本気でパズルを解くにはみんなの協力が必要だ」と話すジョーン。彼女のアドバイスを受け、翌日チューリングはみんなにリンゴを配り、慣れないジョークを言った。

ジョーンが間に入ってくれたおかげで、チューリングとチームのメンバーは少しずつ打ち解けていく。そしてついに万能マシン「クリストファー」が完成し稼働し始める。しかしひとつの暗号も解けないまま、機械は回り続けるだけだった。資金も忍耐も限界に達し、デニストン中佐はチューリングにクビを言い渡す。そこに駆け付けたのはチームの仲間たちだった。彼らは「チューリングをクビにするなら自分もクビにしてくれ」と言い、時間の猶予を求めた。仲間たちの必死の講義にデニストン中佐は1か月の猶予を与え、チューリングは初めて仲間たちに感謝の言葉を伝えた。

一方ジョーンは、親から戻って来いと言われ、ブレッチリー・パークを去ることを考えていた。そのことをチューリングに相談し、25歳で独り身であることが問題だと言うと、チューリングは「夫がいればいいのでは」と、ポケットに入っていた針金で指輪を作り、ジョーンにプロポーズする。しかしチューリングには大きな秘密があった。それは彼が同性愛者であるということ。それを見抜いていた同僚のジョンに相談するが、当時同性愛は違法であり、ジョーンのためにも黙っていろと忠告を受けた。

猶予期間の1か月が迫っても、「クリストファー」は暗号を解読できずにいた。解読するには全設定を探索せねばならず、改良を重ねてもその時間を劇的に短縮することは出来なかった。ある日、ジョーンの同僚で無線を傍受している女性から、共通の言葉があることを聞いたチューリングは、通信の中で確実に使われる言葉だけを「クリストファー」に調べさせることを思いつく。それは毎朝6時に発信する天気予報だった。そこに毎回含まれる共通の言葉「天気」「ハイル」「ヒトラー」を設定し、暗号文を打ち込むと「クリストファー」はそれを解読したのだ。

こうしてチューリングたちは暗号の解読に成功し、大西洋に浮かぶ全ての船の位置を把握した。しかしそれで全てが解決するわけではなかった。彼らは攻撃を予測し、防ぐことができた。しかしそれをしてしまえば、エニグマを解読したことがたちまちドイツにばれてしまう。そうなればドイツ軍は直ちにエニグマの構造を変え、チューリングたちの2年間の努力は水の泡となってしまう。奇しくもチームの一員であるピーターの兄が乗った船が、今まさに攻撃されようとしていた。ピーターはこの船だけでも助けてほしいと頼むが、それを受け入れるわけにはいかなかった。彼らの本当の闘いは、これからだったのだ。

チューリングとジョーンはミンギスの元を訪れ、エニグマ解読を軍にもデニストン中佐にも内密にするよう頼む。そして、阻止する攻撃と無視する攻撃を統計的に分析し、阻止する攻撃には偽の情報源を用意することで、最小限の行動で戦争に勝利するシステムを組むことを提案する。そんな中、チューリングはジョンがソ連のスパイであることに気づく。しかしミンギスは最初からそのことに気づいていて、ジョンを利用していたのだ。そんなミンギスを信用できないと感じたチューリングは、ジョーンを守るため、同性愛者であることを明かし彼女を家へ帰そうとする。しかしジョーンは今の仕事をやり抜くことを決意していた。

それから2年間、チューリングたちの孤独で残酷な戦争は続いた。そしてイギリスは勝利し、戦争は終わった。チューリングたちはブレッチリー・パークを去る前日、ミンギスの指示ですべての資料を燃やした。そしてここであったすべての出来事を胸に秘め、普通の生活へと戻っていった。

1951年。チューリングの家に空き巣が入り、ノック刑事が捜査に当たる。何も盗まれていないと言うチューリングを怪しく思い調べると、軍の記録などが一切残っておらず、スパイなのではないかと疑い始める。しかし空き巣に入った男娼が捕まり、チューリングは同性愛者として逮捕されることとなる。それを知ったジョーンがチューリングの元を訪れると、そこにはあの万能マシン「クリストファー」があった。チューリングは刑務所に入る代わりにホルモン治療を受けさせられており、副作用で体はボロボロだった。そこまでして彼が自宅に残ったのは、人生をかけて作り上げたマシン「クリストファー」を奪われたくなかったからだ。チューリングがマシンにつけた「クリストファー」という名は、彼が学生時代に思いを寄せ、結核で亡くなった少年の名だった。チューリングは1年間の強制的ホルモン投与の後、1954年6月7日に自殺した。41歳だった。

『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』の登場人物・キャラクター

アラン・チューリング(演:ベネディクト・カンバーバッチ)

1912年ロンドン生まれ。幼い頃から数字に強くパズルが得意だったが、気難しい性格で人と接することが苦手だった。14歳の時シャーボーン学校に入学。このとき出会ったクリストファーに恋をするが、クリストファーは結核により死去してしまう。大学時代には数々の論文を発表し、万能マシンの基となる概念も既に作られていた。

第二次世界大戦が始まり、ブレッチリー・パークで国家機密となるエニグマ解読の仕事に就く。そこであらゆる設定を読み解く万能マシン「クリストファー」を完成させ、エニグマ暗号を解読。終戦後は大学教授として働くが、自宅に泥棒が入ったことにより、同性愛者であることが発覚。強制的なホルモン投与を1年間受けたのち自殺し、41歳の若さで亡くなった。

ジョーン・クラーク(演:キーラ・ナイトレイ)

1917年ロンドン生まれ。チェスやパズルが得意で、ケンブリッジ大学ニューナムカレッジに奨学金を得て入学。数学で優秀な成績を収めるが、当時大学が男性にしか学位を授与していなかったため、完全な学位は与えられなかった。ブレッチリー・パークでは気難しいチューリングとほかのメンバーとの橋渡し的存在となり、暗号解読においても能力を発揮した。

チューリングとは1941年にプロポーズされ婚約するが、すぐに同性愛者であることを理由に婚約を破棄したいと言われる。そのことについてジョーンは気にしなかったが、結果的に婚約は破棄された。しかしチューリングとの友人関係は変わらず、戦後、政府通信本部で働き結婚した後もその交流は続いた。

ヒュー・アレグザンダー(演:マシュー・グード)

1909年アイルランド生まれ。奨学金でケンブリッジ大学キングスカレッジへ進学、大学時代はチェスの代表選手であり、首席で卒業した。1938年と1956年の二度にわたりイギリスのチェスチャンピオンに輝く。しかしチェスプレイヤーのピークである時期に第二次世界大戦があったため、競技に参加する機会を得られなかった。チェス愛好家の間では、そのままチェスを続けることが出来ればグランドマスターになれただろうと言われている。

ブレッチリー・パークでは暗号解読に挑むチームのリーダーに任命される。チューリングがチャーチルに直談判しリーダーとなるが、実質的にメンバーをまとめていたのはヒューであった。

ジョン・ケアンクロス(演:アレン・リーチ)

エニグマ解読チームのメンバー。穏やかな性格で、チューリングが同性愛者であることに勘付き、相談を受けると「黙っていろ」とアドバイスを送る。実際はソ連のスパイで情報を流しており、そのことをチューリングに気づかれると、密告すれば同性愛者であることをばらすと脅した。しかしミンギスなどは彼がスパイであることを分かっており、逆に利用されていた。

ピーター・ヒルトン(演:マシュー・ビアード)

エニグマ解読チームのメンバー。おとなしい性格で黙々と暗号解読に挑む。兄は戦艦の砲手として船に乗っており、暗号解読後、兄の乗る船に危険が迫っていることに気づくが、それを阻止してしまうと暗号を解読したことがばれてしまうため、助けることが出来なかった。そのことでチューリングとの間に確執が生まれるが、最後まで任務をやり通した。

デニストン中佐(演:チャールズ・ダンス)

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