アイアムアヒーロー(I Am a Hero)のネタバレ解説・考察まとめ

『アイアムアヒーロー』とは2009年から『ビッグコミックスピリッツ』で連載されていた、花沢健吾による日本のSFホラー漫画である。謎の感染症が世界中で流行り、ほとんどの人間がゾンビになっていく。そのゾンビと戦い、感染から逃れる数少ない人間は、引きこもりやニートといった社会に劣等感を抱いていた者たちが中心となっている。この漫画に出てくるヒーローたちは、人間臭いリアリティーのあるヒーローだというのも見所のひとつ。

作:石黒正数(代表作:『それでも町は廻っている』)
ZQNパニックから半年後、国が謎の感染症の収束宣言を出した。復興していく日本は、ZQNと化した人間の人権主張、ゾンビの歩行を利用した発電所など、ZQNとの共存が始まる。企業では、ゾンビ受け入れ支援という制度もできて、ZQNたちが清掃員などとして雇われている。会社で働くZQNの中にかわいい子を発見したサラリーマン二人が、「ゾンビになったから我々にも機会が巡ってきたんじゃないか」と言い彼女をトイレに連れ込んだ。しかし結局その二人は、感染してしまい「ゾンビ力発電所」でZQNとして雇われることになる。

思春期オブ ザ デッド

作:オジロマコト(代表作:『富士山さんは思春期』)
同級生の倉敷夏海と長谷川は、花火大会にきた。本当は、数人でくる予定だったが皆体調不良になってしまった。長谷川は、不愛想でちょっと変わった倉敷夏海のことが苦手だ。気まずい雰囲気の中、花火を見ていると、ZQNパニックが発生した。二人はなんとか逃げ切ることができた。助けを待っている間、長谷川は今まで気づかなかった倉敷夏海の魅力に気付き始めた。そして彼は思わず倉敷に告白するが、「無理」とあっさりフラれてしまいまた気まずい雰囲気に戻るのである。

シーイズアスローウォーカー

作:伊藤潤二(代表作:『富江』)
ゾンビマニアのカップルが、 感染して本当のゾンビになる物語。ゾンビは速く動く派の彼氏とゆっくり動く派の悠美は、そのことに関して喧嘩になる。怒った悠美はアパートを飛び出しゾンビに腕を噛まれてしまう。彼女が部屋へと戻ると、彼氏が外にゾンビが大量発生しているのを窓から眺め「最後に生き残るのはゾンビマニアだ」と興奮していた。彼は、ゾンビのウイルスに感染したかを確認するために悠美を拘束した。そしていつかこんな日が来るだろうと備蓄していた食料を当てに部屋に立てこもることにする。ついに悠美が力尽きて倒れた。守ってやれなかったことを悔やんだ彼氏は彼女をビデオカメラに撮影し、遺体に添い寝することにした。次の日、彼氏が目を覚ますと、ゾンビになった悠美が今にも噛みつこうとしていた。彼氏は急いで避けたが悠美は全く動かなかった。不思議に思った慎一がビデオカメラの映像を確認してみると、悠美は一晩で10cm程度しか動かないほど、超スローで動いていた。部屋の外にはゾンビが溢れかえり、部屋の中にはゾンビの彼女という状況に耐えかねえた彼は、ついに悠美のことを食べてしまう。そしてついに自分もゾンビになった彼は、超高速のゾンビ・ベリーファストウォーキングデッドになった。

鬼さんこちら

作:鳥飼茜(代表作:『先生の白い嘘』)
ゆのとりらの住む街には、鬼おんながいる。鬼おんなは、女の子ばかりをさらっていき、彼女につかまった男たちは正気では戻ってこないと言われている。鬼おんなは、ある日突然彼女の前に鬼が現れるまでは普通の人間だった。鬼は、彼女の名前もどこの誰であるかも奪ってしまった。ついにゆのも鬼おんなに恋をしてしまった。りらは愛するゆのを取り返すために鬼おんなを殺してしまう。そしてりらは、次の鬼おんなになって森へと消えていった。

アイアムノットアヒーロー

作:乃木坂太郎(代表作:『医龍』)
高校生の林は、トイレに行きたいのを我慢している。なぜなら担任の島崎がZQNになり、授業をおこない席を立とうとする生徒を襲ってくるからだ。林が我慢も限界だと感じたその時、学年一女子力が低いと言われている浜田秋桜が大便を漏らした。そのどさくさに紛れて他の生徒たちも漏らした。漏らした一人の生徒が、「ありがとう浜ちゃん」とつぶやいた。浜田は、友だちが漏らしやすいように先陣を切って漏らしてくれたのだ。しかし漏らした臭気によって倒れた生徒が、先生に襲われてしまう。先生は、席を立たない限り襲ってこないが、感染したクラスメイトは発症したら襲ってくるだろうという恐怖に教室中が襲われた時、またも浜田秋桜が「体力があるうちに闘うんだ」とクラスメイトを奮い立たせてくれた。生徒数名で、教室から脱出し、学校の外へ逃げられそうな車を調達した。いざ車に乗ろうとした時に、一人の同級生が浜田秋桜の腕に傷があることに気が付いた。逃げてきたクラスメイトたちは、もしかしたらその傷から感染しているかもしれないからという理由で、浜田を車に乗せることを拒んだ。彼女がいたからここまで逃げてこれたのではないかと不満に思った林は、異論を唱える。しかし彼女は、確かに感染している可能性はあるから学校に残り自分で後のことは自分でなんとかすると言った。友だちの為に先陣を切って大便を漏らしたり、恐怖に襲われたクラスメイトの気持ちを奮い立出せたりしてくれた彼女を見て、林はあることに気付く。ちょっとしたことで誰でもヒーローになれるのかもしれない。

アイアムアヒーロー誕生秘話

作:吉本浩二(代表作:『ブラックジャック創作秘話』)
本編の作者・花沢健吾のルーツをたどる物語。現在、顔は二枚目でおしゃれで明るい花沢が、過去モテなかったというのは真実なのだろうかというところから彼のルーツを辿る旅が始まる。彼の元アシスタントや同級生に話をきいていく。彼は、本編の主人・英雄のように心配症なところがあるらしく、職場に防災用のヘルメットや発電機が常備されている。また高校生の頃の彼は、シャイで目立たず女子とも話せないタイプだった。なので確かにモテなかったようだ。昔からエロへの妄想と情熱はすごかった。漫画家になった頃も、人の目を見て話さずあまり印象に残らない人物だった。しかし「自分だけのおもしろいをみつけろ」「おもしろけりゃなんでもいいんだ」という漫画への思いは熱く、なんとしても結果を出そうとする姿勢が作品の人気につながっている。もしかすると魂を奪われたように「おもしろさ」を追求する彼こそがZQNなのかもしれない。

『アイアムアヒーロー』の登場人物・キャラクター

主要人物

鈴木 英雄(すずき ひでお)

鈴木 英雄

演:大泉洋(2016年実写映画)
本作の主人公で、35歳の漫画家。以前は、デビュー作として連載を持っていたがすぐに打ち切りになってしまった。現在は、プロ漫画家の松尾のところでアシスタントとして働いている。再デビューを夢見て、出版社にネームの持込みを繰り返しているがうまくいかない。クレー射撃が趣味。銃砲所持許可証および散弾銃(新SKB MJ-7)を持っていることがZQN発生後に役立つことになる。コミュニケーション能力が低く、極度の妄想壁もある。毎晩怖い妄想に憑りつかれて眠れない夜を過ごす。彼の妄想にだけ存在する「矢島」を話相手にしたり、周りから褒められるような妄想をするが、端から見ればただの独り言が多い迷惑な人間。「自分は世界の脇役で、自分自身の人生でさえ主役になることはない」というコンプレックスを抱いている。謎の感染症によるパンデミック後も街中で銃を抜くことをためらっていたが、比呂美と出会ってからは彼女を守るために発砲も躊躇しなくなる。御殿場のアウトレットモール脱出後は比呂美、小田と行動を共にし、東京に向かう。その途中、箱根で異形と化したZQNに飲み込まれ心肺停止の状態になるが、吐き出された後に小田と比呂美による心臓マッサージで蘇生する。感染した小田と死別した後、比呂美もあと少しで東京というところで自ら巨大ZQNに取り込まれて姿を消した。巨大ZQNを追って池袋に上陸。ZQNに襲われながらも運よく生き延び、パンデミックが終息し廃墟と化した無人の都内で、池袋西口公園を拠点に一人で自給自足の生活を送る。

矢島(やじま)

矢島

英雄が作り出した妄想の存在。小柄で小太りで童顔という外見をしている。英雄のことを「先輩」と呼ぶ。英雄が呼べばどこにでも現れ、基本的に英雄の言葉に否定的なことは言わない。徹子が感染した後、人ではないもやのような存在で登場し、英雄に諭すような言葉を残し姿を消す。

飛び出し坊や

飛び出し坊や

現われなくなった矢島の代わりの存在。外見は飛び出し坊やそのもので、矢島と違い物として現実に存在する。新たな英雄の話し相手で、矢島と同じく彼の言葉に共感するようなことしか言わないが、サバイバル生活を送る英雄に振り回され不当な扱いを受けている。

早狩 比呂美(はやかり ひろみ)

早狩比呂美

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