ブリッジ・オブ・スパイ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ブリッジ・オブ・スパイ』は、2015年のアメリカ映画。第二次世界大戦後に勃発したアメリカとソ連による冷戦を描き、当時実際に発生した「U-2撃墜事件」の史実に基づいて制作されている。スティーブン・スピルバーグ監督とトム・ハンクスがタッグを組んだサスペンス映画。冷たい雪の吹き荒ぶ中、スパイの弁護を引き受けることになった弁護士の男の孤独な戦いが濃厚なタッチで描かれている。観客はもちろん、批評家からも絶賛の声が集まり、第88回アカデミー賞をはじめ、数多くの映画賞で様々な部門にノミネートされた。

目次 - Contents

『ブリッジ・オブ・スパイ』の概要

『ブリッジ・オブ・スパイ』は、2015年のアメリカ映画。第二次世界大戦後に勃発した、アメリカとソ連による冷戦を描き、実際に発生した「U-2撃墜事件」の史実に基づいて制作され、当該事件に歴史・伝記、ドラマ、政治、アクション、戦争、スパイ、スリラーなどのジャンルを盛り込んでいる。アメリカでは2015年10月に、日本では2016年1月に劇場公開されている。スティーヴン・スピルバーグが監督としてメガホンを取り、マット・チャーマンとコーエン兄弟が脚本を担当。主演のトム・ハンクスをはじめ、マーク・ライランス、エイミー・ライアン、アラン・アルダらといった人気俳優たちが一堂に会していることでも話題となった。また、アメリカ本国での公開と同時に、本作のサウンドトラックも発売。グラミー賞やゴールデングローブ賞などで多数受賞歴のあるトーマス・ニューマンが作曲した。
リアリティとエンターテイメントを両立させた本作は、観客はもちろん批評家からも絶賛の声が集まり、第88回アカデミー賞をはじめ、数多くの映画賞で様々な部門にノミネートされている。中でも逮捕されたソ連のスパイという難しい役どころを演じ切った、マーク・ライランスの演技を高く評価する声は多く、ライランスは様々な映画賞で助演男優賞を受賞するに至った。

『ブリッジ・オブ・スパイ』のあらすじ・ストーリー

舞い込んだスパイの弁護

ソ連とアメリカの冷戦のただ中にあった1957年、ソ連のスパイであるルドルフ・アベルという男が逮捕され、スパイとして裁判を待つ身となった。そこで、法律事務所で保険専門の弁護士をしていたジェームズ・ドノヴァンの元に、逮捕したアベルのスパイを弁護してほしいという依頼が入ってくる。
かつては検察官で、やり手の弁護士だった彼だが、長らく刑事訴訟から遠ざかっていた。しかも、今回の依頼は国民には憎まれ、スパイの証拠が揃っている負け戦とくれば、率先して引き受けるわけにはいかない。しかし依頼を断れず、やむなくアベルの弁護をすることになってしまう。
アベルは米国の防衛についてや、原爆についての機密をソ連に流したこと、さらに、外国代理人の登録をせず諜報活動をしたことなどで起訴されていた。留置場でアベルと対面したドノヴァンは、CIAからアベルに「協力すれば告訴を取り下げる」という提案があったことを聞かされる。

ドノヴァンへのバッシング

ドノヴァンはアベルの家宅捜査の令状が捜索令状でなく、不法滞在の外国人を拘束するものであったことを突き止めた。これを理由とし、今回の捜索で集めた証拠は認められないと判事に指摘したものの、却下されてしまう。新聞には過激な記事が掲載され、ドノヴァンに対する世間の風当たりも強まっていった。
ドノヴァンは判事の自宅を訪問し、米国のスパイがソ連に捕まった時のために、切り札としてアベルを生かしておくことを提案した。頑なにアベルを守ろうとするドノヴァンに判事は首を傾げたが、彼は「被告も祖国を愛しているだけの人間」と、人道的な面での理由を挙げる。
心を動かされた判事は、アベルに30年の懲役刑を宣告。誰もが死刑を確信していたため、傍聴席からはブーイングが上がる。ドノヴァンはさらに刑を軽くするために上訴を企てるが、職務を遂行しようとする彼をあげつらう報道は更に加熱し、周囲のバッシングも激しいものとなった。

その頃、とあるモーテルでは、選ばれた米空軍のパイロットたちに対し、機密任務のための人物調査が行われていた。集められたパイロットたちは、ソ連に関する情報を集める任務を申し渡される。ソ連に見つかった場合は機体を破壊し、捕虜になることなく1ドル硬貨の中の毒針を使って自害するように告げられた彼らは、厳しい任務に向かっていくことになる。

捕虜交換の交渉へ

最高裁判所での裁判で、アベルは有罪判決を受けた。その頃、乗り込んでいた偵察機を攻撃されたパワーズは脱出と自害に失敗して捕虜となり、禁固刑に処されてしまう。ドノヴァンの元には、東ドイツからアベルの妻を装った手紙が届いた。CIAは「アベルをスパイと認めないという意思表示のため、東ドイツ経由で手紙が送られてきた」と推測し、この手紙は、ソ連側からの人質交換の交渉の打診と取れる、という意見を述べるのであった。
そのまま彼らの作り話に乗り、捕虜たちの交換の交渉を依頼されたドノヴァンは、これを即座に了承した。この依頼は政府が関わらず、ドノヴァンが1人の民間人として、極秘に交渉するという危険なものだった。
その頃、ドイツのベルリンでは、西側への脱出防止のため西側を包囲する壁の建設が進められていた。東ドイツにいる教授とその娘を助けに入った米国人学生のプライヤーが、そのまま現地の警官に捕まってしまっていた。
ベルリンへ向かったドノヴァンは、東ドイツ側の代理人であるヴォーゲルとの約束のために列車で東側へ向かうことになった。列車を降り、ソ連大使館にたどり着いたドノヴァンは、アベルの夫人を装った人物に出迎えられる。さらに、ソ連大使館の二等書記官と名乗ったシスキンがその場に現れ、ヴォーゲルの代理としてドノヴァンに応対することになった。

交渉の行方

ソ連側は「友好の証」として、米国がアベルを釈放すれば、数か月後にパワーズを釈放すると提案した。しかしドノヴァンは強固に交換を主張し、48時間以内にパワーズが来るなら、その場でアベルを引き渡すと告げる。
さらに、プライヤーについても言及すると、彼は東ドイツの管理下にあるとして、ヴォーゲルの住所を教えられるのであった。ドノヴァンがヴォーゲルに会いに行くと、彼は二国間の捕虜を同時に引き渡すと約束してくれた。

ドノヴァンはホフマンから、シスキンは書記官ではなく、ロシアの機密組織であるKGBのトップだということを聞かされる。ヴォーゲルの正体は不明だったものの、東ドイツは米国による国家承認を狙い、アベルを取り戻せばソ連の尊敬も勝ち取れ、東独の地位向上と考えていると推測していた。ドノヴァンはそれに構わず、頑なにパワーズとプライヤーの2人とアベルの交換の主張を続ける。結果、ソ連は東ドイツに協力してパワーズとアベルを交換することを了承した。その週の土曜日の朝、5時半にグリーニッケ橋で同時に交換すると話がまとまる。
しかし、ソ連とドノヴァンが勝手に話をまとめたことに対し、国家承認が目的だった東ドイツは怒りを表明。プライヤーの解放は無しだ、と主張し始める。

長い交渉の終結

ドノヴァンは、東ドイツの司法長官であるオットーの書記官に伝言を頼んだ。それは「パワーズとプライヤーの両者とアベルと交換、明朝2人が揃っていなければ話は無し。ソ連にアベルを取り戻せないと連絡しなければならなくなる。」という脅迫だった。西側の宿で待つ彼らの元に、東ドイツからプライヤーを解放するという連絡があったのはそれからしばらくが経ってからだった。
明朝、グリーニッケ橋で待機するドノヴァンの元にアベルがやってきた。パワーズが本人であることを確認するため、その場には米空軍の中尉も訪れている。ソ連がパワーズを連れて来たことを確認した彼らは、ゲートを開けてアベルを出してやった。アベルとパワーズの身元の確認が行われるが、東ドイツがプライヤーを解放すると指定のあったチェックポイント・チャーリーに動きはなく、ホフマンはプライヤーなしで話を進めようとする。
アベルは人質の交換を終わらせようとするホフマンの言葉には耳を貸さず、ドノヴァンに従って決してその場を動かなかった。そのまましばらく待っていると、チェックポイント・チャーリーで東ドイツがプライヤーを解放したという知らせが入った。アベルとパワーズは同時に橋を渡り、それぞれの国へ引き取られていくのであった。

それぞれの道

我が家に戻ったドノヴァンは、出迎えた妻と抱き合った。自宅で流れていたテレビのニュースでは、それぞれの国の捕虜が無事に祖国へ帰ったこと、そして解放交渉役にドノヴァンが密かに協力していたということが報じられ、何も知らなかった家族は驚いていた。
新聞の一面では、交渉役として活躍していたドノヴァンのことも取り上げられた。敵視していた周囲の目も以前とは変わり、彼はようやく、国民たちからの信頼を取り戻したのだ。
アベルは帰国後、妻と娘に再会することができた。しかし、ソ連が公的にアベルをスパイと認めることは、終ぞなかった。
解放されたパワーズはその後、1977年にヘリコプターの墜落事故で死亡。プライヤーは1962年に経済学博士として活躍している。
ドノヴァンは、ケネディ大統領から直々に、ピッグス湾での捕虜たちを解放するための任務を受け、交渉人として多くの人々を救うのであった。

『ブリッジ・オブ・スパイ』の登場人物・キャラクター

主要人物

ジェームズ・ドノヴァン(演:トム・ハンクス)

日本語吹替:江原正士
本作の主人公。アイルランド系アメリカ人の弁護士。以前は検察官として活躍していたやり手の弁護士だが、現在は刑事裁判から遠ざかり、主に保険関係の裁判を担当している。政府からの依頼でアベルの弁護をするよう申し渡され、彼の祖国への愛と人柄を見て、負け戦と言われた裁判で判決を少しでも軽くしようと尽力し、徐々に信頼関係を築く。依頼に熱心に取り組むあまり世間のバッシングに晒され、CIAや仲間、家族からも苦言を呈されるが、屈することなく裁判を最後まで戦い抜いた。最後の手段として、将来直面するかもしれない捕虜交換の切り札を残すことを理由に挙げ、死刑の回避を判事に直談判し減刑に成功する。裁判後はCIAの依頼で単身東ベルリンへ向かい、ソ連に拘束されたパワーズをアベルと交換する交渉を行った。さらに留学生のプライヤーも逮捕されていることを知り、彼の解放までもを交渉、それをまとめ上げる手腕を見せた。コーヒーの好みは砂糖2つとミルクを入れた、甘いネスカフェ。

ルドルフ・アベル(演:マーク・ライランス)

日本語吹き替え:佐々木敏
ドイツ系ロシア人のソ連諜報員。ブルックリンで画家に扮してスパイ活動を行っていたが、FBIに逮捕される。恩赦をちらつかされて情報提供を求められるが、祖国への愛と強い忠誠から断固として拒否して拘留されていた。死を恐れず、不利な状況でも冷静さを保つ強固なさと、自分を救うために闘ってくれるドノヴァンと、彼の家族に被害が及ぶことを心配する優しさを持つ。クラシック音楽を聴くことと絵を描くことが趣味で、絵に関しては並外れた才能がある。物語終盤、友情と感謝の証としてドノヴァンに肖像画を贈った。

捕虜となった男たち

keeper
keeper
@keeper

目次 - Contents