スティーブン・スピルバーグ作 映画「ブリッジ・オブ・スパイ」に見る人権の在り方

東西冷戦下の1960年に実際に起きた事件を題材にした今作は、スティーブン・スピルバーグ監督とトム・ハンクスがタッグを組んだサスペンス映画。冷たい雪の吹き荒ぶ中、弁護士の孤独な戦いが濃厚なタッチで描かれています。映画「ブリッジ・オブ・スパイ」をご紹介致します。

あらすじ・ストーリー

アメリカとソ連の冷戦のさなか、保険関連の敏腕弁護士ドノヴァン(トム・ハンクス)は、ソ連のスパイであるアベル(マーク・ライランス)の弁護を引き受ける。その後ドノヴァンの弁護により、アベルは死刑を免れ懲役刑となった。5年後、アメリカがソ連に送り込んだ偵察機が撃墜され、乗組員が捕獲される。ジェームズは、CIAから自分が弁護したアベルとアメリカ人乗組員のパワーズ(オースティン・ストウェル)の交換という任務を任され……。

出典: movies.yahoo.co.jp

前半は人権の在り方、後半は人間の良心を描いている

この映画は大きく分けて2つのパートに分けられます。前半はトム・ハンクス演じる弁護士がスパイ容疑のかかった男を弁護し、終身刑が濃厚だった状況から見事に懲役刑を勝ち取るという物語が描かれています。スパイに対する冷酷な国民感情が丁寧にかつ荒々しく描写され、それに立ち向かう弁護士の蛮勇ともいえる言動が一際煌めく。彼はスパイをというよりも、人間を守ったのではないでしょうか。自らの信念を貫き通す姿勢はいついかなる時においても美しいものだと改めて感じました。

後半は人質同士の交換という、この映画で最も重要なパートです。奔走するトム・ハンクスに相手国から、また味方であるはずの自国からも様々なプレッシャーが襲い掛かります。しかし、ここにおいても彼の信念は変わらない。自らが最善と信じたものに向かって突き進んでいきます。最後に示されるのは人間に残された良心。打算的な思惑の向こう側に示されたその清らかな心を、誰もが持っているのだと信じたくなりました。

決して派手ではない、しかし思わず魅入ってしまうシーンの数々

この映画に派手なシーンはありません。サスペンス映画とジャンル付けされているものの、実際はヒューマンドラマに近い。アクションシーンはないし、爆発もなし。どんでん返しもなければ、膝を打つような奇抜な設定も皆無。それでいてどうしてこんなにも惹き込まれてしまうのでしょうか。俳優の演技もあるでしょうし、監督の洗練された技術のおかげでもあるでしょう。しかし、最も大切なのはリアル。圧倒的なリアリティです。

描かれているのは国家における危機といった、大きな出来事。しかし、それらの出来事は我々の実生活にも当てはめられるものです。人々の悪意の発露だったり、信念を捻じ曲げた妥協。これらは実際に起こり得ることなんですよね。丁寧かつ静かに描かれたシーンの数々に魅入られるのは、おそらくそれらを荒唐無稽な話ではなく、実体験染みたものとして受け止めているからではないでしょうか。

まとめ

さすがと言うべきか、スティーブン・スピルバーグの作る映画にハズレはありませんね。あまり映画に詳しくない私でも、彼の作る映画が他のものと一線を画すものだということだけは分かります。良い映画というのはやはりきちんと人間を描いています。展開ありきではなく、人間をその世界に落とし込んで映画を作り上げていく。スティーブン・スピルバーグ監督が作り上げた作品の中でも、トップクラスの映画。ぜひご観賞ください。

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