【和服の女】恐怖の都市伝説まとめ!背筋が凍る怖い話が満載【田舎の神社】

怖いと有名な都市伝説をまとめました。「和服の女」や「田舎の神社」など、身近にありそうな恐怖を綴ったものを掲載。背筋が凍るような都市伝説の数々を紹介していきます。

今から14年程前、地元S県にて俺の身に起こった話を投下する。
まずもって先に言っておくが俺は神仏への信仰心は皆無だ。俺の通っていた高校はとある有名な仏教高校で高尚な寺と密接関係にあったがそこの住職共は高級な車を乗り回して派手な生活送ってたからな。
所詮は金儲けのツールなんだって事をガキの頃から思ってたんだな。
困ったら神頼みで自分で行動しようとしない敬虔な信者様達にも反吐が出ちゃうしな。
その考えは今でも変わらない、変えたくはないが、あの時俺の身に起きた事がたまたまなのか、何かの因果が働いての事だかはわからない。判断はお前等に任せる。

前置きが長くなってスマン。早速本題に入ろう。
あれは俺が高校2年の時だから西暦2000年だな。
平成12年。登場人物は俺と同い年の従兄弟。
俺達は電車で一駅離れた所に住んでいて同じ高校に通っていたんだ。よく泊りにいったりして遊んでいたっけな。
こっからの話は今となっちゃー証拠がねぇから信じる信じないはお前等に任せるがまぁ聞いてくれ。
夏休みのある日の夜、時間は深夜0時頃だな。俺はスーファミでLIVEALIVEをやっててな。
SF編のベヒーモスで心臓バクバクしてたら急に携帯が鳴ったんで軽くチビったね。
俺「こんな時間に電話してくんなよ!なんかあったんかこの暇人が!」
俺は電話越しの従兄弟に今の状況を伝えたよ。
従兄弟「今時スーファミなんかやってるのお前ぐらいやで...。どうでもいいけどヤバイ事になった、今すぐ俺の家に来てくれ!頼む!」
いやいや、完全に無理だと思ったね。チャリで行くのに1時間は掛かるし、夜中の国道沿いは暴走族がいてカツアゲ必死だし、なによりもう眠てーしダルい。

俺「悪りい、もう眠てーし明日朝からバイトなんだわ」
俺の従兄弟は本当にいい奴でこんな見え見えの嘘でも普段なら信じてくれる。
でも今回は明らかに様子が違ったんだな。
従兄弟「今からタクシー会社に電話してお前の家の前の郵便局に向かわせる。勿論金は俺が出す。あとバイトも休んでくれ。金は出す。」
ドケチで経済感覚のしっかりした従兄弟の思わね発言になんかヤバイ事が起こったと思ったね。
風俗街のチンピラと揉めたか?ヤンキーに目ぇつけられたか?
俺「何があった?行く、行かないはそれを聞いてからだわ」
従兄弟「この前俺の部屋でお前の写真撮ったやろ?変やねん。変なもん写ってるねん。怖すぎて寝れへん。早よきてくれ」
コイツが俺に泣き言を抜かすなんてそうそうない事だ。
俺「ゆ、幽霊的な何かが写ってるとでも?」
従兄弟「幽霊は写ってないよ」
俺「は?どういう事?」
従兄弟「お前の右腕がめっさ太い。黒い。お前の腕じゃないってコレ。」
俺はそれ聞いて爆笑したね。
俺「おまwwwそれ影とかちゃうのん?w」
従兄弟「お前がピースしてたの俺の部屋の南側の窓やぞ!これがどういう意味かわかるか!?」
背筋がゾッとした。普段気にも留めて居なかったんだが、従兄弟の家の南側にとある寺が建っている。
そして従兄弟の部屋は二階にあり丁度寺の中にある墓地が見えるんだ。

俺「その写真撮ったの夜やったっけ?」
従兄弟「おう。お前のバックの窓は真っ暗やで。てか影とかそういうレベルじゃない。太すぎ。黒過ぎ。」
俺「今すぐ行くわ。」
俺は暫くして従兄弟が手配したタクシーに乗込んだ。
ずっと背筋に悪寒を感じてはいたが、仏教高校の生徒手帳を持っていき、そこに書いてある般若心経を心の中で唱え続けて気を紛らわした。
家に着きさっそく部屋に向かうと従兄弟も生徒手帳をガン見して般若心経をブツブツ唱えてて爆笑したね。
それを見て従兄弟が激昂したけど俺がポケットから生徒手帳を出して見せると奴も爆笑してくれた。
流石に血が繋がってるだけはある。

俺は早速本題を切り出した。
俺「で?写真は?」
従兄弟「ほれ!」
そこにはインスタントカメラに向かって右肘を90度に曲げてピースをしている俺がいた。そして従兄弟の言う通り。
肘から手首までの部分が肩から肘までより太い。そして深い紫掛かった様に黒い。
俺「何これ、この写真ありえへんくない?なに?」
従兄弟「俺も見た瞬間凍り付いたわ。」
俺「なぁ、これネガ確認した?」
従兄弟「それやねん、そこ確認したかったんやけど怖すぎて1人じゃ無理でな。机の上のジャンプの下にあるわ。」
俺はジャンプを投げ捨てネガを見た瞬間手がガタガタ震えたね。
なんか俺の腕を白い手が掴んでんの。現像した写真じゃー黒くて太いだけ。
ネガだとそれプラス白い手が掴んでる。

それ見て2人で震えたね。震えまくったね。
俺は写真の中で腕バグってるし従兄弟は自分の部屋で撮った写真がバグってるんだもの。
お互い他人事じゃねーからな。結局朝までプレステのトマランナーっていう
知る人ぞ知る名作を朝までプレイして一睡も出来なかったね。
俺が操作をミスる度に従兄弟が俺の右腕見てきやがるから
俺もムカついて負けじと南側の窓ガン見してやったね。
そんなこんなで険悪なムードの中朝の6時半ぐらいかな?
従兄弟の母。まぁ俺の叔母が部屋に入って来たんだよ。
そっからはテンプレ展開でさ。夏休みの宿題はやったのかだとか、俺の親には言ってここに来たのだとか。
そしたら従兄弟が早速切り出したんだ。

従兄弟「この写真とネガ見て。あの寺なんか曰くつき?」
そっから叔母から聞いた話を要約するとだね。
1.俺達の生まれ育った街はその昔織田信長に焼き討ちされて多くの人が無念の内に亡くなったこと。
2.件の寺は焼き討ちは免れたものの寺の名前が聖衆が亡者を迎えに行くという意である事。
以上2点からの推論として夏の御盆時期でこの地に成仏できない霊がこの寺に集まってきており、
マヌケな顔した俺のピースポーズに激昂して霊がちょっかい出してきたんじゃない?との事だった。

叔母は随分軽く言ってくれるがこちとら洒落にならない。
笑い事じゃないと憤ると今から寺に行ってお祓いして来いとの事だったので、
叔母の作ってくれた朝食を喉に流し込み従兄弟と2人でその件の寺に訪れた。
その寺には俺達の祖父の墓もあったので墓参りがてら住職に話をしてみたんだな。
そしたら開口1番こう言うわけ。
住職「これはまた悪い奴に捕まったなぁ。このままやと持ってかれるでぇ。」
俺「え?何持ってかれますの?命的なもんですか?」
住職「いや、腕や腕。見たまんまやな。ネガに写ってる白い手。これお兄さんの腕欲しい言うてますわ。」
俺「何とかなりませんか?お祓いとかお願いしたいんですけど...」
住職「なんとかして挙げたいんですけどこの時期はウチでは祓えませんのやわ。
逆に迎え入れなあかんもんですから。
とはいえこのままではお兄さんが危ないな。ちょっとそこでまっててな。」

俺は身体中の汗が冷たくなってくのを感じてたね。
だって目の前の坊さんがなんの迷いもなく俺の腕持っていかれるとか言うんだもの。
こういうのって当事者になるとなんの根拠が無くても死ぬ程震えあがるモンだと痛感したよ。
んで坊さんが帰ってきたんだけどどっかに電話してたみたいでさ。
住職「兄さん今日暇?話つけといたさかい時間あるなら話聞いて貰い。お祓いしてくれるかどうかはそれからやと思うけど。」
俺「暇です!今すぐ行きます!何処に行けばええんですか?」
住職「○っさんやで。場所わかるやろ?」○っさんとは○○神社の略称であり俺達の通う高校の目と鼻の先にある馴染みある場所だ。
かつては織田信長の焼き討ちにより灰燼と帰せられたが秀吉によって熱心に復興されたとかなんとか。
鬼門除け、災難除けで有名な由緒ある神社だと住職から伺った。

俺は従兄弟のチャリの後ろに乗った。
従兄弟は夏のクソ暑い中一睡もして居ないのに立ち漕ぎで急な上り坂をグングン飛ばし神社に向かってくれた。
境内に入り色んな人に事の顛末を話し、住職から連絡を受けた方と落ち合う事ができた。
その方に写真とネガを見せた後、帰ってきた言葉はなんとも残酷なものだったね。
この方はAさんとしようか。
A「お祓いはさせて頂きます。しかしこれはチョイとばかりタチが悪い。さらにこの土地のこの時期。
そして水辺が近しい位置関係。タイミングが悪い。」
俺はAさんの弱気な発言にかなり戸惑ったね。
俺「つまりどういう事でしょう?一応お祓いはしてみるけど的な?」
A「そうですね。祓える事は極めて難しいでしょう。ニュアンスとしては抑え込むって事になるかな?
極論いうと何らかの厄災は避けられない。けど事象を最小限に抑える施しは出来るかと。」
俺「そこをなんとかなりませんか?」
普段から俺は無宗派、無信仰だと公言していたがこの時は何かに縋りたい一心だったね。
しかしAさんの口からは俺の求める救いの言葉はでてこないんだな。
A「この土地を離れるのが1番でしょう。しかし貴方まだ学生さんでしょう?ならば卒業まで極力湖に近づかない事。
高校出たら県外に出る事をお勧めします。この白い手は湖から来てますので。」

いやいやいやちょっと待ってAさん。俺の地元はバカでかい湖があるんだって。
無理だって。心の底からそう思ったね。てかここまで言うと俺の地元特定余裕だな。
その後、写真、ネガをお祓いの儀式?と一緒に焼却処分して頂き俺達は帰路に着いた。
まぁそれが8月の頭ぐらいの話でさ、それからは平々凡々とした日々を送っていて
御盆も無事過ぎた頃にはもうそんな事頭の中からどっかいっちゃっててさ。
たかだか2週間ぐらいで忘れちまうなんて。ほんとバカだよな。

てかチョット長くなり過ぎたな。
結論から先書くけど8月後半。俺の右腕。いや正確には右肘から手首までの間だな。もう見事なまでにぐっちゃぐちゃ。針金8本ぶっ差しす大手術。手術台の上で見た俺の腕がさ。あの写真と同じぐらい太く腫れ上がってて青黒くて泣けてきたね。

まぁここから先は暇な奴だけ読んでくれ。

御盆辺りから変な夢見る様になったんだ。女の笑い声がきゃっきゃ聞こえるのよ。
悲鳴のような甲高い笑い声。んで金縛りで身体動かねーんだけどさ、
ジェットコースター乗ると恐怖で胸がすくむ感覚あるやん?あの感じ。
ジェットコースター乗ってるような感覚で女の笑い声。
でも起きると忘れてるのよ。でまた寝ると同じ夢。夢の中で始めてわかるんだわ。あ、またか、って。
そんでさ、8月後半のある日にさ、丁度ツレと用事があって
湖の近くの大きい道路を借り物の原付で走ってたんだわ。

そしたら突然よ?
たかだか時速40kmぐらいなのにあのジェットコースターに乗ってるような感覚が突然襲ってきたと思ったら女の笑い声が爆音で頭の中に響くのよ。
きゃっきゃうるせーったらありゃしねー。この時始めて夢で見ていた事を現実で認識したんだわ。
そんでもって今俺が湖の近くに来てしまっている事。これから何かヤバイ事が起きる事。色んな思考が一瞬の内に頭の中で渦巻いてさ。
Aさんの顔が浮かんで物凄く後悔したね。そんでもって俺の出した結論はバイクのブレーキを握って停車することだったんだけどさ。
俺は車の左を並走してて後ろに単車が居たから止まれねーんだなこれが。

あーあ、しかし女の笑い声うっせーな怖ぇーな畜生なんて思ってたら突然その時がきたのよ。「パチンッ」つって。
ヘルメットの固定具が急に外れてさ、ヘルメットを頭じゃ無くて顔で被ってる状態。もう視界ゼロ。頭の中でレッドシグナル全開。
咄嗟に左手でヘルメットを取ろうした時には時すでにお寿司な訳さ。気付いたら俺は血塗れでバス停の前に転がっててさ。大量に出血すると目の前に砂嵐が掛かって視界がボヤけるんだな。
んでもって右腕に関節が一つ増えててまーだジェットコースターの感覚と女の笑い声が止まんねーの。そこで気ぃ失って気付いたら家だったよ。
手術は明日の朝一だとさ。痛くて眠れねーよなんて思ったけどその日からジェットコースターと女の笑い声が止まってくれて思いの他爆睡出来たっけな。

後日ツレから聞いた話だと。あの日俺がツレの後ろ走ってたんだけど、ツレとは結構車間距離開けて走ってたんだ。
ツレの斜め前に赤い軽自動車が走ってたらしいんだが急にウインカーも出さずに左手のバス停(停留所。ちょとした凹み)に入って行ったんだと。
ツレも軽自動車に突っ込むと思って急ブレーキしたら間一髪で止まれてホッとしてたら俺がノーブレーキでツレの原付に突っ込んだらしいわ。

そんで血塗れ。あん時の住職さんが言った通り見事に右腕持って行かれましたって話。

色んな事があったんだけどこの事故がたまたまなのかあの写真に起因する事なのか俺にはわからない。
後日談としては従兄弟はそれ以降部屋にカーテンを買って夜は窓を見ないようにしてたらしい。
俺は1年以上に及ぶリハビリを経て右腕を無事取り戻す事ができた。もしあの時お祓いに行ってなければ腕が千切れて居たかも知れないと思うとゾッとする。
あとこの話ほぼフェイク入れてないので俺の事特定出来る人余裕で居ると思うけどそっとしといてね。
出典 http://syarecowa.moo.jp/320/10.html

執着

ゴールデンウィークに孫たちが帰省しなかったことへの寂しさからか
祖母が電話口で興味深いことを言ってた。

子供というのは何かに執着を見せるものだ。
その対象は、水、火、石だ、と。男児に多いとも言ってた。

それぞれに危険があり、そのこが何に執着をみせるのか知るためにも、
田舎があるものは子を連れて田舎で生活する時間を持つべきだ、みたいなことを言ってた。

とりあえず一番危険なのが水に執着する子。
そういう子は用もなく川なんかに出かける。理由はわからない。
呼ばれる、という言い方をすることもある。

おれは渓流釣りや魚獲りが好きでよく川に出かけたが、はじめは祖父母によく注意された。
一人で行くなと。
ただ、松の木やライターや塩を持参していたり(魚を焼いて食うため)、
よくよく話をすれば、おれの興味は魚をとることで、
どちらかというと火が好きだということがわかり水の心配はあまりなさそうだと安心したという。

オカルトというよりも、確立統計的で現実的な話なんだろうが、川なんかが好きな子は
やっぱり溺死してしまうことが多く、水に執着を感じさせる子は目を離さないように、と。

ところで、渓流釣りなんかやる人には通じる感覚なのではないかと思うけど、
川辺に立って釣り糸を流し、川面を見ているとボーっとして意識が飛んでるときがある。
そういう時って、ふと我に帰ると足元で魚が腹を見せて背中をこすっていたり、
驚くほど自分が自然に溶け込めていたりする。

でも、そういう時間があぶないちゃあぶないのかな、と思う。

火に執着するというのは一番わかりづらいのだそうだ。

たいてい隠れて煙草吸ってみるとか、そういうのとセットになってるから。
本人自身も、自分が火を見たいのか煙草を吸ってみたいのか自覚を持ちにくい。

自分が火をすきなのだと気づくのは、たいてい一人のときで、無意味な火遊びをするものだという。

おれは完全にこのタイプで、小学生のころやたらにライターが欲しかった時期がある。
ターボライターとか、オイルマッチとか小遣いためてはいろいろ買っていた。

ライターが好きだと思ってたんだけど、火に魅せられてたんだな、と振り返って思う。

これも現実的な話なんだけど、そういう子は、家燃やしちゃったりすると。
でも、そいつ自身が火の元なので、案外身の危険にさらされたりはしないのだそうだ。
一番先に逃げられるから。

やっかいなのはうそつきになること。
自分が原因の火事を起こし逃げる時間があるものだから、言い訳を考えたりする。

おれは幸い火事を起こしたことはないけれど。

石に執着する子。
おれはまったくその気がないからわからないんだが、外へ遊びにでて石拾って帰ってくる子。
俺の友達にもいたが、何が面白いのかよくわからなかった。

これが一番オカルトな感じがするんだけど、祖母の言い方を借りれば、
人や縁に関わる不幸を招くんだそうだ。

しかも、それがいつどういった不幸を招くのかまったくわからないから、手に負えないと。
適当なことを言って注意すれば、拾ってこなくなるだろうが、問題なのは、石の中には、
一発大当たりなものがあることらしい。

つまり、その石に興味持っちゃった時点で作用してしまうものがあるということ。

そういう子は何か起きる前にお払いだとか、見てもらうとかしてもらえと。

特に体験も物語もないけど、なんとなく、身に覚えのある話だったので書いてみました。
けっこう、当てはまる人、多いんじゃないかな。
出典 http://syarecowa.moo.jp/320/11.html

管理人室

大学生の頃の話
俺は下宿近くにある定食屋で出前のアルバイトをしていた
まあ本業の片手間の出前サービスって感じで電話応対や√検索、
梱包、配達まで調理以外のをほぼ全てを俺一人でこなすという感じだ
客の大半は俺と同じように大学近くで下宿する学生なので1年もバイトをすれば
寮の名前や位置は勿論、どんな人が住んでるかってのが大体わかってくる

その日もいつも通り数件の配達をこなしてそろそろ上がりっていう時に
店の電話が鳴った。以下はその時の会話

「毎度ありがとうございます、○○(定食屋の名前)です」

「宅配をお願いします」

「ありがとうございます。それではお名前とご住所、お電話番号をお願いいたします」

声の主の返事はなかった
自分の住所を正確に把握していない人は経験上割といたのできっと調べているのだろうと
その時の俺は別段気にすることもなく返事を待つことにした
案の定暫くすると

「A田、○○町△△□□番地、080-~」

という返答があり俺も一安心。その後はいつも通りオーダーをとった
ゼンリンで調べると名前からしていかにもな学生マンションの場所に一致した
商品を荷台に乗せ原付で走って5分程度、農道を少し入ったところにそのマンションはあった
結構大きい建物だったので遠目に見たことは何度かあるが近くに行ったのはその日が初めて
鉄骨4階建てのかなり年季の入った趣、外観だけ見てもボロいことはすぐにわかった
21時を過ぎたそこそこ遅い時間なのに灯り一つついていない
正直家賃1万円でもここには住みたくないというのが俺の感想

ここで俺は初歩的なミスに気付いた。部屋番号を聞くのを忘れていたのだ。
こういうミスがあった場合は大体俺の携帯から客に直接電話するのだが、突然知らない番号
から、特に携帯電話から掛かってきた電話を取る人間はそういない
若干気落ちしながらもとりあえずメモを片手にコールする
相手が出たのは驚くほど速かった

「もしもs」

「管理人室ですよ」

そのあまりの察しの良さは気味が悪かったがとりあえずお礼を言い、立てつけの悪そうな
戸を開けてエントランスに入った
暗い、遠くの道を走る車の音が聞こえるぐらいの静寂。人の気配が全くしない
引き戸の扉が左右に並ぶ廊下が続く、廊下の蛍光灯は点いていない
スイッチを探す手間よりもさっさと届けて帰りたいという気持ちが強かったのでそのまま
奥に進み管理人室の戸をノックする
ガラガラと戸が開いた、部屋からの光が廊下に漏れる
声のイメージ通りのヒョロっとした風貌の男性が

「遅い時間にすみません」

と迎えてくれた
俺は部屋の灯りとその丁寧な対応に安心してしまい

「暗かったからここまで来るのが凄く怖かったですよ」

なんて冗談交じりの営業トークが出来るぐらいの余裕は取り戻した
その後受け渡しと支払いは滞りなく終わり俺は帰路についた
それから閉店の22時までは店長とダベりながら掃除や片づけをし、今日の売り上げの
清算をするいつもの流れに戻った

注文を取った伝票を照らし合わせながら電卓で計算していくと2000円以上売り上げが
不足していた
10円やそこらの差額はたまにあり、自分の財布からこっそり足すことはあったが
この差額はあまりにも大きい
横で清算を見ていた店長も

「心当たりは?」

と首をかしげていた
札一枚どこかで落としたなんてことは有り得るが料金があまりにも中途半端なので
今日宅配で回った伝票の額と差額を照らし合わせていく
答えはすぐに出た、あのマンションに宅配にいった時の伝票に書いてあった額だけが
すっぽり抜け落ちていた
恐らく○○学生マンションを訪問して帰るまでにお金をどこかに忘れてきたという
ことを説明すると店長は更に首をかしげながらこう言った

「マンションの名前間違ってるんじゃないか?もう一回ちゃんと調べてみろ」

指示の意図がよくわからずもう一度ゼンリンを開き住所の場所を指すと
店長は奥から持ってきた学生寮の住所や大家さんの電話番号が
記録されてるノートをめくりながら更にウンウンと唸っていた
俺は差額について特に咎められることもなく賄いを食べその日は下宿に帰った
普段は結構口を酸っぱくして指導するタイプの店長がこの日に限ってこんな
なぁなぁな対応だった理由を知るのはその数日後のこと

次のシフトに入った時、店長から

「もしこの前のA田さんからの注文来たらやんわりな」

というお達しがあった
これは理由を付けてやんわり断れという意味だ
いたずら電話だったり悪質なクレーマーに店がこの措置を取ることは以前から
知っていたがいきなりすぎたので俺も

「何かあったんですか?」

と質問してしまった
店長は「まあちょっと○○(俺)にも気味の悪い話で悪いんだけど」という前置きで
煙草をふかしながら話し始めた
あの学生マンションは5、6年ぐらい前までは店の常連だった人が経営していた
らしく、その繋がりで結構住人にも贔屓にしていたそうだ
しかし、その常連さんが病死してからは管理する人間がいなくなったことで学生寮は閉鎖
まあ学生寮の閉鎖自体はここ数年の流れを見てもそこまで珍しいことではない
というのが店長の談
そんな事情があったからこそ先日そのマンションに宅配に行ったという俺の話を聞き
もしかすると親族の人間が新しく経営し始めたんじゃないかと思い昨日の昼間、
挨拶と下見も兼ねて寮まで行ってきたそうだ

だが、寮は荒れ果てたままでどう考えても人の住んでいる感じではなかったらしい
やっぱり俺の間違いだったという結論でそのまま帰ろうとしたとき
管理人室から

「どうぞ」

という籠った声が突然聞こえたらしい
かなり驚いたらしく、その場で固まっていたらしいが

「どうぞ」

という声がもう一度聞こえたので恐る恐る戸を開けると中は朽ちかけで
何度か呼んだがその後返事はなかったらしい
店長は寮を飛び出して真昼間にもかかわらず一目散に逃げた
足元を見た店長は気付いたそうだ
先日俺が運んだであろう料理が床にぶちまけられていることに

それ以上は聞きたくなかった
幽霊にしろ何にしろ俺はそのわけのわからない寮でわけのわからないものと
談笑しちまったんだから
俺が控えていた電話番号にも電話したみたいだが繋がらなかったらしい
勿論俺は発信履歴を削除した

数か月後俺は店を辞めた
1年半勤めたのでそろそろ環境を変えてみたいというのは建前
仕事をしているとどうしてもあの時のことが脳裏をよぎった

辞めることを決定付けたのはその出来事から1ヶ月と少し経った頃
再び例のA田から電話があった
俺はわざと店長に聞こえるように「A田様ですね?」と声が震えるのを必死に
抑えながら復唱し、それを察した店長が「替われ」とジェスチャー
出前のサービスは暫く見合わせてると嘘をついていた
電話を切る間際、店長の顔が明らかに動揺しているのがわかった
店長が俺を見て一言

「今から店に来るみたい」

もう限界だった
その日、結局A田を名乗るものは来なかった

俺は都市部に住居を移したしバイトを辞めたしで店と疎遠になり
それ以降のことは知らない

おわり
出典 http://syarecowa.moo.jp/311/4.html

白いワンピースの女

自分は小中高と、全寮制の学校に通っていた。
凄いド田舎で、そこそこに古い学校。文字通り山の中にある。
トイレの掃除とか凄かったんだ、夏が近づくと必ず排水溝とかにゲジゲジって呼ばれてる
気持ち悪い毛だらけの長い虫が潜んでて、これの退治がもう大変。
狸もよく見かけたし、雉もいた。
裏庭に生徒が何人か集まって許可取って畑作ったり。

そういう場所だから怪談話にも事欠かない。
というか、教師からして結構警戒している節があった。
なんせ、この学校では大分昔とはいえ、死者が出てたから。
事件性も何もない、ただの発作らしいけどね。
自分自身も結構色んな体験したけど、今回は学校でも有名だった白い女の話。

全寮制だから先輩達との距離もかなり近いし、夜中に集まって
怪談話なんてのも結構やった。
小学生の時に編入したんだが、入ったばかりの時にいた高3の先輩2人(以下A先輩とB先輩)が
語り口が凄く上手いんだ。
ベッドで寝てたら金縛りにあって、目をあけたらおっさんの顔が覗き込んでたとか、
割とありふれた話でも、その2人の先輩が話すと怖く聞こえた。

我が寮は5階建てで、自分達が使ってたのは4階だった。
5階は掃除もされてないし、自分達が使うまでは放置されてた建物らしく
雰囲気も不気味。下らない落書きなんかもそこかしこにあって
階段の踊り場まで行って覗き込むことはあっても、
実際に立ち入る程勇気のある奴はいなかった。

だけど、文化祭とかそういうもので、終わったらもう二度と使わないけど
捨てるのも忍びないガラクタみたいな荷物、出るだろ。
あれを仕舞うスペースがなくなったっていうんで、5階に運び込むことになった。
それをやることになったのは、A先輩達だった。

2人は仲良かったし、真面目だったから、いつも通りてきぱき頼まれた仕事をこなしていたらしい。
運び込むのは5階に入って直ぐの部屋だったし。
ただ、埃が物凄いからってんで、一旦中断して掃除をすることになった。
部屋だけでなく、この際だから徹底的に5階全体を。
学校が終わったあとの作業だから、夜19時くらいは回っていたんじゃないだろうか。
異変が起きた――というか、異変に出会ったのは、階段から見て一番奥にある部屋だったそうだ。

寮の部屋はどこも同じ作りで、例えるなら長方形の両端4/1がベッドスペースとして区切られ、
真ん中の部分は勉強机が並んでいて、ドアの真向かいに窓がある。
つまり、扉を開ければ直ぐ窓が見える構造。
当然、5階は使われてなかったからカーテンは閉まってる。
まず、A先輩の方がその部屋に掃除の為に箒とちりとりを持って入った。
夜中だから、暗い。
すぐ下の4階の部屋は自分達が使ってるから灯りが漏れていて、それだけがカーテンを通して
暗い部屋をぼんやりと照らしていた。

入ってすぐに気付いたと、先輩は言った。
閉じられたカーテン、当然床との間には隙間がある。
その隙間に、白い女の両足が見えた。
膝上の、白いワンピースの様な服を着ていたという。
上半身は分からない。カーテンに隠れている。

だけど、足が見えただけなら不審人物が侵入していたってオチもあるかもしれない。
そうじゃない、そこにいたのが人間じゃないという証拠は、すぐ目の前にあった。
下から漏れた灯りがカーテンを透かして部屋を照らす。
だが、そこに、
カーテンの後ろに隠れていると思われる女の影は、映らない。
ああ、人間じゃないなって気付いてすぐに、先輩は扉を閉じた。
B先輩が、様子がおかしいことに気付いてどうしたって声をかけてきたから、
A先輩は自分が見た物をそのまま伝えて、2人で話し合った結果
「夜は入らない方がいい」
という結論に達して、5階大清掃計画は半ばまで進んだところでおじゃんになった。

先輩達がそんな思い出話をしてくれて、自分達は顔を見合わせた。
その体験談は話してくれた時の大体2年前くらいのことだったんだが、
それから、色んな生徒が、結構な頻度で、
白いワンピースの女を見ているのだ。
自分も見た……というか、20人くらいは目撃していた。
共通点は、白い肌、白いワンピース(場合によっては上半身が見えないのでそれっぽいもの)、女、
黒髪ロングのストレート。日本の幽霊像のテンプレみたいな感じだ。
ただし、ほとんどの場合余り危険を感じないというのも共通している。
いわゆる浮遊霊みたいなものだと皆が納得していた。
でも、事件は起きた。

学校の裏門を出てすぐの道の向かい側に、山の中に埋もれた
小さな神社がある。寂れてて、氏子なんて絶対いないような
神社っていうよりほこらっていったほうが正しい感じのが。
長くて狭くて小っちゃい石段を越えると粗末な鳥居の先にあるのな。
寮生の間じゃちょっとした逢い引きスポットと化してたんだ。
ある日、何の気なしに後輩(以下C)がそこに向かった。
ただの暇つぶしのつもりだったんだろう。

その石段の前に白いワンピースの女がいた。
すぐに噂の奴だと気付いて、Cは目を合わせないように俯いたそうだ。
俯いたら当然相手の足しか見えない。
なのに、何故か、女の視線がこっちに向いたと分かった。
Cは急いで裏門に戻って振り返らずに学校へ戻った。
学校の玄関口に入るまで、背中をずっと視線が追ってきたという。
その話を聞いて自分も含めてほとんどが、
「あの女なら大丈夫だろ」
とCを宥めていた。
今思うと無責任なことを言ったと思う。
Cは確かに、「やばい」と感じていたのだから。

次の日、Cは、4階から飛び降りた。
死にはしなかった。偶然にも、渡り廊下の屋根の上に落ちたので
クッションが効いたのだと教師は説明していた。
だけど、Cの右腕は肩から切り落とされた。
後日Cから話を聞いた所によると、窓から外を眺めていた時に、
背中から、突然、女の視線が湧いたそうだ。
視線が湧くなんて意味が分からないが、感じたままに表現するとそうなるらしい。
咄嗟に逃げようとしたが、振り向くことも出来ず、
結果的に、視線に押される様に窓から身を投げたのだと。

その女は今も寮に、特に自分が住んでいた寮の5階にいると聞いている。
困ったことに、自分の在学中に5階は大幅なリフォームがされ
明るい部屋の並んだ階となって、寮生達も部屋として使うようになったのに。
ふと目を覚ますと、窓際に見えるという。
女の足が。
Cの事件以来、後輩には、
女を一瞬でも見たら絶対に近づくな、目も合わせるな、自分がいることを気付かれないようにしろ、
と伝えるのが、一種の伝統になった。
フェイスブックなんかで後輩の話を聞くに、あれ以降被害は出てないらしいが。
それでも、女を見る生徒の数は、増えるばかりだ。
出典 http://syarecowa.moo.jp/312/3.html

間一髪

霊の話じゃないんだけど

私はひとつ癖がある
一人暮らしをしているんだけど
マンションの部屋に入ってドアが閉まったその瞬間に鍵をかける癖
もうたぶん、1ミリか2ミリくらい残して閉まりきってないくらいにガチャってやる
鍵の閉め忘れがあるといけないからすぐ閉めるのが習慣になっていつの間にかはじめてた

ある日のことなんだけど
いつものように家に帰ってドアが閉まるや否やガチャ
そしたらほぼ同時にノブがガチャガチャ

もうビクっとして覗き穴から見たらホームレス風のオッサン
マジ怖かった
出典 http://syarecowa.moo.jp/nanikowa/3/45.html

りゅうちゃん

私は所謂「見える人」だ。
といっても「見える」「会話する」ぐらいで他に特別な事が出来るわけではない。
例えば分かり易く事故現場にボケっと突っ立つ、どことなく色の薄い青年。私と目が合うと照れくさそうに目を逸らす。
20余年こんな自分と付き合っていて、生きている人間と同じくらいの「何か」に引き留められている色の薄い(元)人を見てきたが、
彼らがこちらに害を加えようとした事はほとんど無い。
ある人は何かを考えこんでいるような。またある人は虚空を睨むように、その場に留まっている。
自由自在に移動しているような奴は本当に極稀である。
正直、オカルト好きな私にとってこの体質は非常に有難い。ラッキーと思っているくらいだ。
これまで「オカルト好き」と「見える」のお陰で色んな体験をしてきたが、私は私の体質が生来のモノなのかどうか知らない。
記憶に残る一番幼い頃の話をしようと思う。

私の実家は近江で神社をしている。
店でも開いているような口ぶりだが、父、祖父、曾祖父…かれこれ300年は続いているそれなりの神社だ。
幼稚園に行くか行かないかぐらいの時分。毎日境内を走り回っていた私はある日、社務所の裏手にある小山にこれまた小さな池を発見した。
とても水が透き通っていて1m弱の底がとても良く見えた。脇には当時の私の背丈をゆうに超える岩がある。
私はその岩によじ登ってはすべり降り、よじ登ってはすべり降りるという何が面白いかよくわからん遊びに夢中になっていた。
何回目かの着地後、不意に気がついた。地面を見つめる私の視界に、草履を履いた小さな足があった。
顔を上げると前方に浅葱色の変な着物(じんべいみたいな服)を着た私より少し大きいくらいの男の子が立っている。
私が何をしているのか。さも興味有り気といった表情でじっと私を見つめている。
中性的でとても奇麗な顔。私は参拝にきた人の子供かなぐらいにしか思わず、構わずまたあの儀式の様な謎の遊びを再開した。
すると男の子は何も言わず私の真似をする様に、岩を登っては降り、登っては降りをやり始めた。
当初私は自分が考案した最高の遊びを真似されたと憤慨しましたが、まぁ子供というのは得てして誰とでもすぐに仲良くなるもので。
男の子は名前を「りゅうじ」といった。私は彼を「りゅうちゃん」と呼んでほぼ毎日小山で遊んでいた。

りゅうちゃんは虫取り名人であり、虫博士でもあった。
ナナフシを見つけたのは、後にも先にもりゅうちゃんと遊んでいた時だけだった。
この頃、父に私は小山で遊ぶ時は池に近づくなと言われていた。
当たり前だ。小さい子が池の周囲で遊ぶなんて、こんな危険な事はない。
ある日いつものようにりゅうちゃんと小山で遊んでいた時、池の底にとても奇麗な石を見つけた私は、それを取ろうと池に腕をつっこんだ。
もう少しで取れそう。そんな思いがきっと油断を招いた。
重心がすっかり前にいった私の体は、池の淵をずりずりと滑り落ちてしまった。
もう訳がわからなかった。突然奪われた酸素、上下がわからない。
どっちが上なのか。息を吸いたい。もがく私の腕を誰かが力強く掴み、そして引き上げる。
助けてくれたのはりゅうちゃんだったが、今考えれば幼い私と、そう年頃も変わらない男の子が水の中から人一人を引き上げるなんて有り得ない。
当然ながら当時の私にそこまでの思考力は無かった。
溺れた恐怖にただただ泣きじゃくりながらそのまま家路についた。
ぼたぼたと水を滴らして泣きじゃくる私に母は仰天し、池に落ちたこと、近所の男の子に助けてもらった事を告白した私にきついお灸を据えた。
母に腕を引っ張られたどり着いた先は納屋。私はあの薄暗さが嫌で普段から納屋には近づかなかった。
そんな処に一人放り込まれた私の恐怖といったらそれはもう、今でも当時の私に同情するくらいだ。
暗い納屋で一人しくしく泣いていると誰かが入ってくる気配があった。
すわお化けか何かかと、恐怖に顔面を強張らせたがすぐにその表情は緩んだ。りゅうちゃんだ。
りゅうちゃんは、ひくりひくりとしゃくり上げる私の横で静かに寄り添ってくれた。
すっかり心が丈夫になった私は母が呼びかけてくるまで暫くの間すっかり寝こけていた。
すーすーと寝息を立てる私を見て母は、この子にはどんなお灸もきっと効かないと感じたそうだ。
この頃から両親は「りゅうちゃん」の存在を知る。近所の遊び相手。そんな認識だったそうだ。

幼稚園へ通い始めても、小学校へ上がってからも、私はほぼ毎日りゅうちゃんと遊んだ。
りゅうちゃんが同じ小学校に居るのかどうか、疑問は感じていたがあまり気にしていなかった。
私が8歳になるかならないかくらいだったと思う。
8歳になる(もしくはなった)と言ってはしゃぐ私にりゅうちゃんは、黄色い果物のような物をくれた。
私たちはその果物を池で洗い、二人で仲良く食べた。
なんだかちょっと酸っぱくて美味しくなかった記憶がある。私は家に帰った後、夕食中両親にその事を自慢げに話した。
先のお池転落以来、池に近づくと怒られると思ったのでもちろん池で洗った果物である事は伏せた。
両親も最初はにこにこと話を聞いてくれていたが、私が余ったその果物を食卓に持ってきた途端、両親の、特に父の顔色が真っ青になった。
まず、その果物はドロドロに腐ってしまっていた。昼間あんなにみずみずしかった果物がゼリー状になっていたのだ。
父が果物を睨みつけながら強い口調で私に問いただした。
池で洗ったとゲロった私を父は抱きかかえ、もつれる足を何とか交互に動かし祖父の部屋へ滑り込む。

私が~~様に魅入られた(何て言ってたかわからないw)
キヌ(?)を喰うてしまってるようだ と父が叫ぶと祖父は目を見開き、放心といった様子で私を見つめていた。

神社の近くで農家をしているおじさんが家に飛び込んできて玄関で何やら騒いでいた。慌てている様子だった。
母が対応し、すぐに父と祖父が玄関へむかった。
何やら訳が分からない喧騒の中、ふと縁側に目をやるとりゅうちゃんが立っていた。いつも通りの奇麗な顔。
だが一点、いつもと違う背丈ほど長くて白い髪の毛。
必ず迎えに行くから待っててくれ。りゅうちゃんが私にそう言うのでうんと返す。
それはいつ?言葉になるかならないかくらいのタイミングで私の視界は急に奪われた。
祖父が麻布のような物で私の全身を覆ったのだ。
私はそのまま祖父に抱きかかえられ、どこかに連れて行かれ(恐らく本殿)生ぬるい酒のような液体を麻布の上かけられて車に乗せられ、そのまま町を出て行った。
しばらくゴトゴトと揺られていると車は緩やかに止まった。布の口が解かれ、父と母が不安そうな顔で私を見ていた。
何がなんだかわからない私に母は、もう二度と家には帰れない事。
父、祖父と離れ、母方の祖父母の家で母と暮らす事を告げられた。
わかったと素直に返事した私を両親は呆けた顔で見ていたが、私は大して気に留めなかった。
父や祖父と離れるのは寂しいが、会いたいと言えばむこうから来てくれる。
なにより、りゅうちゃんが迎えに行くと言ったのだから待っていればいい。そんな心境で私は古都の住民になった。
色んな物が「見える」ようになったのもその辺りからだと思っている。
いや、単にそれまでは限られた範囲の中でしか生活していなかったのもあって、たまたま遭遇してこなかっただけかも知れない。
でも私はりゅうちゃんがくれたあの果物のせいだと、今でも思っている。
出典 http://syarecowa.moo.jp/312/6.html

血だらけの二人

出典: www.flickr.com

moimoi1221
moimoi1221
@moimoi1221

目次 - Contents