NATURAL(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『NATURAL』とは、成田美名子により1995年から2001年にかけて『LaLa』(白泉社)にて連載された少女漫画。ペルーで暮らしていた少年ミゲールは、訳あって9歳の時に山王丸家に養子になり愛情を受けて成長する。高校生になり、バスケットボール部と弓道部を掛け持ちし部活動に打ち込んでいた。そんな中、何者かに線路へ突き落とされる。この事件をきっかけに、ペルー時代の秘密があきらかにしてゆく青春ホームドラマ。部活をする姿や例祭のシーンの緻密なデッサン。そして、登場人物の前向きな姿が丁寧に描かれている。

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立射礼(たちじゃれい)

神事における立射礼は、立った姿勢のままで、礼式に則って矢を射る神事及び、弓道儀式。主に屋外の射場で行われ、開運招福、商売繁盛、五穀豊穣、邪気祓いなどを祈願して執り行われる。
榊原西門の実家の神社での祭りのさいに神事で行われる射礼が立射礼。ミゲールは、西門の父に代わり立射礼に参加することになる。

矢大臣(やだいじん)

平安時代の随身装束を模し、通常は左大臣が虎の皮、右大臣(矢大臣)が豹の皮を虎皮の平胡簶(ひらやなぐい)と共に着用する神事の定式において、右側に控える随身またはその矢のことを指す。
榊原西門は実家での神事で矢を射る役目を担う。そのため夏祭りの準備をする氏子たちに矢大臣と呼ばれていた。

弓禅一致(きゅうぜんいっち)

​​弓を射る動作と、禅の精神である無心、心の静寂、及び集中が一体となることを意味する。弓道は立禅(りつぜん)とも呼ばれ、単に的を射る技術だけでなく、精神を統一し、内面の平静を養う過程こそが重要であるという理念。
ミゲールと榊原西門が、神事で弓を射るための練習をしているとき。弓禅一致という考え方があることを、榊原西門が練習中に経験した感覚を交えてミゲールに教える。

崇敬者(すうけいしゃ)

居住地や血縁に関係なく、個人の信仰心に基づいて特定の神社を崇敬し、お参りする人のこと。地元の氏神を祀る氏子とは異なり、個人的な祈願や、由緒ある神社を信仰する人を指す。
榊原西門の実家で行う神事の矢羽は毎年、鷹匠をしている方から奉納されている。この方のことを榊原西門がミゲールに崇敬者が鷹の羽を奉納してくれていると教える。

『NATURAL』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

例祭で矢大臣を務めるミゲールと西門

夏休みに榊原西門が実家の神社の例祭の手伝いに帰るのに便乗して、ミゲールたちバスケットボール部の4人も西門の実家の神社の近くで合宿をする。ミゲールは西門と弓の稽古をするのも楽しみにしていた。西門と弓の稽古をしているときに、西門の父から例大祭で矢大臣を務めて欲しいと頼まれる。大役を仰せつかった光栄と思い例祭に向けて練習をするものの、自分の中にある神聖とは程遠い凶暴な心を後ろめたく思うミゲールは、自分にはふさわしくないと辞退しようとする。しかし、西門にミゲールが必要なのだと諭され立派に矢大臣を務める。衣装や情景が細かく描かれた印象的なシーン。

大沢夏生「なのに種は続いてきた つまり 教えたり考えたりして 人間は闘いをやめてきたんだよ」

冬休みを利用して再び青森の榊原西門の実家でバスケットボール部の合宿をするミゲールたち4人。冬の神事・裸参りを見に電車で向かう道すがら、ミゲールは合宿所で観ていた映画『アラビアのロレンス』の話をし始める。映画の中で犯人を殺したロレンスが、人を殺して気持ち良く感じたとロレンスが塞ぎ込むシーンを観て、自分なら人を殺してしまったら後悔すると話す。堂本王海やJRも自分なりの考えを話し、それぞれの考えを聞いたのち最後に大沢夏生が言った言葉が「なのに種は続いてきた つまり 教えたり考えたりして 人間は闘いをやめてきたんだよ」と、こうして自分の気持ちを正直に話し、お互いを理解しようとすることの大切さを語る。

堂本王海「今までずっと 苦しんできたんだな」/ミゲール「そ う」

ミゲールはファビアンに狙われるようになってはじめて、子供の頃にファビアンを銃で撃ってしまった経緯を仲間たちに話した。しかし、その時に感じた本当の気持ちは誰にも言えずにいた。それでもどう思われようと、一番信頼している堂本王海には話しておかなくてはいけないと勇気を出して本当の気持ちを伝えた。ミゲールの告白を聞いた堂本王海の言葉が、「今までずっと 苦しんできたんだな」。それを聞いたミゲールは「そ う」とだけしか言えなかったが、ずっと闘ってきた自分を認めてくれた堂本王海の言葉で、怒りに任せてキレてしまう自分を永遠に止めてくれたと感じた。

山王丸理子「あれから私は ちょっと悪い「夢」も見るようになった でもあまり気にしないことにしている いつでも 明日が夜のむこうにあるから」

山王丸理子は、時々その日に起こる予知夢を見ていた。それは良いことのみで悪い予知夢は見なかったが、ミゲールがファビアンに1人で会いに行った時に見た予知夢は暗闇が見える悪い予知夢だった。しかし、ミゲールは自分で運命を変えファビアンとの問題も解決させた。理子はミゲールが自分自身の力で運命を切り拓いた強さをみて、悪い事も良い方向へ向けられると知る。そして、「あれから私は ちょっと悪い「夢」も見るようになった でもあまり気にしないことにしている いつでも 明日が夜のむこうにあるから」と思えるようになった。ミゲールとファビアンの一件でミゲールだけでなく理子も、ただ怖がるだけの子供ではなく、大人に成長したことを表している。

『NATURAL』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

日本色が強くなった『NATURAL』

現役高校生漫画家としてデビューした成田美名子は、1980年に発表した最初のヒット作『エイリアン通り(ストリート)』の後、​​アメリカNYを舞台に役者であり双子の兄弟であるシヴァとサイファを描いた『CIPHER(サイファ)』(1985 - 1990年)、シヴァの友人アレックス・レヴァインを主人公にアメリカのキャンパスライフを描いた『ALEXANDRITE(アレクサンドライト)』(1991 - 1994年)を連載した。
長くアメリカを舞台にした漫画を描き続けてきたが、漫画家生活が20年に近づいた頃から、日本を舞台に漫画を描こうと思うようになる。もともと日本の芸能や伝統に興味があり、『NATURAL』連載当初に​​宮家準著『宗教民俗学への招待』を読んで感銘を受け、弓道や神社といったより日本色の強い題材を漫画に取り入れてストーリーを展開するようになる。

7tjiro-toriyama
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@7tjiro-toriyama

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