
松本太山(まつもと たいざん)とは、夢枕獏の小説と藤田勇利亜の漫画『ゆうえんち-バキ外伝-』の登場人物。「刃牙シリーズ」のヒロイン松本梢江の実父で、大柄で頑丈な肉体を持ち、気の流れを操る放華という技を持つ地下闘技場無敗の戦士である。ラーメン屋台を営んでおり、そこで出会った葛城無門を格闘家として育てる。無門の卒業式と称した真剣勝負の日、梢江の難病の治療費を得るために参加した格闘イベントゆうえんちで柳龍光と対決して致命傷を負う。死の間際、約束通り無門との対決を実現した後に帰らぬ人となった。
松本太山の来歴・活躍
地下闘技場戦士の松本太山
真の最強の称号を手に入れるために世界中から格闘家の強者が集結する地下闘技場。それは日本の東京ドームの地下にあり、日々格闘家達の戦いが繰り広げられていた。地下闘技場無敗の戦士、松本太山(まつもと たいざん)は、近々世界最強の空手家愚地独歩(おろち どっぽ)との対決が予定されている。妻の松本絹代(まつもと きぬよ)と一人娘の松本梢江(まつもと こずえ)の3人家族であり、普段はラーメン屋台「こずえ」という娘の名をつけた店を営業している。
葛城無門との出会い
3月後半くらいの深夜、葛城無門(かつらぎ むもん)という9歳の少年が来店する。無門はキャップを被っていて容姿がわかりにくいが、明らかに未成年である。無門はサーカス団の天才少年として活躍していた人物で、その身のこなしで太山がふと目を離した瞬間にラーメンを食い逃げする。太山が呆れていると、今度は3人の男が現れ、無門の行方を知らないか太山に問う。3人の男はその風貌から、ヤクザ2名とバーテンダーであり、無門はどこか別の店でも無銭飲食を犯している様子。ヤクザのリーダーは無門に社会勉強をさせると言ってかなり苛立っており、ただならぬ状況と察した太山は咄嗟に無門をかばって知らないふりをした。
3人の男達は、公園で無門を見つける。無門が立ち上がり、キャップを外すと少女と間違えそうになる長い髪の美少年である。無門はそれ以上逃げる事はせずに、男達との戦いを始める。無門は高い身体能力とサーカスで鍛えた身のこなしで木に登ったり、敵の持っている凶器を奪うなどして1人で男達と戦う。そこに、酒の瓶を持った太山が現れ、花見をしに来たととぼけながら無門を助けに現れる。深夜に少年が無銭飲食し逃げ回っている状況から、余程の事情があるのだろうと語り、突然号泣して3人の男達に無門を許すように訴えかける。リーダー格の男は太山が無門に同情している姿を見てさらに逆上し、バーテンダーに太山を殺害するように指示する。バーテンダーは躊躇なくアイスピックで太山の胸を刺すが、太山の大胸筋が分厚すぎて致命傷を与えられず、さらに太山は刺された筋肉に力を込めてアイスピックを抜かせない。
リーダーが自ら太山に攻撃を仕掛け、目潰しと金的を仕掛けるが軽く防がれ、反撃の投げ技で投げ飛ばされてしまう。結局簡単に3人の男達を返り討ちにした太山は瓶を素手で綺麗に割り、栓の方をコップにして酒を飲む。花見とは言っても桜が咲いていないと言う無門。そこで太山は桜の木に抱きついて力を込めた。すると桜の木がその場で満開になる。この技は放華(ほうげ)と呼ばれる絶技で、これを見た無門は太山の凄さに感激し、弟子入りを志願した。
葛城無門に格闘技を伝授
無門を養子とし、本格的に格闘技を伝授する事になった太山。太山はサーカス団で天才少年と呼ばれていた無門が格闘家としても高い才能を持っている事を見抜いており、真綿が水を吸うような早さで技を習得していく事が実は危険なのだと伝える。まず最初の修行は無門がひたすら太山を攻撃し続けて、太山を倒すという至ってシンプルなもの。しかし、無門の攻撃は太山にダメージを与える事ができず、むしろ無門が疲労によって倒れてしまった。地道な修行が始まって2年が経過した頃、太山は知人の磯村露風(いそむら ろふう)という人物を連れてきた。磯村は無寸雷神(むすんらいじん)という古武術「須玖根(すくね)流」の必殺技を持っており、無門はこの強力な必殺技を見様見真似で習得している。これは両手で挟んだものに、絶妙な時間差で振動を起こす事で内部に強い衝撃を発生させ、脳や心臓などの臓器にダメージを与えるという強力な技である。磯村との修行が始まって3年が経過し、無門は14歳になった。ついに無門は太山と真剣勝負ができる程の実力を手にし、太山は卒業式と称して真剣勝負をする事を提案する。太山はこの卒業式で無門に新たな格闘技術を教えるつもりはなく、最後に相手に止めを刺して倒しきる覚悟を持つ事を伝えたいと考えていた。
松本太山VS柳龍光
無門の卒業式の日、太山は無門と戦う前に「ゆうえんち」という危険な格闘イベントに参加していた。ゆうえんちとは数名の格闘家が指定されたフィールドに集められ、1人に付き500万円を賭けて戦い、勝者が全額手に入れるというものである。太山は当時難病を患っていた梢江の治療費を用意するために、地下闘技場の支配人の徳川光成(とくがわ みつなり)から参加費500万円を借金して参加していた。順調に勝利を重ねて必要な治療費の2000万円を手に入れた太山であったが、柳龍光(やなぎ りゅうこう)という格闘家と遭遇し、対決する事になる。柳は暗殺拳の空道(くうどう)の使い手である。空道の代表的な技の1つに空掌(くうしょう)がある。これは、掌を対象物にしっかりと当てて真空状態を作り、それを引く事で様々な効果を発揮するものである。相手の皮膚に当てれば皮膚から内臓までを引きずり出す事ができ、口に当てて呼吸困難にするという応用も可能という危険な技である。
太山や柳の情報は格闘家の中では知られているのか、お互いの事はすでに認識はしている様子。会話をしながら少しずつ間合いを詰めていくと、先に柳が仕掛け、それに合わせて太山もカウンターを狙う。どちら攻撃もまともに食らえば致命傷を免れないというハイレベルな駆け引きが続く中、柳が空掌を放つ。命中したかに思われた空掌であったが、太山の体が頑丈であったために肉を引きちぎる事ができずダメージを与える事ができない。柳は平手打ちの精度を極限まで極めた鞭打(べんだ)という鞭のような技で攻撃しつつ、手に毒を染み込ませて触れた相手を毒で殺害する毒手(どくしゅ)でダメージを与える。しかし、太山は柳の肘を攻撃して鞭打を威力を減弱させ、毒手による毒は放華で体外に排出して防ぐ。全ての必殺技を防がれたかに思われた柳であったが、太山の精神的動揺を誘うために梢江の病気について話し始める。柳が梢江の病気についてなど知っているはずがなく、この発言で案の定動揺した太山は油断して柳の空掌をまともに食らい、胸の肉を引き剝がされてしまう。骨が見えるほどに肉を引きちぎられた太山であるが、ここまでに獲得した賞金を是が非でも持ち帰らなければならない。太山は致命傷を負わされながらも戦いを続け、制限時間のため2人の戦いは引き分けで終わった。
松本太山VS葛城無門
卒業式の約束の場所で待つ無門の前に太山は出血多量による弱った姿で現れた。すぐに病院に行くように促す無門であったが、太山は柳に受けた傷は治療をしても間に合わないと確信しており、その場ですぐに無門攻撃を仕掛けて一方的に真剣勝負を始める。明らかに弱った太山の攻撃を受けながら、攻められずにいる無門。太山は無門に格闘家として頂点に立ちたければ親しい相手であっても止めを刺し、倒しきる覚悟が無くてはならないという事を伝えるため、全力で攻め続ける。太山は無門に抱きついて体を絞めつける。無門はこの攻撃で意識が朦朧としたが、咄嗟に磯村の必殺技である無寸雷神を太山に放ち絞め技から脱出する。太山は無門の渾身の攻撃を食らってその覚悟を感じ取り、卒業と言って戦いを終えた。最後に太山は無門にゆうえんちで得た賞金を渡し、光成に渡すよう伝えた。太山は帰宅し、絹代のもとで息を引き取った。
松本太山の死後
治療費の2000万円と、軍資金500万円はどちらも無事に行き届き、太山のゆうえんち参加は成功した。梢江の治療はうまくいったようで、高校生になって「刃牙シリーズ」本編に登場し、元気な姿を見せている。無門はその後、少ない情報からなんとかゆうえんちへの参戦を実現し、柳との対決に勝利している。敗れた柳はこの後逮捕され、死刑囚になった。
松本太山の関連人物・キャラクター
葛城無門(かつらぎ むもん)

サーカス団の天才少年として活躍していたが、実母を守るために義父を殺害して家を出た少年。太山に拾われて格闘家として育てられ、卒業式と称した真剣勝負の後に太山が死去する。無門はその原因となったゆうえんちと柳龍光を少ない情報から探し出し復讐を成功させている。シリーズ本編に登場する空手家愚地克巳(おろち かつみ)の実の兄である。
葛城無門(刃牙)の徹底解説・考察まとめ - RENOTE [リノート]
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葛城無門(かつらぎ むもん)とは夢枕獏の小説と藤田勇利亜の漫画『ゆうえんち-バキ外伝-』の主人公。『刃牙シリーズ』主要人物の空手家「愚地克巳」の実兄である。優れた身体能力と洞察力を持ち、必殺技「無寸雷神」の威力は凄まじい。かつて克巳と共にサーカス団で天才兄弟として活躍したが、9歳の頃に義父の死の直前に失踪。窃盗や無銭飲食で生活していたところを「松本太山」に拾われて格闘技を教わる。「ゆうえんち」と「柳龍光」という僅かな手掛かりを残して謎の死を遂げた太山仇討ちのために真相を究明していく。
柳龍光(やなぎ りゅうこう)

空道という暗殺拳を得意とする格闘家。ゆうえんちで太山と対決し、太山に致命傷を負わせた人物。ゆうえんちの戦いでは太山の弟子の無門に敗れている。空掌、鞭打、毒手といった殺傷能力の高い技を持ち、対決相手の弱みを握る情報を事前に手に入れるなど、勝利に対する執着心は強い。一方で敗北を知りたいという願望を持っており、シリーズ本編第2作『バキ』では、その目的を果たすために刑務所を脱獄し、最凶死刑囚(さいきょうしけいしゅう)として登場。地下闘技場戦士との激闘を繰り広げた。
柳龍光(刃牙)の徹底解説・考察まとめ - RENOTE [リノート]
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柳龍光(やなぎ りゅうこう)とは板垣恵介原作漫画『刃牙シリーズ』に登場する最凶死刑囚の1人で猛毒の柳と恐れられる日本人。空道や毒手などの暗殺拳と武器を使用した戦いを得意としており、刑務所内では素手で十数名の受刑者を殺害している。敗北を求めて脱獄し、地下闘技場を訪れた柳は世界から集結した最凶死刑囚と地下闘技場戦士の戦いに参戦する。地下闘技場チャンピオンの範馬刃牙(はんま ばき)との戦いでは空道の技で1度は勝利し、毒手の効果により刃牙を死の淵に追い込むなどの脅威となった。
松本梢江(まつもと こずえ)

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目次 - Contents
- 松本太山の概要
- 松本太山のプロフィール・人物像
- 松本太山の能力
- 強靭な肉体
- 高い格闘技術
- ラーメン屋の店主
- 松本太山の必殺技
- パンチ
- キック
- 放華(ほうげ)
- 松本太山の来歴・活躍
- 地下闘技場戦士の松本太山
- 葛城無門との出会い
- 葛城無門に格闘技を伝授
- 松本太山VS柳龍光
- 松本太山VS葛城無門
- 松本太山の死後
- 松本太山の関連人物・キャラクター
- 葛城無門(かつらぎ むもん)
- 柳龍光(やなぎ りゅうこう)
- 松本梢江(まつもと こずえ)
- 松本絹代(まつもと きぬよ)
- 徳川光成(とくがわ みつなり)
- 磯村露風(いそむら ろふう)
- 松本太山の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 号泣する松本太山
- 桜を放華で満開にする松本太山
- 葛城無門の卒業式
- 松本太山の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 花見で飲んだ酒の名は海王
- モデルは前田光世
- 愚地独歩との深い関係