超獣機神ダンクーガ(Dancouga)のネタバレ解説・考察まとめ
『超獣機神ダンクーガ』とは、葦プロダクションが製作し、1985年4月から放映されたロボットアニメである。奥田誠治が監督を務め、シリーズ構成を藤川桂介が担当した。異空間からの侵略者「ムゲ帝国」から地球を守るため、野生の本能を武器に転化して戦う主人公達「獣戦機隊」の活躍が描かれた。愛憎入り乱れる人間模様や過酷な戦争描写が物語を盛り上げる。主人公が正規軍人である点など、リアルロボット的な要素がありながらも、主役メカが無敵の巨大ロボット「ダンクーガ」に合体する、スーパーロボット作品として描かれた。
『超獣機神ダンクーガ』の概要
『超獣機神ダンクーガ』とは、葦プロダクションが制作したSFロボットアニメである。TBS系列(一部除く)で1985年4月5日から同年12月27日まで3クール全38話が放映された。監督に『サイコアーマー ゴーバリアン』などを手掛けた奥田誠治、シリーズ構成に『太陽の使者 鉄人28号』や『六神合体ゴッドマーズ』でメインライターを務めた藤川桂介、キャラクターデザインにスタジオ・ライブの新鋭ユニット・いんどり小屋が担当した。主人公サイドのメカデザインは『宇宙戦艦ヤマト2』や『特装機兵ドルバック』に参加した板橋克己が書き起こした原案を元に、平井寿(後に平井久司と改名)がクリーンナップした。敵側のメカは平井寿に加え、当時新人だった大張正己も参加している。
主人公達は、「野生の力」をエネルギーに変換する超兵器「獣戦機」を駆り、強大無比な侵略者「ムゲ帝国」に敢然と立ち向かう。戦いが熾烈になるにつれ、主人公達の精神的な成長に呼応するように、獣戦機は兵器から獣へ、そして人へと姿を変えていく。そして全ての要素が揃った時、獣戦機が合体して、神の戦士「ダンクーガ」がその姿を現し、圧倒的な力で敵を粉砕する。
本作品はスーパーロボット作品ではあるが、老人や子供などを含む民間人が、侵略者によって容赦なく殺戮される過酷な戦争描写や、主人公達が社会人(軍人)である点、ヒロインが敵側に亡命した恋人を愛しているが故に憎む複雑な心理描写など、視聴者ターゲットがややハイティーンに偏っている。さらにドラマ性を重視するあまりに、主人公メカがモードチェンジでその力を解放していく過程を丁寧に描いた結果、タイトルになっている主役巨大ロボット「ダンクーガ」が登場するのは第16話となった。これはメインスポンサー・バンダイのターゲットである、合体超合金を欲する低年齢層の不興を買い、玩具販売は低迷した。放送枠が当初の日曜夕方5時から金曜夕方5時に変更になった結果、裏番組となった『夕焼けニャンニャン』の圧倒的人気に押され、視聴率も低迷した。これらの影響で、当初全52話の予定が3クール38話で打ち切りとなり、物語はダンクーガが敵の本拠地のある異空間に旅立ったところで終幕となる。しかしファンの熱い支持やキャラクター人気により、1986年4月にTV総集編+完結編を収録したOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)『超獣機神ダンクーガ 失われた者たちへの鎮魂歌』(以下、失われた者たちへの鎮魂歌)や、1987年4月には新規エピソードを描いたOVA『超獣機神ダンクーガ GOD BLESS DANCOUGA』(以下、GODBLESS)、1989年12月から1990年5月にかけて、藤原忍ら4人を主人公とした映像作品としては最終作となる『超獣機神ダンクーガ 白熱の終章』(4話構成。以下、白熱の終章)が製作された。
『超獣機神ダンクーガ』のあらすじ・ストーリー
ムゲ帝国襲来
侵略者・ムゲ帝国が地球を襲撃し、地球連合軍の士官学校を卒業間際だった藤原忍(ふじわら しのぶ)も迎撃に駆り出される。しかし敵の圧倒的な戦力の前に、軍は壊滅状態になる。忍の教官だったシャピロ・キーツはムゲ帝国に亡命する。忍は「獣戦機隊」への配属を命じられ、獣戦機「イーグルファイター」のパイロットに配属される。次に完成した獣戦機「ランドクーガー」には、結城沙羅(ゆうき さら)が配属される。彼女は裏切り者・シャピロの元恋人だった。新メンバーの式部雅人(しきぶ まさと)と司馬 亮(しば りょう)が合流し、獣戦機「ランドライガー」「ビッグモス」が完成する。4人揃って初出撃すると忍と亮は反目するも、ロサンゼルス防衛戦は成功する。北米前線で忍はローラ・サリバンと出会い、彼女の亡き母親に献花して親交が生まれる。戦禍を知り、獣戦機隊の面々は精神的に成長していく。
デスガイヤーの猛攻
ムゲ帝国3将軍のひとり、デスガイヤーが士官学校を襲撃する。学生寮長テッド・カイゲルを救うため忍達は救援に向かうが、逆にテッドの自爆で助けられ涙する。ペルーでは脆弱な民間ゲリラがデスガイヤー軍を撃退していた。調査に向かった忍と沙羅は、謎の戦闘機に救われる。忍達は強力な機動要塞に苦戦するが、新たに「ヒューマノイドモード」を得て撃破する。亮は調査に向かったメキシコで住人の騙し討ちに遭い、捕われ拷問される。間一髪救出されるが戦時下における人心の恐ろしさを垣間見る。ニューヨークのハーレム地区へ逃げ込んだ市民達を救助するために徒歩で潜入した忍達だが、獣戦機隊のイゴール長官が期待したようなチームプレーが発揮できない。窮地に陥った忍達に獣戦機を届けるため、輸送機のパイロット・ゲラールが命令違反覚悟で突入する。
ダンクーガ誕生
中国大陸にはジャミングを破る超指向性レーダーがあった。獣戦基地の所在露見の危機が迫る。破壊に向かう忍達だが、敵の罠にはまり絶体絶命となる。ゲラールの特攻によって突破口を開いた忍達は、ついに「ダンクーガ」へ合体する。デスガイヤーの猛攻を容易くはね除けるパワーにシャピロですら驚愕し、惨敗したデスガイヤーは更迭された。後任者は3将軍のひとりで心理攻撃に長けたギルドローム将軍だった。
ギルドロームの罠
ギルドロームの人心を突いた卑怯な作戦が続く。大統領がムゲ帝国の手に堕ちる。救出作戦で沙羅はシャピロと対峙して撃ち殺そうとするが取り逃がす。忍達はダンクーガに合体して奮戦するも敵の罠にはまる。そこにまたしても謎の戦闘機が現れ、忍は黒騎士を名乗る操縦士と対面する。イゴール将軍を批判する黒騎士はダンクーガの重要性を説いた。忍達は敵の波状攻撃を受けて疲弊するが、それは消耗戦に誘い込むギルドロームの罠だった。限界に達した沙羅は昏睡状態になる。さらに獣戦基地を発見され、3将軍のひとりヘルマット将軍の総攻撃に晒される。
獣戦基地壊滅
沙羅が完全に回復しないまま、ヘルマットの軍勢に立ち向かうダンクーガだが、敵の猛攻で釘付けにされ、基地に敵兵がなだれ込む。イゴールは葉月に移動要塞「ガンドール」の起動を託すと、ローラを守るために敵兵と銃火を交える。瀕死の重傷を負ったイゴールは黒騎士=息子アランと再会、その腕の中で息を引き取る。きたるムゲ帝国への進撃のために、ダンクーガの飛行能力獲得が急務となる。やがて完成したブースターユニットは、ダンクーガを自在に飛行させる。黒騎士隊の決死の工作で攻撃準備が整うと、ガンドールは敵月基地へ進撃する。アランの挺身により月基地にガンドールの主砲が命中する。落ち延びたシャピロを追ってアステロイド基地に侵入した沙羅は、全てを失い気が触れたシャピロをついに討つ。異空間の入り口に辿り着いた忍達だが、ギルドロームが行く手を阻む。これを撃破したダンクーガは、片道切符と知りながらもムゲ本国へ進撃する。地球に帰還したガンドールは、ダンクーガを迎えに行くための準備を急ぐのであった。
ムゲ帝国の最期(OVA『失われた者たちへの鎮魂歌』より)
ムゲ帝国本土を目指す忍達は、赤い霧に覆われた星に辿り着く。そこに待ち構えていたのは、新機体「ザンガイオー」に乗り込んだデスガイヤーだった。闘志と執念でダンクーガを再三追い詰めるデスガイヤーだったが、ダンクーガの新たなる必殺武器「断空剣」の前に敗れる。その先には、巨大な城と、ムゲ帝王の真の姿が待ち構えていた。悪霊すら操ってダンクーガを追い込むムゲ帝王だったが、死んでいた仲間達へ祈り、慟哭と共に投擲した断空剣は、見事ムゲ帝王に突き刺さる。主の死と同時にムゲ本星は崩壊する。宇宙を漂うダンクーガをガンドールが迎えに来たところで物語は終幕を迎える。
よみがえるムゲ・ゾルバドス(OVA『GODBLESS』より)
ムゲ帝国は滅び、忍達も軍務から解放され、自由な生活を謳歌していた。しかし戦後の政府は中央集権的な政策を推し進める。社会には不穏な空気が立ちこめ、葉月は治安部隊の横暴に眉をひそめる。そんな中沙羅は旧友・道那賀 小百合(みちなか さゆり)と再会する。しかし管理局のトップに上り詰めた彼女は昔とは真逆の独善的な人物になっていた。巨獣ロボット・ジグードが市街地を襲う。迎撃した忍達だったが、被害の責任を追及され収監される。しかし元黒騎士隊のバンディツが脱走の手引きをする。沙羅は小百合に連れ去られるも、忍達は収容所から脱出する。合流した葉月の口から、連合政府の裏にはびこる影について語られる。忍達は獣戦基地に舞い戻り、獣戦機を取り戻す。単身で囚われの沙羅を救い出す忍。ついに死んだはずのムゲ帝王が巨大な姿で復活し、合体したダンクーガと対峙する。負傷で視界が霞む忍だったが沙羅に助けられ、新技「断空光牙剣」でムゲ帝王を見事討ち果たした。
新たなる敵の襲来(OVA『白熱の終章』より)
忍達はそれぞれが新しい生活を過ごす。しかし新たな敵ディラドが地球を侵略すべく迫る。再招集された忍達は、新司令官ドイルに反発しながらも出撃する。ダンクーガに合体して敵を一掃、ワープしてきた敵惑星に突入する忍達だったが、星の加護を受ける強敵に苦戦して一時撤退する。つかの間の休息に繰り出した街中で、雅人はマルテという少女に出会う。深夜デートのふたりを政府の諜報員が急襲する。逃走した先でマルテが豹変し謎の花粉を放つ。一方連合軍の宇宙要塞が占拠される。死を避けるため凍結された雅人を欠いたまま、忍達は奪還のために再出撃を余儀なくされる。ドイルが捨て身で基地を爆破したことで、危機に陥った忍達はかろうじて脱出する。雅人のデータが入った装置をランドライガーに組み込んで再出撃した忍達だが、ディラド最期の強敵ケイルの気迫に押される。そこにディラドに捨てられ瀕死のシャピロが現れる。沙羅がシャピロをダンクーガに乗せると、彼の精神エネルギーが宿り、見事にディオレを討ち取る。沙羅は息絶えたシャピロの骸を手放し宇宙の彼方に見送った。
『超獣機神ダンクーガ』の登場人物・キャラクター
獣戦機隊(じゅうせんきたい)
ロス・イゴールと葉月が率いる特殊部隊。獣戦機に配属する人員は、当初地球連合軍将兵の中からイゴールみずから厳選する意向だったが、その前にムゲ帝国の侵略が始まり軍そのものが壊滅寸前となったため、葉月の発案でコンピューターが軍歴データによって忍達を選出した。軍人としての資質よりも「野生の力」を強く持つことを重視して選出されており、葉月の思惑通り忍達は獣戦機に対する類い希な適性を発揮し、ムゲ帝国撃滅を成し遂げた。
藤原 忍(ふじわら しのぶ)
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目次 - Contents
- 『超獣機神ダンクーガ』の概要
- 『超獣機神ダンクーガ』のあらすじ・ストーリー
- ムゲ帝国襲来
- デスガイヤーの猛攻
- ダンクーガ誕生
- ギルドロームの罠
- 獣戦基地壊滅
- ムゲ帝国の最期(OVA『失われた者たちへの鎮魂歌』より)
- よみがえるムゲ・ゾルバドス(OVA『GODBLESS』より)
- 新たなる敵の襲来(OVA『白熱の終章』より)
- 『超獣機神ダンクーガ』の登場人物・キャラクター
- 獣戦機隊(じゅうせんきたい)
- 藤原 忍(ふじわら しのぶ)
- 結城 沙羅(ゆうき さら)
- 式部 雅人(しきぶ まさと)
- 司馬 亮(しば りょう)
- ロス・イゴール
- 葉月 考太郎(はづき こうたろう)
- ローラ・サリバン
- ゲラール
- クリス
- テッド・カイゲル
- スライ・ダンパー
- リンダ 麻生(リンダ あそう)
- 早瀬 優(はやせ まさる)
- ケイ・ベックリン
- ドイル
- 黒騎士隊(くろきしたい)
- アラン・イゴール
- フランシス
- 速水(はやみ)
- 敷島 麗美(しきしま れいみ)
- シド
- ハシモト
- マシュー
- マキシム
- チャーリー
- スティーブ
- ムゲ帝国(むげていこく)
- ムゲ・ゾルバドス帝王
- シャピロ・キーツ
- ルーナ・ロッサ
- デスガイヤー
- ギルドローム
- ヘルマット
- ビストール
- ゲル
- ディラド
- ディオレ
- アベル
- ケイム
- マルテ
- その他
- ダニエラ
- 結城 タケル(ゆうき タケル)
- 結城 アリサ(ゆうき アリサ)
- 式部 雅男(しきぶ まさお)
- 道那賀 小百合(みちなか さゆり)
- 加山(かやま)
- 藤岡(ふじおか)
- 木下(きのした)
- 『超獣機神ダンクーガ』の用語
- 獣戦機隊(じゅうせんきたい)
- 獣戦基地(じゅうせんきち)
- ムゲ帝国(むげていこく)
- 黒騎士隊(くろきしたい)
- バンデッツ
- ディラド
- 『超獣機神ダンクーガ』の登場兵器
- 獣戦機(じゅうせんき)
- ノーマルモード
- アグレッシブモード
- ヒューマロイドモード
- イーグルファイター(AGT-1)
- ランドクーガー(AGT-3)
- ランドライガー(AGT-2)
- ビッグモス(AGT-4)
- ダンクーガ
- ダイガン
- 断空砲(だんくうほう)
- ブースターユニット
- 断空剣(だんくうけん)
- 断空光牙剣(だんくうこうがけん)
- ガンドール
- 黒騎士隊(くろきしたい)
- ブラックウイング
- ムゲ帝国(むげていこく)
- デスグローム
- ザンガイオー
- デザイア
- レプリカーン
- グザード
- 『超獣機神ダンクーガ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 藤原忍「やってやるぜ!」
- シャピロ・キーツ「ムゲ帝王様は、私の存在を必要とお認めになったのだ」
- 藤原忍「なんだこれは。これが本当に俺たちの力なのか」
- ロス・イゴール「この孫を守ってくれ。この子こそ、地球の未来」
- 司馬亮「心にて悪しき空間を立つ、名付けて断空剣」
- 『超獣機神ダンクーガ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 年末商戦の商材の払底が放映打ち切りの真の原因
- ひそかに埋め込まれていた制作陣の感謝メッセージ
- 初代「C.C.ガールズ」のメンバーとして活躍したローラ・サリバン役の藤原理恵
- 『超獣機神ダンクーガ』の主題歌・挿入歌
- OP(オープニング):藤原理恵「愛よファラウェイ」(第1話 - 第33話)
- OP(オープニング):藤原理恵「ほんとのキスをお返しに」(第34話 - 第38話)
- ED(エンディング):いけたけし「バーニング・ラヴ」(第1話 - 第33話)
- ED(エンディング):東郷昌和「SHADOWY DREAM」(第34話 - 第38話)
- 挿入歌:藤原理恵「ハーモニー・ラヴ」
- 挿入歌:藤原理恵「ディアダンサー」(OVA『失われた者たちへの鎮魂歌』)