リラックマとカオルさん(アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『リラックマとカオルさん』とは、2019年にNetflixで公開された、サンエックス制作のストップモーション・アニメーションシリーズ。人気キャラクターの「リラックマ」初のアニメ化となった。制作・プロデュースはドワーフ。
都内の小さな商社で働く真面目で不器用なカオルさんと、いつの間にか住み着いたリラックマ、コリラックマ、キイロイトリとの同居生活を、四季折々の景色と共に描き出す。
カオルさんの声優に多部未華子、脚本に『かもめ食堂』の萩上直子、音楽に岸田繁という豪華布陣が集結した。

『リラックマとカオルさん』の概要

『リラックマとカオルさん』とは、2019年4月19日にNetflixで公開された、サンエックス製作のストップモーション・アニメーションシリーズ。1話あたり12分、全13話に収められており、四季を通して物語は進んでいく。Netflixの2019年もっとも見られたシリーズの第2位(日本)にランクインしており、2020年第47回アメリカ・アニー賞 テレビ部門監督賞にノミネートされている。作品への評価から人気を博し、2020年から2021にかけて「リラックマとカオルさん展」(展覧会)が全国を巡回した。2022年8月25日からは、本作の続編となる『リラックマと遊園地』がNetflixで配信された。
制作・プロデュースは「どーもくん」でおなじみのドワーフ。監督は「DOMO!WORLD」の小林雅仁、脚本は『かもめ食堂』などの荻上直子、音楽はくるりの岸田繁、リラックマの暮らす部屋の主・カオルさんの声は多部未華子、カオルさんが想いを寄せるハヤテくん役に山田孝之と、よりすぐりのスタッフが揃っている。

ちょっとトボけたアラサー女性のカオルさんは、ごく普通のOLで都内の小さな商社で働いている。ひとつだけ変わっていることは、いつの間にか部屋に住み着いた、毎日だらだらしているリラックマ、いたずら好きなコリラックマ、そしておそうじが得意なキイロイトリと暮らしていることだ。自分の性格が真面目なことにちょっとばかりコンプレックスを抱いているカオルさんと、のんきなだららん生活を送るリラックマたちが過ごす色とりどりの12か月をストップモーションで描いた、やさしくて、ちょっぴりほろ苦い物語である。

『リラックマとカオルさん』のあらすじ・ストーリー

一人のお花見

カオルさんは鮫島物産の事務をしている冴えないOL。4月初週。新入社員を期待してウキウキしながら、会社に向かうが、加藤課長から新入社員0人を言い渡される。理由は業績悪化で新入社員の採用を30%削減し、庶務課には人材が行き渡らなかったのだ。ゆるふわなタッチに反して、リアリズムの極みだ。しかも、この庶務課が非常に生々しい。課長のパワハラ・セクハラしそうな素ぶりを見せるし、やる気のないギャルOLサユは朝礼時にスマホを弄り、「全く仕事やる気ないし」と呟く。そんなカオルさんは友人から花見の約束を聞いてワクワクするのだが、サユに「男何人来るの?えっいないの?取り残され感ハンパないですね」と言われてしまう。カオルさんはウキウキして重箱を作り、花見会場にいくのだが、いくら待っても誰も来ない。子供が熱を出した、仕事が終わらない、料理本のサイン会が入った、彼氏ができた、忘れていたなどの理由で全員ドタキャンとなってしまう。そしてカオルさんは、夜な夜なリラックマたちと余った重箱持って花見をする寂しいオチがつく。「花が咲く時期はみんなちがうんですよ」と書いた張り紙が最後に写って終わる。

トキオと友達になる

ある日、同じボロアパートに住む少年トキオにリラックマを誘拐されてしまう。脅迫状を元に、カオルさんはパンケーキを作り、少年の元に行くと明かされる真実。少年は鍵っ子で、母親は遅くまで帰って来ない。どうやら父がいないという展開を迎える。鍵っ子の孤独描写が生々しく描かれる。トキオとリラックマたちはここから仲良くなり、カオルさんの部屋にトキオは頻繁に遊びにくるようになる。

梅雨の時期

ある日、キイロイトリが家事をしていると、赤いキノコが生えていることに気づく。恐る恐るキイロイトリがキノコにタッチすると、一気に増殖するのだ。キイロイトリは、殺虫剤を散布することで、撃退を試みるのだが、部屋中煙だらけで、まるで家事騒ぎのような大惨事になっている。カオルさんが帰還すると、リラックマがカビ臭いことに気づく。すると、リラックマの背中から、キノコが生えてくるのだ。カオルさんはなんとキノコ図鑑を取り出して食べようとするのだ。そして、キノコ鍋をしようとすると、カエルが家に入り込み、キノコをつまみ食いする。そして、気が狂ったように踊る姿を見て、「毒キノコだったのかしらハハッ」と言い、食べるのを諦めるオチがつく。カオルさんが真面目であるが故に周囲の女子と馴染めず、会社で合コンの空き人材要員としてすら呼ばれないことに悩んでいたため、キノコを食べて変わろうと自暴自棄になるのである。「キノコを食べれば変われると思ったの?」とカオルさんは言う。雨は止み、カオルさんはリラックマたちと散歩に行く。カオルさんは「次雨降ったら新しい傘を買おう」とルンルンして言う。最後に、「雨の日が待ち遠しいです」と言う題の本が本棚に映って終わる。

夏祭り

物語は夏の時期になり、リラックマたちとカオルさんは夏祭りに行き楽しむ。団子を買ったり、ヨーヨーすくいをしたり、キイロイトリはかき氷にツーンとしたりとにかく楽しそうにしている。しかし、リラックマたちが盆踊りを楽しんでいる様子を見て、カオルさんは暗い顔になる。どうやら、自分の無趣味さに絶望したようだ。何かに打ち込めるものがなく、陰日向で彼氏ができる兆しも皆無な現状にいたたまれなくなり、川沿いに逃げ込むカオルさん。妄想の中で枝豆を差し出す筋肉マッチョとたこ焼きを差し出す筋肉マッチョから同時にアプローチされた場合、どちらへ行くのかを自問自答して発狂するのだ。リラックマは「両方食べていい」と枝豆とたこ焼きを差し出すのだ。「選ばなくてもいいの?」とカオルさんはどちらも食べる。その後、会社でカオルさんは字を褒められたり、配達にやってきた運送会社ハヤテ急便の配達員のハヤテに出会ったりする。仕事を選ばないことに、カオルさんは「意味あった」と嬉しくなる。「どっちもおいしいです」という夏祭りの看板がアップされ、終わる。

お盆のホラー物語

お盆時期、カオルさんの親から一通の電話がかかってくる。親から、家業を手伝えと執拗に言われ、しまいには自分がしている仕事を徹底的に否定してくるのである。確かに、鮫島物産は残念な会社だし、カオルさんの存在意義は仕事を押し付ける対象でしかないため分からなくもないのだが、人生そのものを否定された感じすらしてしまう。カオルさんの親は無自覚に毒親になって、カオルさんの心を蝕んでいく。心がダークサイドに堕ちている彼女の前に、クマに因縁があるお化けが登場する。リラックマはそれを聞いて、飛び上がりそうになるのだが、こともあろうか、カオルさんはリラックマをホールドアップさせ、「どうぞ、うちのクマを殴ってください」と言い始める。しかしお化けは「こんなにかわいいクマは蹴れない」と言い、ギューっとリラックマを抱きしめる。お化けはカオルさんたちに生前の話をするうちに天国に行く気持ちになっていた。「次いきましょう」という文字が画面に映り、その会は終わるのである。

占い

カオルさんが霊感商法に引っかかる話がある。自分の不幸を意識するあまり、どす黒いオーラが流れるカオルさん。会社に遅刻して到着しても、同僚からは、「あれっいたんですか?」と言われる空気っぷりを視聴者に叩きつける。帰り道に、トキオから幸運の石を受け取るのだが、金を請求されたりと踏んだり蹴ったり。そんな彼女が、ついにブチギレ、占いグッズを買い漁り始める。怪しい占い師の手ほどきにより、リラックマたちの食費を差し置いて5万円で黒い数珠を買う。抗議するリラックマたちに「だったら、トキオくんの子におなり」と言葉を吐き捨てる。そしてトボトボ、トキオの家に行くのだが母親がクマアレルギーだからダメと言われてしまう。最終的に団子で仲直りをする。その後、魚釣りで大物を釣ったり、河原で捨て猫に餌をあげているハヤテくんを見つけたりして、カオルさんは「今日はツイてる」と機嫌が良くなるのである。

ダイエット

カオルさんとリラックマは、太って服のサイズが合わなくなったことをきっかけにダイエットを決心する。胡散臭いダイエット器具のサイトから購入する。そして、ある日カオルさんの家に宅配便が来るが、それがハヤテ急便のあのお兄さん、ハヤテくんだった。すっかり惚れてしまったカオルさんは、毎日1件ペースでものをネット注文し始める。リラックマにおねだりされても、「ダメよ、1日1回だけよ、一度に運ばせたらね、、、もぅ」と目が異次元を向いてしまっています。そんなカオルさんに、嫌な顔一つもせずハヤテ急便のお兄さんはイケメンボイスで、昼だろうと夜だろうと荷物を送り届ける。カオルさんの家にはどんどんダンボールが溜まっていき、ゴミ屋敷になっていくのだが、恋に溺れるカオルさんは全く気にしていない。そして31日間毎日ネットショッピングした結果、687,603円の請求金額に驚愕する。リラックマたちのおやつは当分無し、夕食ももやしのみと質素になる。節約生活のおかげで、カオルさんもリラックマもすっかり痩せたのである。最後に「災いを転じて福となす」と書いた看板が写って終わる。

アルバイト

大量のダイエット器具を買ってしまい、金欠になってしまったカオルさん。リラックマ、コリラックマ、キイロイトリは、カオルさんのためにアルバイトをしてお金を稼ぐことを決める。キイロイトリは、掃除のアルバイトを始め、持ち前の几帳面さを高く評価され、順調にお金を稼ぐ。コリラックマは、猫カフェでアルバイトを始めた。かわいさから人気がでて、これまた順調にお金を稼ぐ。リラックマは、お饅頭をつくる工場でアルバイトを始めるが、自分でつくったお饅頭を食べてしまい、工場をクビになってしまう。次に工事現場でアルバイトを始めるが、今度は重い荷物が持てなくてクビ。次のアルバイトのキッチンスタッフは、デカイくせに邪魔だと言われてクビになってしまう。途方に暮れるリラックマ。アパート近くで柿の木を見つけ、それに生っている柿を取ろうとするが、ジャンプしても柿には到底届きません。リラックマは自分の無力感に苛まれてしまう。場面は変わり、カオルさんの家。コリラックマとキイロイトリは、誇らしげに稼いだ給料をカオルさんに渡し、金額の多さに驚くカオルさん。そこにリラックマが鍋をもってやってきて、その中に入り、自分をクマ鍋にしてほしいと提案する。カオルさんは、そんな自分で名前をつけた豚を食べるようなことしないと笑う。結局、みんなで別の鍋(を食べることになる。鍋を食べながら、隙間風が吹く家に対してカオルさんが「隙間風は寒いけど、この建付けの悪さでさえ、今は愛おしいよ」と言う。その後、カオルさんはリラックマに抱き着き、「熊鍋になるまえに、やることあるでしょ。寝る前に私の足を温めてくれないと。冷え性なんだから」そして、椅子のうえに置かれている新聞の広告の、一文「できることでお返しすればいいんです」が写されて、この回は終了する。

雪だるまを作る

冬の雪が降る季節になる。トキオが突然カオルさんの部屋に来て、「このアパート取り壊しだって!」と伝えに来る。トキオは「こんな平和な生活も数ヶ月後には終わっちゃうのか」と寂しがる。カオルさんは「ずーと同じってわけにはいかないんだよ。トキオくんもお兄さんになってクマたちと遊べなくなっちゃうよ。君だって大人になるんだよ」とトキオに言う。シーンは変わり、リラックマたちは雪遊びをし、雪だるまを作る。夢の中でリラックマがくるりの《SAMPO》を雪だるまと踊りグランドフィナーレを迎える。一晩経ち、朝になると雪だるまが溶けている。リラックマはそれを見て、「ぐぅぅぅ…」と寂しそうに泣くのだ。カオルさんは「ずっと同じでいるってことはできないんだよ」とリラックマと慰める。最後に、「変わってゆくんですね」というタイトルのレコードが映って終わる。

ハワイ

サユがハワイバカンスで男を見つけ寿退社を決め込むところから物語は始まる。カオルさんと加藤課長はショボい義理チョコがハワイ土産だったことにイライラし、リラックマたちに愚痴をこぼす。するとリラックマたちがフラダンスを披露してくれる。カオルさんがハワイに行きたいと嘆くと、リラックマたちがボクも!ボクも!とグゥグゥ、くぅくぅ、キィキィと騒ぐのだが、カオルさんは「私は未来の夫といくのよ。」と言い放つ。そんなカオルさんに因果応報が下される。カオルさんが何気なく撮ってyoutubeにアップしたリラックマのフラダンス動画が1億PV以上稼ぎ、youtuberデビューを果たすのだ。そのまま、ハワイロケの依頼が来るのだが、キイロイトリに「あんたは彼氏とハワイにいくんでしょ?」と、トキオをマネージャーに選び、彼女を家に放置したままロケを敢行するのだ。ハワイから帰ってきたリラックマたちは、今度はロックンロールな格好で現れる。最後に「ブチ壊そうぜ!!」と書いた広告が映って終わる。

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