ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者（ゲーム）のネタバレ解説・考察まとめ

『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』の概要

『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』とは、1988年に任天堂から発売されたファミリーコンピュータディスクシステム用のアドベンチャーゲームである。このゲームは、深いストーリー性と複雑な謎解き要素を特徴としている。主人公は記憶を失った若い探偵である。主人公は、綾城家の遺産相続を巡る謎と、関連する一連の連続殺人事件を解明するための調査に挑む。

物語は、主人公が記憶喪失の状態で発見されるところから始まる。主人公は自分の記憶を取り戻すための手がかりを求めて、綾城家の執事・善蔵（ぜんぞう）から依頼された調査を再開する。

ゲームのストーリーは、探偵小説の影響を強く受けている。綾城家の遺産を巡る複数の家族メンバーの対立・遺言書の存在・不可解な連続死といった要素が絡み合っている。プレイヤーは主人公を操り、対話選択や証拠集めを通じて、これらの謎を解き明かしていく。

ゲームシステムでは、コマンド選択方式が採用されており、プレイヤーはコマンドを選んで調査をしたり、人物に話しかけたりする。このシステムは、アドベンチャーゲームの王道であり、分かりやすい。音楽もまた、緊張感を高める曲が多く、プレイヤーをゲームの雰囲気に引き込むものになっている。

ゲームは日本国内で成功を収め、その後のリメイクやシリーズ作品の制作につながった。特に、Nintendo Switch版のリメイクでは、グラフィックの全面的な改善・操作性の向上・声優によるボイス追加が行われており、新旧のファンから高い評価を得ている。

『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』は、アドベンチャーゲームとしてのクオリティの高さにより、長い間ゲームのクラシックとして評価され続けている。多くのプレイヤーにアピールできる作品であり、ゲーム史における重要な1作である。

『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』のあらすじ・ストーリー

主人公の目覚めと記憶喪失

主人公は記憶を失った状態で天地という男に助けられ、海上の崖で目を覚ます。彼には過去の記憶が一切なく、自分がどのような経緯でここに来たのかも思い出せない。

探偵助手との再会

男の自宅で介抱されていた主人公は自分が倒れていた現場に戻る。そこで記憶を失った主人公の前に現れたのは、探偵の助手である橘あゆみだ。彼女は主人公に彼が空木探偵事務所の探偵であることを伝える。そして、協力して失われた記憶の謎を解き明かすための捜査を開始することになる。

綾城キクの不審な死

綾城家の当主である綾城キクは、莫大な遺産についての遺言書を公開した直後に心不全で死亡した。しかし、綾城家執事の善蔵（ぜんぞう）はその死に疑問をもっていた。主人公は、自分の正体を探る手掛かりを求めて空木探偵事務所に向かうと、そこで「明神村 綾城」と書かれたメモを見つける。そのメモを手掛かりに綾城家へと向かい、善蔵からこの件についての調査依頼を受けていたことを知る。

死人甦りの伝説

舞台となる明神村（みょうじんむら）には、古くから伝わる「死人甦り」の伝説がある。「死人甦り」の伝説とは、死者が蘇り綾城家に仇なす者を殺す、という戦国時代から語り継がれる伝承のことである。そして亡くなったはずの綾城キクを村で見た、という目撃者が多くいることが分かる。村人たちは満月の晩に、キクが墓から甦ると噂していた。

綾城キクの遺言書

キクの甥の完治から話を聞くことができた。綾城キクは遺言書を残しており、そこには「全ての遺産は後継者の印をもつ一人娘ユリに譲る」とあった。また遺言書の作成には綾城家が取り仕切る企業「綾城商事」の顧問弁護士である神田が立ち会っていたことも判明した他、遺言公開日に、完治の息子、アキラが屋敷にいたというが、その理由は不明なままである。主人公のことを善蔵に紹介したのは、神田弁護士であることが分かる。

不可解な連続死

綾城完治の死体が、綾城家の土蔵で発見された。テレビのニュースでそれを知った主人公は現場に駆けつける。綾城家の敷地内で起こった事件であることから、身内による犯行が有力視される。鑑識の結果、土蔵の鍵から完治の息子アキラの指紋が検出され、アキラが指名手配されることになる。完治と対立関係にあった弟二郎と、借金のあった妹あずさにとって、完治の死は悲しいだけのものではなかった。そして次の事件が起こる。綾城二郎が明神山で首つり死体となって発見されたのだ。第一発見者は善蔵だった。二郎は忘れ物を取りに屋敷に戻ってきていたところだったという。
二郎の死因は青酸カリを仕込まれた煙草だった。キクがヘビースモーカーだったため、キクも同様の手口で殺された可能性が浮上する。

玄信の告白

神楽寺の住職である玄信。これまでは調査に非協力的であった彼から重要な証言を得ることになる。神楽寺にあるキクの墓石の天辺が動かされて血の跡があったというのだ。また、棺に収められて埋葬されていたはずのキク愛用の手鏡が、海上の崖に続く道に落ちているのを見つけて拾っていた。

綾城ユリ

綾城ユリの足取りを追う主人公たち。ユリは今、八束町（やつかちょう）というところに住んでいることが分かる。しかし八束町では何の手がかりも得られなかった。ユリが友人に宛てた手紙の住所を訪ねると、ユリは17年前に火事で死亡していたことが分かる。息子がいるが、今は行方知れずだという。

新たな連続殺人事件

調査を続ける中で、村人たちから「キクが崖の方に歩いていった」という証言を得る。海上海岸へ行き辺りを調べていると、同行していた熊田医師が海の上に浮かぶ女の死体を発見した。それは綾城あずさの死体だった。死因は明らかな絞殺で、あずさの爪の間からは人間の皮膚の一部が検出された。

事件の真相を暴くために、キクの墓を掘り起こすことが必要と主人公は判断する。玄信住職を説得し、警察を呼んで墓を掘り起こす。そこにはキクの死体は無く、代わりに綾城アキラの死体が入っていた。これを見た主人公は、アキラこそが自分を海上の崖に呼び出し、襲いかかってきた人物だということを思い出す。

アキラの死因は墓の笠石による撲殺だった。また腐敗が酷く、死亡時間は完治よりも明らかに先であった。さらにアキラの遺体のポケットには青酸反応のある刻み煙草が僅かに入っていた。

容疑者 神田弁護士

捜査の結果、一連の事件が神田弁護士による連続殺人であることが色濃くなっていく。事件前に神田が見ていたファイルは、同じような殺人事件であり、犯人は神田に間違いないと主人公は確信を深めていく。