
『雑貨店とある』とは、上村五十鈴による雑貨店での人々の交流を描いた漫画作品である。『週刊漫画TIMES』で2023年まで連載していた。お人好しな店長・守澤智己が営む小さな雑貨店には優しい時間が流れている。コンプレックスや小さな悩みを抱える客達は、守澤が提供する季節のメニューによって元気を取り戻す。大好きな祖父を亡くしたアルバイトの越湖裕介も、守澤と過ごす日々の中で少しずつ悲しみを受け入れていく。単行本は2020年に1巻が発売され、2023年に発売された5巻で完結を迎えた。
小野寺 千代(おのでら ちよ)

守澤の親友の妻・千代。いつも優しい雰囲気が漂い、周囲の人もその笑顔に癒されている。
守澤の親友・小野寺の妻。小柄でふんわりとした黒髪のショートヘアで「お母さん」という言葉がぴったりな素朴な女性。越湖も女神のようなオーラを感じたほど、醸し出す雰囲気がいつでも優しい。長男の大地(だいち)を女手ひとつで育てている。越湖の友人・加持のバイト先の先輩で、加持が想いを寄せていた相手。
夫を亡くしていながらも悲しい顔を見せず、いつも笑顔で振る舞っている。そんな千代を気に掛けて加持が涙をこぼした際には、加持の涙に気付いた大地に「優しい素敵な人なのよ」と教えた。
元々優しい人柄だが、夫を失った悲しみが人への更なる優しさに繋がっており、守澤は千代のことを傷ついても修復しようとすることで甘みを増す「りんご」に例えている。守澤が高熱を出した際には、千代が傷ありのりんごで作ったジュースを置いていったこともある。なお、この時守澤のことを「智己さん」と呼んだことから、越湖には初対面時に「彼女」と間違われていた。
父はスイカ農園を営んでおり、夏祭りの日には父と一緒にトラックの荷台いっぱいのスイカを守澤の元へ届けるなど、守澤とは家族ぐるみの付き合い。守澤が「とある」の店長を辞めて旅に出た後は「とある」のスタッフとして和歌と共に店で働いている。
小野寺 誠(おのでら まこと)
3年前に亡くなった守澤の親友で千代の夫。学生時代の守澤と共にあちこちを旅してまわっていた。作中では顔は出てこないがしっかりした青年で、ふわふわした守澤を常にフォローしていた。
沙良(さら)

奥村の窯元の女性。守澤に恋愛感情があり、アルバイトの越湖にもライバル心を抱く。
「とある」に置いている器を焼いている奥村窯の窯元の女性。長い黒髪に目元のホクロと眼鏡が印象的で、鋭い目力の持ち主。守澤に好意を抱いており、守澤のことになると極端な言動が出る。守澤と共に窯元を訪れた越湖を見た時には、初対面にも関わらず強気な態度でまくし立てるようにライバル心をむき出しにした。弟子の浜いわく「普段はまじめで陶芸一筋の人」だが、守澤のこととなると周りが見えなくなってしまう。
自分の作品を誉めてくれる守澤には「好き」を連呼し、器をいくつ作れるかという問いには自分と守澤の子として考えて器の個数を人数に換算し、浜から人数で換算しないでと突っ込まれていた。だが、肝心の恋愛感情は守澤には伝わっていないか、伝わっているがかわされている様子。守澤の姉・和歌とは仲が良いため、近況報告を兼ねて守澤の周囲の状況を探るべく定期的に「トモキ調査」をしている。
パワフルで気の強い女性に見えるが、実は過去に大きな病気をしたことがあり、死を覚悟するような経験をしている。その経験から今伝えたいことは伝え、したいことは行動するというスタンスで生きており、そんな沙良の言動に、越湖は圧倒されながらも、魅力的だと感じた。
浜(はま)

沙良のことが大好きな浜(左)。ツッコミは意外と鋭い。
守澤が仕入れのために訪れた奥村窯の窯元・沙良の弟子。奥村に到着した守澤と越湖を車で迎えに来てくれた。最初こそ仕入れ旅行についてきた初対面の越湖に警戒の視線を送ったり、守澤が自分の名前をなかなか覚えないことに苛立ちを見せたが、本来は至って普通の青年。沙良には好意を抱いており、沙良のいないところでは「愛しの沙良ちゃん」と呼ぶなどしている。守澤のこととなると極端な言動が増える沙良に対して冷静にツッコミを入れる。
「とある」を訪れる客達
サラリーマンの男性
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本編には登場しないプロローグ限定のキャラクター。チョコレートパフェにこだわりがある。
スーツ姿に眼鏡のピシッとしたサラリーマン。本作のプロローグのみに登場する。仕事の交渉に失敗して会社に戻る気になれずに、平日の昼に「とある」を訪れた。入口に貼られた「あのチョコレートパフェあります」という貼り紙を見て店に入ってきたがチョコレートパフェに一家言持っている。彼にとっての「あのチョコレートパフェ」は、子供の頃に家族で食べたパフェのことであり、同じパフェにもう一度出会いたいと願っていた。
店内で出されたパフェを堪能した彼は、食べ終える直前にグラスの底に隠れていたみかんを見つけ、幼い頃に家族で食べたパフェを思い出した。これこそ正に「あのチョコレートパフェ」だとその完璧さをに感動して帰って行った。
本編には登場しないが、「とある」で出されるスイーツが懐かしい思い出を引き出し、人の心に寄り添ってくれることを読者に説明する存在となっている。
片山カナ(かたやま かな)

素朴な雰囲気が愛らしいOLだが、自分を芋っぽいと密かに悩んでいた。
社会人になってから上京してきた素朴な雰囲気のOL。「とある」の木造の空間と雑貨を眺めることが好き。
子供の頃に芋を食べている時に男子から「屁が出る」とからかわれたり、職場の男性からも芋好きと素朴な雰囲気を繋げられ「イモっぽい」と呼ばれた経験から、自分のことを垢抜けないと感じている。そのため、芋が好きにも関わらず「イモ」という言葉に過剰に反応してしまう。店で見かける海堂の知的な雰囲気に密かに憧れており、店内で海堂が落とした小銭を拾ったことがきっかけで仲良くなるが、仲が深まるにつれてイモっぽい自分はいつか海堂に飽きられてしまうのではないかと不安を抱える。
その後、偶然会った海堂の友人の田上から初対面にも関わらず「おイモの子」と言われた際には、海堂にも自分の知らないところでイモっぽいと思われていたと誤解してしまう。以後、海堂と会うことが気まずくなってしまい、しばらく「とある」にも寄らずにいた。後日ひとりで店を訪れた際に、越湖が芋を「頼もしい農作物」と評価したことから自分に対する評価が少し前向きなものに変化し、海堂を「とある」に呼び出して2人で芋ようかんを食べて気まずさは解消する。
そこで、カナが過去、焼いもを渡した男性が海堂だったという事実が明らかになる。真冬の公園のベンチで人生について悩んでいた海堂は、カナからもらった焼いもによって救われたということがわかり、更に海堂と仲良くなることができた。海堂は恩人となったカナの話を友人の田上に話していたが、当時は名前を知らなかったため「おイモの子」という伝え方になっていたことも明らかになる。その後も時々2人で「とある」を訪れてはスイーツを楽しんでいる。
海童 コウ(かいどう こう)
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女性として生活している男性。過去にカナによって心を救われた経験から、カナのことが大好き。
「雑貨店とある」の常連客。美人で明るい女性に見えるが男性。人生に悩んで真冬に公園のベンチに座り込んでいた時にカナから焼いもをもらい、その温かさと美味しさに救われた経験を持つ。その後、カナと「とある」で再会し、仲良くなってからは時々2人で「とある」のスイーツを食べに来ている。気さくで優しく、明るい性格。
自分がダメだと思い知るのが怖いという理由で、文化祭のステージに立つことを悩む野原しおりにもキッパリと、かつ優しい言葉で背中を押した。文化祭後もしおりと「とある」で一緒にスイーツを食べている。
高校時代からその優しい性格と恵まれた容姿で、女子生徒から好意を抱かれることが多かった。だが、優しすぎるのが災いして誤解を招いてしまうことも多く、告白されては断るということを繰り返すうちに「軽い男」と思われてしまった過去を持つ。更には恋心を抱いていた同級生の男子生徒から好きな女子生徒がいることを聞かされるという辛い経験もした。当時を知る同級生の田上からは、密かに幸せになってほしいと応援されている。
学生の頃は両親のことなども考えて、男性として生活していたが、学校を出て自立してからは髪を伸ばし、外見はほとんど女性と変わらない姿で生活している。当時から可愛いものが好きで、果物の中ではイチゴが特に好き。
悩みを抱えて生きることが多かったため、しおりを励ます時には少し厳しい言い方をしたが、その中にはしっかり優しさが込められている。
野原 しおり(のはら しおり)
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アイドルを夢見ているが、親友ミソラと比べて平凡な自分にコンプレックスを抱いている。
アイドルを密かに夢見る黒髪ツインテールの女子高生。自分にあまり自信がなく、幼なじみで親友でもある相原ミソラと自分を比べてしまう癖がある。どこに行っても天性の愛されキャラぶりを無自覚で発揮するミソラに対して密かに劣等感がある。だが、同時に彼女の自由奔放なキャラクターと可愛らしい外見には憧れも抱いている。
幼い頃はアイドルの真似ばかりして遊んでいたが、ある時ミソラから「つまんない」と言われてしまい、それからはその想いを封印していた。だが、アイドルになりたいという願望は高校生になってからもこっそり抱き続けている。
ミソラには溺愛されており、どうにかしてしおりのアイドルへの夢を叶えようとするミソラの計画に巻き込まれてばかり。ほぼ強制的に学園祭の後夜祭で「野原しおりコンサート」を開催させられ、学園祭の後もミソラが企画した配信動画『銀河宇宙系ゆるっと戦隊ゴショクダン』の主人公にされたりしている。
学園祭の前は、「自分には無理だ」という不安が現実になることを恐れていたが、海堂からの励ましによってコンサートをやる決意を固めた。海堂の言葉で涙が止まらなくなり、心の奥底にずっと居続ける子供の頃の「自分を見て欲しいしおり」と向き合うことになった。
同級生の城山いわく「持ってる」女の子で、寝ている時に顔に蝶が止まったり、何かとハプニングが起こってしまう。学園祭当日には台風が近づくというアクシデントが発生し、コンサートの頃にはほとんどの生徒が帰宅。人数の少ない体育館でのコンサート開催となってしまった。ステージ登場時も、乗せられた台車からの着地に失敗して鼻血、歌詞も飛んでしまった。
どことなく恋愛体質な雰囲気もあり、はじめは城山に片想いしていた。だが、ミソラと城山が親しくなったことから城山への恋心はいつの間にかどこかへ消えた。なお、ミソラと城山は「しおり親衛隊」を結成しており、しおりのことが大好きという共通点で仲良くなっただけで恋人同士ではない。城山への恋心が消え去った後は、学園祭のコンサートへ向けての猛練習中に、自分に風船をくれたうさぎの着ぐるみに恋心を抱く。この着ぐるみがコンサートに来てくれたことでコンサートをやりきることが出来たのだが、この着ぐるみを着ていたのは実の兄。惚れっぽいが、恋愛に発展する前に恋心を消されがちである。
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目次 - Contents
- 『雑貨店とある』の概要
- 『雑貨店とある』のあらすじ・ストーリー
- 優しい空気が流れる古民家風の雑貨店
- 失ったものを埋める場所
- 祖父の死を受け入れた越湖の涙
- 別れを受け入れた後の変化
- 別れと新しい出会い
- 『雑貨店とある』の登場人物・キャラクター
- 『雑貨店とある』の店員
- 越湖 裕介(えちご ゆうすけ)
- 守澤 智己(もりさわ ともき)
- 越湖の周囲の人々
- 越湖 逸(えちご いち)
- 加持(かじ)
- 鮫島(さめじま)
- 明神 櫻子(みょうじん さくらこ)
- 山口(やまぐち)
- 横川 チサ(よこかわ ちさ)
- 越湖 節子(えちご せつこ)
- 守澤の周囲の人々
- 和歌(わか)
- 梅(うめ)
- 小野寺 千代(おのでら ちよ)
- 小野寺 誠(おのでら まこと)
- 沙良(さら)
- 浜(はま)
- 「とある」を訪れる客達
- サラリーマンの男性
- 片山カナ(かたやま かな)
- 海童 コウ(かいどう こう)
- 野原 しおり(のはら しおり)
- 朝倉 ミソラ(あさくら みそら)
- 城山(しろやま)
- みどり
- あかね
- 木月(きづき)
- 日野(ひの)
- 横川 ミト(よこかわ みと)
- ヒロ
- 『雑貨店とある』の用語
- 季節の貼り紙
- ロミオとジュリエット
- 銀河宇宙系ゆるっと戦隊ゴショクダン
- 『雑貨店とある』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 守澤智己「大丈夫 君はきっといい実になるよ」
- 日野「楽しい事って一番人を癒やすんだって 木月君の言葉も きっと皆の薬になるよ!!」
- 越湖裕介「時に人には命よりも守るべき大切な事があると カジ君見てたら思い出した」
- 越湖節子「鏡の中の自分にいっぱいいっぱいありがとうって言ってみて きっと必ずその自分は もっとあなたを素敵にしてくれるわよ」
- 祖父の死を受け入れた越湖の涙
- これまで頑張ってきた自分を誉める櫻子
- 身近な人たちの愛に気付いたしおり
- 『雑貨店とある』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 『雑貨店とある』の始まりは臨時の連載
- 「とある」は守澤の祖母の店
- 明神道場の跡取りにされかけた越湖