雑貨店とある(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『雑貨店とある』とは、上村五十鈴による雑貨店での人々の交流を描いた漫画作品である。『週刊漫画TIMES』で2023年まで連載していた。お人好しな店長・守澤智己が営む小さな雑貨店には優しい時間が流れている。コンプレックスや小さな悩みを抱える客達は、守澤が提供する季節のメニューによって元気を取り戻す。大好きな祖父を亡くしたアルバイトの越湖裕介も、守澤と過ごす日々の中で少しずつ悲しみを受け入れていく。単行本は2020年に1巻が発売され、2023年に発売された5巻で完結を迎えた。

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髪を染めてピアスをしていて一見派手に見える加持。過去には越湖兄弟と一緒に剣道を習っていた。

越湖の友人。ピアスを何個か開けており、今風な雰囲気の男子高校生。4巻の表紙に登場しており、髪色は金髪。越湖とは対照的によく喋り自分の感情を表に出すタイプ。バイト先の先輩である千代が子持ちと知った上で恋心を抱き、告白して振られた。夫に先立たれた千代の悲しみを想像して涙するが、その涙を見た千代からは「優しい素敵な人」と言われる。千代の懐の大きさや亡くなった夫への愛情の大きさを感じ、自分はまだまだ男を磨く必要があると少し吹っ切れた様子を見せる。
越湖には冷たくあしらわれることが多い。越湖がいるときに店に来ると怒られるので、越湖がいないタイミングを狙って店に来て守澤の作る新作スイーツを食べている。甘党。
かつては越湖兄弟と一緒に剣道を習っていたため、逸とも面識がある。越湖の学園祭に行きたい逸のために、越湖のクラスの劇のチケットを用意しているなど面倒見のよい一面もある。
明るく誰にでもフラットに接する、いわゆる「陽キャ」。中学時代は道場の先輩にあたる鮫島達からは軟派だと思われており、憧れていると話していた立ち切り稽古を本気でつけられることになる。その際に鮫島の竹刀が喉元にあたってしまい、立てなくなったところを越湖が引き受け、助けられたことがある。それまでは越湖にライバル心を抱いていたが、この出来事以降、素直に越湖の強さを認めるようになった。のちに、自分のことをいけすかないと思っていた鮫島ともいつの間にか仲良くなっており、時々2人で「とある」に来ている。

鮫島(さめじま)

真面目で堅物な印象の鮫島。中学時代は自分にはない面を持っている加持のことを目障りだと感じていた。

越湖と加持と同じ剣道場に通っていた1学年上の先輩。加持とは対照的な真面目で堅物な印象。中学時代、加持のことを軟派な奴だと思っており、あまり好きではなかった。
加持が発した「立ち切り稽古に憧れている」という言葉が軽々しく聞こえたことから、普段の稽古が終わった後に加持を呼び出して、5人がかりで立ち切り稽古をつけた。自分達を倒せなかったら道場をやめろという条件を加持に出し、それに加持が乗った形だったが、意図せず加持の喉元を突いてしまい、倒れ込んだ加持の様子に焦る。それでもなんとか立ち上がろうとする加持の代わりにその場を受け持った越湖に敗れた。
この対戦前、自分達が越湖には勝てないことを分かっていたため、代わりの対戦相手として逸を連れてくるようにと言ったことで越湖の更なる怒りを買った。
なお、この立ち切り稽古の後に剣道をやめると話した加持を止めようとしていた。この出来事を経て加持と仲良くなり、加持と2人で「とある」を訪れて越湖を驚かせた。
後に自分とは真逆の性質をもつ加持に対して嫉妬と憧れがあったことを明かした。

明神 櫻子(みょうじん さくらこ)

櫻子は気が強い美少女に見えるが実はとても純粋な心の持ち主。越湖が通っていた剣道場の孫娘。

越湖が過去に通っていた剣道の道場「明神道場」の孫娘。5人姉妹の末っ子で、ツインテールにぱっちりとした瞳の美少女。
自分の祖父に期待されていた越湖が突然道場をやめてしまったことに対して憤りを感じており、越湖に果たし状を送った。自分が勝ったら越湖を明神道場に入れと試合を申し込んだが、越湖からは逸との勝負に勝てたら、とかわされてしまった。結局、逸との勝負の途中で中断となり、越湖との試合は成立しなかった。後日、一方的に勝負を持ち掛けたことから礼儀に欠けるとして、姉に連れられて「とある」へ謝罪に訪れた。この時に、越湖が櫻子の祖父の道場をやめた理由が、越湖と自分達5人姉妹の誰かを婚約させようとしていたためと知り赤面する。
実は密かに越湖に憧れている。文化祭の英語劇でジュリエットを演じた越湖を目撃してからは、これまで以上の「越湖推し」になってしまい、「とある」を訪れても緊張のあまりすぐには店に入れずに座り込んでしまったこともある。気が強そうに見え、そんな自分には可愛げがないとコンプレックスを抱いている。越湖の祖母・節子と「とある」の前で偶然出会い、すぐに節子に憧れを抱く。その日の帰りに節子から店で売っていた螺鈿の鏡を贈られ、節子に「鏡の中に自分にいっぱいありがとうって言ってみて」と言われたことを期に、ずっと心の中にあった「剣道から逃げたかった」という本音に気付く。女ばかりの道場に生まれ育ち、自分が道場をどうにかしないとと思って過ごしてきた。自分がやらなくては道場がなくなってしまうと背負い込んでおり、男に負けてはだめだと意地になっていたのだった。越湖に果たし状を送ったのも剣道を背負い込んでいる自分とは裏腹に、あっさりと剣道をやめてしまった越湖に怒りを感じたため。だが、その怒りの本当の理由は、自分が剣道から逃げたかったからだと気付いた。節子に言われた通り、鏡の中の自分に感謝を伝えたことで、背負い込んでいた辛さから解放された。

山口(やまぐち)

ボーイッシュで明るい雰囲気の持ち主。ずっと越湖と仲良くなりたいと思っていた。

越湖のクラスメイト。175cmの長身で手足の長いショートカットのボーイッシュな女子生徒。帰国子女で、学園祭では『ロミオとジュリエット』の英語劇でロミオを演じた。越湖のことを役名で「ジュリエット」と呼んでいる。転校してしまう前に越湖と仲良くなりたいと思っており、学園祭をきっかけにしてチサに頼んで越湖と遊園地で交流を深めることができた。絶叫マシーンは大好きだが観覧車だけは苦手。だが、越湖が遊園地で唯一乗れるアトラクションが観覧車だったため、せっかくの遊園地だが越湖とは一緒のアトラクションに一度も乗れずじまいだった。帰り際に越湖に友チョコを渡した。なお、学園祭後は越湖と同様にファンが増え、ミスコンのミスター側で優勝している。

横川 チサ(よこかわ ちさ)

しっかり者で面倒見が良い横川。演技の上でのアドバイスは越湖にも影響を与えた。

越湖のクラスメイト。面倒見の良いしっかり者の女子生徒で学園祭では監督を務めていた。越湖がジュリエットを演じるにあたって「神と崇めるほど人を好きになったり、死んででも一緒にいたい」という想いを意図しながら演じて欲しいと助言をした。その言葉によって越湖が内に秘めていた祖父の死への悲しみや、祖父に会いたいという想いを引き出すことになり、英語劇が大成功を収めることになった。
面倒見の良いしっかりした女の子。学園祭後には越湖と仲良くなりたいという山口のために「クラスのお別れ会」という口実を作って親睦を深めることに成功させたり、客として「とある」を訪れた際は空気が読めない発言をする姉・ミトを制したりしていた。

越湖 節子(えちご せつこ)

おしゃれで華やかな節子。いつでも少女のように天真爛漫に振る舞い、周囲をその明るさに巻き込む。

越湖の祖母。おしゃれで若々しく、天真爛漫な印象のマダム。店の前で越湖に会うことに緊張してしゃがみこんでいた櫻子に声をかけ、一緒に店を訪れた。櫻子の祖父とも面識がある。
年齢のせいにして制限をするのは嫌だという考えを持ち、とても前向きな性格。ほとんど初対面だった櫻子にも「素直で可愛らしくているだけで華やかになる存在」という印象を与えた。初対面も守澤に対してもキャピキャピとした少女のような態度で接し、店を出る前には守澤を食事に誘おうとして越湖に怒られた。
守澤と同様、大事な人を亡くしたにもかかわらず悲壮感があまり見えないため、越湖からは祖父の死について大丈夫だったのかと問われた。その際は涙目になりながら、越湖を抱き締めて「みんながいたから大丈夫だったわ」と越湖にも感謝を述べた。その後、帰宅する前に店内の雑貨を大量に買い占め、櫻子にも螺鈿のコンパクトミラーをプレゼントした。

守澤の周囲の人々

和歌(わか)

サッパリした明るい性格の和歌。越湖が不在の際は時々店番を手伝っている。

守澤の実姉。さっぱりとした明るい性格の女性。結婚後の苗字は作中では明らかになっておらず、夫も登場しないが2人の女の子の母親。自宅の梅採りを毎年楽しみにしている。
商店街の祭りの日や越湖がアルバイトに出られない期間などに、時々「とある」を手伝っている。チョコレートが好きで、甘いものが苦手な越湖がバレンタインデーにもらった大量のチョコレートも守澤を通じて譲り受けた。
奥村窯の窯元である沙良とは仲が良く、守澤を大好きで仕方ない沙良に電話で近況報告することもしばしば。だが、越湖がアルバイトになったという話をした際には「長年連れ添った夫婦のよう」と伝えるなど、誤解を招く発言をしがちである。
越湖が梅から「とある」をいつ辞めるのかと問われた時には、越湖が店に貢献していることを梅にもはっきりと伝えた。最終話で守澤が旅に出てしまった後は、「とある」を引き継ぎ、新たにスタッフとなった千代と一緒に働いている。

梅(うめ)

守澤によく懐いている梅は「とある」の未来の店員候補を自称している。時々手伝いをしに店にやってくる。

守澤の家の近所に住むショートカットの女の子。猫が好き。梅採りを手伝いに来るため守澤や和歌からは「梅ちゃん」と呼ばれているが、本名は「今日子(きょうこ)」。本名は最終巻の5巻で学校の友人と偶然会う場面でようやく判明する。作中では本名ではなく「梅」というあだ名の方でみんなから呼ばれている。
ある日から突然学校へ行けなくなってしまい、不登校の状態。友達がいないわけでもなく、いじめや嫌なことがあったわけでもないため、本人も学校へ行けない理由を説明できずに悩んだ過去を持つ。守澤に不登校を打ち明けた際に、守澤の言葉に救われたことがきっかけで店を訪れに顔を出すようになった。
越湖がアルバイトを始めるよりも先に自分が「とある」に来たため、自分のことを越湖よりも先輩だと思っている。越湖に対してはライバルのような感覚を抱くが、弟の逸に対しては客として接したり、兄に黙って店に来たことを越湖には秘密にすると約束したりと協力的な面も見せる。
初対面時には越湖に対して警戒した様子を見せ、表情も変えなかったが、越湖の存在に慣れてからは憎まれ口を叩くことがしょっちゅう。対照的に守澤のことは「トモブー」と呼んで慕い、無邪気な笑顔を見せる。越湖のことは「とある」の店員として認めていない様子で、高校卒業が近づいてきた越湖に対しては「いつやめるの」と直球で聞いて和歌に叱られた。その際にクッキーを渡され、夏休みだから遊んでおいでと言われて外に出たことがきっかけでミトが営む「魔女の館」を見つけ、不思議な少年ヒロと出会う。個性が強いヒロの宇宙の話に耳を傾けたことと、宇宙人のような人を知っていると守澤のことを話したことでヒロに気に入られた。店内で落ち着かないヒロを叱った際に、売り物の茶碗を割ってしまいショックを受けて泣き出してしまう場面もあったが、守澤だけでなく越湖にも優しく諭され、この時だけは越湖に対しても素直な様子を見せた。
年齢の都合でまだアルバイトはできないが、時々「とある」で自発的に店番をするなどして守澤を手伝っている。積極的に店頭の掃除をすることもあり、「とある」の将来の店員候補を自称している。猫が好き。

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