十字架のろくにん(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『十字架のろくにん』とは2020年より中武士竜が『別冊少年マガジン』、「マガジンポケット」で連載しているサスペンス漫画である。小学生時代に同級生5人からいじめを受けていた主人公・漆間俊。5人により両親を殺害された俊は、殺しのプロである祖父との訓練により不屈の精神と強靭な肉体を手に入れる。4年後、高校生となった俊は5人への復讐を開始する。復讐を協力する者がいる一方で止めようとする者もいる、そんな中で葛藤し復讐に無関係な者までを巻き込んでいくストーリーは広い読者層から厚い支持を受ける。

『十字架のろくにん』の概要

『十字架のろくにん』とは2020年3月9日より中武士竜が『別冊少年マガジン』「マガジンポケット」で連載しているサスペンス漫画である。『進撃の巨人』以来10年ぶりとなる「絶望コンペ」通過作として話題を呼んだ。2020年4月号から2020年11月号まで『別冊少年マガジン』で連載されていたが、第1巻の売上が伸びなかった為「マガジンポケット」に移籍することとなったが、そこで第2巻が高い売り上げを記録した。小学6年生の主人公・漆間俊(うるましゅん)は至極京(しごくきょう)をはじめとする同級生5人から「実験体A」と呼ばれ、壮絶ないじめを受けていた。いじめのことを両親に打ち明け、転校することが決まった俊に平穏な日々が訪れるかに思われた矢先、至極は事故に見せかけて俊の両親を殺害し運良く生き残った弟にも暴行を加え植物状態に。俊の両親が事故ではなく殺害されたのだと知った祖父は、第二次世界大戦中に発足した日本の秘密部隊の一員であったことを明かし「そこで人の殺し方を叩き込まれた」という衝撃のひとことを発する。そんな祖父との4年間の修業を経て、心身ともに鍛え上げた俊による復讐劇を描いたサスペンス作品である。

『十字架のろくにん』のあらすじ・ストーリー

小学生篇

家族を殺害した同級生5人に復讐を誓う漆間俊(右)

小学6年生の主人公・漆間俊(うるましゅん)は、同級生である至極京(しごくきょう)、右代悠牙(うしろゆうが)、久我大地(くがだいち)、千光寺克美(せんこうじかつみ)、円比呂(まどかひろ)の5人から壮絶ないじめを受けていた。至極たちは俊を〝実験体A〟と呼び、どこまで追い詰めれば自殺するかという実験をする為にいじめをおこなうのであった。弟や両親の前では気丈に振る舞っていたが、ある日弟の翔(かける)と共に可愛がっていた野良猫を無惨に殺されてしまったことをきっかけに、いじめを受けている事実を家族に明かすことにした俊。話を聞いて両親はすぐに動いてくれて俊は転校することになり、それまでの1ヶ月間学校を休むことにした。数日後、買い物に出かけた俊は久我、千光寺、右代と遭遇し、至極と通話中の携帯電話を渡され「実験の途中で逃げ出すのは許さないよ」「いつも実験体Aの親が通る峠道 いつ事故ってもおかしくないよね」とだけ言い残し通話を切られる。至極は事故に見せかけ俊の両親を殺害し、弟の翔も植物状態に。祖父の家で暮らすことになった俊は蔵から猟銃を見つけ出し「これで…お父さんお母さん翔を殺した奴らを殺してやる」と言い放つ。第二次世界大戦中に発足した秘密部隊、通称〝北山部隊〟の一員であった祖父は「ワシはそここで人の殺し方を叩き込まれた ワシが鍛えたろ 確実に苦しみを与え 復讐できるように」と、俊の復讐に協力することに。

高校生篇

千光寺克美篇

両親の死から4年、祖父との訓練で心身ともに鍛え上げた俊は高校生になった。普段は冴えない生徒としてクラスに溶け込んでいる俊であったが、クラスメイトの東千鶴(あずまちづる)が変質者に襲われたことでその力を発揮することになる。身長2メートルほどの巨漢である変質者を瞬く間に制圧し、東を救い出すことに成功する。変質者を警察に届けることを約束した俊は、「今見たこと誰にも言わないでくれ」と伝えて東を帰宅させる。その後、変質者の胸元に刃物を突き刺した俊は「おじいちゃん 僕…いける」 「人を…殺せる」と言い放つ。5人への復讐を企てる俊は千光寺克美を1人目のターゲットとするが、「改心した者は見逃すこと」という祖父との約束を守る為にすぐには復讐を実行せず千光寺を監視することにした。そこには改心したかに思える千光寺の姿があった。4年前の謝罪をする千光寺、車に轢かれそうな子猫を身を挺して助ける千光寺を見て心が揺らぐ俊。まんまと騙された俊は千光寺に拘束され痛めつけられる。祖父との訓練で体中の関節のほぼすべてを自由に操れるようになった俊はあっさりと拘束を解き反撃に出る。目を覚ました千光寺は鎖で繋がれている。一面ビニール貼りの妙に暑い部屋には机と鏡、ピーラーが置かれている。鏡に映った千光寺は胸から膝ぐらいまでの皮がピーラーで剥かれており、神経がむき出しの状態に。そこにエアガンを数発打ち込み、俊は1人目の復讐に成功する。

右代悠牙篇

右代悠牙を2人目のターゲットに決めた俊は、千光寺の時のような油断はもうしないと心に誓う。情報収集の為に右代の通う学校を訪ねたが、誰に聞いても好青年で悪い噂はない。しかし、過去のある事件がきっかけで随分と落ち込み学校にもあまり来なくなったと言う。ある事件とは、右代と付き合っていた桜庭花蓮(さくらばかれん)という女性が突如失踪し捜索願が出たが手がかりもなくいまだに見つかっていないといったものだった。自殺や誘拐など様々な憶測が出ていた花蓮であったが、実は右代に監禁されていたのだ。右代は千光寺の次は自分が狙われているということに気付き周囲を大勢の仲間で固めるが、俊はこれを瞬く間に制圧する。右代を拘束しペア・オブ・アンギッシュという取っ手を回すと四つ叉に開く金属製の拷問器具を肛門に挿し込む。中で器具を最大まで開くと「ブチッ」と音を立てて肛門が破れてしまった右代。そこに、俊によって開放された花蓮が現れミニサイズのペア・オブ・アンギッシュを右代の尿道に挿し込む。徐々に開いていき最後には性器が破裂し意識が朦朧とする右代だった。その後、花蓮が自殺し自分の本当の気持ちに気付く右代であったが「お前にそんな権利はないよ」と俊は右代の首を折り殺害する。被害者は出たものの、俊は2人目の復讐に成功した。

円比呂篇

3人目のターゲットは円比呂。円から宣戦布告を受けて復讐の準備を整えた俊であったが、先に仕掛けられてしまう。毒入りのコーヒーを飲まされ、さらにはクラスメイトを強姦されたのだ。反撃に出る為、〝果たし状〟を送りつけ廃工場に円を呼び出す。卑怯な攻撃を受けるが、あっさりこれを回避し円を拘束した俊は〝親指締め(サムキン)〟という拷問で円の両手親指を破壊する。俊が目を離した隙に拘束を解き脱出を試みる円だが、うまく走ることが出来ない。何かがおかしいと思い自分の足を見てみると、取れかかっている親指がセロハンテープで留められている。そこに俊が現れ「お前が寝ている間にいじってたら 取れちゃったんだ指」と言い放ち、再度円を拘束する。次は〝引き伸ばし台(ラック)〟という拷問で悶絶する円は、皮膚や関節が伸び切り手足が千切れかけている。「助けてぇぇ 京ちゃぁぁん!!」と叫ぶ円の前に現れたのは至極京。助かったと安心している円であったが、なんと至極の手によって拷問が再開されるのだ。両手が千切れたタイミングで俊が「ありがとう もういいよ」と至極の肩に手を置くと、円は死亡。円にとって至極に見えていたのはお面を被った俊の祖父であったが、至極に裏切られたと思い込んだまま死んでしまったのだった。「被害者みたいな顔で死にやがって」と言い、俊は3人目の復讐に成功した。

久我大地篇

4人目のターゲットは久我大地。学校で遭遇し「次はこっちの番だ」と言われ、復讐の方法を考える最中に久我の手引で家を燃やされる俊。家の中にいた祖父はなんとか自力で脱出したが、重症を負い入院することになる。久我のことを調べていると、彼と幼馴染で至極京といとこの関係にある杉崎杏奈(すぎさきあんな)という女性が浮かび上がる。彼女を利用し久我をおびき出した俊は柔道で勝負を挑む。柔道日本一である久我はプライドを逆撫でされた気分になり激昂する。勝負が始まると久我の圧倒的なパワーに歯が立たずあっさり投げられてしまうが、祖父から教わった技により回避する。そこから俊の反撃が始まると、これまで投げられた経験がない久我は受け身もろくに取ることが出来ずに大ダメージを負う。久我をロープで宙吊りにし水を張ったドラム缶に降ろしていくと、中では大量のシャコが暴れている。ドラム缶に火を点け、その場を離れる俊。水の温度が高くなると、温度変化に弱いシャコは久我の体内へ逃げ込もうと肉を食い破っていく。物音がしたので戻ってみると、そこには久我の姿がなかった。あわてて探す俊であったが、久我を助けたであろう杉崎杏奈の遺体を見つけショックを受けていると背後から久我に襲われ拘束されてしまう。殴られ続け戦意を失いそうになっていたが、至極京への殺意を思い出し反撃に出る。馬乗りになりコンクリートブロックで久我の顔面を殴り続けていると、小学生時代から目をかけてくれていて俊の復讐心に気付き始めていた刑事の安西全一(あんざいぜんいち)が現れ俊に自主を促すが「まだ殺さないといけないやつが いるんだ」と安西を絞め殺してしまう。4人目の復讐には成功したものの、関係のない人を巻き込んでしまい刑事を殺害してしまった俊。もうあとには戻れない。

革命倶楽部篇

傷つきながらも4人への復讐を成功させた俊は最後の1人であり悪の元凶、至極京を狙う。ここで4年ぶりに弟の翔が目を覚ます。急いで病院に向かった俊は快方に向かっているという看護師の言葉に安堵する。喜びも束の間、翔の病室に至極が現れた。「後はお前だけだぞ」と言う俊であったが至極を前にするといじめられていた過去がフラッシュバックし、自分に翔を守ることができるのかと不安になる。後日、警察にバレようがなりふりかまわず翔を守るために至極を殺すと決意を固めた矢先、祖父と翔が連れ去られてしまう。至極の手下によって招かれたのは俊の母校、そこにいるのは人質に取られた翔と至極、至極が運営するオンラインサロン〝革命倶楽部〟の安堂緑(あんどうみどり)、美外留(みげる)、百木早苗(ももきさなえ)、能義隆(のぎたかし)。さらに俊が原因で妹が傷つけられ兄妹仲がおかしくなったのだと思い込み、彼に同じ苦しみを与えようと企み新たに〝革命倶楽部〟の一員となった白川純が現れた。ここで、俊と白川純で翔の命を掛けた対決をさせられる。ジャンケンで3回勝ったらクリアで3回負けたら翔が死ぬというルールに応じず俊がジャンケンを放棄すると、安堂が持つチェーンソーで翔の右脚が切断される。2回目のコールが始まると今度は白川純が怖気づきジャンケンを放棄するが、何も起こらず俊の1勝としてカウントされ3回目のコールが始まる。自分にはペナルティがないと思い白川純は再びジャンケンを放棄し俊の2勝目としてカウントされると、そこに運び込まれてきたのは右手と左脚を切断された白川要の遺体だった。白川要が死んだことにより白川純自身の命を新たなペナルティとし、4回目のコールが始まる。1度目はあいこ、2度目で白川純が勝利すると翔の左足を切断しようとする安堂であったが突如現れた俊の祖父に阻まれる。裏で捕らえられていた祖父は自ら片足を切断して足枷を外したのであった。そんな状態で安堂、能義を一瞬で制圧しさらには美外留を殺害してしまうほどの強さを持つ祖父に勝負を挑む安堂。まともにやっても勝てないと悟った安堂はチェーンソーで翔に切り掛かると、それを庇った祖父は死んでしまう。祖父の死の悲しみに暮れるまもなく至極の手によって翔までもが殺害されてしまう。怒り狂う俊は、能義の顔面の皮を剥いだ後殺害し百木を蹴飛ばし至極を狙うが安堂によって阻まれる。挑発を続ける至極に対しついに俊の攻撃が至極に届くが、すぐさま警察が現れ〝革命倶楽部〟は逃亡し俊は安西全一殺害の容疑で逮捕されてしまう。

ジュージカ篇

店長断罪篇

俊が逮捕されてから5年の月日が流れ、大学生となった東千鶴はバイト先の友人から殺したい人がいると相談を受ける。彼女はバイト先の店長に拘束された状態で薬を打たれ無理やり性行為をされたと言う。警察に突き出そうとしたが、薬の依存症になり何度も店長のもとへ行ってしまうという状況に耐えかねた彼女は店長を殺したいと考えるようになったのだ。友人が人殺しになるのを避けたい東は「わたしがなんとかする!」と言い、ジュージカという願い事を叶えてくれると噂のSNSアカウントにダメ元で相談メッセージを送る。返信が来て案内されたビルに行き、依頼された悪人を殺害している組織〝ジュージカ〟の川奈美々(かわなみみ)と北見高梧(きたみこうご)に店長の殺害を依頼する。次の日、帰宅のタイミングで店長に待ち伏せをされ襲われているとこに仮面の男が現れる。失神させられ連れ去られた店長は目を覚ますと、仮面の男の正体であった漆間俊と北見に命乞いをするがあっさり殺害されてしまう。後日、再びジュージカのビルに向かった東は俊と5年ぶりの再会を果たすが彼は記憶喪失で自分の名前以外何も覚えていないという事が分かった。

安堂緑篇

東の協力により、すべての記憶を取り戻した俊は祖父の敵である安堂緑をターゲットにする。手がかりを探すため俊は川奈とともに革命倶楽部のセミナーに参加し、殺された妹の仇を取りたいと言う女性鈴山麗央(すずやまれお)に出会う。後日、合宿にも参加することになった俊と川奈は船に乗り「革命島」へ向かう。そこで早速安堂を見つけた俊は彼に近づく方法を探るため、合宿の参加を続ける俊であったが安堂の側近である来栖(くるす)に目を付けられてしまう。部屋で休んでいると、仲間を引き連れた安堂に捕らえられ俊は拷問を受けることとなった。川奈は合宿中の活動で俊に好意を抱いた花岡咲(はなおかさき)とともに俊を救い出そうとするが、薬でおかしくなった合宿の参加者達に追われることになり身を潜めていると革命島に無断で侵入した北見と合流する。捕らえられている場所を特定し俊を発見したが、手足の爪は剥がされ体中血だらけの状態であったため一度帰って立て直そうと言う川奈。「まだ安堂を…殺してない」と川奈の静止を振り切り俊は瀕死の状態で安堂のいる部屋へと向かう。卑怯にもチェーンソーで応戦する安堂の目に刃物を突き刺した俊はすぐに殺そうとするが、タイミングよく麗央が来栖を突き飛ばし部屋に入ってきた。麗央の案で安堂と来栖を苦しめてから殺すことにした俊は北見とともに拷問の準備を開始する。〝コウノトリ〟という体を三つ折りにし圧迫感を与えるという拷問を仕掛けながら、俊は安堂の指を一本ずつ切り落としていく。そんななか、来栖は麗央の優しさを利用し助かろうと試みるがあっさり殺害されてしまう。子供の頃からの親友である来栖を殺され泣き叫ぶ安堂にガソリンをかけて「焼け死ね」と言い火を付ける。こうして俊は祖父の仇である安堂への復讐を果たし革命島を脱出した。

白川純篇

ある日、ジュージカのビルに訪ねてきたのは5年前に死んだはずの白川要と同じ顔をした女性。それと同時期に白川純から連絡があり5年ぶりに再開することになった。妹の要を殺害した革命倶楽部へ復讐したいから協力してほしいと言う純に対し至極の罠だと疑う俊。警戒しながらも指定された日に破嚢市の能戸見山へ向かうと、そこで純に発砲され気を失ってしまう。目を覚ますと、警察の太田朝子とその上司であり安西全一の妻の安西瑞紀(あんざいみずき)とともに捕らえられていた。2人はジュージカについて捜査している際に革命倶楽部のアジトに侵入し捕らえられてしまっていたのだ。すると、俊と要の過去を再現した劇が始まり最後に登場した東千鶴が無惨にも殺されてしまう。その後純に殺されそうになるが、大きな爆発音とともに停電が発生したのでその隙に3人は脱出に成功した。怒りが収まらない俊は今度は殺意を持って再び1人で純のもとへ向かう。俊は怒りのままに純を殺そうとするが、実は生きていた東によって阻止される。さきほど殺害された東は、整形によって顔を変えられたダミーだったのだ。隙をついて俊に銃を向け殺そうとする純であったが、過去の記憶が邪魔をし引き金を引くことが出来ない。おかしくなった純は自分に銃を向け自殺してしまう。俊は友達の凶行を止められなかったことを悔やむが、これでまた一歩至極のもとへと近づくことが出来た。

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