名門!第三野球部(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『名門!第三野球部』とは、1987年から1991年まで『週刊少年マガジン』で連載され、1991年から1992年にはアニメ化もされた、むつ利之による高校野球漫画だ。栄華を誇る名門高校の野球部の「第三チーム」に所属する、実力も注目度も低い選手たちが、逆境に立ち向かい、努力と友情を通じて成長し、甲子園を目指す姿を描いている。個性豊かなキャラクターたちの熱いドラマと、緻密な試合描写が魅力で、読者に感動と興奮を与え続けるのだ。

『名門!第三野球部』の概要

『名門!第三野球部』とは、むつ 利之(むつ としゆき)による日本の少年漫画である。『週刊少年マガジン』で1987年から1990年まで連載され、1991年から1992年にはアニメ化された。物語は、名門とされる桜高校の第三野球部が舞台だ。この第三野球部は、練習生や雑用係が集められた「弱小チーム」として扱われていたが、熱血監督の指導のもと、選手たちの努力と情熱で成長し、甲子園を目指すのだ。スポーツマンガならではの友情やライバルとの競争、挫折と成長が織り交ぜられた感動的なストーリーが特徴である。単行本は全31巻が発行されており、第22巻からはタイトルに「飛翔編」とつき、話数もアラビア数字に変更された。第13回講談社漫画賞少年部門受賞している。この漫画の実質的な続編として『上を向いて歩こう』『復活!!第三野球部』がある。

『名門!第三野球部』のあらすじ・ストーリー

解散の危機

監督(左)から解散を告げられる第三野球部。

高校1年生の檜あすなろ(ひのき あすなろ)は身長が低く、何か言われても言い返すことができず、いつも誰かにいじめられていた。そんな彼が唯一好きなものが野球だった。桜高校の野球部は県下有数のチームであり、昨年は甲子園ベスト4まで進出している。あすなろはほとんどが落ちこぼれの集まりで、毎日雑用ばかりさせられている三軍に所属していた。ある日、一軍のエースピッチャーが三軍をからかいに来るのだ。三軍の一人である小西カズオ(こにし かずお)が頭に血が上り、一軍のエースを突き飛ばす。暴力沙汰を監督が収めたが、三軍を「クズだ」と断言し、一ヶ月後の解散を通告した。納得できない三軍の一人、石井幸司(いしい こうじ)が「解散するなら最後に試合させてくれ」と訴えたところ、監督は最後のはなむけに一軍と試合させてやると言うのだ。さらに「その試合で僕たち(三軍)が勝ったら?」と尋ねると「その時はお前らが一軍だ」と答える。こうして、第三野球部は一軍の座をかけた試合に挑むことになるのだ。

猛練習と成長

人数不足で困っていたところに、その話を聞いていた、あすなろの幼馴染である村下夕子(むらした ゆうこ)が女性ながら8人目として加入する。さらに、昨年まで一軍のメンバーでありながら監督とトラブルを起こして三軍に落とされた海堂タケシ(かいどう たけし)が、あすなろの熱意に心を動かされ、監督兼選手として加入することになる。やるからには勝つという信念で、海堂は第三野球部のメンバーを徹底的に鍛え上げるのだ。第三野球部は、試合に向けて猛練習を開始する。男女関係なく、晴れの日も雨の日も練習を続け、あすなろは徐々に闘争心が芽生えてくる。試合当日、一軍との試合が始まり、一方的に点を取られるも、夕子の励ましで気合が入る。徐徐々に流れを取り戻した第三野球部は一軍に対して善戦し、海堂のホームランなどでコールド負けを免れ、試合は白熱する。3点差のまま最終回、ツーアウトとなった後、足が武器の白石兄弟が海堂から教えてもらっていないプッシュバントとバスターで塁に出る。ツーアウト一、二塁で三番あすなろ。執念で一軍エースの球に食らいつき、最後は外野を抜く長打を放つ。足の早い白石兄弟は2人ともホームに戻り一点差となる。あすなろが同点を狙いホームベースを目指すが、僅かに届かず倒れてしまう。泣くあすなろを、第三野球部の仲間が立派な勇気のある人間として迎えるのだ。あすなろは懸命に這いずりながらホームベースに向かう。しかし無情にも、ホームベースの手前で一軍のキャッチャーにタッチされゲームセットとなる。第三野球部の闘いは終わるのだ。

再戦と新たな挑戦

第三野球部は試合後に解散予定だったが、生徒たちの拍手により存続が決定した。翌日、一軍から再試合の申し込みがあり、1ヶ月後に勝負を決めることになる。第三野球部は甲子園を目指し、銚子工業との練習試合を行い、新メンバーの達郎を加える。試合では桑本聡とのライバル関係が生まれ、引き分けに終わるのだ。一軍との再試合では、海堂が監督の秘密を知り悩むが、最終的に勝利するのだ。鬼頭監督は続投し、京本と桜井が加入した第三野球部は甲子園を目指して進むのである。

甲子園への道のり

浅加学院と対戦

桜高野球部は前年度甲子園ベスト4まで進出したものの、ほとんどが三軍選手だったため低評価だった。しかし、大会が始まると三回戦まで全てコールド勝ちを収め、一気に注目を集めるのだ。4回戦では進学校である浅加学院と対戦。ピッチャーの坂口力也が全打点を叩き出し、守備に優れた浅加学院に苦戦する。初回に1点を取られ、8回まで0対1のままで進むが、浅加学院のエラーをきっかけに、ツーアウト満塁のチャンスが到来する。あすなろが坂口のフォークボールを見事に打ち返し、逆転ヒットを放つのだ。3対2で第三野球部が勝利し、坂口はプロでの再会を誓い去るのである。

準決勝で再び銚子工業と激突

準決勝に進んだ第三野球部は、練習試合で引き分けた銚子工業と再戦する。桑本は投球練習で圧巻の豪速球を披露し、第三野球部ナインは完全に萎縮。あすなろもプレッシャーに苦しみ、初回は制球が定まらずピンチになる。小西の助けで立ち直るが、桑本の球に苦戦し、5回まで全員三振となるのだ。6回にバントとエラーでノーヒットながら1点を奪う。あすなろはヒットを打たれるものの9回まで無失点。9回ツーアウトで桑本に同点ホームランを浴び、延長戦に突入するのだ。延長でも桑本のノーヒットピッチングが続き、16回には桑本の打球をレフトフライに抑える。18回、達郎が四球で出塁。達郎は初めて胸が熱くなる思いを味わい、涙を流しながら次のホームを目指すのだ。あすなろは桑本の150kmのストレートを強烈に打ち返し、浅いライトライナーとなるも達郎はタッチアップでセーフとなり、第三野球部はサヨナラ勝ちを収めるのである。桑本は18回をノーヒットで46奪三振と完璧なピッチングを見せたものの、1人トイレで悔し泣きをするのだ。こうして第三野球部は県予選の決勝に駒を進めることとなる。

甲子園出場をかけて黒潮商業と対戦

第三野球部は甲子園出場をかけ、「悲運の黒潮商」と壮絶な決勝戦に臨む。黒潮商業は創部以来、何度も決勝や準決勝に進出するも、一度も甲子園に出場していない。今年こそ甲子園に行くという強い意気込みの黒潮商と、三軍から這い上がってきた第三野球部の対戦は、負けられない壮絶な一戦となる。黒潮商のキーマンは、打率7割5分を誇る3番の土屋と、強烈なシュートを投げるエースで4番の五十嵐だ。第三野球部は彼らに苦戦し、黒潮商のセンター高橋に2点を先制される。しかし高橋が怪我で交代した後、第三野球部はバント攻撃や達郎のテニス打法で同点に追いつき、投手戦の末、最終回を迎える。9回表は黒潮商が無得点に終わり、9回裏、第三野球部はエラーが三度続き満塁のサヨナラチャンスを迎える。黒潮商はミスを連発し、五十嵐の一喝で延長戦へ持ち込むのだ。延長14回、土屋が三塁打を放ち、五十嵐のピッチャーライナーで1点を勝ち越す。絶体絶命の第三野球部は、ツーアウトから海堂が雨の影響で運良く出塁し、あすなろにバットが託される。五十嵐のシュートに苦戦しながらも、あすなろは最後の力を振り絞り、センター方向に打ち返すのだ。打球はバックスクリーンまで飛び、逆転サヨナラホームランで第三野球部は甲子園出場を決めるのである。

甲子園での戦い

甲子園出発の日、部員の石井が行方不明になる。石井は県予選での打撃成績に悩み、黒潮商の土屋に天秤打法を教えてもらいに行っていたのだ。土屋に三塁守備用のミットを渡して天秤打法を教わった石井は、帰ってきた日にあすなろと対決し、強烈な打球を打つ。こうして全員揃った第三野球部は甲子園へと乗り込んだのである。

初戦は東東京代表・聖誓高校

第三野球部の甲子園一回戦の相手は、東東京代表の強豪校、聖誓高校だ。試合が始まると、第三野球部は甲子園の雰囲気に飲まれ、先頭打者の白石兄があがってしまう。しかし、二番打者の白石弟が緊張を解き、聖誓のエース・小池から人生初のホームランを甲子園初打席で達成するのだ。小池の速球は銚子工業の桑本の球より遅く、第三野球部にとっては打ち頃の球であった。全員が打ちまくり、最終的に14得点を挙げる大差の試合となった。一方、投手のあすなろはノーヒットノーランを記録し、9回ツーアウトまで完璧に抑えたが、ノーヒットノーランに気づいて突然四球を連発し、満塁のピンチを迎える場面もある。それでも、第三野球部は圧勝で試合を終えるのである。

二回戦は岐阜代表・道三高校

第三野球部の二回戦の相手、岐阜代表の道三高校は、監督の厳しい指導のもと、完全に操られたチームであり、選手たちはすべて監督の指示通りに動いている。試合では、道三高校は徹底した指示により初回に1点を取り、投手の球も一球ごとに指示して第三野球部に点を与えない。そんな中、悪球打ちの小西が大きく外した球をレフトスタンドまで運び、同点に追いつくのだ。浜田監督のデータ重視の戦略では、この悪球打ちは計算外であった。道三高校は同点に追いつくが、浜田監督の鉄拳制裁により選手が動けなくなる。選手たちはついに監督に逆らい、監督をベンチ裏に縛り付けて、自分たちの野球をやることを決意するのだ。道三高ナインは気力あふれるプレーで逆転に成功し、第三野球部は一点リードされたまま最終回の攻撃に挑む。四番・海堂が真っ向勝負で同点ホームランを放ち、あすなろもヒットで続く。ツーアウトながらランナー二塁のサヨナラチャンスで、バッターは天秤打法の石井。プレッシャーに弱い石井は、観客席で応援に来た父の姿を見つけて奮起し、サヨナラヒットを放って第三野球部を準々決勝に導く。

次の敵は第三野球部自身にあり

rism_4e0
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@rism_4e0

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