アイの歌声を聴かせて（アニメ映画）のネタバレ解説・考察まとめ

音楽室のサトミのセリフである。
アヤはゴッちゃんと付き合っているが、最近うまくいっていなかった。
アヤは友だちにゴッちゃんのことを自慢していたが、自分だけが知っているゴッちゃんの魅力は誰にも教えず、独り占めしたかったのだ。アヤはサトミにそのことをぶちまけ、泣きじゃくった。そして、サトミはアヤの手をとって歩き始めた。
「行こう。時間は解決なんかしてくれない。傷口が固まっちゃうだけ」といって、ゴッちゃんがいる電子工作部の部室に向かった。尻込みしているアヤにサトミは「後悔したくないなら、勇気を出して」と声をかける。
シオンがバラード曲「Umbrella」を歌う。
雨の中、屋上でアヤはゴッちゃんに改めて告白した。
サトミは小学3年生のときのことを後悔している。トウマが改造したタマゴ型AIのおもちゃ。それをお母さんに取られてしまったことがきっかけで、トウマと疎遠になってしまったのだ。勇気が出ずに、大切な関係が壊れてしまった。そのときの後悔は、もうしたくないという気持ちが伝わるセリフである。

サンダーの柔道初勝利

一度も柔道の試合に勝ったことがないサンダーだったが、シオンとの練習の成果で初勝利をしたシーンである。
サンダーは、試合の前は三太夫と乱取りをしている。しかしその三太夫は壊れてしまった。慌ててトウマのところへ三太夫を修理にもっていくが、時間がない。それで電子工作部のゴミ箱型ハードディスクに三太夫をつなぎ、次にシオンをハードディスクにつないだ。これでシオンは三太夫の代わりができる。
そして、サンダーと柔道着を着たシオンの乱取りが始まった。サンダーはシオンがAIだと分かってからもシオンに好意をいだいている。
「Lead Your Partner」のリズミカルなビッグバンドの曲が流れだす。そのリズムにのって、シオンはサンダーの足を払い、何度も投げる。そしてリズムがサンダーに伝わり、ついにサンダーがシオンを背負い投げをする瞬間、シーンは試合に切り替わり、相手の選手をきれいな一本背負いに決めた。サンダーの初勝利である。

サトミ「でも……みんなを幸せにした」

学校からの帰りのバスの中、サトミの隣にトウマが座っている。サトミはシオンのことをゆっくり話しだす。
シオンはめちゃくちゃだけど、「でも……みんなを幸せにした」という。シオンのおかげで、ゴッちゃんとアヤは仲直りをし、サンダーは柔道で初勝利した。サトミはシオンに「幸せの意味がわかる？」と聞いたら「わからない」と答えたという。トウマは「AIには難しい質問かもね」というが、AIにもだ。幸せの意味なんてそんなに簡単には分からない。
短いシーンであるが、表情からもサトミが”幸せ”について考えるシーンである。

トウマ「僕が、サトミのことを守るって」

小学3年生のときの後悔は、サトミだけでなくトウマも抱えていた。
シオンは、トウマの携帯電話からサトミを呼び出した。夜のメガソーラーの管理小屋の屋根の上でシオンはサトミに向けて歌いだす。「You’ve Got Friends〜あなたには友達がいる〜」という曲である。
そしてトウマも屋根にのぼって歌う。ダリウス風車のライトがイルミネーションのように光る。続いてゴッちゃん、アヤ、サンダーも歌う。
感動で涙を流すサトミにトウマが駆け寄る。サトミとトウマは話せない時間が長かった。サトミはトウマの大切な場所である電子工作部の部室を守ってくれた。トウマはサトミのことをずっと見ていたのに、告げ口姫といわれて、孤独でいたサトミのことを守れずにいた。トウマの決意でもあるセリフ「僕が、サトミのことを守るって」といった瞬間、シオンは星間の保安部員に撃たれてしまう。

トウマ「サトミを幸せにすること」

小学3年生のトウマのセリフである。
ゴミ箱型ハードディスクにシオンのバックアップがあった。その中の古いファイルをトウマが開くと、小学3年生のサトミとトウマが映し出された。トウマはタマゴ型のAIのおもちゃを改造して、会話ができるようにした。AIは人間の命令に従わなければならないということをトウマは知っている。このAIのおもちゃをサトミにプレゼントするのだ。少し考えて、トウマは「サトミを幸せにすること」と命令した。
その命令に忠実にAIは行動したのである。このAIのおもちゃとサトミはいっぱい遊んだ。その記録が残っていたのである。
この物語は、トウマのこのセリフから始まっている。

『アイの歌声を聴かせて』の裏話・トリビア・小ネタ／エピソード・逸話

名前の由来

芦森詩音の由来はアシモフと紫苑の花

詩音（シオン）は、「君を忘れない」や「遠方にある人を思う」の花言葉がある紫苑の花が由来とされている。
もちろん歌をうたうことから「詩」と「音」の漢字を当てている。
芦森（アシモリ）は、SF作家アイザック・アシモフの「アシモフ」から。監督の過去作『イヴの時間』にも、芦森博士が登場している。

景部市の由来はSF小説『The Caves of Steel』

架空の地名である。
作家アイザック・アシモフのSF小説『鋼鉄都市』の原題『The Caves of Steel』が由来である。

トウマとサトミの由来は楳図かずおの漫画『わたしは真悟』

漢字では、十真・悟美と書く。
楳図かずおの漫画『わたしは真悟』の主人公「真悟」の名前を分けて、十真と悟美に名前にした。
『わたしは真悟』は、産業用ロボットが自我に目覚める物語である。

サンダーと三太夫の由来はプロレスラーのサンダー杉山とゆでたまごの作品『SCRAP三太夫』

サンダーは、プロレスラーであるサンダー杉山から杉山をサンダーと呼ばせている。
柔道の練習用ロボット三太夫の由来は、漫画家ゆでたまごの作品『SCRAP三太夫』である。

ゴッちゃんのモデルは監督の高校の同級生

吉浦監督はインタビューで、ゴッちゃんのモデルがいると話している。
実際に、「ゴッちゃん」と呼ばれていた高校の同級生がおり、クラスでも目立つ存在だった。
他にも、劇中のキャラクターは、だいたい知人や友人がモデルだったりすると語っている。