ガクサン(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ガクサン』とは2021年12月より佐原実波が『モーニング』で連載を開始し、移籍後『コミックDAYS』で連載している、学習参考書をテーマにした漫画作品である。参考書出版社に中途入社した茅野うるし。お客様ご相談係に配属され出会ったのは、クセが強い参考書オタクの福山だった。福山は社会人として問題ばかりだが参考書の知識は豊富で、うるしは振り回されながらも刺激を受ける。そんな中、うるしは福山の過去を知ることとなる。実在の参考書が紹介されることで学生や保護者、学び直しを目指す社会人からも好評を得ている。

『ガクサン』の概要

『ガクサン』とは2021年12月より佐原実波が講談社『モーニング』で連載を開始し移籍後、講談社コミック配信サイト『コミックDAYS』で連載している、学習参考書をテーマにした漫画作品である。作者の佐原実波は『ガクサン』が初の青年コミック誌作品となり、自身のSNSで作品情報を発信している。作中において実在の参考書が紹介されることで、学生や保護者、学び直しを目指す社会人から好評を得ている。今一番フレッシュな漫画を決めるマンガ大賞の一次選考作品に2023年と2024年にノミネートされる。
参考書出版社「いぶき社」に中途入社した、サブカルミーハー女子の主人公・茅野うるしは会社の倉庫部屋にある「お客様ご相談係」に配属され、クセが強すぎる参考書オタク・福山譲と二人きりの業務をしながら初日から福山に振り回される。憧れの出版業界に入社できて喜んでいたうるしだったが、実は、会社の厄介者である福山のお守り係として配属されたことを知る。うるしは福山との人間関係に悩みながらも、お客様ご相談SNSを始めたところ様々な相談が舞い込んでくるようになり、相談に対する福山の的確な意見や考え方に徐々に刺激を受けていく。そんな時、会社の怪しげな勉強会に誘われ、そこで福山の過去を知ることとなる。学習参考書出版社を舞台に、偏屈参考書オタク・福山とサブカルミーハー女・うるしが衝突しながらも参考書への愛や夢を追い求めていく参考書最前線の凸凹お仕事コメディー。作品の出版社「いぶき社」は架空の会社ではあるが、作中では実際の学習参考書を多数取り上げて参考書の選び方や勉強の仕方などについて丁寧に解説しているところも作品の人気の特徴である。

『ガクサン』のあらすじ・ストーリー

うるしと福山の出会い

憧れの出版業界に中途で採用された主人公・茅野うるし(かやのうるし)は、営業部「お客様ご相談係」に配属される。入社初日で喜びいっぱいだったのも束の間、同じご相談係の長身で無愛想な男・福山譲(ふくやまじょう)に書店の店頭販売へと連れ出される。福山から出版社に転職してきたことをミーハーだのサブカルだのと嫌味を言われながら、書店店頭で接客をすることになる。うるしはこれまで何かに夢中になったことがなく、亡くなった父の「将来、好きなことを身につけられるように勉強するんだ」という言葉を思い出しながら常に自問自答していた。

うるしはめちゃくちゃな接客をする福山にヒヤヒヤしながらも、参考書に関しては尋常ではないほどの知識を持ち、的確なアドバイスをする福山に終始驚きを隠せない。福山の参考書が心から好きな姿勢に初日から刺激されるのであった。

しかし、書店での仕事から会社に戻ったうるしは福山の同期で高校国語編集者の山崎翔(やまざきしょう)から、うるしが「お客様ご相談係」に配属された理由を聞くことになる。それは、相談業務とは別に会社の厄介者である福山のサポート係いわゆる、お守り係というものだった。

福山から冷たくあしらわれて振り回される日々の中で、うるしは本格的にSNSでの相談業務を始める。SNSでの様々な相談に福山と対応していきながら、福山も純粋でまっすぐなうるしに徐々に心を開いていく。
そんなある日、うるしは山崎から会社の秘密組織に招待される。

うるしの「しをり会」加入

山崎から招待された秘密組織は、会社の各部署メンバーが集まった社内の勉強会だった。勉強会は「しをり会」と呼ばれ、主催者の高校英語編集者・花山しをり(はなやましをり)の名前から付けられていた。いぶき社は以前から保守的な会社のため、問題意識が高い各部署のメンバーが月一で勉強会を開催していた。メンバーは、厄介者ではあるが能力の高い福山をしをり会に呼びたいと考えていたことから、山崎はうるしに福山との橋渡し役をしてもらうためうるしを会に招いた。うるしは、しをり会に参加しメンバーの参考書への熱い想いを目の当たりにして、もっと参考書のことを学びたいと思いしをり会に加入することを決める。そして、同時に編集者になりたいという憧れも生まれ始める。

しをり会に正式に加入したうるしは、福山をしをり会に連れていくことと参考書に詳しくなることを当面の目標に掲げ、日々の業務に奮闘する。
そんな中、お客様ご相談係のSNSに、しをり会メンバー・谷津司(やづつかさ)の娘である谷津葵(やづあおい)が相談をしてくる。うるしと福山は葵と近くの喫茶店で落ちあうことになるが、高校3年生の葵は「理転がしたい」という願望を持っており、後から喫茶店に合流した父・司をも困らせてしまう。
しかし、福山が的確なアドバイスと参考書での学習を提案したところ、司と葵を納得させることに成功する。これを機に、福山のことを煙たがっていた谷津司は福山への見る目が変わるようになる。
うるしは、良い流れが来たと感じ、思い切って福山を勉強会に誘うがあっさりと断られてしまう。
さらに、山崎から福山が以前いた編集部からお客様ご相談係に異動させられた理由が、部下へのパワハラだったことを知らされる。
それは、福山が編集者時代に理想の参考書を追い求めて周りにも同じことを求めたことが原因だった。
結果として1人の後輩が会社を辞め、さらに同じタイミングで編集長や他の社員たちも独立する形で会社を辞めて社内は大混乱に陥った。
お客様ご相談係は、福山を編集の仕事から切り離すために作られた部署だった。

福山の気持ちの変化

”甘いものと引き換え”ではあるが、何かとうるし(左)を助けるようになった福山(右)

うるしが実家に帰省した際、姉の望月あかね(もちづきあかね)から娘のゆかりのことで相談を受ける。ゆかりは小学5年生になるが全く勉強せずに、あかねはとても心配していた。うるしはあかねと一緒に書店に行き、ゆかりの漢字ドリルを選ぶが、ゆかりの反応はイマイチだった。後日、姉親子のことを福山に話すと福山はすぐにあかねに電話するように求める。福山はあかねと話す中で、娘のゆかりにはそもそも読むことの基礎ができていないのではないかと指摘し、的確なアドバイスと参考書を伝える。うるしは毎回、相談を解決していく福山に感服する一方で、自分自身ももっと参考書に詳しくならないとと思い、編集者への憧れがさらに増していく。
その後も日々の相談業務で様々な相談者と接する中で、うるしも自分なりの考え方や発言ができるようになっていく。福山はうるしが少しずつ成長していくことを感じながら見どころがあるように思えていた。
しかし、うるしが編集者を希望していることを知ると複雑な気持ちになり、うるしに「編集者はやめておけ」と冷たく突き放してしまう。福山は山崎にうるしのことを電話で話すと、うるしがご相談係ではなくなることに対して、自分が残念に思う気持ちを持っていることに気づく。一方で、うるしも自分は編集者になりたいのではなく参考書に夢中な人たちが好きで応援したいという気持ちに気づく。
会社で福山はうるしに、「今までの積み重ねの結果を見てきたから、相談係ではなく編集者になりたいと言うなら残念だ」と伝えると、うるしは「夢中で頑張る人たちのために、相談係で頑張りたい」と答えた。

福山に憧れる元教え子で新入社員の宮下七海(みやしたななみ)が現れたり、山崎がうるしを好きになってアプローチしたりするが、うるしと福山はどこ吹く風という感じで相変わらず相談者からの相談に応対していた。
福山は、自分が学生時代、冴えなくてつまらない人間だったことや経済状況から塾に通えず参考書のみで受験勉強したことなどをうるしに話す。真剣に人の話を聞くうるしに対して、今やお客様ご相談係に不可欠な存在だと感じる。社内でも福山と話す人が少しずつ現れてきたことで、人は変われるものだと思い、福山はしをり会への参加を決意する。

福山の「しをり会」加入と解雇の危機

うるしの説得と福山の気持ちの変化により、福山はついに「しをり会」に加入する。福山に昔から憧れている新入社員の宮下七海も同時に加入する。
福山が加入したことで、よりパワーアップした「しをり会」はリーダー・花山しをりの提案で、柔軟な企画を編集部の習慣にとらわれずに作っていける新たな部署「社内横断企画室」の立ち上げを計画する。いぶき社は部署間での連携が取れていないため、「社内横断企画室」で、他部署と協働して各部署のハブになることを目指すことを考えていた。

しをりが上長に企画書を提出したところ、会議室にやって来た柊(ひいらぎ)編集局長に「ビジョンがない」と呆気なく打ちのめされてしまう。ただ、柊編集局長は「社内横断企画室」の立ち上げを認めないわけではなく、不適な笑みを浮かべながら「もがく編集者たちの熱い心が大好きなんだよ」と皆に伝える。会議室は異様な空気となり、さらに柊編集局長は福山の問題があった過去を取り上げて指摘する。柊編集局長は「社内横断企画室」を発足させる条件として、ベストセラーとなる1冊を作り出すことを条件にあげる。そして、それができない場合は「社内横断企画室」の断念とともに、福山に会社を去ってもらうことを約束させる。強い正論を出してくる柊編集局長にさすがの福山も何も言い返すことができなかった。

窮地に追い込まれた福山だったが、「お客様ご相談係」での日々の業務は変わらず、うるしとともに相談者の応対に明け暮れる。
そんなある日、急遽、うるしと福山は地方への出張で書店営業を命じられる。2人が着いた先に待ち構えていたのは、何と柊編集局長だった。
地方の書店の問題解決について説明する福山だったが、柊編集局長は今後、将来的に地方営業は必要ないと提言する。その理由は参考書のマーケットは首都圏が圧倒的に大きいというものであり、柊編集局長はいぶき社は首都圏の高偏差値レベルに特化していくべきだと考えていた。またしても福山は柊編集局長の正論に何の言葉を返せなかった。

出張帰りの新幹線で、うるしは谷津からの電話を受け、娘の葵が大学に合格したことを知る。うるしは、熱い気持ちになり「柊編集局長がどんなに正論を言おうとも、相談係で会ってきた人たちを切り捨てたくない」と強く主張する。福山は、そんなうるしの言葉に救われたのだった。

『ガクサン』の登場人物・キャラクター

主要人物 (いぶき社 お客様ご相談係)

茅野うるし(かやのうるし)

本作の主人公、26歳。学習参考書出版社の「いぶき社」に中途入社してきたサブカル女子。
心優しく、何かに夢中な人が好きというお人好しな性格。それゆえに自分自身が夢中になれるものがないという悩みを持っている。
すでに亡くなっている父親との思い出をいつも心の支えにしている。うるしとは正反対の見た目が派手な姉がいる。姉とは仲が良い。
「お客様ご相談係」に配属されて福山のお守り係として、クセの強い福山に悪戦苦闘するが、甘い物を定期的に差し入れる作戦で福山から色々と参考書の知識を得る。国語編集部の山崎から「しをり会」に誘われ編集の仕事に憧れを持つ一方で、「お客様ご相談係」の仕事のやりがいに気づく。持ち前の明るさと純粋な考え方から「しをり会」のメンバーや福山からも一目置かれるようになる。
「お客様ご相談係」での相談業務を通じて福山とも徐々に距離を縮めていき、福山を「しをり会」に参加させることに成功する。福山が周りに対して失礼な発言すれば注意したり、良い対応をすれば褒めたりと軽く調教できるようにもなってきている。
入社して間もないが、すでに社内では福山の良き理解者。

福山譲(ふくやまじょう)

いぶき社きっての参考書オタク。参考書や教育動向に博識である一方で、対人能力は壊滅的。周りから嫌われている。背が高すぎてよく頭をぶつける。
甘いものが大好物で、最初はうるしを相手にしていなかったが甘い物を定期的にもらえるため、相談業務や参考書について色々とうるしにアドバイスをしている。以前は、高校国語編集部にいたが参考書への愛が強いが故に部下にパワハラをしたと認定されて、「お客様ご相談係」の倉庫部屋に異動させられた。社内で能力は認められているものの煙たがられていて、他部署との関係は険悪。
編集部時代に作った本がずっと売れていて、当時ヒットメーカーと評判だったことから、「しをり会」からは参加を求められている。
気に入らないことがあると、黙り込んだり拗ねたりと子供っぽいところがあり、自分が嫌われている理由もきちんと分かっていないといった鈍感さを持っている。勉強に悩んでいる人にはたとえ中学生であろうと厳しく本音をぶつけるが、最終的に良いアドバイスをする。
幼少期は、優等生ではなく冴えない子供だった。都市部まで距離がある田舎の町営住宅で育ち、家は貧しく塾にも行けなかったため、独学で参考書のみで一橋大学社会学部に入った。
うるしから「しをり会」に誘われ断っていたが、うるしのまっすぐな言動に徐々に心を許していき、「しをり会」に参加することを決める。

いぶき社 しをり会メンバー

山崎翔(やまざきしょう)

福山の同期で国語編集部の編集者。笑顔が爽やかで優しいが、ちょっとチャラい。うるしのことを知り合った初日から「うるしちゃん」と呼んでいる。周りに気遣いができて、知り合いも多くコミュニケーション能力が高い。
オフの日も充実させるなど意識高い系ではあるが、どこか仕事に夢中になりきれない部分がある。
福山の能力を買っていて、「しをり会」に参加させたいと考えている。そのため、秘密組織と言ってうるしを会に招く。
うるしに編集のことを色々と教える一方で、うるしに好意を寄せており福山にはうるしに気があることを伝えているが、勝手にしろとあしらわれている。4巻ではうるしをデートに誘うも、編集者を諦めて相談係で頑張りたいと告げられる。
さらにそれが、福山の影響だと知りショックを受けて、「しをり会」の赤城みおの前で落ち込んでやけ酒を飲んでしまう。
福山のことを嫉妬しているが、嫌いにはなれない。社内で煙たがられている福山の唯一の味方。

ryuji04188
ryuji04188
@ryuji04188

目次 - Contents