中村佳穂(Kaho Nakamura)とは【徹底解説まとめ】

中村佳穂(なかむら かほ)は、京都府を拠点に活動する女性ミュージシャンである。20歳で音楽活動を本格的にスタートし、2018年にアルバム『AINOU』をリリースした。その音楽スタイルは、ソウル、ジャズ、ポップ、R&B、ファンクなど多岐にわたり、世界中のリスナーから賞賛されている。2019年に「FUJI ROCK FESTIVAL」に出演するなど活発な公演を行う。2021年公開の映画『竜とそばかすの姫』では主役のすず/Belleの声優と歌を担当。声優としての演技力も高く評価されている。

中村佳穂の概要

中村佳穂は、京都府を拠点に活動する女性ミュージシャンである。京都精華大学人文学部入学後、20歳で本格的に音楽活動をスタートし、2018年にはアルバム『AINOU』をリリース。同アルバムの収録曲「きっとね!」は、『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日)の名物企画「売れっ子音楽プロデューサーが選ぶ2018年の年間ベスト10」に選出され、本格的に話題になる。2019年にはLIQUIDROOMでワンマンライブ「LIQUIDROOM 15th ANNIVERSARY 中村佳穂」を行うほか、「FUJI ROCK FESTIVAL」に出演するなど活発な公演を行う。

2021年公開の映画『竜とそばかすの姫』では主役のすず/Belleの声優と歌を担当。音楽に留まらず、声優としての演技力も高く評価された。映画公開日には、自身が作詞した劇中歌「歌よ」を配信リリース。その音楽スタイルは、ソウル、ジャズ、ポップ、R&B、ファンクなど多岐にわたる。彼女自身、「どれもフラットに聞いていたので、ジャンルについて考えたことがなかった」と語っている。その多様性を生み出す背景には、ジャンルに囚われず音楽を平等に楽しんできた歴史がある。そんな彼女は、自身の音楽ジャンルについて「歌」であると語る。

中村佳穂の活動経歴

中村佳穂の原点

幼い頃から歌を歌い、絵を描くことが大好きだった中村は、鼻歌を歌いながら何時間も絵を描いて過ごすような子供であった。両親は様々な習い事をさせてくれたが、その中でも音楽と絵が特に好きであった。目指す方向性は、既に幼稚園の頃に決まっていたと言う。歌も絵も大好きなので、歌手か絵描きどちらかの職業になると考えていた。

母の影響も大きい。奄美大島出身の母は、「音楽」の大ファンであった。島では手に入りにくいCDやレコードを頑張って集めて探しては、それをずっと聴いていたような人であった。
結婚して関西に移住してもその熱量は変わることは無く、家では常に音楽が流れているような環境で中村は育った。彼女が成人してからも、最新のミュージシャンから、アフリカの歌手まで「このアーティスト知ってる?」と電話が掛かってくると言う。

人生の転機

中学校・高校は吹奏楽部に所属していた中村だが、音楽に完全にシフトしていた訳ではない。絵をやるのか、音楽をやるのか。大学に入る直前までずっと悩んでいた。
高校生の時の美術教師の影響もあり、当初は美大で絵を描きつつ音楽活動もしようと考え、美大に見事合格。だが卒業制作として絵を描いていたところ、悲しくも嬉しくもないのに涙が止まらなくなったと言う。

当初は、絵をやりながら、上手くいけば音楽もやれればいい。その程度の気持ちであった。しかし中村は「やはりどちらかにした方が良いのだ。そしてそれは絵ではない」と直感したのである。「音楽一本でいこう」と決意し、両親を説得。大学を再度選び直す事になる。

音楽活動開始~ファースト・アルバムリリース

1stアルバム『リピー塔がたつ』

再受験を経て精華大学に入学した後、中村は本格的に音楽活動を開始した。当初は何をしたら良いか分からず、キーボードを背負ってライブハウスのドアを叩くところからスタートした。活動開始から間もなく、父親から「オーディションを受けて通らなかったら才能がない。目指すのをやめてくれ」と告げられる。カバー曲では落ちるのではないかという想いが芽生え、作曲も開始。またこの時期、友人のレコーディングに参加した事をきっかけに、SIMPO RECORDSの小泉大輔に偶然出会う。小泉に才能を認められ、以降積極的なサポートを受ける事になった。

全国のライブハウスを訪れ、出会ったミュージシャンたちと夜な夜な即興セッションを重ねることで、自身のスタイルを確立した。ライブは注目を集め、大学2年生の時には年間約150ステージに出演し、CD約3000枚を販売するまでになった。2014年には1stミニアルバム『口うつしロマンス』をリリースし、2016年7月には大学4年間の音楽活動の集大成としてアルバム『リピー塔が立つ』をリリースした。大学に入ってからの4年間、中村は全国でポップスやエレクトロニカ、ヒップホップ、民族音楽まで、多様な音楽のルーツを持つアーティストたちとセッションを行ってきた。そんな活動の中で出会った人々や音楽を集めて制作したものがこのアルバムである。

集ったベテラン・若手を含む9名の中には、スチャダラパーのBOSEや、布袋寅泰らのサポートとして活躍してきたパーカッショニストのスティーヴ・エトウの名前もある。当時まだ中村は無名であり、レーベルにも所属していなかった。無所属のミュージシャンの自主制作への参加など、断られるのが通例だ。しかし彼女の声はライブを通じて、観客だけではなく、ミュージシャンの心も射抜いた。中村の才能に惹かれ、ベテランのミュージシャンたちが自分よりも知名度の低いシンガーのもとへと集結し、アルバムの制作が実現したのである。多様なルーツを持ったミュージシャンたちをまとめ上げることは難しかったが、彼女はその異種性を包み込み、見事に1枚のアルバムへとまとめ上げた。

フジロック初参戦~『AINOU』リリース

2ndアルバム『AINOU』

2016年7月、中村は「FUJI ROCK FESTIVAL」に出演。本来はデュオ編成で7割のパフォーマンスを行う予定であった。しかし、音が大きく華やかな方が観客を立ち止まらせることができると考え、直前になって他のメンバーも最初から参加させることに決めた。この決断が功を奏したのか、完全無名の状態にもかかわらず演奏は人々を引き寄せ、45分のステージで驚異の100枚のCDを売り上げた。

観客としてもフジロックに参加した中村は、ジェームズ・ブレイクの演奏に衝撃を受ける。本来は歌や声がぶつかり合うようなサウンドが好きな中村だが、彼の演奏は音数が少ないにも関わらず魅力的なサウンドに感じられた。さらにそのサウンドは、不思議なことにステージからかなり遠方で演奏を聴いたとしても魅力が変わらない。その時、一緒に演奏を聴いていたのがロックバンド「レミ街」の深谷彩(ヴォーカル)と荒木正比呂(キーボード)だった。ジェームズの音楽の秘密はどこにあるのかと問うと、「音のバランス」にあると言う。

サウンドのバランスに、自分が進んでいくヒントがあるのかもしれないと考えた中村。サウンドメイキングを重視した音楽を、彼らと一緒にやってみようと思い立った。中村は「次のアルバムは、サウンドメイキングを中心に一緒に話し合いながら作っていきたい。どうか協力してもらえないか」と2人に直接依頼する。そして約2年半の歳月を経て、2018年11月に、2ndアルバム『AINOU』をリリース。先鋭的な音楽性を持つこのアルバムは、メディアやリスナーから絶賛された。

さらに2019年1月、アルバム『AINOU』収録曲「きっとね!」のMV公開後、『関ジャム完全燃SHOW』の人気企画「売れっ子音楽プロデューサーが選ぶ2018年の年間ベスト10」にアルバムの収録曲が取り上げられ本格的にブレイクした。その後、多くのイベントに出演する機会に恵まれる。2019年3月にはアルバム『AINOU』は「APPLE VINEGAR -Music Award-」の大賞を受賞し、雑誌『ミュージックマガジン』の特集「2010年代の邦楽アルバム・ベスト100」でも第9位に選ばれた。

『竜とそばかすの姫』声優初主演~『紅白』出場

2019年7月、映画『竜とそばかすの姫』の主演を探していた細田守監督は、スタッフから中村の噂を聞き、奈良で行われたライブに駆けつける。中村の歌声に衝撃を受け、打ち上げにも参加。深夜2時ごろまで飲んだ後、彼女をオーディションに誘った。オーディションでは、中村は監督の予想を大きく上回る表現力を見せる。芝居を見て、細田は「この人だ」と直感したと言う。約1か月、スタッフ間で話し合ったすえオファーに至った。声色、表現、演技といった部分を超えた「存在感・オーラ」を嗅ぎ分けたのだ。

演技自体が初めてだったにも関わらず、中村は母を亡くしたトラウマに苦しむ女子高校生すずと、仮想世界でカリスマ的な人気を誇る歌姫ベルという二面性を見事に演じ分けた。特に注目を集めたのは、歌姫ベルの歌唱シーンである。劇中ではメインテーマ「U」をはじめ「歌よ」 「心のそばに」などを担当したが、その美しくパワフルな歌唱力はライブに参加しているかのような感覚を観客に与えた。共演者の佐藤健や成田凌らもその才能を評価し、観客からも「天才」 「鳥肌モノ」と絶賛の声が多数寄せられた。

同年12月31日、millennium parade × Belle(中村佳穂)として、『第72回NHK紅白歌合戦』で紅白初出場を果たす。出場曲は『竜とそばかすの姫』のメインテーマ「U」。常田大希が率いる音楽集団・millenium paradeが演奏を担当し、中村佳穂は歌唱を担当した。特筆すべきはその演出である。映画に紐づくアニメーションは一切使用することなく、壮大なバンド演奏を背景に、妖艶な装いでその歌声を披露した。ダークな映像と照明の美しい融合を通じて、『紅白』の舞台上に幻想的な「異世界」を創り出したのだ。中村にとって、これがテレビでの初歌唱であり、より多くの人々に彼女の存在を知らしめた記憶に残るパフォーマンスであった。

中村佳穂のプロフィール・人物像

1992年5月26日生まれ。京都府乙訓郡大山崎町出身。幼少期から音楽や絵を描くことを好み、鼻歌を歌いながら何時間も絵を描き続けているような子供であった。中学校・高校時代は吹奏楽部に所属し、フルートとサックスを演奏。学生指揮者も務めた。京都精華大学人文学部に入学後、20歳の頃から本格的に音楽活動を開始。繊細かつ大胆な強弱のある発声が特徴。ライブでは、生き物のように躍動する歌と自由奔放なステージパフォーマンスにより、聴く人々に未知の興奮を呼び起こす。他のミュージシャンとの即興・セッションも得意としている。特に影響を受けたアーティストは、アル・ジャロウとフレッド・アステア。フレッド・アステアに至っては、高校生の頃には結婚したいと思えるほど憧れていたと言う。

中村佳穂のディスコグラフィー

シングル

『どこまで』

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