人形の国(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『人形の国』とは2017年4月~2021年10月まで『月刊少年シリウス』に連載された弐瓶勉の描くSFダークファンタジーである。人工天体アポシムズという超構造体の殻で覆われた極寒の地表で、主人公であるエスローは特殊な弾丸「AMB」を手にしたことにより、リドベア帝国に狙われ謎の自動人形であるタイターニアと旅をすることになる。エスローはやがてアポシムズの因果に関わることになり、地表人の重要な存在として皇帝スオウニチコと対峙する。難解な考察により読者を選ぶが、雰囲気と世界観からファンも多い。

『人形の国』の概要

『人形の国』とは2017年4月~2021年10月まで『月刊少年シリウス』に連載されたSFダークファンタジーである。
作者は『BLAME!』、『シドニアの騎士』でも知られる弐瓶勉。

50世紀前、超構造体の殻で覆われた人工天体アポシムズで、地底との戦いに敗れた地表人はその外殻に取り残された。
「白菱の梁」という廃墟で生活を営んでいたエスロー達は、「自動機械」タイターニアを助けた際に託された特殊な弾丸「ABM」により、「リベドア帝国」に狙われ古城は襲撃されてしまう。エスローも瀕死の重傷を負うが、正規人形となりこの難を逃れ、帝国に復讐するためタイターニアと旅に出る。人間が機械化してしまう「人形病」が蔓延し、空気も汚染された極寒の地表で暮らす人々、野生動物の様に徘徊する「自動機械」、そして敵対する「リドベア帝国」や真地底教会の存在、エスローを通し、そうしたアポシムズの世界観を描く。
2017年5月より『講談社』よりコミックス全9巻、2巻には実物大レプリカ「コード」付限定版、3巻にはタイターニアの「自動機械」形態組み立てキット付限定版が発売された。又『フルカラー版 人形の国』の発売が2019年11月から始まっている。

『人形の国』のあらすじ・ストーリー

旅立ち

「白菱の梁」という廃墟の城で集落を営むエスロー達は、その日食料を確保するため遺跡層へと遠征していた。
帰路の途中、「リベドア帝国」に追われる女の子を目撃した一行は、救助するため帝国の追っ手を銃殺してしまう。負傷した女の子はエスロー達に「コード」と7つの弾丸を託し、「自動機械」へと姿を変える。
「白菱の梁」に戻ったエスローはこの件をリーダーであるゼゾに報告、帝国に狙われると認識したゼゾは城を出て移住することを皆に伝える。
目が覚めると既に城は襲撃されており、隣で眠るシオは絶命しエスローは左腕を失っていた。戦火の中ゼゾから弾丸と「コード」を受け取り抜け道に向かうが、道中仲間やデイナの亡骸を確認する。さらに捕まったゼゾが尋問される光景に、エスローは上級「転生者」イーユに発砲する。しかし、エスローは逆に氷の欠片で右目を貫かれてしまい、絶命寸前に現れた「自動機械」のタイターニアは、命を救う代わりに「正規人形」になる事を提案してくる。エスローはこれを承諾し、「正規人形」へと転生する。鎧化した際の特殊能力「EBTG」によって、イーユに負傷を負わせるものの、エスローは地下に落下する。
90日後、「エナ」も「ヘイグス粒子」も失い気絶していたエスローは覚醒する。城に戻ろうとするエスローを宥め説得するタイターニアは、襲ってきた「自動機械」に対し、人に変身して彼を庇う。タイターニアは折り畳み式の「自動機械」で、地底の中央制御層から皇帝の野望を阻止するためにやってきたと話す。皇帝は地底世界に侵入しようとしており、その方法の要となるのが7つの弾丸、対超構造体弾「AMB」であった。
与えられた「エナ」で身体を再構築し、城に戻ったエスローはそこで脳に損傷を受け、置き去られたゼゾを見る。
皆の墓を作り復讐を誓ったエスローは、タイターニアに協力を依頼し、軌道車両に乗り「北合成スラブ地方」を目指す。
「北合成スラブ地方」に到着した2人は、まず「転生者」を倒して「エナ」を奪い自身を強化するため、リベドア軍の補給地とされている町に、行商人として潜入する。
「破裂螺子」を使い住人を支配していたジーオという「転生者」の存在を知り、待ち伏せをしていたエスローは偶然通りかかった上級「転生者」エイチとの戦闘になる。劣勢に陥るエスローはやむなく「AMB」を放ち、エイチごと船を墜としタイターニアを救う。エイチの「エナ」を回収し、住人達の「破裂螺子」を解除したエスローは町を後にする。
大きな町に入ったエスロー達は下級「転生者」エイルとエイムの情報を得る。警備兵に「人形病」であると疑われたエスローは捕らえられ、闘技大会に出場させられる事になる。闘技場ではエスローが大型の「自動機械」を撃破し、「正規人形」と化した「イルフ・ニク」人の援護もあり、「転生者」2人を倒して「エナ」を得る。「イルフ・ニク」人はケーシャと名乗り、タイターニアを崇拝していた。ケーシャの傲慢な態度が気に食わないエスローだったが、タイターニアの説得により、仲間となる。

地底信仰国

エスローとケーシャは協力し、イーユの配下であるジーオを含めた「転生者」を倒しながら「エナ」を得る。そんな折船に積まれていた荷物から「白菱の梁」出身の収容者のリストを見つけ、収容所へ向かった3人はそこでイーユと出会う。
挑発するイーユは洗脳したビコでエスローの動揺を誘いうが、エスローは迷いを捨ててビコを撃ち、イーユの討伐のも成功する。
リベドアの援軍が到着し、タイターニアは地下へ隠れる事を薦めるが、再生が始まったビコを置いていけないエスローはその場に留まる。馬と騎士のような上級「転生者」のフューマとアイムが現れ、タイターニアに騙されているとエスローの説得を始めるが、対話は破局に終わり、「ヘイグス粒子」が殆ど残ってない状態で再び戦闘が開始される。交戦の末、二の腕から発射されたエナ弾がフューマの首を撃ち抜き、飛ばされたフューマの頭部を拾うアイムも続けて頭部を撃ち抜かれる。上級「転生者」3人分の「エナ」を吸収するエスローに、再生したビコは捨て台詞を吐き撤退した。
遺跡層を進む3人は地底信仰国「イルフ・ニク」を目指す。10日前にケーシャから、連絡を取り合っていたカジワン王がタイターニアに会いたいと要望があった事を知り、仲間は多いほうがいいとエスローは了承する。
100㎞以上の地下に里を作り隠れ住んでいた「イルフ・ニク」の王カジワンは、「人形病」を患いもはや歩くことが出来ない身体になっていた。里の皆から歓迎を受ける2人は湯につかる招きに与るが、エスローは疲れから湯船の中でうたた寝し沈んでしまい、先に出たと察したタイターニアは浴場を後にする。浴場が空いたからとケーシャが入るように促され、裸の彼女と遭遇したエスローは電撃に撃たれ殺されかける。後日たまり湯の「機械人形」を駆除したエスローは住人から感謝され、鍛冶屋から「EBTG」用の合金トロム弾を受け取り、それを左腕に仕込む。その夜カジワンは、タイターニアに話があると呼び出し手元に残った「コード」を見せる。転化の儀式を繰り返した結果、自身も身体の半分を失った事を告白し、エスローが「正規人形」になれたのがタイターニアの恩恵であるならば、自分もそうして欲しいと要請する。だがタイターニアはこれを拒否、地底の使者たるタイターニアは危険な思考を読み取り、カジワン王を拒絶する。それを偶然聞いていたケーシャは、落胆する彼に「イルフ・ニク」を発つ事を告げる。
翌朝、住人に見送られたエスローとケーシャは、金属を操る能力を持つ上級「転生者」トオスに襲撃される。応戦したエスロー達は好戦したが、「イルフ・ニク」の入口を金属によって蓋をされ、住民の大半がトオスに惨殺される。

衛生ウメ落下事変

軌道列車で生き残った「イルフ・ニク」の住人達と移動する中、動かない軌道列車を発見した一行は、瓦礫を排除するためエスローとケーシャが鎧化し、タイターニアが列車を起動させる。だがカジワンは部下を使ってタイターニアを拘束し、彼女の左腕を用い、勝手に発進させた列車はエスロー達を残して走り出す。2両目を切り離し住人達すら置いてカジワンは逃亡を図るが、2人はさらに先頭車両を追い、捨てられた片腕のタイターニアを発見する。ケーシャの推察から「恒差廟」という場所を目指すカジワン王を追うべく、住人と別れたエスロー達は居場所を特定するため地表の通信塔に登る。そこへ巨大な「自動機械」地ならしが2人に襲い掛かり、やむなくエスローがそれを倒す。タイターニアは操られた「自動機械」が「転生者」の仕業だと察知し、「ヘイグス粒子」を探るが、ジェイトは皇帝の指示を受け追撃せずにやりすごす。
巨大な機械株を発見した3人は、カジワンの同行を探るべくタイターニアが株の心を読む。「北合成スラブ地方」から多くの物資を満載にして飛び立つ帝国の船が映し出され、そんな画像の中にカジワンを発見したタイターニアは、自らの腕が癒着していることに懸念を抱く。
カジワンを追う道中、皇帝の能力に何かしら関係のある現象に遭遇したエスロー達は、スオウニチコについて言及する。数百年以上、皇帝が鎧化して戦う状況を確認してないタイターニアは、「先に発見して脳を破壊する手段が通じない」という認識を2人と共有する。軌道列車を発見し、タイターニアは車両に入るが、またも彼女は罠にかかり、列車は発進してエスロー達は取り残される。別行動をすることになったエスローはタイターニアを追い、ケーシャは「恒差廟」を目指す。
エスローは「転生者」の待ち伏せに遭うが、勝利してタイターニアを救い、合流するため敵から奪った小空機でケーシャの元へ向かう。一方「恒差廟」に到着したケーシャは、肥大した下半身を持つ異様な姿のカジワンに追いつき、彼が衛生に交信し軌道を操って、ウメを帝国の首都に落下させる危険な思想を知り、説得を試みるが、奪ったタイターニアの能力で拘束され塔から落とされてしまう。衛生に接続を成功したカジワンだったが、それを待っていた「転生者」ジェイトに回線を奪われ、ウメは「恒差廟」を目掛け落下を開始する。衝突時の大惨事を予測したエスロー達は、衛星の落下を阻止するためジェイトの「ヘイグス粒子」を追い、配線に引っかかっていたケーシャは、ウメの軌道修正の指示を受ける。到着したエスローは、長距離という理由からやむなく「AMB」を放つが、皇帝の予測どおりジェイトの足がもつれ、その瞬間弾道から外れてしまう。ウメの落下を回避できないと判断したタイターニアは、ケーシャにそこから地下に向かう様に通達する。エスローは落下するウメを眺めながら、それに向けて試しに「AMB」を放つこと提案するが、タイターニアはその冗談を受け流して謝罪する。だがエスローは希望を捨てず、両手で防御姿勢を取り爆発に備える。
落下したウメは大規模な爆発を引き起こし、多くの人々や建物を破壊する。かろうじて生き残ったタイターニアは、傍で頭部だけになったエスローと、彼に守られた「AMB」を確認する。トオスとジェイトが「AMB」を奪うため現れるが、ケーシャが駆け付け応戦する。その頃己の人生に絶望し、進行した「人形病」により意識が遠のくカジワンは、肥大した下半身から生れ出た何かを目撃する。又、爆心地上空に到着したスオウニチコは、予想と違った結末に警戒しながらも様子を伺う。
タイターニアの不意打ちが失敗し、苦戦するケーシャはトオスに拘束され金属で圧死させられそうになる。何かに「コード」を渡したカジワンは「正規人形」へと転化し、その転換の光を目撃したスオウニチコは未来が変わったことを認識する。
火球が放たれ金属からケーシャは開放され、転生化したカジワンが現れてトオスとジェイトを圧倒する中、ケーシャは隙を見てタイターニアとエスローの頭部を持ち去り、上級「転生者」2人は撤退する。
スオウニチコは未来予知の能力で、以前から「AMB」を持つエスローを観察していた。未来が変わってから何度も「ヘイグス粒子」を使い、残り6つの弾丸奪還の未来まで辿り着くも、再度失敗した経緯から「AMB」が単に対超構造体物質というだけでなく、時空間に穴を穿ち時空改変の性質を持っている事を確信する。一方地下に逃げたケーシャは、ウメが落ち環境が変化したことで、生き残った住人に影響が出る事を懸念する。頭部だけになってしまったエスローや、元凶となる兄が強力な力を得てしまった事にも責任を感じるが、タイターニアと検討し帝国から隠れつつ住人を助け、エスローの回復を待つ方針を固める。

それぞれの思惑

「リベリア帝国」は爆心地を中心に「AMB」の捜索網を広げ、「北合成スラブ地方」で7つの拠点を構えるまでに成長していた。又、カジワンは「真地底教会」なる団体を組織し、「人形病」患者を集め、下半身から産まれた何かを神の使いと崇拝し、それを用いて患者の一部を「再生者」として変化させ、勢力を拡大していく。そんな中エスローの回復が遅い事を焦るケーシャは、帝国から「エナ」を奪う決意を固めタイターニアに協力を仰ぐ。
ケーシャは「転生者」の駐在する拠点の様子を伺うが、そこに「人形病」患者を引き連れた「真地底教会」ジナタが現れ彼らを襲撃する。2人の「転生者」は敗れ、「エナ」は回収されて、捕虜とされていた人間達はジナタ達により命を奪われてしまう。ケーシャはこれが兄の仕業であると推測しその場を去るが、跡地を査察したジェイト准将は、「真地底教会」の目的が「エナ」であることを突き止める。
上空を偵察していた「リベドア帝国」のボー中尉を発見し、倒すことに成功したケーシャは「エナ」を確保する。そこに現れた「真地底教会」のジナタ一団は、邪魔をするなと警告を促し、対してケーシャはカジワンに取り次がせろと物申すが、一団は煙の中に消えてしまう。
「真地底教会」がカジワンの所業であることを確信したケーシャは、持ち帰った「エナ」をエスローに与え、回復を促進させる。
その頃カジワンは大量に集めた「人形病」患者と、自身を強化する「エナ」の他に、一つの回答に辿り着いていた。遺跡最深部へ神の使いと共に潜った際に超構造体の壁に至り、「ABM」を奪って地底に進む事を念頭に策を練るカジワンの目の前で、「自動機械」の腹から出た「人形病」患者の残骸が、使いにより意識を取り戻した事から、この現象を用い地表を平定すれば、自分は地底に招かれるという勝手な妄想だった。
一方陸路で貨物を輸送する一団に合流したジェイトは、そこで兵器局のタシツマ准将と会い、自分の能力を持つ巨大なクローンを確認する。「リベドア帝国」はこれを用い、巨大な範囲の「自動機械」を操りケーシャ達の行方を捜索する方法を画策する。

混戦

超構造体で成形された隠れ家から、遠く離れての「転生者」狩りを続ていたケーシャは、アジェイトと命名された巨大なクローンが、人口的な「コード」により転生化に成功した転換の光を目撃する。直後能力を使うアジェイトは巨大な範囲の「自動機械」の情報を集め、エスローが置かれる超構造体の部屋を特定し、それをジェイトが認識する。
軌道列車で帰路を急ぐケーシャの元に不審な帝国兵が現れる。彼女はそれを敵と判断し牽制して電流で痺れさせるが、仲間にしてくれと命乞いをする帝国兵から思考を読んだタイターニアが、ワサブという名前と経歴を把握する。ワサブは捕まり洗脳され「正規人形」となって帝国に従事していたが、洗脳が解け故郷にした災いを他の国にもたらす「リベドア帝国」に嫌気が差し、抵抗する反勢力のエスロー達に合流すべくこの列車に乗り込んだという経緯だった。
ジェイトと共に隠れ家に到着した物体転送の力を持つリナイは、エスローが保管される超構造体の部屋をまるごと地表に移し、さらに上空には「リベドア帝国」帝都である戦艦モースウルベが着艦する。ジェイトと「ヘイグス粒子」を一気に失ったリナイは、状況を把握したケーシャ達から身を隠す。ワサブの飛翔能力により地表へ移動し、地表に出された隠れ家を確認するが、エスローを助ける算段がないケーシャ達にワサブは呆れ、これまでの過程を疑う。
「リベドア帝国」皇帝スオウニチコは護衛2人の衛人を引き連れ、ケーシャのすぐそばに現れたカジワンを視認する。宣戦布告するカジワンに対しモースウルベはレンズ砲を放ち、その爆風でケーシャ達は崖下へ落下する。「自動機械」を操り地下から戻ったジェイトとリナイは、下層から攻め来る「再生者」の群れを帝国に警戒するよう伝達し、直後現れた大量の「人形病」患者はジナタを頂点に乗せ、彼女は患者達の「ヘイグス粒子」を吸い取り大型船を一撃の元に撃墜する。傍観するタイターニアは2人にスオウニチコを討てる可能性を示唆し、超構造体内部からのエスローの「AMB」を発射するため、混戦に紛れた3人は隠れ家への接近を試みる。
鎧化したカジワンの前にビコ含む上級「転生者」が立ちふさがり、「真地底教会」と「リベドア帝国」の戦闘が熾烈を極める中、ケーシャ達は隠れ家に接触を成功させ、エスローはタイターニアの力で強制的に意識を取り戻す。タイターニアは思念でスオウニチコの存在と、皇帝討伐の目的を伝達するも、ケーシャ達全員は複数の上級「転生者」に捕らえられ、リナイの能力でスオウニチコの傍に移される。隠れ家内部から放たれた「AMB」は、未来を予測した皇帝に回避され、スオウニチコは超構造体に空いた穴へ向け、トオスに命令を下す。穴から金属が溢れ出し、エスローの圧死を推測するスオウニチコは残る一味3人への処分を通達する。カジワンは全「人形病」患者から集めた「ヘイグス粒子」の火球を放つが、それを弾く上級「転生者」ゴイ中将に戦意を喪失し、それを確認した皇帝は「再生者」への捕獲調査と教主殺害の命令を下す。
予測するこの後の「AMB」発掘作業の未来を前に、エスローが隠れ家を割って現れた事で、スオウニチコは「AMB」が未来改変である事を再認識し慄く。エスローは、ケーシャ達を取り巻く上級「転生者」達3人を素早く銃殺し、立ち尽くす皇帝スオウニチコに「EBTG」を向ける。
「AMB」に対抗する手段がないスオウニチコは覚悟するが、エスローが放ったエナ弾は衛人の1人に防がれてしまう。タイターニアが皇帝の思考を読んだ瞬間、駆け付けたリナイによって皇帝達は消え、モースウルベの全「転生者」出動の警報が鳴りはじめる中、ワサブの飛行能力で戦線離脱した一味は、タイターニアから彼の能力が未来視である事を聞かされる。
既に逃亡した「真地底教会」のカジワンは、「再生者」達の人望を失いかけていた。

「真地底教会」の脅威

皇帝スオウニチコから新たな任務として、「処刑隊」隊長ヌーキー准将はエスロー抹殺を、聖遺物捜索旅団ジェイト准将は「AMB」奪還の指令が下される。ジェイトはリナイとトオスでチームを作り、処分予定だったアジェイトも加入させる。大量の小鳥の様な「自動機械」から情報を得たアジェイトは、帝国国土に潜入しているエスロー一味の居場所を突き止める。
エスロー達に丸腰で接触してきたジェイト達は、「AMB」を帝国に返還するよう説得するが、エスローは拒否し交渉は決裂する。ヌーキーの部下である「処刑隊」ズドルイとクドバが現れ交戦となり、ジェイドはそれを撃破したエスロー一味の戦力の評価を改める。
遺跡層深部に戦力を求めやってきた真地底教会のジナタ一行は、隔離施設にて聖遺物・祝福の甲冑という巨大な人形型の鎧を見つける。
その情報を持ち帰ったジナタ達だったが、聖遺物現物も、「人形病」患者も連れてこない彼女達に憤るカジワンは、能力の開花しない「再生者」イヘマの腕をもぎ取り、代わりに神の使いの指を刺す。刺されたイヘマは意識を失い、蛹の依り代として壁に吊るされ、体の「エナ」を吸い取られてしまう。数日後、体の半分以上を失ったイヘマを抱え、再び隔離施設に来たジナタは、その身を祝福の甲冑に収め、意思を持つ巨大な人型兵器を造りだす。もはや北合成スラブ地方に「人形病」患者が居ないと推測したカジワンは、戦力増強のため帝国国土へ進出を開始する。
列車でリベドア最北端の都市ルトーメロを目指す一行の目前に、「真地底教会」の巨大兵器人形が現れ、腹部に大量の「人形病」患者を取り込み雲の中へ消えていく。直後に兵器目掛けてリベドアから放たれた、大規模攻撃の飛翔兵器を目撃したエスローは、被害を抑えるべくこれを撃ち落とす。「ヘイグス粒子」を察知したジェイトはその跡地に赴き、列車の聞き込みと生き残った兵士から、攻撃を阻止したエスロー達の事と、「真地底教会」が「人形病」を兵器として用いている事実を知る。街へ続く空気管本管の中にあった「人形病」患者の最終形態からは発生する汚染物質が放出されており、教会は人間を「人形病」に感染させ患者を集め、これを繰り返し帝国の戦力を削りながら、自軍の勢力を増やすという効率的な方法を確立していた。
帝国内では「真地底教会」への対策が急務とされ、召集された会合では感染の早さから北部を諦め、中央居住区を集中的に防疫する事が決まり、現場では教会の隠れ家を発見し大量の「転生者」で一網打尽にする作戦が進められる。垂直方向に強力なレーダーを持つ「転生者」が40人以上乗る船は、教会の隠れ家より先にエスロー一味を発見し、手柄を焦った艦長は大量の「転生者」をエスローに差し向ける。
保護した子供を連れていたエスローは、ワサブ達を地下に避難させる様促し、ケーシャと共に時間稼ぎをするため待ち受ける。大量の「転生者」に勝利したエスローは、ワサブと合流するため地下に潜るが、別部隊によって彼らは既に攫われていた。
多くの「転生者」を失い、観測装置も破壊されてしまった艦長は、現状を打開すべく捕えたワサブに尋問を始めようとする。だが失態を察知した「処刑隊」ドコブが衛人2体と乗船し、艦長は直ちに処刑され、船はドコブの指揮下に入る。
ワサブを人質に取られ苛立つエスローは、自分の居場所を帝国に示すため豪快に「ヘイグス粒子」の発砲を始める。冷静を欠いたエスローに、タイターニアは人型へと姿を変え、3つの願いの1つを消費するかと問う。戸惑う2人は近づく船に吊り下げられたワサブを目撃し、エスローはゼゾの面影を重ねる。

最終局面

「処刑隊」ドコブはワサブを囮として使い、エスローを長距離射撃により仕留めようとするが逆に反撃され、交戦の末敗れる。その際、静観していたジェイトは、間接的にだがドコブの戦力を封じ、エスローに加担してしまった自身に驚く。そして帝国が「人形病」に飲まれていく中、本気で対策を講じない帝国本部や、人々の命よりもエスローの持つ「AMB」に執着する皇帝に疑問を抱く。
巨大な「自動機械」に乗り移動しながら「人形病」に汚染された街を目撃し、ケーシャは全てが終わった後の「イルフ・ニク」再建を誓い、エスローに協力を仰ぐ。「イルフ・ニク」でこのやりとりが、婚約の儀である事を知らないエスローは一つ返事で答える。直後突起物がケーシャの肩とワサブの腕に落下し、さらに降り注ぐ鱗をタイターニアが防ぐ。起爆された鱗でケーシャは頭部を失い「エナ」となり、ワサブも左腕を喪失する。上空に「処刑隊」を視認したエスローは敵を撃ち落とすが、さらに「処刑隊」隊長ヌーキーが巨大な鎧化となり現れる。エスローはワサブごとヌーキーを「AMB」にて撃ち抜き、ヌーキーから出た大量のエナを吸収し基本鎧形を変化させる。ヌーキーが乗ってきた戦艦を通常弾1発で撃ち落とし、次にジェイドが乗船する船を見つけ「EBTG」を向けるが、タイターニアはその船に保護した子供達が乗っている事を知らせる。
その頃、迫りくる真地底教会を迎え撃つ大将クドウデンジは、複数の戦艦による一斉射撃で一掃しようと試みるが、「リベドア帝国」よりさらに上空に現れた巨大兵器に乗る「再生者」の軍団に強襲され、帝国の主力部隊は壊滅する。
クドウデンジが戦死した報告をうけたジェイトは、覚悟を決めて単身エスローと交渉し、彼はそれに応じてジェイトの船に乗船する。
皇帝の元へ向かうジェイトの船に、大量の「転生者」をのせた軍艦の一団が近づく。エスローもろとも自分達を皆殺しにすると察したジェイトは、何故エスローを乗せている事がわかったのか不審に思うが、トオスが皇帝の能力を説明し、理解したジェイド達は応戦する。エスローはジェイトに協力を申請し、リナイと共に敵軍艦側面に転移する。複数の軍艦を「AMB」2発で撃ち落とすが、ジェイトの船もビコの攻撃で地表へ落下し、白兵戦へと突入した結果、双方の「転生者」達は全滅し、生き残ったエスローは皇帝の元へ歩き出す。

アポシムズの存在意義

個室で目が覚めたケーシャは、そこで「イルフ・ニク」の住人達や亡き父親の姿を見て戸惑う。そこに現れたタイターニアは、ケーシャの地表の実体が失われて、符号化された情報としてここに存在する事を説明する。さらにアポシムズが、人類を永遠に存続させる目的である装置であると解説した。地底の空間と、その意に反して出て行った祖先の地表人達の歴史を聞かされ、今までのタイターニアの動向を理解するケーシャの元へワサブが現れる。ケーシャはタイターニアから聞かされた情報から、ここに存在する地表人の居住権が、エスローとスオウニチコの持つ「コード」で争われているとワサブに伝える。
エスローとスオウニチコ以外をすべて「人形病」患者にしたと言い放つカジワンは、還らねばならないという「再生者」の自爆により巻き込まれて大破し、不正行為があったと判断したタイターニアは、カジワンの人格を永遠に削除する。
巨大な四方系の穴の上空にモースウルベを構えて待ち受けるスオウニチコに対し、エスローは最後の「AMB」を放つ。
予知通りそれを回避し、外した「AMB」を捕えたスオウニチコはそれをモースウルベに同化させ、地底へ繋がるであろう四方の穴へ落下を始める。先端に「AMB」を備えて落下する巨大質量体は、タイターニアによれば簡単に外殻を突破される勢いと破壊力を携えており、2人は急いでそれを追う。だが軍艦を1発で撃ち落としたエスローの通常弾ですら、スオウニチコが1000年かけて準備した準超構造体と、大量の「エナ」で構築された巨大な物体には歯も立たず、質量体はさらに中間点を突破し加速する。
地表人だけでなく、アポシムズの全ての住民がその光景を見守る中、エスローは「EBTG」から超構造体の螺子を撃ち出し、質量体を失速させることに成功する。落下した四方の穴の底でスオウニチコは立ち上がるが、エスローにハンマーで頭部を殴られ、彼は「エナ」へと還る。
薄れゆく意識の中、タイターニアはスオウニチコに見えなかった予知の先に、地底世界がある事を説き、エスローとスオウニチコはケーシャとワサブに迎えられる。

『人形の国』の登場人物・キャラクター

エスロー一味

エスロー

本作の主人公、白菱の梁という廃墟の城で生まれ育ち、エーアール系ライフルと、準超構造体の先端が付いたハンマーを武器としていた。AMBを巡りリベドア帝国に故郷を襲撃され、瀕死の所をタイターニアとの交渉で転生化し正規人形となる。鎧化後はエナを用いた通常弾をEBTGと言う特殊な射撃装置で撃ち出して戦う。かなりの大食漢で、特殊なコードのせいかエナの吸収率は底なし。温厚な性格で、普段からクールで無表情だが、情に厚く仲間想い。無謀と思われる戦いにも果敢に立ち向かう、少々無鉄砲な面があり、タイターニアの制止を大抵無視している。顔面はりつき喰いといわれる自動機械の肉が好物。

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