ギルティギア ゼクス 胡蝶と疾風(GUILTY GEAR X)のネタバレ解説・考察まとめ

『ギルティギア ゼクス 胡蝶と疾風』とは、格闘ゲーム『GUILTY GEAR X』をノベライズ化した、海法紀光によるライトノベル作品。挿絵は同シリーズの生みの親である石渡太輔が担当している。小説として再解釈された原作の魅力が存分に描かれており、ノベライズ作品の傑作にして成功例と高く評価されている。
大統領を目指す忍者チップ=ザナフは、ひょんなことから17歳の大統領エリカ=バーソロミューの護衛となる。彼女を狙う犯罪組織を相手に、己の夢と師の仇討ちのため、チップは得意の忍術を駆使して大暴れする。

A国を訪れたカイが、エリカとの会見を終えた際に、チップは「“組織”をやっつける法案を通すために力を貸せ」とストレートに要求する。国際警察機構の長官としてエリカの法案に期待はしているが議会に介入することはできないとカイがそれを断ると、チップは怒りと殺意をみなぎらせてカイに詰め寄り、土下座をして再度頼み込む。

「食い物にするやつもいりゃあ、食い物にされるやつがいる。拳や剣じゃ、それを止められやしねぇ。俺は、あそこにいたからわかる。…それを止めるにゃ、大統領にでもなるしかねぇだろうが!」
チップの絶望と決意と、彼がなぜ大統領になろうとしているかがよく分かる名セリフ。これを聞いたカイは「ただの俗物」としか思っていなかったチップの人柄を見誤っていたことを悟り、彼に真摯に向き合うようになる。

院長「私は、あの子のことを信じていますのよ」

“組織”に囚われ、「この先の展開次第では死んでもらう」と告げられた院長は、しかし軽やかに笑んで「この年になると恐ろしいものもない」と語る。さらに「私は、あの子のことを信じておりますのよ」と言葉を続け、自分がどうなるにせよエリカが判断を間違えることはないとの信頼を示した。
院長とエリカの深い絆が感じられる、歳経た人間ならではの重みのある名セリフだ。

議事堂への行進

突然の戦争宣言と、ツェップからの砲撃。首都が大混乱に陥る中、ラザルスとの対決のため、“組織”との決着のため議事堂に向かうエリカとチップは、「いったいどうなっているんだ」との不安に怯える群衆に取り囲まれる。
「急いでいるから退け」と怒鳴るチップを制し、エリカは「これから、議事堂に行きます!戦争を止めにです」と人々に語り掛ける。とりあえずはそれを信じて道を譲った群衆は、やがて「これを持っていけ」とリンゴからパン、花や小銭、ボタンや指輪まで様々なものをエリカに向けて投げ渡す。

「戦争が始まった」という不安の中、誰もがエリカを信じ、彼女に自分たちの希望を託し、チップがそのことごとくを受け取ってこれまた放られた袋の中に詰めていく。これから始まるチップとエリカの大逆転を予感させる、本作のクライマックスシーンである。

チップ「あいつは、今あそこで、俺を信じて命張ってる。師匠も、そうだった」

エリカがラザルスたちを篭絡する中、議事堂内部に現れたヴォルフの前にチップが立ちはだかる。彼は「見えるか?あの女が?あいつは、今あそこで、俺を信じて命張ってる。師匠も、そうだった。だがテメェは何だ?暗殺者のくせに、命を賭ける度胸さえねぇ。あのエリカのまわりの政治家どもだって、欲の皮つっぱらかして、命張ってるんだぜ」と鮮やかに啖呵を切り、必要な時に命を賭ける勇気も、自分の命を託すほど信頼できる相手もいないヴォルフを「情けないヤツだ」と吐き捨てる。
短い間でエリカと強い絆を結び、チップが人として戦士として大きな成長を遂げたことが分かる名セリフ。エリカを守るため、師匠の仇を討つため、チップは議事堂の中を駆け抜けていく。

ツバメ「わたしがいて、あなたがいて、うれしい」

チップが追いかけていたツバメは、久々に現れた彼に向けて鳴き声を発する。それは1日の終わりに仲間に向けて伝えるもので、人の言葉にすれば「わたしがいて、あなたがいて、うれしい」となる。
物語のラストを飾る言葉にして、チップからツヨシに向けたものにも、エリカからチップに向けたものにも、読者からチップとエリカに向けたものにも思える味わい深いメッセージである。

『ギルティギア ゼクス 胡蝶と疾風』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

原作ゲームにも登場するエリカ

『GUILTY GEAR -STRIVE-』に登場するエリカ。

本作オリジナルのキャラクターとして登場したエリカは、『GUILTY GEAR -STRIVE-』にて3Dモデルつきで登場している。その高いクオリティから原作メインスタッフの石渡からも称賛された本作が、実際に公式の一部となったことがビジュアルで証明された形となった。
さすがに格闘ゲームのプレイアブルキャラクターでこそないものの、相変わらずA国の政治家として働いており、短い時間ながらチップとも再会。かつて共に“組織”と戦った戦友らしい、気安い言葉を交わしている。

『ギルティギア』(GUILTY GEAR)のノベライズ作品の記事まとめ

renote.net

YAMAKUZIRA
YAMAKUZIRA
@YAMAKUZIRA

Related Articles関連記事

ギルティギア ゼクス 白銀の迅雷(GUILTY GEAR X)のネタバレ解説・考察まとめ

ギルティギア ゼクス 白銀の迅雷(GUILTY GEAR X)のネタバレ解説・考察まとめ

『ギルティギア ゼクス 白銀の迅雷』とは、格闘ゲーム『GUILTY GEAR X』をノベライズ化した、海法紀光によるライトノベル作品。挿絵は『GUILTY GEAR』シリーズの生みの親である石渡太輔が担当している。原作の世界観を見事に小説化しており、海法が『GUILTY GEAR』シリーズのシナリオに携わるきっかけともなった。 国際警察機構長官カイ=キスクは、生体兵器ギアを追ってロンドン近郊に赴く。そこには万能の薬を完成させたと豪語するブラッカード社と、行き場の無い不法移民たちの姿があった。

Read Article

GUILTY GEAR(ギルティギア)のネタバレ解説・考察まとめ

GUILTY GEAR(ギルティギア)のネタバレ解説・考察まとめ

アークシステムワークス制作の対戦格闘ゲームシリーズのひとつ。「ギア」と呼ばれる生体兵器と人間の戦い、そしてギアを巡る主人公のソルとライバルのカイたちの物語を描いている。後に開発された対戦格闘ゲーム「ブレイブルー」と並ぶ同社の象徴となった。さらに2D開発ゲームの金字塔として有名にもなり、今なおその人気を不動のものとし続けている。

Read Article

がっこうぐらし!(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

がっこうぐらし!(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『がっこうぐらし!』とは海法紀光の原作、千葉サドルの作画によって、2012年より『まんがタイムきららフォワード』で連載されている漫画および、それを原作としたアニメ作品である。主人公の丈槍由紀が住む街にゾンビが出現。周囲の人間がゾンビ化する中、生き残った丈槍由紀を含む4人の女子高生が学園生活部を立ち上げ、学校に寝泊まりするというサバイバル作品。1話まではストーリーのホラー要素が隠されていたため、多くの視聴者に大きな衝撃を与えた。

Read Article

ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園-(未来編・絶望編・希望編)のネタバレ解説・考察まとめ

ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園-(未来編・絶望編・希望編)のネタバレ解説・考察まとめ

『ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園-(未来編・絶望編・希望編)』とは、ゲーム第1作であり2013年にアニメ化もされた『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』、および第2作『スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園』の続編として制作されたアニメ作品。主人公の苗木誠を含む”希望”と呼ばれる15人が、”絶望”によるコロシアイゲームに強制参加させられる未来編、かつて希望だった者たちが絶望へと変貌する過去を描く絶望編、物語が終結する希望編の3つのストーリーで構成されている。

Read Article

死もまた死するものなれば(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

死もまた死するものなれば(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『死もまた死するものなれば』とは、2018年11月よりドラゴンコミックスエイジにて連載した全4巻のクトゥルフ神話をモチーフにした漫画作品。『がっこうぐらし!』原作の海法紀光と『Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ』の著者である桜井光によるストーリー、そして漫画家の狛句作画によるオリジナル作品。地球温暖化が進んで多くの都市が水没した近未来の日本を舞台にしたコズミックホラー。漫画の世界観でクトゥルフ神話TRPGを遊ぶ外伝が、公式からリプレイ動画で公開されている。

Read Article

GUILTY GEAR XX(GGXX)のネタバレ解説・考察まとめ

GUILTY GEAR XX(GGXX)のネタバレ解説・考察まとめ

『GUILTY GEAR XX』とは、アークシステムワークスが2002年に制作しサミーが販売した2D対戦格闘のアーケードゲーム。同年12月にPlayStation 2でも発売された。前作『GUILTY GEAR X』の続編である。ディズィー騒動の数週間ほど後、「終戦管理局」が「ロボカイ」を使い、各地の戦士たちの調査、捕獲、抹殺に動く。その動きに気づいた「スレイヤー」はこのことを戦士たちに伝えるべく各地を移動する。「あの男」に仕える「イノ」は彼の計画を邪魔する存在の排除に動きだす。

Read Article

《クイズもあるよ!閲覧注意》世にも奇妙なアニメ・漫画の奇怪イラストたちw

《クイズもあるよ!閲覧注意》世にも奇妙なアニメ・漫画の奇怪イラストたちw

アニメや漫画をよく見てみると、一部映像や背景、絵コンテ、そしてキャラクターの異常さなど、とにかく奇怪なシーンが結構あるものです。人間仕様なのに間接がおかしかったり、脇にいるからと油断しているときの逝っちゃってる顔、その他不気味な絵と様々あります。今回はそんな世にも奇妙なイラストたちを、様々な作品から集めてみました。

Read Article

「漫画の殿堂」芳文社からアニメ化された作品まとめ

「漫画の殿堂」芳文社からアニメ化された作品まとめ

かつてはほとんど知られていませんでしたが、今では知らない人が少なくてってきたほど、大ブームを巻き起こしている出版社が芳文社です。形式は4コマ漫画が主体。その漫画雑誌のタイトルは「まんがタイムきらら」で、「けいおん!!」や「ひだまりスケッチ」など数多くの名作を世界に轟かせてきました。そんな芳文社の過去から現在に至るまでを、アニメ化された経緯とともに、まとめてみました。

Read Article

目次 - Contents