ギルティギア ゼクス 白銀の迅雷(GUILTY GEAR X)のネタバレ解説・考察まとめ

『ギルティギア ゼクス 白銀の迅雷』とは、格闘ゲーム『GUILTY GEAR X』をノベライズ化した、海法紀光によるライトノベル作品。挿絵は『GUILTY GEAR』シリーズの生みの親である石渡太輔が担当している。原作の世界観を見事に小説化しており、海法が『GUILTY GEAR』シリーズのシナリオに携わるきっかけともなった。
国際警察機構長官カイ=キスクは、生体兵器ギアを追ってロンドン近郊に赴く。そこには万能の薬を完成させたと豪語するブラッカード社と、行き場の無い不法移民たちの姿があった。

「ギア細胞」という特殊な細胞を生物に埋め込むことで完成する生体兵器。本作の物語開始の100年ほど前、ジャスティスと名付けられた個体を首領として人類に反旗を翻し、いくつもの国を滅ぼした。
そのジャスティスが討たれたことで、全てのギアは活動を停止したとされているが、例外的に稼働を続ける個体も存在している。

ヒュドラ

聖戦時にロンドン近郊で大暴れしていた、5本の首を持つ超大型ギア。「放置すれば100万単位の犠牲者が出る」との目算から、作中では「メガデス級」と称されている。
聖騎士団を相手に圧倒的な力を見せつけていたが、彼らの窮地を知って駆け付けた若かりし頃のクリアと3日3晩戦い続けた後に3本の首と脚部を潰されて戦闘能力をほぼ喪失。それでも死なず、クリフが急いで別の戦場に救援に向かわなければならなかったこともあり、ロンドン近郊にて封印されることとなった。

聖戦

ジャスティス率いるギアと人類との、100年にも渡る戦争のこと。本作の物語が始まる数年前に、人類側の勝利の形で幕を閉じた。

聖騎士団

聖戦において活躍した、世界的な規模の武装組織。無数の犠牲を出しながらも幾多の戦場を駆け抜け、人類を勝利に導く。カイ、ソル、クリフが所属していた。
戦後は国際警察機構と名を改め、戦争の傷跡が未だに色濃く残る世界の治安維持に奔走している。

ブラッカード社

作中に登場する製薬会社。「あらゆる病気や怪我、四肢の欠損をも治す万能薬を開発した」と喧伝しており、世界的に注目を集めていた。
裏では移民街の人々を捕らえ、あるいは騙して人体実験を繰り返している。

ヴィタエ

ブラッカード社が作った、「あらゆる病気や怪我、四肢の欠損まで治す」とされる万能薬。実際に服用したマリーナが一夜にして歩けるようになっており、宣伝文句自体に嘘は無い。
しかし実はその正体はギア細胞を薬の形にしたものであり、母体であるヒュドラの活動に合わせて活性化。作中では「マリーナの足に擬態したヴィタエ(ギア細胞)が暴走し、マリーナ自身を襲う」といった事件を起こしており、内臓の治療などに用いていた者もいたため移民街に大混乱を巻き起こした。

『ギルティギア ゼクス 白銀の迅雷』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

ファウストとヒュドラの対決

ついに封印から逃れたヒュドラは、真っ先に近くに会った移民街へと襲い掛かる。移民たちが恐慌して逃げ惑う中、ファウストは敢然とヒュドラに立ち向かい、「まずは試し」とばかりに振り下ろされた一撃を“神経をわずかに刺激する”という医者らしい攻撃によって逸らし、移民街への直撃を避ける。
しかしファウスト自身がこれを避け切ることはできず、すさまじい衝撃によって吹き飛ばされ、瓦礫と共に倒れ込む。それでもなお「守らなければならない人々がいる」と彼は無言で立ち上がり、全盛期のクリフでさえ倒せなかった怪物に挑み続ける。

ファウストの過去を知ってから読むと、彼がここで絶対に退くわけにはいかないと決意する理由がよく分かる。イロモノにしか見えないファウストがどうにもカッコよく見えてしまう名シーンである。

カイ「ソル、お前は…私のライバルだ!」

ブラッカード社に乗り込んだカイは、先んじて突入していたソルを見付けて、思わず「ソル、お前は…私のライバルだ!」との声をかける。ここに至るまでカイはひたすら品行方正な、自分にできる全てを他人と世界のために捧げる高潔な人物として描かれているが、このシーンだけは我意を剥き出しにしている。
この期に及んでカイがソルとの決着に執着しているようにも、「自分を対等の存在と認めてくれ、この地にいる全ての人々のために自分も一緒に戦わせてくれ」と懇願しているようにも見える。2人の複雑な関係性がうかがえる名セリフだ。

『ギルティギア ゼクス 白銀の迅雷』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

後のシリーズとの設定的な乖離

『GUILTY GEAR』シリーズは、20年以上に渡って断続的に新作が作られ続けている人気格闘ゲームであり、その中で少しずつ物語が進んでいる。ギアやソルが追う男の正体についての情報も段階的に開示されており、カイもまた結婚したり息子ができたりと成長していった。
そんな中、反響や世相、スタッフの意識の変化などもあってか以前のシリーズとは食い違う設定もいくつか登場している。中でも注目されたのが、「本気で戦ったらカイの方がソルより強い」というものだ。

シリーズが始まった当初から、「作中最強クラスの実力者であるソルと、それを必死に追いかけるも勝てないカイ」というのが『GUILTY GEAR』の作劇の基本的な描写の1つとなっていた。しかし「カイがソルに勝てないのは“正々堂々と剣術で勝ちたい”という思い込みがあるからで、ギアに対して用いていた“なりふり構わずあらゆる手段と戦術を使って敵を倒す”という戦い方ならソルに勝てる。それを知っているソルは、聖騎士団時代にカイに勝負を挑まれた際に“自分がギアであることが感づかれた、この男に殺される”と大いに焦っていた」との事実が明かされ、「いくらなんでもこれまでの描写と違う」との声が多く聞かれることとなった。
本作もこの設定が明かされる以前に書かれたものであり、作中での力関係は「カイよりソルの方が圧倒的に強い」という形になっている。作中でカイに「お前は私のライバルだ」と告げられたソルは、一瞬だけ同情するような眼差しを彼に向けて立ち去っているが、これが「実力的に上にいる者の余裕」ではなく「自分より強いのに実力を出せない男に対する憐憫」だとすると、大きく印象が異なって見えてくる。

『ギルティギア』(GUILTY GEAR)のノベライズ作品の記事まとめ

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