ラブ・ベリッシュ!(ラブベリ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ラブ・ベリッシュ!』とは、『りぼん』(集英社)にて連載された春田ななの少女漫画で、単純明快な物語が魅力のラブコメディである。連載終了後には番外編が掲載されている。
主人公の福島由夜が編入した夏果学園は全寮制の学校だった。女子寮の空きが無いことから、由夜は共同寮の木苺寮に入寮するが、そこにいる住人たちはそれぞれに問題を抱えていた。由夜がやってきたことにより、ミスコンやスポーツ大会、文化祭などの学校行事や寮内で起きるハプニングを通して、寮で暮らす者たちの友情関係や恋愛関係に変化が現れる。

『ラブ・ベリッシュ!』の概要

『ラブ・ベリッシュ!』とは、春田ななによって2005年9月号から、2007年5月号まで『りぼん』で連載されていた青春ラブコメディ漫画である。タイトルは「ラズベリー」をもじって付けられており、通称は『ラブベリ』だ。単行本は5巻まで発行されており、ミニストーリーが収録されているものもある。最終巻では、本編のその後と共に木苺寮のもう1組のカップルである笑佳と紺の話が掲載されていて、たくさんの友情関係や恋愛関係が描かれているため、何度も読み返したくなる。答え合わせの後で読むのもまた楽しい。
ある日、主人公の福島由夜が編入した夏果学園は全寮制で、由夜は何かしらの問題のある人たちが集められた男女共同の木苺寮で生活を送ることになった。初めは、変わった人たちが多く戸惑うが、寮生会長の千葉梓から共同寮『木苺寮』がみんなの家だということを教えてもらい、次第に寮生たちと仲良くなっていく。そして、様々なイベントを通して、最初は毛嫌いされていたクラスメイトにも認められたり、仲良くなったりしながら、人間関係が変化していった。木苺寮生の入居理由や、それぞれの過去が分かっていき、犬猿の仲だったはずの高松渚や梓の過去を通して由夜の恋にも変化が現れる。同寮生の山梨雨芽の実態や、水戸笑佳と宮城紺との関係などの謎も明らかになっていき、木苺寮生を中心に、トラブルやイベントを通して人間関係などが変化していく青春ラブコメディである。

『ラブ・ベリッシュ!』のあらすじ・ストーリー

木苺寮での出会い

全寮制の夏果学園に編入した高校1年生の少女福島由夜(ふくしま ゆうや)は、初めての寮生活に心躍らせていた。しかし寮の案内役を買って出てくれた高松渚(たかまつ なぎさ)によれば、彼女が入寮することとなった木苺寮は、何かと問題のある生徒ばかりが集められた曰く付きの場所であるらしかった。
学校生活が始まるなり、木苺寮生というだけでクラスの女子から言いがかりをつけられる由夜だったが、そこを助けてくれたのが生徒会長の千葉梓(ちば あずさ)だった。自分を助けてくれた梓に由夜は自然と惹かれていくが、それを知った渚はなぜか彼女の恋路を妨害するようになる。梓は梓で「由夜は渚と親しい関係である」と誤解し、応援すると言われる始末。かくして、由夜の恋は波乱の幕開けとなったのだった。

ミス夏果学園コンテスト

学園の一大イベントである「ミス夏果学園コンテスト」が近づいてきた。木苺寮のメンバーは、同寮生の中でも1番の美人である山梨雨芽(やまなし あめ)を推薦し大いに盛り上がる。しかし由夜は渚が夜に雨芽の部屋に入るところを見てしまい、2人がどういう関係なのか訝しんだ末に同じ寮生である水戸笑佳(みと えみか)に相談。笑佳は直球で雨芽にこれを問いただし、ここで「雨芽が実は男である」ことが判明する。
「雨芽が秘密にしたいだろう事実をむりやり聞き出してしまった」と己の軽率さを悔いる由夜だが、お返しにミス夏果学園コンテストで優勝してもらおうと奮闘。他クラスの妨害も乗り越え、雨芽は見事にコンテストで優勝する。

由夜の失恋

その後スポーツ大会が開催され、木苺寮の面々は由夜を中心に協力してこれに参加。大いにその団結力を高める。一方、由夜の梓への恋はまだ告白すらできておらず、憧れの域を出ないまま足踏みを続けている状態だった。
そんなある日、由夜は岡山亜子(おかやま あこ)という少女と出会う。彼女は「木苺寮生というだけで変な目で見るのは良くない」と周囲に主張し、由夜たちにも親切にしてくれる優しい性格の少女だった。

しかしやがて由夜は、亜子が中学時代に梓と交際していたことを知る。この頃梓は成績を落としたことがあり、これを揶揄した教師に怒って殴り掛かったのが渚が木苺寮に入れられた理由だった。この出来事を機に疎遠になっていった3人だが、由夜は「梓と亜子はまだお互いに相手のことが好きなのでは」と考え、2人の仲を蘇らせるよう画策。同じ考えを持ち、だからこそ由夜を妨害していた渚もこれに協力する。
由夜に背を押された梓は、「自分は今でも亜子が好きだ」と認め、彼女を忘れたいがために由夜に近づいたことを明かす。渚は由夜に「梓を1発くらい殴ってやれ」と勧めるが、彼女は殴る代わりに梓にキスをする。「殴られるより痛いでしょ?」と笑顔で言って、失恋の痛みと共に、由夜は亜子に会いに行く梓を送り出すのだった。

高松家への帰省

夏休みになり、木苺寮の面々もそれぞれに実家に帰っていた。しかし由夜は「帰るためのお金が無い」という理由から木苺寮に残っており、帰省の準備を進める仲間たちから「夏休み中ずっと寮に1人でいるつもりなのか」と心配されていた。そんな折、渚から自分の家に来ないかと誘われる。
他に行くあてもなく、仲間たちの心配ももっともだと感じていた由夜は、突然の申し出に戸惑いながらも渚と共に彼の実家である高松家へと向かう。高松家の面々は由夜を温かく迎え、いきなり訪ねて迷惑なのではないかと案じていた彼女は安堵する。

梓と亜子の一件もあり、渚とは「性別を超えた友人」といった関係になったと思っていた由夜だったが、ある晩台所で彼と鉢合わせた際にアクシデントが発生する。梓のことで協力してくれたことに礼を言うと、渚は「お前はいつも梓のことばかりだ」と不満を募らせる。売り言葉に買い言葉で由夜がこれに反論すると、渚は彼女を押さえつけ、「もう誰にも譲らない」と言って静かに見詰め続けた。
この時はそれ以上は何事もなく別れることとなったものの、由夜は渚の言っていた言葉の意味を深く考え込むようになっていく。

笑佳の過去

夏休みが終わり、由夜たち木苺寮の面々もそれぞれに学園へと戻ってくる。仲間たちとの再会を喜ぶ由夜だったが、笑佳の様子がおかしいことに気づく。実はこの頃、彼女は自分が木苺寮に入るきっかけとなった中学時代の友人豊橋雪乃(とよはし ゆきの)と揉め事を起こしていた。
雪乃は「笑佳の友達は自分だけでいい」という過激な考えの持ち主で、笑佳の友情を独占するために彼女と親しい女生徒に怪我を負わせたことがあった。この時雪乃を庇い、全ての責任を背負ったのが、朗らかな性格の笑佳が木苺寮に入れられた理由だった。

雪乃は笑佳が由夜と仲良くしていることが気に入らず、再び彼女を独占するため、笑佳を部室に閉じ込める。木苺寮の面々は行方が分からなくなった笑佳を探して学校中を捜索し、彼女が雪乃によって部室に監禁されていることを突き止める。
「私たちの友情を邪魔しないで」と言って止めようとする雪乃を説き伏せ、由夜は笑佳を救出。扉1枚隔てて2人のやり取りを聞いていた笑佳は、かつて木苺寮の仲間に雪乃との関係のことで慰められ、同時に励ましてもらったことを思い出し、彼女に仲直りの証として事前に用意していた自分のものと同じストラップを渡す。こうして笑佳と雪乃は和解し、木苺寮の面々は笑佳が無事だったことに胸を撫で下ろすのだった。

文化祭と父との再会

文化祭の時期が近付く。木苺寮の面々もその準備に奔走するが、由夜は浮かない表情をしていた。渚に「何か悩み事があるのか」と尋ねられた由夜は、自分と父との確執について話し始める。
由夜の母が死亡した時、彼女の父は「近所の高校に通うより、全寮制の夏果学園に編入したらどうだ」と勧めていた。これが由夜には「父は自分と一緒にいるのが嫌だったのではないか、だから遠くの学校に追いやったのではないか」と感じられ、以後2人の間には微妙な擦れ違いが生まれていたのだった。

渚に勧められるまま父に文化祭の開催を知らせる手紙を送るも、「父は本当に来てくれるのだろうか」と由夜は悶々とした日々を過ごす。やがてやってきた文化祭当日、由夜は木苺寮の出し物を盛り上げるために奮闘するが、それと並行して入場客の中に父がいないかを探していた。どれだけ探しても見つからず、「やはり自分は父に疎まれているのだ」と意気消沈したところで、渚の妹が由夜の前に現れ、彼女を「探している人を見つけた」と言って引っ張っていく。
果たしてそこにいたのは、死神のコスプレをした人物だった。渚がその格好で文化祭に参加していたことを知っていた由夜は、落胆のような安堵のような不思議な感慨を覚えながら、父に対する本当の気持ちを吐露する。

「父に疎まれているとは思いたくない、父にも“由夜と一緒に居たい”と思ってもらえなければ寂しい」
実のところ、死神のコスプレをしていた男は渚ではなく、渚から事情を聞いて彼の衣装を借りていた由夜の父だった。「ようやく由夜の本音が聞けた」と彼は安堵し、自分と母が夏果学園の卒業生であること、この学園に通うことを提案したのは生前の由夜の母であることを明かす。自分たちが過ごしたような素敵な青春を送ってほしいと願う父に、由夜は「素敵な仲間たちと一緒に、毎日楽しく過ごしているよ」と答え、2人の確執は解消されるのだった。

由夜の告白

文化祭での出来事を経て、由夜は「自分は渚のことが好きなのではないか」との思いを抱くようになっていた。いつも側にいて助けてくれた彼のことを、いつしか由夜もまた大切に思うようになっていたのである。木苺寮の面々はとっくにこれを察しており、「ようやく由夜と渚がくっつきそうだ」と盛り上がるが、肝心の由夜は「梓のことや文化祭でのこと、今まで散々一方的に迷惑をかけてきたのに今さら好きだなんて言えない」と頑なになるばかりだった。
ここで木苺寮の面々は一計を案じ、「今週の土曜日に渚が女の子とデートする」という嘘を由夜に吹き込む。これで焦った由夜が行動を起こすだろうと考えていた木苺寮の面々だったが、由夜は「渚が誰かを好きになって付き合うなら勝手にすればいい」と真逆の反応を見せる。そこには「自分が渚のことが好きだと認めたくない」という複雑な乙女心や、「あれだけ迷惑をかけた渚の恋路の邪魔をしたくない」という義理も含まれていた。

慌てる木苺寮の面々だったが、土曜日に本当に渚が出掛けてしまい、「嘘が本当になったのでは」と大騒ぎになる。ここに至ってようやく由夜は「渚を取られたくない」との思いに駆られ、彼を追いかけて「行くなバカー!」と叫ぶ。これまでの思い出を想起しながら、どうして自分にあんなに優しくしてくれたのに他の女の子とデートに行くのかと問う由夜に、渚は「遅い」とだけ言葉を返す。木苺寮の面々の作戦を渚はとっくに看破しており、これを利用して由夜の本音を引き出そうとしていたのだった。
改めて言葉の続きを促された由夜は、「ムカつくけど好き」と言って渚にキスをする。晴れて恋人同士となって木苺寮に戻って来た2人を、仲間たちは大いに祝福する。その晩、木苺寮に来たばかりの頃の自分を夢で見た由夜は、「大丈夫だよ、その先には楽しい毎日が待ってるから」と過去の自分にエールを送るのだった。

『ラブ・ベリッシュ!』の登場人物・キャラクター

主要人物

福島 由夜(ふくしま ゆうや)

CV:生天目仁美
夏果学園に編入後、木苺寮に入寮することになり、寮長でみんなのアイドル梓に恋をする。
1度は告白をされるも嘘と分かり失恋。
その後、ずっとそばで由夜を見てくれていた渚にいつの間にか恋をし見事結ばれる。
母親が中学生の時に事故で他界してしまったため、元々は父との2人暮らしだった。
文化祭にて夏果学園は両親の思い出の学園と判明。

高松 渚(たかまつ なぎさ)

kokia
kokia
@kokia

Related Articles関連記事

つばさとホタル(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

つばさとホタル(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『つばさとホタル』とは春田ななによる少女漫画作品。コミックは全11巻が発売し、アニメ化もされている。少女漫画雑誌『りぼん』で2013年9月号から2017年12月号まで連載。主人公の園川つばさは異常な世話焼き。怪我をした幼馴染の手伝いのため、バスケ部にマネージャーとして入部し、部員の飛鷹顕に恋をする。また、同じバスケ部で女子から人気を集める鳥羽結真から告白され、驚きを隠せなかった。恋には疎い顕の気持ちの変化と、恋も部活の仲間も大事にしたいつばさが選ぶ結末に、最後まで目が離せない。

Read Article

つばさとホタルの名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

つばさとホタルの名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『つばさとホタル』とは少女漫画雑誌『りぼん』で連載された春田ななによる恋愛コミック。世話好きで相手ドン引きされてしまい人間関係を上手く作れない、つばさ。怪我をしたバスケ部のマネージャーの友人を手伝うため、マネージャーとして入部し、そこで会った部員のあきに恋をする。しかし部員の鳥羽にも告白され、三角関係に悩む。つばさが、あきに対して伝える好きな気持ちや態度はストレートで真剣な恋愛にドキドキする場面・セリフが多数出てくる。鳥羽のつばさに思いを伝える時の強引なセリフも魅力的だ。

Read Article

目次 - Contents