モンキーターン(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『モンキーターン』とは、漫画雑誌『週刊少年サンデー』(小学館)にて掲載された河合克敏の長編連載作品、およびそれを原作としたアニメ作品である。主人公・波多野憲二が競艇選手を目指し、養成機関である本栖研修所に入所するところから、競艇選手として活躍しトップに立つまでを描くサクセスストーリーである。また競艇だけでなく、仲間たちとのつながりや、恋愛模様などを描いた青春漫画にもなっている。

『モンキーターン』の概要

『モンキーターン』とは、漫画雑誌『週刊少年サンデー』(小学館)にて掲載された河合克敏の長編連載作品、およびそれを原作としたアニメ作品である。漫画は、1996年36・37号から2005年3号まで掲載され、全385話。コミックは小学館の少年サンデーコミックスより全30巻、同スペシャルより愛蔵版全18巻。2021年1月時点で累計発行部数は1000万部以上である。アニメは、2004年1月11日から12月19日まで、テレビ東京系ならびにBSジャパンなどで放送、全50話。7月4日からの放送分(26 - 50話)は、新シリーズとしてタイトルを『モンキーターンV』に変更している。アニメの収録範囲はコミック26巻、初出場の賞金王決定戦が終わるまでである。本作は才能豊かな主人公・波多野憲二が競艇の世界でトップを目指すサクセスストーリーである。若き天才である新人選手がトップを目指すリアルな競艇バトルを軸にして物語が進んでいく。そして、仲間と助け合い、ライバルとぶつかり合い、ときには恋愛問題に悩む。魅力的なキャラクターが絡み合う青春漫画でもある。また、作者が実際に競艇場や選手に取材して制作された漫画であることから、日本船舶振興会より競艇初心者の入門書としておすすめされているほどのリアリティを持っている作品である。

『モンキーターン』のあらすじ・ストーリー

競艇選手になるために研修所に入学

主人公の波多野憲二(はたのけんじ)は、プロ野球選手を目指していた元高校球児。しかし、小柄な体格のために試合で失敗してしまい、自分の野球への才能に限界を感じていた。落ち込んだ憲二は、高校OGの萩原麻琴(はぎわらまこと)によって競艇選手になることを勧められる。競艇の学校である本栖研修所に入所した憲二は、学科などに苦しみ、落ちこぼれが集められるD班に配属される。ライバルの洞口雄大(どうぐちたけひろ)と競い合い、家族を養うために誰より真剣な青島優子(あおしまゆうこ)と協力し合いながら、憲二は這い上がっていく。あきらめず度胸と集中力で技術を高めていく憲二は、常に全力で限界に挑み続けるために「転覆王(ドボンキング)」と呼ばれるほど転覆を繰り返した。それでも失敗を糧に成長を続け、研修所ではトップクラスの操縦技術を身につけることになる。研修の最後に行われる卒業記念レースでは、雄大と競り合うも優子に抜け出されてしまう。優子の体重の軽さによる圧倒的な直線スピードに対抗するため、憲二は禁止されているモンキーターンを使って勝負する。同時に雄大もモンキーターンを使って競うことになる。モンキーターンとはボートの上に立ちながら体重を移動させることで、鋭く曲がる技術である。レースは最後に強風が吹き、雄大が恐怖で減速する横を憲二が全力でコーナーに挑み優勝することになる。

ベテラン競艇選手への弟子入り

憲二のプロデビューでは、モーター(ボートのエンジン)の抽選で最高の性能を持つ「平和島のオバケモーター」に当選。しかし、レースではいきなり転覆してモーターが水浸しになってしまう。途方に暮れる憲二に、あるベテラン競艇選手が声をかけた。SG制覇経験もあり、30年間A1級を維持するトップクラスのベテランレーサー、古池勘一(こいけかんいち)である。勘一は、ぶっきらぼうながらも的確なアドバイスをして憲二を立ち直らせる。感動した憲二は勘一に弟子入りすることを決意する。しかし、勘一は過去に弟子をレース中の事故で失っているため、憲二の弟子入りを許さない。困り果てた憲二は、勘一に賭けを持ちかける。勘一は日本一難しい水面である江戸川のレースで2着以上をとれたら弟子にしてやると約束する。デビューしたばかりの新人には厳しい条件だが、憲二は必死に研究して作戦を考え出す。それは、レース展開が荒れやすい江戸川では、大回りしながら観察して後半に隙間を狙って追い抜くほうが有効だということだった。本番では作戦通りになったものの、最後は勘一との一対一の勝負になる。嫌な予感がした憲二は、定石を外してターンすることで勘一の罠を外し優勝するのだった。

賭けに勝ったことで勘一の弟子になった憲二だが、未だに勘一によりプロペラ制作を禁止されていた。プロペラとはボートのエンジンに取りつける2枚ばねの部品のことで、スピードに大きく影響を与える部分である。東京支部でもトップクラスのペラ巧者の和久井錠司(わくいじょうじ)は、勘一のペラを作らせない指導法を聞いて、古い精神論だと批判する。憲二は反発するが、レースでは錠司が優勝してしまう。リベンジを誓う憲二は勘一にペラ制作の指導を頼み、平和島での戦いに挑む。本番のレースでは弱いモーターを引いてしまった錠司が苦戦しながらも調子を上げてきていた。憲二は、最初は絶好調だったものの、後半では錠司に追いつかれてしまう。悩んだ末に憲二はペラを再調整することを決意する。調整が上手く成功した憲二は、最終レースで圧倒的な速度の伸びで錠司を倒して優勝したのだった。

初めてのダービーに挑戦

艇界の最高峰のレースであるSG競走、そのひとつである全日本選手権競走、通称ダービーがある。浜名湖周年記念競走に斡旋された憲二はダービーに出るため、少しでも勝率(着順ごとに決められた点数を出走回数で割った数字)を稼ごうとしていた。しかし、その上を目指さない妥協した走りを見た愛知の巨人・洞口武雄(どうぐちたけお)は、つまらない奴だと批評する。落ち込む憲二だが、一晩考え込むとあっさりと開き直って、1位だけを目指して武雄と張り合う。最後には武雄に弾き飛ばされて負けてしまう憲二だが、ギリギリダービーへの出場資格を得ることに成功する。憲二は今回のレースを振り返りあきらめずに1位を狙うことが、相手にプレッシャーを与えて勝利を引き寄せることに気づくのだった。

初参加のダービーで憲二は、艇王と呼ばれるトップレーサーの榎木祐介(えのきゆうすけ)と出会う。恐ろしいほどの存在感に圧倒される憲二。しかし、祐介は悪いモーターを引いてしまい苦戦する。それでも徐々に調整して、終盤にはトップクラスの戦闘力を引き出し優出(優勝戦へ出場する権利を得ること)する。対して憲二は、旋回スピード以外は実力不足であることを感じていた。運良くいくつか勝ったことで優出するチャンスだったが、予選最後のレースの相手は洞口武雄だった。しかし、レース展開に恵まれ最後の一騎打ちで、かろうじて武雄の体当たりを交わして優出することに成功する。最終レースではタッチスタートを決めてトップに立つ。競艇のスタートとは助走しながら決められた時間から1秒以内にスタートラインを通過することになる。この決められた時間ピッタリ誤差0でスタートするのがタッチスタートである。最高のスタートを切った憲二だが、艇王・榎木祐介に追いつかれ競り合い、圧倒的な経験でねじ伏せられることになり、結局6位に終わることになる。

洞口雄大の新しい武器である洞口スペシャル

憲二のライバル洞口雄大は、ダービーでの憲二のタッチスタートに勝つ方法が見つからずに、憲二の走りが頭から離れない。そこに父親の武雄が訪ねてきて、憲二に勝つためにはオレと組めと言う。しかし雄大は、入院している母親をないがしろにする父親を憎んでいたため、断り追い返す。その後雄大は、母の見舞いに行き父親のレースをテレビで見ながら話しているうちに、父親の本当の姿を知ることになる。誤解が解けた雄大は武雄に弟子入りし、孤立している父親の強さの秘密を知るために大学へと向かう。武雄は専門家を雇い、助言を受けていたのだ。大学には流体力学の権威である教授が作り上げた、スーパーキャビテーション・プロペラが準備されていた。このプロペラはロスを最小限にする形に加工されていて、圧倒的なスピードを出すことができるのである。そして新ペラの実戦テストに選んだ徳山モーターボート大賞では、憲二は絶好調で1着を連取、対する雄大はモーターが悪すぎて低迷していた。しかし、憲二はゴミが絡む事故で優出を逃し、雄大と戦うことになるが、圧倒的なスピードの雄大に負けてしまう。雄大は新ペラの調整方法が分かったから、次に会うときが楽しみだと言って去っていった。

雄大が次に出場する一般戦には青島優子が出場していた。ペラの整備中にスーパーキャビテーション・プロペラ、通称洞口スペシャルを見せてもらった優子は、その異形な形に驚く。レース終了後、帰ろうとする雄大に優子は、研修所時代の同期である河野一実(こうのかずみ)の家が近いので寄って行こうと誘う。一実から出産報告の絵葉書が届いたためである。2人が一実の家を訪れて話していると、競艇と家庭の両立の大変さが話題になる。雄大は一実が競艇より家族を優先していることを批判するが、優子に家族の大切さを諭される。優子の優しさに触れた雄大は思わず告白してしまう。とりあえず曖昧に答えた優子は、家に帰って悩んでいると憲二の顔が思い浮かんでしまう。そんなときに優子は一実が調子を落としていると聞いて雄大にアドバイスをお願いする。雄大が新ペラ洞口スペシャルを使って圧倒的なスピードで暴れまわっているのを見た一実は、同じものを作ろうとしていたのだ。しかし、雄大は一実に新ペラはプレス加工で作っているため、真似できないと伝え諦めさせるのだった。雄大の一実への対応を聞いた優子は、雄大は共感性に欠けていると伝え、距離をおくのだった。

2度目のダービーに挑戦

憲二にとって2度目のダービーが始まった。新ペラ・洞口スペシャルの弱点に気づいた憲二は、勝つために減量に挑戦する。しかし、無理をしすぎて調子を落としてしまう。そんな憲二に和久井錠司が減量の指導をして、徐々に集中力が戻ってくる。なんとか優勝戦に進むと、新ペラで絶好調の洞口雄大、艇王榎木祐介、憲二と同じく洞口スペシャルの弱点を見抜いた犬飼軍志(いぬかいぐんじ)が、待ち受けていた。軍志は巧みな試合運びで知られ「北陸の狼」と異名を取るほどのベテランレーサーである。優勝戦は憲二の渾身のスタートが決まるも、軍志のブロックで雄大と共に防がれてしまう。雄大が圧倒的なスピードで迫るも、全員にマークされて追い抜けずに終盤へと入り、スピードが落ちてしまう。洞口スペシャルの弱点とは、終盤になるとペラが変形してしまい、スピードが落ちてしまうことだ。最後のあがきとして雄大は体当たりを狙うが、憲二は得意のコーナーワークで躱して、優勝する。

大怪我からの復帰

SG覇者の仲間入りをした憲二は絶好調だったが、レース中に大きな波に煽られて転覆、大怪我をしてしまう。手首をプロペラで切断され、皮一枚でつながっているような状態だった。憲二は手術が終わっても激痛で眠れず、まわりに当たり散らしてしまう。しかし、友人たちが活躍している新聞を見ているうちに、競艇に乗りたくてたまらなくなり、リハビリに意欲を燃やすようになる。結果半年で復帰。ランクダウンしてB2になった憲二だったが、最強のB2として一般戦を荒らし回ることになる。B2とは選手の4つの階級の中で最も低い階級。他に下からB1・A2・A1がある。好調な憲二だが怪我で半年間休んだため、SGに出られないと思って落ち込んでいた。しかし、実はSG覇者は1年間SGに出場できることを和久井錠司に教えられる。

SGの舞台に戻れることを知った憲二は、次に開催されるオーシャンカップへと挑む。そこには、女子レーサーで唯一の出場選手の櫛田千秋(くしだちあき)がいた。千秋は地元ということもあり、気合の入ったレースをしていた。SGクラスの選手とも正面からぶつかる強気なスタイルは、予選で見事1着を取り準優出(準優勝戦に出場する権利を得ること)を決める。さらに、準優勝戦(優勝戦に出場する選手を決めるレース)ではトップが転覆して運良く1着、女性初のSG優出を決める。対して憲二は、パワーが足りず苦戦していた。かろうじて優出したが、勝ち目はないと言われていた。錠司から託された新ペラに頼ってきたが、どうしようもなくなった憲二は、新ペラの調整に挑戦し、成功する。そして迎えた優勝戦、真っ先に飛び出したのは千秋である。直線で伸びる千秋に向かって体当たりする雄大。そのとき雄大の艇が跳ね上がり、千秋の頭部に激突してしまう。激怒した憲二は雄大と並んでぶつかり合って遅れてしまう。2人の横を抜いたのは、若手トップクラスだがSGタイトル未経験の岡泉誠司(おかいずみせいじ)だった。トップに立った誠司は、冷静にレースを運び初優勝する。レース終了後、頭部にダメージを受けた千秋は記憶が飛んでいて何も覚えていなかった。初めてのSGで経験すら得ることができなかった千秋は涙が止まらなかった。それを見た青島優子は、選手もファンも納得するような勝ち方をしなければならないと感じ、雄大とは考え方が違うと対立する。雄大は綺麗事だと反論するが、優子はファンも納得するレースを実現してみせると宣言する。

連覇を目指して3度目のダービーに参戦

波多野憲二にとって3度目の全日本選手権、通称ダービーが始まった。尻上がりに調子を上げている艇王榎木祐介が横綱相撲でトップの勝率で優出。祐介の1年先輩で才能だけなら艇王以上と言われた蒲生秀隆(がもうひでたか)も、ブランクを取り戻し好調な成績で3番手に優出を決めた。そして、左手首の怪我の痛みに苦しみながらも、ペラ調整が成功して最速のターンスピードで勝負する憲二が、なんとか5番手で優出して最終レースを迎えた。スタート直前に雨が上がり痛みが引いた憲二は、絶好のスタートを切った。しかし、内側の祐介が伸びてきてブロックしながら先頭を取る。そこに秀隆が追いついてきて、3人の先頭争いに。祐介を中心に憲二と秀隆が交互にぶつかり合う形で3周目までもつれたところで、祐介が単独トップに立つ。2番手に憲二が追いすがるが、ギリギリ追いつけない。勝ち目がなくなった憲二は、未完成の新技、Vモンキーを繰り出す。Vモンキーとは、転覆スレスレの強烈なブレーキをかけることで、航跡がVの字を描いて最短距離をターンするテクニックである。見事成功した憲二は、優勝し2年連続ダービー覇者となった。

艇界の頂点を決める賞金王決定戦に挑戦

真の日本一を決める賞金王決定戦が始まった。波多野憲二は、組み合わせ抽選で1走目は1号艇を引き当てた。内側を走ることができる1号艇を引いて調子に乗った憲二は、1コースにこだわったために、スタートを失敗。最下位スタートになってしまう。そこで開き直った憲二は、最高のスタートを決めトップに立つ。しかも気温が下がったおかげでペラとモーターとの相性が良くなり、圧倒的なパワーで初勝利となる。それでも成績が足りず優出することはできなかった。対して洞口雄大は安定した成績を出していたが、プレッシャーに呑まれて失敗。それでもギリギリ最終レースに残ることができた。最終レースは艇王榎木祐介が安定した強さを見せ、雄大は粘るも2着の秀隆にあしらわれ3着となる。雄大ですら勝負にならない賞金王レースの過酷さを感じ取った憲二は、来年こそ勝つことを決意する。

洞口雄大のライバルへの対抗策

競艇名人戦、それは48歳以上の選手の中で勝率上位54名を集めてベテランたちの頂点を決めるレースである。波多野憲二の師匠である古池勘一や、憲二のライバル洞口雄大の父親、洞口武雄も出場する。予選では好調な勘一と武雄が優出を決めて、迎えた最終レース。武雄は周りが驚愕するほど深インのポジションを取った。深インとはスタートラインに近すぎる場所からダッシュすることである。近すぎるために加速しきれずにスタートで負けてしまうポジションとも言える。誰もが武雄は失敗したと考えたが、実際のレースでは圧倒的な加速でトップに立つ。武雄は出足と呼ばれる加速に優れている代わりに最高速に劣る、出足特化ペラを開発したのだ。優勝した武雄を見て、雄大はこれこそ憲二に勝つペラだと確信する。雄大は父親に頭を下げ、新ペラを使うイン屋(内側のコースからのスタートで戦う専門家)としての指導を頼むのだった。

青島優子の告白

青島優子は洞口雄大と距離をおいてから、波多野憲二のことが気になって仕方がない。憲二に恋人がいることはわかっていても我慢できなくなった優子は、雄大に別れを告げ憲二に告白するのだった。いきなり告白された憲二は迷うも、優子の涙を見て受け入れてしまう。憲二は恋人の生方澄(うぶかたすみ)に申し訳なくて、避けてしまうようになる。恋人から逃げているうちに、ペラ制作に没頭していると、優子からアドバイスやペラ作りの達人を紹介してもらい、優子と親しくなっていく。憲二は優子の健気な姿を見て、恋人の澄に別れを告げるのだった。

4度目のダービーが始まった。波多野憲二が青島優子と付き合っていることを知った洞口雄大は、怒りを力に変えて完璧なレース運びで勝率を上げていく。憲二は、序盤こそ手間取ったものの、基本に立ち返り外側からの全速ターン(減速せずにターンすること)で勝利を重ねていく。最終レースの順番は1号艇が憲二、2号艇が雄大と横並びとなる。スタートの直前、雄大は長年付き合った恋人を捨てた憲二を罵る。動転した憲二は雄大と張り合ってしまい、深インしてしまう。我に返った憲二は、コースを回り直して最も外側の不利なポジションに入ることになる。ポジションがずれたことで不利になった雄大はスタートを失敗してしまう。逆に有利になったのは、憲二の先輩で同じペラグループに所属する浜岡猛(はまおかたけし)である。猛は完璧なスタートを決めてトップに立ち、そのまま優勝。そして、今までのことを思い返して改めて反省した憲二は、生方澄とよりを戻すために、優子に別れを告げるのだった。

別れた恋人のために2度目の賞金王決定戦に挑戦

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