宮園かをり（四月は君の嘘）とは【徹底解説・考察まとめ】

夏休みに入る頃、かをりの元に藤和ホール事務局からガラコンサートの招待状が届く。藤和音楽コンクールでの演奏が評価され、かをりと公生は主催者の推薦枠として招待された。出演を決めた2人は演奏曲について相談する。かをりは、クライスラー「愛の悲しみ」を候補に挙げた。この曲は、公生の母親が好きだったものだった。母親との思い出が強く残るため、別の曲にしようと公生は提案するが却下される。かをりは、公生の家に上がった時に「愛の悲しみ」の楽譜を偶然目にして、その楽譜が愛に溢れていると感じとり、演奏曲に選定したのだ。早速練習が始まったが、公生の集中力は散漫したままだった。

本番

ガラコンサート当日。かをりは時間になっても現れなかった。覚悟を決めた公生は1人で舞台に立ち、「愛の悲しみ」のピアノ編曲版を奏で始める。聴衆に自身が素晴らしい演奏家であり、その公生を伴奏者に据えるかをりはもっと凄いのだと証明するためにである。公生は母親との思い出が濃く香る「愛の悲しみ」に想いをのせた。

翌日、かをりが緊急入院していたことが判明する。かをりは「ふらついて頭をぶつけて出血して入院した」と明るく説明する。だが、正確には単にふらついたのではなく、病気で足が急に動かなくなり倒れてしまい、頭をぶつけて出血したのだ。

入院生活

かつて病気で母親を亡くした公生は、かをりも重い病気なのではと勘が働くが、何も聞き出せずにいた。かをりは、お見舞いに来た公生とガラコンサートの来場者が書いたブログを読む。「その音色は色彩を帯び、その旋律は春の日の風になり、聴衆の胸に一抹の不安、一抹の寂しさ、一抹の悲しみを残していく。遠い日に失くした郷愁を思い出させる。」という公生の表現力が高く評価された文章が書かれていた。かをりは「聴きたかったな。君のピアノ。また一緒に弾きたかったな」と涙ぐむ。

ある夜。かをりが病院の廊下を歩いていると、突如その場にへたり込んでしまう。病気の影響で、足に力が入らなくなってしまったのだ。「立って！立ってよ！立ってよ！私の足でしょ！」と自分の足を拳で叩くが、反応がない。現実に耐え切れず、悲痛な泣き声をあげる。

最後のお出かけ

1日だけの外出許可が下り、かをりは制服を着て学校へ向かった。そして学校帰りの公生を連れて買い物に出かける。好きなだけ買い物をした後に、2人は再び学校に戻る。突然かをりは、自分のことを忘れてしまうのかと公生に問う。公生は、まっすぐ向き合って「忘れない」と確かに答えた。かをりは、「君でよかった」と満足そうにする。途端にかをりがふらついてしまったので、公生は自転車でかをりを家まで送る。夜空には流れ星が瞬き、綺麗に輝いていた。かをりは公生の背中に顔をうずめて泣きじゃくっていたが、公生はその涙の訳を聞かずにいた。

喧嘩

公生たちがお見舞いに行って他愛もない話をしていると、公生が最近中学生にピアノのレッスンをしていることが話題に上がる。かをりは、公生の危機感の無さやコンクールまで時間が足りないことをわかっていないと責め立てる。強い口調で説教したかと思えば急に泣き出してしまい、心配になった公生はその晩もう一度病院へ向かった。自分の病状が良くないことを静かにかをりは伝え、「こんななら会わなきゃよかったね」と微笑むのだった。

その一件から、公生はかをりを避けるようになった。だが、渡の後押しもあり、公生はかをりに会いに行った。久々に会ったかをりは、自分のことを忘れればいいと明るい笑顔で話す。かをりは、自分らしく生きることを半ば諦めていた。

くるみ学祭

公生は、かをりに生きる希望を与えるために、ピアノを教えている中学生・相座凪（あいざ なぎ）が通う音楽系の名門・胡桃ヶ丘（くるみがおか）中学校の音楽祭に出演することを決める。公生と凪が披露するのは、チャイコフスキー「眠りの森の美女“薔薇のアダージョ”と“ワルツ”」。2人の演奏が始まると、会場に来ていた渡は、かをりに電話を繋げて演奏を聴かせる。2人の素晴らしい連弾に、かをりは静かに涙を流す。

学祭後日。音楽を諦めていたかをりは、公生の演奏と「もう一度一緒に弾いてください」という言葉に勇気をもらい、難しい手術を受けることを決意する。

東日本コンクール

公生が次に出場するのは、「東日本コンクール」。長い歴史を持つ日本有数の音楽コンクールだ。ある日、公生と渡が病院に向かうと、かをりは病状が急変し緊急事態に陥っていた。現実を目の当たりにし、悲しみからピアノを弾けなくなってしまった公生。後日、かをりから「カヌレが食べたい」という手紙を受け取り、病院に向かう。かをりの状態は落ち着いており、いつも通り明るく公生に話しかける。かをりの提案で、2人は外でカヌレを食べることにした。コンクール直前にも関わらず、公生がピアノを弾けずにいることを知ったかをりは、東日本コンクールと同じ日、難しい手術を受けることを告げる。かをりは公生は一緒に足掻こうと話す。

コンクール当日。時間を同じくして、かをりの手術も始まろうとしていた。顔色も精神状態も悪く、公生はとてもピアノを弾ける様子ではなかった。しかし、かをりとの約束のため、ふらつきながら舞台へ向かう。ピアノに向かい合ってもなお、公生の調子が悪そうだったが、何とか気持ちを切り替えて演奏し始める。亡き母や親友たち、ライバル、師と弟子。様々な人との思い出を浮かべながら公生はピアノを奏でる。最後に、かをりとの思い出を振り返る。交わした言葉や、口ずさむキラキラ星。初めて2人で立った舞台からの光景。かをりに届くようにと公生が演奏していると、不意にかをりの幻覚が現れ、「ありがとう」と耳元で囁いた。そして、ドレス姿のかをりの幻覚が、公生の演奏に合わせて少しだけヴァイオリンを弾く。その幻覚は公生に微笑みを見せたあと、一縷の涙を流して花びらが散るように消えていった。同時に公生の演奏も終わり、その見事な演奏に会場は大いに盛り上がったが、かをりが息を引き取ったことを察知した公生は、「さよなら」と呟き涙を溢した。

最後の手紙

かをりのお墓参りに行くと、かをりの両親から公生宛ての手紙を渡される。それは、かをりが公生に認めたものだった。その手紙にはかをりの想いがたくさん綴られており、最後にずっと言えずにいた公生への想いが書かれていた。手紙には初めて出会った5歳のピアノの発表会にて、かをりと偶然映り込んでしまった公生の写真も同封されていた。物語の最後、公生のピアノにはその写真が飾られている様子が描かれている。

宮園かをりの関連人物・キャラクター

有馬公生（ありま こうせい）

CV：花江夏樹
実写版キャスト：山﨑賢人、藤本哉汰（幼少期）

市立墨谷中学校3年生。幼少期は、元々の音楽センスと母親の厳しい指導もあり、天才ピアノストとして数々のコンクールで優勝した経験を持つ。徹底された譜面への忠実性から、「ヒューマンメトロノーム」「母親の操り人形」「譜面の僕」など、周囲から揶揄されていた。しかし、母親の死をきっかけに、自身が奏でるピアノの音だけが聴こえなくなってしまい、ピアノの世界から遠ざかるが、かをりと出会ったことで再びピアノを弾くようになる。穏やかで優しい性格。天真爛漫なかをりに恋心を寄せている。

澤部椿（さわべ つばき）