1/11 じゅういちぶんのいち(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『1/11 じゅういちぶんのいち』とは、中村尚儁による日本の青年向けサッカー漫画。第一部は『ジャンプSQ.19』(集英社)で連載された。とある出来事から主人公・安藤ソラは大好きだったサッカーから遠ざかっていた。そんな時、小さい頃の友人でプロのサッカー選手であるツヨシこと若宮四季と再会し、サッカーの楽しさを思い出す。しかし、ツヨシは突然この世を去ってしまう。ソラはそんなツヨシの遺志を継ぎ、プロサッカー選手を目指す。その過程で、ソラの熱意に心を動かされ成長する人々も描いた感動のサッカー物語。

ソラのファンである沢渡。

第12話の主人公。四季の実妹。母の再婚により苗字は「沢渡」になっている。姉を「四季ちゃん」と呼んでいる。

ただ1人のファンとして見て欲しいという思いから、ソラには「四季の妹だ」と明かすことなく横浜入団後のソラを応援。ソラの自主練が終わるまで待ち、サインをもらおうと出待ちをしていた。サインをしたことから、ソラも沢渡のことを「まだ活躍がないのにも関わらず、応援してくれているファンの1人」として認識している。

ソラの海外移籍が決まった後、最後の思い出として四季の命日にソラを一日限りのデートに誘う。ソラは「ファンの人とそういうことしないから」と一度は断るものの、自分の最初のファンだからと渋々ソラは承諾。
沢渡のリクエストにより遊園地でデートとなる。2人で観覧車に乗り込んだところで、沢渡は「若宮四季選手も海外移籍が決まって、途中で飛行機事故に遭い亡くなってしまった。安藤選手も海外へ行っちゃうんですよね?もうどうどうしようもないことですか?」とソラに聞いた。ソラは四季の海外で活躍する遺志を受け継いでいたため「俺にはやらなきゃいけないことがあるから」と沢渡を納得させた。そしてデート後、ソラが四季の墓参りに向かうのを知って共に向かう。そこで「私は四季ちゃんの妹です」と自分の素性を明かした。

沢渡は小さい頃からソラの話を四季から聞いており、地元のサッカーチームに所属したことからソラを見に来ていた。そして誰よりも一生懸命に、楽しそうに練習する姿を見てファンになる。沢渡は最後に「どこへ行っても、四季ちゃんを忘れないで欲しい。よかったら私のことも忘れないで」とソラにお願いをして、2人は別れた。
その後、沢渡はソラの海外移籍先のチームがアメリカであることを知る。ソラはアメリカでサッカーが出来ぬまま亡くなった四季を思い、ヨーロッパからのオファーを断ってアメリカを選んでいた。それを知った沢渡は「四季ちゃんができなかったサッカーの続きをしてくれてありがとう」とソラに感謝し、涙をこぼした。

篠森 勇人(しのもり はやと/演:鈴木一真)

仁菜を厳しく怒る父・篠森勇人(しのもり ゆうと)。

第20話の主人公。仁菜の父。仁菜に自分と同じような失敗をして欲しくないことから、高校での部活動を禁じ勉学へ励むよう言っていた。

高校時代は駅伝部の主将として活躍していた。高校生活を全て部活に捧げていたが、最後の大会で脱水症状を伴う体調不良により途中棄権して苦い結果となる。受験勉強をする時間もなく、卒業後はすぐ就職。仕事ぶりは真面目であったが、就職した会社の規則や方針が「高卒と大卒者の差」を酷く感じさせる物だった。そのため努力以上の結果が返ってこず、低収入が続き転職も繰り返したことから妻に迷惑をかけたと思っている。
この経験から、子供には勉強をしていい大学に入り、良い会社に勤めて裕福で幸せな暮らしをして欲しいと考えるようになる。

仁菜が自分に隠れて部活動をしていると分かった時は、「人生を棒に振りたいのか」と仁菜の言い訳も聞かずに激しく怒った。その後、仁菜が土下座までして「サッカー部のマネージャーをさせてください」と勇人にお願いした時にも気持ちは揺るがなかった。しかし妻から「高校時代を後悔したことはない。あの時があったからあなたにも仁菜にも出会えた」と言われ、勉強と両立するならと仁菜の部活動を許可した。

仁菜が成人し、ソラを結婚相手として家に連れてきた時には「もし明日怪我をして、仁菜を養えなくなったらどうするんだ」など、相変わらずスポーツにだけ打ち込むことを危惧していた。両家顔合わせ後は変装し、勝手にソラの自主練を見に行くなど仁菜の結婚相手として相応しいかを見極めていた。そこでソラのファンである沢渡に会い、ソラのことを聞くと「プロになった後もなる前も、変わらず一生懸命努力し続ける人です」と言われる。実際に誰よりも残って練習をし続け、ひたむきに努力しているソラの姿を見て「仁菜の夫として相応しい男だ」と認めるようになる。
2人の結婚式当日、仁菜とバージンロードを歩く勇人。勇人はソラに「仁菜を頼んだぞ」と駅伝時代では渡せなかった大切なバトンを渡すように、ソラに仁菜を預けた。

仁菜の母(演:久遠さやか)

いつも微笑みを絶やさない仁菜の母。

勇人の妻であり、仁菜の母。常に笑顔。

高校時代は駅伝部のマネージャー。その時に勇人と出会い結婚した。
仁菜のスニーカーがすぐ汚れることから、放課後は図書館で勉強しているのではなく、何か運動部に入っていることを察していた。それでも仁菜の意思を尊重し、言及せずにいた。
部活をやっていることが勇人に知られ、「今すぐ退部しろ」と言われ泣いている仁菜に勇人の過去を話した。常に中立的な立場で「マネージャーを続けるかやめるか、決めるのはあなたよ」とだけ言った。
結果、仁菜が「マネージャーを続けたいです」と勇人に土下座した際にも、「私は高校時代を後悔したことはない」と自分の意見をはっきり伝えた。

安藤 悠(あんどう ゆう)

ソラと仁菜の息子。サッカー少年に育ち、父のようになりたいと地元の少年団のチームに入るがレベルが低いと感じ、さらに上のチームである横浜U-12に入団する。
しかし入団したものの実力が追いつかず、「安藤ソラの息子なのに下手」と周囲から言われることにも悩む。さらにソラが引退を決めたことにより、「何のためにサッカーしてるんだっけ?」と目標を見失う。

ある時、ソラの引退を知ったチームメイトから「父親と一緒に引退しろよ、ポンコツ」と言われたことによりチームメイトを殴ってしまう。母である仁菜は「暴力じゃなく、試合でしっかり白黒つけなさい」と叱るが、悠は「サッカーやったことない母さんに何が分かるんだよ!」と逆ギレしてしまう。
その夜、ソラが「何か悩み事あるのか?」と悠の部屋を訪れる。悠は「何も。母さんには何も分からないって言っただけだよ」と言うと、ソラは「お母さんは、お前がサッカー始めた時から、誰よりも心配してたんだぞ!」と叱る。ソラは「お前がサッカー上手くいかないのは、母さんのせいか?父さんのせいか?そうじゃないだろ」と仁菜に謝ることを促す。
悠が仁菜へ謝りに行くと、仁菜は「私もよく、安藤の妻って言われるからレッテル貼られてる気持ちは分かる」と悠に寄り添う。悠は仁菜に謝り、ソラの引退試合を一緒に観にいく約束をした。

ソラの引退試合の日、悠は仁菜と試合を観に来ていた。一生懸命にプレーをする姿を見て、悠は「父さんのようなプロのサッカー選手に、そして母さんのような強い人になりたい」と願っていた。
後にプロの道に進んだものの、社会人上がりから2部リーグ止まりであった。

その他

山中 寛太(やまなか かんた)

サッカークラブのレギュラーFWの山中 寛太(やまなか かんた)。

第6話の主人公。9歳。地元の小さなチームのFW。

2歳年上の女子FW・繭(まゆ)が楽しそうにサッカーしている姿に憧れて、繭の笑顔を近くで見ていたいとチームに入る。しかしサッカーは上手い方ではないため、負けが続き繭の足を引っ張ってしまっていることや、実力不足から悩んでいた。

そんな時、オーバーヘッドキックの練習を河原でしていたソラに出会う。山中はオーバーヘッドキックのやり方を教えて欲しいとソラにお願いするが、ソラは「怪我するかもしれないから…」と断る。そしてその代わりにと、ヘディングのコツをソラから教わる。

コツを教わった後の初試合、ミスもあったが後半にソラから教わったへディングを行う。しかし惜しくもゴールにはならず、ゴール前でボールが宙に舞う。「しまった」と思っていると繭が横から飛び出し、見事にゴールを決めた。
「ヘディングが下手でごめん」と謝る寛太に、チームメイトは「1点は1点」「あれがなきゃ繭だってゴールを決められなかった」と褒められた。繭もとびきりの笑顔で「寛太くん、かっこよかった!」と喜んでいた。

小田 繭(おだ まゆ)

寛太と同じチームに所属する女子。来年から中学生になるが、行く予定の中学にはサッカー部がないため「今年でサッカーは最後かも」と寛太に話していた。
そのため「今年はチームでいっぱい勝ちたい!」と願っている。

藪田 冬汰(やぶた とうた)

漫画家を目指している藪田 冬汰(やぶた とうた)。

第14話の主人公。小太りの男子学生。ソラがヨーロッパのチームへ移籍した時期に、修道院高校2年生として登場している。

同じクラスで学校一凶暴な、大神秋次(おおがみ しゅうじ)に目をつけられ毎日何かとパシらされている。薮田は「どうして僕に目をつけてるんだろう」と思いながらも、大神のパシリをこなしていた。
薮田には夢があった。人には恥ずかしくて言えないが、漫画家になることで、毎日コツコツと漫画を描いていた。そして時折、画力向上のために公園を訪れ、道行く人をクロッキーしていた。
ある日、公園に行くと可愛らしい女の子がサッカーしていた。その一生懸命さに惹かれ、思わず彼女の絵を描く。するとそのことが彼女に見つかり「それ私ですよね?可愛く描いててくれて嬉しい」と話しかけてきたのである。お互いに自己紹介を済ませると、彼女の名前は大神遙夏(おおがみ はるか)という名前だった。
薮田はすぐにその名前にピンときて、大神の妹であることを知る。また遙夏も「お兄ちゃんがいつも言ってる、薮田さんですよね?」と薮田のことを認知していた。

文化祭が近づくとある日、クラスで応援パネルを作ることになる。委員長が「このパネルのデザイン案、誰かある?」と聞いた時、薮田は手を上げようとしたが昔のトラウマを思い出し、手を上げずに終わる。薮田は小学生の頃、クラスメイトに自分の描いた絵を勝手に見られ「気持ち悪い絵、描いてんなよ」と馬鹿にされたことがあった。そのことから「どうせ自分の絵なんて…」と自信をなくしていた。
その姿を大神に見られており「なんで立候補しないんだ」と胸ぐらを掴まれる薮田。薮田は「僕の絵なんて…」とこぼすと、大神は「将来漫画家になるんやったら、多くの人に見られる練習を今からしとけ」とアドバイスしてくる。それでも薮田は自信が持てず「でも…」と口ごもると、大神は薮田の尻にキックを入れて「うじうじすんな!」と怒って去っていった。
放課後、薮田は公園を訪れ遙夏と話す。そこで遙夏は「ドイツのクラブに移籍するから、もう会えなくなる」と薮田に告白。遙夏は「私もプロになって活躍するから、薮田さんも漫画家への道を頑張って」と励ました。しかし、薮田は「君はもう手の届くとこにある夢だけど、僕の漫画家になりたいなんて夢は無理だよ」と弱音を吐く。そこで遙夏は、「私の夢は男子セリエAで得点王になることなの」と自分の夢を語った。
イタリアは守備を重視する国で、そこで得点王になることがFWにとっての誇りであると遙夏は考えていた。無理だと言われるような夢を掲げていると分かっているが、諦めずに着実に目標へ向かっていく。その姿勢を遙夏は薮田に見せた。

遙夏と別れた薮田は、帰り道の途中で大神の練習姿を目撃する。大神は日本人初のスーパーミドル級の世界チャンピオンになることで、もうすぐプロになる予定だ。そのため日々、コーチと共に、走り込みやボクシングジムでのトレーニングに励んでいた。
まさにその走り込みの場面に遭遇し、思わず隠れる薮田。そこでコーチと大神の会話が聞こえてくる。コーチは「もうそろそろ学校に行かなくてもいいんじゃないか?」と大神にもっと練習の時間を作るように言っていた。すると大神は「薮田っていうほっとけない奴がいるんですよ。昔の俺みたいにうじうじしててどうしようもないやつ」と話していた。
それを聞いて、薮田は高校入学当時のことを思い出す。薮田は入学当初、大人数から陰湿ないじめを受けていた。しかし大神に絡まれるようになってから、それはピッタリとなくなった。それは学校一凶暴な男が薮田のそばにいると、誰も近づかなくなったのである。
それに気づいた薮田は、「大神くんは自分の夢と向き合う時間を削って、僕を守ってくれている」ことを知った。

翌日、文化祭の応援パネルのデザイン係に、薮田は勇気を出して立候補する。そして描いてきた下書きを、クラスの全員の前で発表した。また昔のように酷評されるのではと思っていたが、クラスメイトは「いいじゃん」「かっこいい」と薮田のデザインを口々に褒めた。
薮田が応援パネルを作成することになり、大神へ「今までありがとう」とお礼を述べる。大神は「ちょっとお前のこと見直したわ」と言った。

大神 秋次(おおがみ しゅうじ)

薮田をパシリに浸かっている大神 秋次(おおがみ しゅうじ)。

薮田と同じクラスで、学校一凶暴と呼ばれている男子学生。夢は日本人初のスーパーミドル級の世界チャンピオンになることで、プロになる予定も控えている。

同じクラスの薮田がうじうじしている姿が、昔の勇気が出なかった自分に重なりパシりに使いながらも薮田の「漫画家になりたい」という夢を陰ながら応援している。
妹・遙夏がおり、遙夏と薮田が出会った際には薮田をシメようとしたが「妹が気に入っとるから許したるわ」と慈悲を見せた。

大神 遙夏(おおがみ はるか)

四季とソラを尊敬している大神 遙夏(おおがみ はるか)。

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