1/11 じゅういちぶんのいち(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『1/11 じゅういちぶんのいち』とは、中村尚儁による日本の青年向けサッカー漫画。第一部は『ジャンプSQ.19』(集英社)で連載された。とある出来事から主人公・安藤ソラは大好きだったサッカーから遠ざかっていた。そんな時、小さい頃の友人でプロのサッカー選手であるツヨシこと若宮四季と再会し、サッカーの楽しさを思い出す。しかし、ツヨシは突然この世を去ってしまう。ソラはそんなツヨシの遺志を継ぎ、プロサッカー選手を目指す。その過程で、ソラの熱意に心を動かされ成長する人々も描いた感動のサッカー物語。

イケている組の越川 凜哉(こしかわ りんや)。

第3話の主人公。ソラより1学年上。サッカー部での背番号は7。
勉強も運動も苦手と自覚しているが、努力を惜しまない。ソラの「プロになりたい」という夢を笑わなかったことから、ソラに「あんたは優しい人だ」と褒められたこともあるほど優しい人物。

中学生のころは野球部の補欠部員で、背が低くニキビ肌で丸刈りだったためほとんどモテなかった。その時に、同級生の䅣千夜子(すめらぎ ちやこ)と出会う。ひたすら写真を撮り続ける彼女は、周囲から変人と呼ばれていた。しかし越川は彼女の自由さや、自分の気持ちに真っ直ぐなところに惹かれていた。
越川は䅣に「どんな写真を撮ってるの?」と聞くと、䅣は「生き物も植物も、どんな一瞬もキラキラと一生懸命生きている。その瞬間を私はカメラで撮っている」と笑っていた。
その後䅣が志望していると聞いた越川は猛勉強し修学院高校へ補欠合格。中学卒業間際、3年生の部員が全員出る予定となっていた引退試合に䅣を誘うが、試合は雨天コールドゲームで出番が来ることなく終了。䅣にいいところを見せれず、悔しい思いをした越川は試合終了後、1人雨の中で素振りをし続けた。そして「中学時代の何も取り柄が無かった自分」に決別するため、高校では勉強も部活も精一杯頑張ると誓っていた。

ところが高校入学直後から越川の背が伸び、肌質も改善した。また坊主から長髪に変え、髪を染めたころからモテ始め彼女も出来る。しかし、毎回彼女と長続きはせず振られていた。
越川は元々モテていたわけでもなかったため「イケている自分の変化」や「周りの態度の変化」についていけていなかった。また周囲から「かっこいい」と褒められるほど、「自分にはかっこよさしかないのか」と物悲しさを感じていた。彼女も「かっこいいだけしかない」ことに気づき、越川から離れていった。
その後、ただ顔が可愛いからという理由だけで愛莉(あいり)という女子と付き合う。クラスや校内でも人気の存在となる中、中学卒業間際に抱いていた「高校では勉強も部活も精一杯頑張る」という目標を忘れかけていた。そんな毎日を過ごす中で、久々に䅣と顔を合わせる。越川は「イケてる俺なら、䅣ともいい感じになれるだろう」と思い声をかけるが、䅣はすっかり変わってしまった越川に対して「あなた誰?」と軽くあしらわれる。自分には外見以外、何もないことを思い知らされる越川。

その翌日、校門前でサッカー部の部員勧誘をしていたソラに「そんなに必死にサッカーしてなんになるんだよ」と話しかける。これは「そんなに必死にサッカー部を盛り上げても意味はない」「自分とは違って輝いているソラが羨ましい」という気持ちからだった。越川の友人も「プロになるなんて無理だよね」と笑ってソラを馬鹿にした。
しかしソラは打ちのめされる事も怒る事もなく、「プロになって、世界で最強のチームの1/11になるため」と真っ直ぐ目標を語った。その姿を見て逆に打ちのめされてしまう越川。「自分も中学時代は必死だった」と越川はソラを馬鹿にすることが出来ず、その場を立ち去った。

その後、友人達は相変わらずソラを見て「必死にやってダサい」と馬鹿にしていた。その流れで䅣の話になり、友人の1人が「䅣は世界じゃ有名な写真家らしいぜ」と話し、䅣が雑誌で賞を取った写真を見せる。その写真は、越川が中学の引退試合後、「何もない自分との決別」を思いながら必死に雨の中で素振りをしていたものだった。タイトルは「キラキラ」。
この頃の自分は䅣から見て、一瞬一瞬を生きているキラキラした存在だった。そのことを思い出し、越川は号泣。

翌日、越川は中学時代の丸刈りに戻し、これまでの友人関係を清算した上で校門でサッカー部員の勧誘をしていたソラに話しかける。越川は「昨日は馬鹿にして悪かった。サッカーもしたことがないし、自分には何も取り柄がない。でも変わりたいんだ。サッカー部に入れて欲しい」とお願いした。ソラは「本気で変わりたいと思っているなら、人は変われます」と越川を受け入れた。
越川はサッカー部に入り、必死に練習をし続けた。2年生でサッカー未経験から苦戦はしていたが、毎日が楽しかった。
ある雨の日、泥だらけになりながら必死にシュートを決めている姿を䅣に撮られる。そして「今のあなたはちょっとだけキラキラしてる」と䅣に褒められ、中学最後の自分よりも成長していると思えたのだった。

その後、デジタルカメラを買い、䅣と接点を持とうと恋愛面でも健気に頑張っている。

野村 瞬(のむら しゅん)/演:阿久津愼太郎)

過去の出来事から、サッカー部を離れ演劇部に入部する野村 瞬(のむら しゅん)。

第7話のメイン人物。ソラと同級生。
部内ではソラに次ぐ技術の持ち主で、フリーキックのキッカーを務めるなど周囲の信頼も厚い。
元々地元にあるプロサッカーチームのファンで、そこの選手としてのプレーを夢見て下部組織に入っていた。しかし中学3年の進級時にコーチから「お前のサッカーにはセンスを感じない」と告げられ、夢を諦める。
その後、勉強に励んで修学院高校に進学したが、サッカーを失ったことで目標がなくなる。そんな時、新入生歓迎会での演劇部の出し物に感動し、男子部員は他にいなかったが演劇部に入部。当初、演技は下手で声も小さかったが、猛練習の末に上達。周りの部員からも努力を認められ、入部半年ほどで公演の主役を演じることになる。演劇部の女子からも「瞬くん」と慕われている。

演劇部の公演を控えた矢先、サッカー部の試合で人数が足りないからと、サッカー経験を聞きつけたソラにサッカーの練習試合の助っ人を依頼される。
演劇部の出し物の準備をサッカー部が手伝うことを条件に、野村はサッカー部の試合に出ることになる。演劇部の部長・小田 麻綾(おだ まあや)は野村に「サッカーをしたら、またサッカー部に入りたくなるんじゃない?」と心配も含めた質問をした。野村はコーチから「センスを感じない」と言われサッカーをやめた中学時代の過去を明かし「サッカーに未練はない。サッカー部に入ることはない」と語った。

演劇部の公演はサッカー部の手伝いの甲斐もあり、大成功に終わる。翌日はサッカー部の練習試合で、野村は助っ人として熱心にプレーしていた。演劇部では見せない笑顔を見せ、一生懸命にプレーをし続ける姿を、見に来ていた小田をはじめとする演劇部員からまだサッカーへの未練があることを見抜かれる。

それを知った演劇部員は、一芝居を打つことにした。小田は野村を呼び出し「この前の演劇部の公演で、野村くんの演技が下手でがっかりだった」という声をお客さんから届いたと話す。謝る野村に小田は「野村くんの演技にはセンスを感じない、演劇部を辞めて」と言い放つ。野村は素直に受け入れ、その場を去った。
しかしその場面をソラに見られており、小田は「今後も野村くんをサッカーに誘ってくれる?」とソラにお願いする。小田達はソラに「野村くんはまだサッカーに未練がある。それを自分で気づかないふりをしているだけ。演劇ではその穴を埋められない」と言った。
野村は小田とソラのこの会話を立ち聞きしたことでサッカーへの未練を自覚し、演劇部員たちに感謝の意を述べて演劇部を退部。そしてサッカー部に入部した。

真壁 慎一郎(まかべ しんいちろう)

ソラに対して敵意を持っている真壁 慎一郎(まかべ しんいちろう)。

第8話の主人公。ソラより2学年上で、中学も同じだった。ポジションはFW。長身。
当たりに弱くヘディングも苦手。その一方、足技は努力を重ねた結果そこそこの技術を持つ。

幼少時からサッカーをしており、中学でもサッカー部に入部。キックを中心に練習を重ねていた。3年生になりようやくレギュラーを掴むと思った矢先、新入生のソラにスタメンを奪われる。さらに途中交代で真壁が試合に入った後も「パス!パス!」とソラに声をかけたが、一切パスされなかった。このことから「俺は必要ないんだ」と劣等感を感じ、ソラに対して恨みを持ちながら自分に失望する。意気消沈し、サッカー部を退部した。
しかし、過去のことに嫌気がさしていたもののサッカーへの熱が冷めたわけではなかったため、進学先の修学院高校でサッカー同好会を設立。キャプテンとなって会を盛り上げ、気軽にサッカーができる場所を作っていた。
特に自ら会に勧誘した白鳥とは親友ともいえる関係を築いていた。その後、修学院に入学し再び後輩となったソラを過去のことから目の敵にし、ソラの目の前でサッカー部勧誘のビラを破いた。

ある時、予備校に通うために白鳥がサッカー同好会を辞めることになる。白鳥と最後の試合に臨むが、試合途中でメンバーが足を捻り後半は10人で試合に臨むアクシデントに見舞われる。白鳥の最後の試合で勝ちたい真壁は、過去の因縁を押し殺しソラを助っ人として呼ぶ。ソラも当初は「ビラを目前で破って、俺のこと嫌いなのに?」と思っていたが、真壁の「白鳥を勝たせたい!」という純粋な気持ちに打たれ試合に参加する。
試合の最後、ソラと白鳥のアシストを受けて足技からのゴールで勝利を収める。
その時、真壁はソラにスタメンを奪われ、試合中もパスをもらえなかった時代を思い出していた。当時、試合を終えた後もソラは河原で練習していた。その姿を見て、真壁は「自分はあそこまで努力できない」と悟った。同時に自分の努力不足を認められず、ソラを逆恨みするような形で今まで生きていた。
自分こそ独りよがりで、チームのためにならないプレイばかりしていたと反省する。試合後、白鳥の勧めでサッカー同好会員数人と共にソラと同じサッカー部に加入した。

紺野 兼続(こんの かねつぐ)

猫のような目が特徴的な紺野 兼続(こんの かねつぐ)。

第9話の主人公。ソラの同級生。ポジションはDFのセンターバックで、チームの柱。部での背番号は2。
かなりの歴史マニアであり、サッカーの歴史にも詳しい。名前は直江兼続に由来している。作中でも度々自身のことを「愛の戦士」と名乗ることがある。

強豪・美奈川高校(みながわこうこう)との練習試合を半月前に控えたころから、「陽キャでギャルで学校にもあまり来ない遊び人」と認識していたクラスメイトの関 由香里(せき ゆかり)に、突然話しかけられる。
その内容はオフサイドの定義についてだった。関は分かるまで紺野に聞き続け、サッカー部の練習にまで見にくる。関は「オフサイドが分かるまでサッカー部の練習を観に来る」と宣言。関に振り回されるも、紺野が「どうしてそんなにオフサイドを知りたがるんだ」と聞くと関は「うるさい」と言って目の前に姿を現さなくなる。

その後、中学時代、関と同級生だった部員から彼女の家庭事情を聞かされる。関の父は碌でもない男で、酒癖が悪く家のお金も使い込んでいた。そのため関も中学時代は不良になり、ぐれていた。そのうちに両親が離婚、更生した関自身もアルバイトで家計を助けている。さらには母が最近、再婚し再婚相手と同居もしている。そのことを聞き、紺野は関の心へずけずけ入り込んでしまったことを反省した。

関に謝れないまま、美奈川高校との練習試合が始まった。紺野は長時間の走り込みにより、すでに疲労困憊であった。そんな時、紺野に内緒で応援に来ていた関は「もっと頑張れー!」と紺野を励ます。応援を聞いた紺野は「うるさいな」と思いながらも肩の力が抜け、試合を続行出来た。紺野は試合終盤、オフサイドトラップを試みるが審判は「オンサイドだった」と認めずに失敗。相手の得点を許し、敗北した。
帰り道、関は「あれ絶対オフサイドだったよ!」と紺野を励ます。紺野は「オフサイドの判定は難しいから、仕方ないよ」と納得していた。そこで関は、どうしてそこまでオフサイドの定義を問い続けるのかを紺野に話し出す。
関の母の再婚相手は、生真面目でとにかく働き者だ。唯一の趣味がサッカー観戦のため、共通の話題が欲しくて関はサッカーの勉強をしていた。ある時、関が再婚相手とサッカーを見ながら「あれってオフサイドだよね?」と言ったところ、再婚相手は「すごいな由香里、よく知ってるな」と褒められた。関は初めて「父親」という存在から褒められたことが嬉しく、オフサイドについてもっと詳しくなりたいと、紺野につきまとっていたのだ。
そして関は「今度父さんをサッカーの試合に誘おうと思ってるんだけど、何がいいかな?」と紺野に問う。それを聞いた紺野は、「冬に行われる高校サッカーの全国選手権、俺もそれに出てみせるから、親父さんと見に来いよ」と宣言した。

加瀬 博樹(かせ ひろき)/演:楡木直也)

2回受験に失敗した過去を持つ加瀬 博樹(かせ ひろき)。

第10話の主人公。ソラより1学年上だが浪人をしたため、年齢は真壁と同じ。ポジションはDFのサイドバックで、チームメイトからも信頼を置かれている。部での背番号は5。愛称は苗字とがり勉だったことにちなんだ「ハカセ」。サッカーのプレイ中以外は眼鏡をしている。

幼少時、医師の叔父に命に関わる病気から救ってもらったことから医者に憧れ、叔父が働く大学への入学を目標にする。
そのため大学付属の難関高校への入学を目指して受験勉強に励むも、2度も受験に失敗。これ以上の浪人は出来ないと修学院高校へ入学するが、修学院から希望している大学への進学が非常に難しいことから医者になる夢を諦める。入学して1年が過ぎたとき、ソラの熱意ある勧誘に惹かれサッカー部に入部。未経験だったが直ぐにのめり込み、「新しい生き甲斐」と思えるまでになる。そして「いつか試合でゴールを決める」という新しい目標を立てていた。

ある時、強豪校・桐海高校(とうかいこうこう)との試合で自身のミスにより2失点を喫する。勝利は見込めないと落ち込む加瀬に、ソラは「まだいける!自分が諦めたらそこで終わりなんだぞ!」と加瀬を鼓舞する。またソラが試合直前語った「今いる場所がどこであっても目指す場所は変わらない、努力し続けて俺はプロになる」という言葉から加瀬は「理想に辿り着けるのは、理想の道筋を辿ってばかりの人間じゃない」と気付かされる。
試合終盤に野村のフリーキックを足で合わせ、得点を決め引き分けに持ち込んだ。試合後「ゴールを決める」目標を果たした事もあって、加瀬は「医者になる夢」を果たすためサッカー部を退部する。ソラを始めとする部員から惜しまれつつも、喜んで送り出された。

数年後、夢を叶え医師となり、叔父から「自分の片腕」と信頼を置かれるまでになる。学会などの「大事な物事」の前には、仁菜が作成した加瀬のサッカープレー動画を見て、自信をつけている。

吉岡 航(よしおか わたる)

小遣い目当てで祖父の家に通う吉岡 航(よしおか わたる)。

第19話の主人公。入学2日目に肺炎になってしまい、復学したころにはクラスのグループが固まっていた。そのため友人がおらず、休み時間は寝たふりをして過ごすという悲しい毎日を送っている。自宅のすぐ近くに住む祖父が茶道教室を営んでおり、参加するたびに「これいつものな」と祖父が小遣いの500円をくれるのため、それ目当てに足繁く通っている。

友達が作れずに暇を持て余していたある日、校庭の土慣らしをしているソラを見かける。ソラのことは以前から「校門で熱心にサッカーのビラを配っているやつ」と認識しており、吉岡は「土慣らし大変そうだね、手伝おうか」とソラに声をかける。そこから「サッカー部に興味があるフリ」をしてソラと仲良くなり、実際にサッカー部にも入部し友人を確保した。
そのうちにサッカーの楽しさに目覚めるものの、プロを目指す志の高いソラに対して「自分は友達を作りにきた、上辺だけの人間」と劣等感を覚えてしまい徐々に疎遠になっていく。
そんな中、クラスメイトからボーリングに誘われて友達作りのチャンスを得た直後、祖父が倒れたことを知らされる。ボーリングに行けば友達が出来るかもしれないという苦悩の末に「じいちゃんを見捨てるだけの奴にはなりたくない!」とボーリングを蹴って祖父に会いにいく。

祖父は単なるぎっくり腰だったため大事には至らなかった。祖父はお見舞いに来てくれたことに喜んで、いつもの500円を渡そうとした。しかし吉岡は「本当は俺、お小遣い目立てで茶道に行ってるし、学校に友達いないからサッカー部に入っただけだし…上辺だけの自分が嫌なんだ」と弱音を吐く。祖父は「上部で何が悪い。上辺から入って本気になればいい。実際に航はお見舞いに来てくれた。お小遣い目当てで会っていたとしても、最後に心があればいいんだよ」と助言する。これにより吉岡は「最初は上辺だけでもいい」と考えを改め、再びサッカー部に戻った。

椎名 千聖(しいな ちさと)

自分にはある程度の実力があると、周りを見下している椎名 千聖(しいな ちさと)。

第24話の主人公。ソラの1学年下で、中学時代は全国常連の強豪・央南中(おうなんちゅう)に在籍していた。
抜群のドリブルテクニックを持つ一方、ボールを持っていない時は「ボールを持っていない時に走っているのは出来ないやつ」と思っているため努力を怠っている。「勉強も運動もちょっとやるだけで出来る」という実力から他人を見下しており、中学時代もワンマンプレーを続けた末、周囲から「椎名とはサッカーしたくない」と言われているのを聞き、「俺も下手な奴とサッカーしたくねぇよ」と怒り退部している。

修学院では特にサッカーが下手な越川のことを、越川が椎名に対し敬意をもって接してくるのと対照的に激しく貶していた。その様子を見ていたソラは、「独りよがりなドリブルばかりしていた自分のようだ」と過去の自分と重ね、椎名に「もっと周りを見て、ボールを持っていない時の練習をしろ。サッカーはチームプレーをなんだ」とアドバイスする。しかし椎名は「うるせぇよ!走るなんてことはボールが取れない下手くそがやることだ!」と逆ギレした。そんな2人を宥めていた越川に対しても「お前もヘタクソなくせに!」と八つ当たりし、チームを出ていく。

その後、椎名を追いかけてきた越川は「お前がいればチームは勝てる、だから戻って欲しい」と椎名に懇願する。椎名はその言葉でチームには戻るものの、独りよがりなプレーは続いていた。
インターハイの県予選の決勝当日、前半は相手チームの青琳舘高校(せいりんかんこうこう)に1点を取られる。椎名はいつも通りドリブルで抜こうとするが、相手選手に毎回阻止される。自分の思った通りに点を決めれず、ヤキモキしている椎名にソラは「越川のプレーを見て勉強しろ」と助言する。椎名は勝ちたいがために、言われた通りに後半は越川に注目する。越川は近くのチームメイトにパスを出す、危ない時は前に大きく蹴り出すだけの安パイなプレーをしていた。「やっぱり下手くそなプレーじゃねぇか」と越川を見下す椎名。
椎名は変わらずドリブルで相手選手を抜こうとするが、相手選手も椎名をマークし何度も阻止する。しかし椎名が相手選手にボールを何度奪われようと、越川がカットをしてボールを相手選手から奪い返す。越川がどうしてそんなことが出来るのか。それはボールを持っていない時越川は、誰よりも走りマークについたりカバーをしているから。越川は下手な分、ボールを持っていない時にチームメイトをサポートし続けていた。
そのことに気づいた椎名はチームメイトを頼る、という選択を始めてする。ドリブルをしながらソラにパスを出し、ソラがマークされボールを受け取れない時は越川に頼った。最後は「越川!お前がゴール決めろ!」と体を張って相手選手を止めて、越川のゴールをアシストした。

結果、試合は負けてしまったが椎名は越川の姿勢を尊敬し、越川と同じように頭を丸めてサッカー部に残り続けた。

その他の生徒

水野 由花(みずの ゆか)

先輩に振られる水野 由花(みずの ゆか)。

第5話の主人公。ソラの高校1年時のクラスメイトで、席も隣同士で帰り道も同じだったためによく一緒に帰っていた。
高校1年の秋、同じ高校の先輩に告白するも振られてしまう。さらには合唱コンクールのクラスの発表曲が振られた相手の好きな曲に決まり、ますます心苦しくなる。「振られた人が好きだった歌なんて歌いたくない」という思いで指揮者になる。
しかし、そんな気持ちで指揮者を選んだため、あまりにも練習に身が入らずソラに「もうちょっとしっかりした方がいい」と怒られる。
また好きな人が好きだったからと、何回も曲を聞いてきた水野が難しいパートをソロで歌うことになる。予測しなかった展開に不満を抱きつつも、ソラに掛けられた「先輩に振られた悲しい思い出は、みんなと歌ったという良い思い出で上書きすればいい」という言葉に胸を打たれる。更に「プロを目指している」と言っていたソラが、サッカー部で頑張る姿を見て「私も頑張ろう」と指揮者としての練習に身が入り始めた矢先、親の都合でコンクール後に転校することが決まってしまう。

迎えたコンクール当日、全力を出し切り、コンクールは受賞こそならなかったものの喝采を浴びて成功に終わった。
転校時は家の前に多くのクラスメイトが集まり、「遠くに行っても元気でね」と花束を渡される。ソラに「みんなで歌って、あの歌を聞いても悲しい気持ちにならなくなったか?」と聞かれた際には「もう何も思わなくなったよ」と笑顔で答えた。

数年後、大人になった水野はソラのプロ入り後の活躍を見て「本当に夢叶えるなんてやるじゃん」と笑っている。

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