1/11 じゅういちぶんのいち(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『1/11 じゅういちぶんのいち』とは、中村尚儁による日本の青年向けサッカー漫画。第一部は『ジャンプSQ.19』(集英社)で連載された。とある出来事から主人公・安藤ソラは大好きだったサッカーから遠ざかっていた。そんな時、小さい頃の友人でプロのサッカー選手であるツヨシこと若宮四季と再会し、サッカーの楽しさを思い出す。しかし、ツヨシは突然この世を去ってしまう。ソラはそんなツヨシの遺志を継ぎ、プロサッカー選手を目指す。その過程で、ソラの熱意に心を動かされ成長する人々も描いた感動のサッカー物語。

『1/11』3巻に収録。週刊ヤングジャンプ増刊『アオハル"bitter"』掲載。『1/11』の連載中に描き上げた作品。

絶賛登校拒否中の少年に、バーチャルリアリティーのロールプレイングゲームのモニター依頼が来る。少年は承諾し、ゲームの世界と現実世界を行き来しながらゲームを進めていく。
ゲームはありがちなRPGで、モンスターを倒せばレベルが上がりラスボスを倒して世界平和をゴールとしているものだった。少年は着々とレベルを上げ、ついにゲーム世界で王に認められ、姫を守るように命令される。
ラスボス戦まで姫と心安らかな時を過ごし、いざラスボス戦という直前に姫から「ラスボスを倒してしまうと、このゲームも終わってしまうんですよ」と言われる。少年は「ゲームの世界だけど、姫を守りたいと思ったのは本当です」と答えてラスボスを迎え撃った。

ゲームの世界に平和が訪れ、また引きこもりの毎日に戻る少年。そこに担任が訪ねてくる。担任を拒否する少年に、担任は「今日はお前に会いたいって言ってるクラスメイトを連れてきた。その子もずっと引きこもりだったんだけど、お前に会いたいからって来たんだぞ」と説明する。そのクラスメイトとは、ゲームの世界で会っていた姫だった。
姫役をしていたクラスメイトも引きこもりで、またバーチャルリアリティーのロールプレイングゲームのモニター依頼が来たために彼女もゲームの世界に参加していたのだった。ゲームの世界で少年の素直な気持ちに触れ、外に出る勇気をもらった彼女は現実でも少年に会いたいと思ってやってきたのだった。

ストライカーは走れない

『1/11』4巻に収録。中村の処女作でデビュー作、月例賞を受賞した。『月刊少年ジャンプ』2006年6月号掲載。

主人公の真田はサッカーが好きで懸命に取り組んでいたが、喘息持ちだったことからコーチに「使い物にならん!」と侮辱され、傷ついた真田はサッカーをやめる。喘息の療養のため、田舎の高校へ転校した先で、サッカー部のマネージャーである長宗 夏葵(ながむね なつき)からサッカーに誘われる。
当初は喘息のことからサッカーも断っていたが、長宗の真っ直ぐなサッカー愛に心打たれる。
そんな中、とある試合中にチームメイトが怪我で出場出来なくなる。どうしても試合を続けたい長宗の気持ちに打たれ、真田は助っ人として一度だけ練習試合に出ることになる。喘息に苦しみながらも、真田は必死にプレーをし勝利を収める。長宗は「真田はうちのチームに必要な選手だよ!」と真田に感謝し、真田もその一言で過去のトラウマから救われた。

作者の中村も喘息を持っており、喘息を活かして漫画を描きたいという思いを抱いていた。構想から数年後、専門学校在学中に半年かけて漫画として描き上げた。
初めて描いた漫画だったが、『月刊少年ジャンプ』の編集者に評価されたことにより、漫画家としての一歩を踏み出した中村にとって大きな自信になった。

メッセージ

『1/11』6巻収録。月例賞受賞作品。『月刊少年ジャンプ』2006年9月掲載。

口下手ではあるがプレーはうまい少年・桑折 優人(こおり ゆうと)と、意欲的ではあるがプレーが下手な穂尾 真奈(ほのお まな)がジュニアサッカークラブでレギュラーを目指すサッカー漫画。
意思表示が下手な桑折はプレーがうまいものの、チームメイトとうまく連携が取れずにいた。穂尾もまた、サッカーをしたい気持ちはあるもののプレーは下手で周りから煙たがられていた。そんな2人だったために、クラブでの試合後も残って練習を重ね切磋琢磨しあっていた。
とある試合前日、穂尾が謝ってチームメイトを怪我させてしまう。その責任として監督から穂尾は試合出場停止を言い渡され、落ち込んだ末にサッカーを辞めようとする穂尾。そこで桑折は勇気を出し、監督に「穂尾と2人で試合に出させてください。結果を残せなかったらクラブを辞めます」と宣言。監督の許しからサッカーに出場出来た2人は、今までの練習の成果を発揮し息の合ったプレーを見せる。
その空気に周りも「パスを2人に回そう」と思い始め、チームメイトの信頼も重なり試合も好調に進んでいく。最後は桑折がゴールを決め、勝利を収めた。
プレーを通し、チームメイトにも2人の間にも「勝ちたい」とメッセージを伝えあったことで勝てたとその場にいた全員が感じていた。

中村が『ストライカー』を描き上げた2か月後に、約1か月半をかけて完成させた作品。少年少女が心を通じ合わせ、サッカーに興じる姿は『1/11』の四季の話の元になっている。

やまととなでしこ

『1/11』8巻に収録。『ジャンプSQセカンド』2009年8月号掲載。

男子高校生・真蔵 大和(まくらやまと)はある時、幼馴染の少女・佐藤 なでしこ(さとう なでしこ)の父に怪我を負わせてしまう。実際には大和のせいではなかったとはいえ、プロのサッカー選手だった父の生命を絶ったことから佐藤は大和に強く当たる。大和もまた罪悪感から佐藤の言うことを全て聞いていると佐藤は思っていた。
そんな時、大和が過去にサッカーをしていたことから、サッカー部の試合の助っ人をお願いされる。佐藤は当初「父の選手生命を経っておいて、自分だけサッカーするのは許せない」と大和に断るよう命令する。大和は佐藤の言う通りに断るが、佐藤は父からとある真実を聞く。
大和が佐藤の言うことを聞くのは罪悪感からではなく、父が「なでしこの味方でいてやってくれ」とお願いしたからだった。父が怪我を負った事故は、大和のせいではないと心のどこかで分かっていた佐藤は「どうして身勝手に責める私に対して怒らず、言うことを全部聞いてくれたの?」と大和へ聞く。大和は「サッカーを教えてくれた父と佐藤への恩返し」と答える。
それを聞いた佐藤はどこまでも自分を思ってくれる大和に対し「サッカーの試合にも出て、パパよりも有名で偉大なサッカー選手になって」と命令するのだった。

中村は『やまとなでしこ』の連載を目指したが、「ツンデレキャラのなでしこが全くデレていない」ことから評判も悪く、連載には至らなかった。
単行本収録版には、雑誌掲載時にはなかった「バタフライ・エフェクト」というテーマが追加されている。

『1/11 じゅういちぶんのいち』の主題歌・挿入歌

実写映画版

主題歌 :上野優華「Dear my hero」

「Dear my hero」Short ver.

上野 優華による『1/11 じゅういちぶんのいち』の実写映画主題歌。

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