かみあり(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『かみあり』とは2007年から不定期に連載された後、2009年より隔月化されて2019年まで『月刊ComicREX』にて染屋カイコが連載していた神道コメディ漫画。コミックス全9巻完結。島根県の出雲が舞台。八百万の神々が一同に集まる神在月の季節に、関西から出雲に引っ越してきた中学生・千林幸子が日本や海外の神々や悪魔たち、そしてゲームやアニメを基にした流行り神たちと遭遇し、交流する様をコミカルに描く。タイトルの『かみあり』は出雲地方の10月を指す「神在月」からとったもの。

『かみあり』の概要

『かみあり』とは2007年から不定期に連載された後、2009年より隔月化されて2019年まで『月刊ComicREX』にて染屋カイコが連載していた神道コメディ漫画。コミックス全9巻完結。島根県の出雲が舞台。出雲において10月は国中の神々が縁結びや交流等の目的で一斉に集まるので「神在月(かみありつき)」と呼ばれる。タイトルの『かみあり』は「神在月」からとられている。
関西出身の中学生・千林幸子(せんばやしさちこ)はある日、学校の窓から巨大な魚のような幻が見え驚くが、親友である生粋の出雲っ子・岡家絵美(おかやえみ)に「あれは神様。今日から神在月だからたくさんの神様たちが集まる」と説明される。そして百聞は一見に如かずとのことで幸子と絵美が町中に繰り出すところから物語ははじまる。日本だけではなく外国の神々や悪魔、ゲームやアニメを基にした流行り神なるものも登場する。基本1話につき1つのストーリーとなっている。第1話から最終話まで様々なストーリーがあるが、「神在月」の約1か月間のみを描いたものである。

『かみあり』のあらすじ・ストーリー

神在月の出雲

島根県の出雲にあるとある中学校。関西出身で県外から島根県に転校してきた中学2年生の千林幸子(せんばやし さちこ)は、窓から空を見上げていた。すると魚が空を泳いでいるのを目撃する。幻が見えるようになったのか、頭がおかしくなったのではないか、と幸子は困惑した。すると岡家絵美(おかや えみ)も幸子と同じように空を見上げ、「神サマを見ていたのか」と言う。絵美は未だ困惑する幸子に、島根県では、10月を「神在月(かみありつき)」と呼ぶことを説明する。

一般的には10月のことを「神無月(かんなづき)」と言う。しかしこと島根県の出雲においてはそうではない。出雲は10月になると全国から八百万の神々が集まり一斉に集まる。そうすると各地方では”神がいない月”になるため「神無月」と呼ぶのだが、島根県にだけは”神がいる月”なので「神在月」というのだ。

説明するよりも見たほうが早いと、絵美は幸子と共に学校の外へ出る。すると絵美の言う通り、そこかしこに神々がいた。しかし明らかに日本の神様ではなさそうな見た目のものもいる。幸子がそれを指摘すると、絵美は「昔は外国から神々が入ってくる時は日本の宗教や文化と融合したり、折り合いをつけて入ってきたけれど、今はゲームやアニメの影響でダイレクトにはいってきちゃうんだよ」と説明した。人間に良い者と悪い者がいるように、神々にも良い者と悪い者がいる。絵美は「触らぬ神に祟りなし」と言って、幸子に神々と関わらないようにと注意する。

しかし幸子は神様に対して畏怖の感情を持ち合わせておらず、物怖じもしない。そのせいで異国からきた精霊の火蜥蜴(ひとかげ)のリグドラの怒りを早々に買うことになった。しかしリグドラにイジメられていた西方を司る神獣・白虎(びゃっこ)の手を借りて、リグドラを打ち負かすことに成功する。そして幸子と絵美は、リグドラの世話をしていた沖縄の火の神であり竈(かまど)を守護するヒヌカンという神から火の加護をもらうのだった。

それからというもの幸子は様々な神々に出会う。すぐに突張してしまいトラブルに巻き込まれる幸子を、絵美は心配しつつ、呆れつつ、時に一緒に巻き込まれて見守るのだった。

臨時神在対策課

ある朝、幸子が登校すると教室内がざわついていた。絵美の様子がいつもと違うのだ。しとやかな雰囲気を纏い、クラスメイトに対して敬語を使う。幸子やクラスメイトは、絵美に何か憑いているのではないか、本当に絵美なのかと困惑する。

そこへ本物の絵美が教室に飛び込んできた。二人の絵美に教室は騒然とする。そこに白虎と賀茂光栄(かもの みつよし)という少年が現れて、様子がおかしかった偽物の絵美を捕まえようとする。光栄は、流行り神という一過性の流行で信仰される神の総括や、外国の神々が問題を起こした時に対処する臨時神在対策課の人間だった。「神在期間中の人間に対する過剰な干渉行為は条例により禁止されている」という決まりに従い、絵美の姿を借りている神様を取締に来たのだ。

絵美に化けていた神様はソロモン72柱の魔人であり悪魔であるアガレス大公爵と、同じくソロモン72柱の魔人であるヴァッサーゴだった。アガレス達は光栄達に連れて行かれて、事態は収束する。

後日、幸子と絵美はアガレスの一件の調書を取るために臨時神在対策課にやってきた。幸子達はそこで臨時神在対策課の長である安倍晴明(あべの せいめい)と出会う。次々に顕現する神々、そしてその神々の起こす問題で臨時神在対策課の仕事は常に山積み状態。晴明が仕事が嫌で逃亡しようとし、漫画から顕現した流行り神・カノンとぶつかったりと騒ぎを起こしたため、結局調書を取るのは翌週に持ち越されるのだった。

神々とのトラブル続きの日々

幸子は様々な神々と出会い、相変わらずトラブルに巻き込まれる日々を送っていた。そのおかげで幸子が晴明の新しい弟子ではないか、という噂が神々の間で流れる。その噂を信じて助けてもらおうと、隻眼の男神の大眼(だいまなこ)が幸子に接触するという悪循環が起こっていた。その時は何事もなく、むしろ幸子は大眼からも加護をもらうという良い結果に終わった。しかし晴明は一般人である「神様ホイホイ」の異名を持つに至った幸子を守るため、神々とのトラブルに巻き込まれた時に鳴らすようにと、お手製の防犯ブザーを幸子に渡のだった。

それからも幸子はたくさんの神々に出会い、絵美と共に不可思議な体験をする。ある時なんかは人と神々の境界に迷い込んだりもした。幸子と絵美は境界の中をまるで旅行にでも来たかのように楽しんだが、境界はうまく越えられなければ死に至る危険があるのだと、迎えに来てくれた晴明と櫛磐窓命(くしいわまどのみこと)という神に言われてしまう。以前加護を授けてくれたヒヌカンが境界の神でもあったため事なきを得たが、以後気をつけるようにと釘を刺されてしまう。

しかしそれと同時に晴明は幸子達人間が多くの境界を越えたことに感慨深く思っていた。そんな晴明に櫛磐窓命は、人と神々との在り方が昔は狭く深かったものが浅く広くなっているのではないかと指摘する。そして「変わらないものはなく、そして良いだけでもなく悪いだけのこともない。どんな変化が起ころうとも、神々は人のこころそのものであり、人が営むかぎり神々が消えることはないだろう」と語るのだった。

ジャック・オ・ランタン騒動

通り魔事件

幸子達の学校の女性生徒が、ハロウィンの魔人・ジャック・オ・ランタンの恰好をした暴漢に襲われるという事件が発生した。襲われた生徒に怪我はなかったものの、生命力を吸い取られて酷い貧血状態で見つかる。学校側は犯人が見つかっておらず危険なので、学校の時間短縮を行い、一人で下校しないように注意喚起した。

幸子と絵美は下校中、以前出会ったおっぱい観音、正式名称・間々観音(ままかんのん)に遭遇する。物騒なため神々もそれぞれパトロールしていたのだ。間々観音は幸子達を家まで送っていくことにする。しかしその途中でジャック・オ・ランタンに襲われる女性の悲鳴が聞こえた。幸子達は悲鳴のほうへ慌てて向かう。

向かった先では今まさに女性が襲われている最中だった。幸子達は女性を助けようとする。カボチャの提灯が作る壁に阻まれて先へ進めなくなってしまったが、ヒヌカンと大眼の強い加護がある幸子は壁をすり抜けることに成功。ジャック・オ・ランタンの頭をカバンで思い切り殴り飛ばす。しかしその一撃で倒すことができず、今度は幸子が拘束されてピンチに陥った。

そんな幸子を助けてくれたのはジャック・オ・ランタンに襲われていたはずの女性。女性は人が変わったように力を発揮し、ジャック・オ・ランタンを倒した。女性の正体は女装した日本武尊(やまとたけるのみこと)であり、ジャック・オ・ランタンを捕まえるためのおとり捜査中だったのだ。

ハロウィン当日

ハロウィンの当日、10月31日がやってくる。この日、臨時神在対策課は大忙しだった。神在月でただでさえ場が活性化しているのに加え、ハロウィンが日本にきたことによりあの世とこの世の門が開いて、そこから悪魔だけでなく、妖精やら魔獣やらがたくさんやってくるからだ。晴明と光栄だけでは業務が追いつかず、対策課に協力的な神々がそれぞれ身近な場所を監視することになった。

一方幸子と絵美は下校中に「トリックオアトリート」と言ってお菓子をねだってきた子供姿をした3人の魔人から忠告を受けていた。お菓子のお礼にと、魔人達はジャック・オ・ランタン達が幸子と絵美を狙っていることを教えてくれたのだ。幸子と絵美は手持ちのお菓子がなくならないようにスーパーで補充し、警戒しながら下校する。しかし途中で大量のジャック・オ・ランタンに道を阻まれてしまった。そこにジャック・オ・ランタンの魔人がたくさん現れて、幸子達に「トリックオアトリート」と声をかける。現れたジャック・オ・ランタンは、先日、日本武尊にコテンパンにやられたやつだった。やられたことを逆恨みしており、幸子達に復讐しようと現れたのだ。

幸子達はジャック・オ・ランタンにお菓子を無理やり渡して帰らせようとしたが、ジャック・オ・ランタンは構わず幸子達に襲いかかってくる。幸子と絵美、そしてその場に居合わせた幸子の学校の高等部に通う巴智宗一郎(はち そういちろう)は、その場から必死に逃げた。しかし途中で絵美がジャック・オ・ランタンに捕まってしまう。幸子と宗一郎がそのまま逃げ続けていると、突然異国風の装束に身を包んだ3人のジャック・オ・ランタンが現れた。そして3人は幸子と宗一郎にとある術をかけ、姿を消した。

幸子と宗一郎が術をかけられたのと同時に、幸子に加護を与えているヒヌカンと大眼、宗一郎の先祖で氏神でもある小子部連栖軽(ちいさこべのむらじすがる)が異変に気がついた。すると臨時神在対策課にリグドラの妹・エルドラと、その仲間のステンがやってきた。エルドラ達は幸子が置かれている危機的状況について晴明達に説明する。そしてエルドラの仲間であるドンナー・マルドル・ロプトが幸子と宗一郎をジャック・オ・ランタンから守るために、2人の魂を交換する術をかけたことを伝えた。

幸子と宗一郎は、ドンナー達にかけられた術のおかげで「人」の気を持たなくなったため、ジャック・オ・ランタンから隠れることができていた。気取られることがなくなっただけで、目視で確認されると見つかってしまう危険はある。幸子と宗一郎は、連れ去られた絵美を助けるために、実家が神社である宗一郎の家にある栖軽の神器を用いて絵美を助けるという計画を立てる。

一方、臨時神在対策課ではそんな幸子と宗一郎の動きを予測し、2人を手助けするために動き出そうとしていた。そこへ一本の連絡が入る。ジャック・オ・ランタン達の騒動が起きている傍ら、とある檀家の娘が出産に臨んでいた。しかしその出産が難産だった上に、騒動のせいで場が乱れ不安定になり、妊婦の容態が悪化。これに母神たる鬼子母神・間々観音・パールヴァティが怒り心頭だという。これ以上妊婦の容態を悪化させないためにも、神々は神力を使わず騒動鎮圧をする方針に変えた。

街にいるジャック・オ・ランタン達を倒しながら、神々は総出で幸子と宗一郎を探す。そしてついに2人を見つけ出した。しかし幸子と宗一郎はジャック・オ・ランタンの襲撃で気を失っている状態にあった。現場に天使や悪魔、ジャック・オ・ランタンなど、さまざまな神々が集まってきて混沌としていく。無尽蔵に湧いて出るジャック・オ・ランタンに、気を失った幸子と宗一郎を守る神々は手を焼いていた。

すると突然上空から眩しい光が降り注ぎ、ガブリエルの鐘の音が鳴り響く。光と鐘の音は子供が無事に産まれたことの知らせだった。出産が終われば神力が使えると喜んだのも束の間、ガブリエルは顔を青くして「総員ただちに退避せよ!!」と叫んだ。空は黒く染まっていき、町を踏みつぶしてしまうほどの巨大な1柱の女神が現れる。それはパールヴァティの殺戮に特化した憤怒相であるカーリーの姿だった。カーリーの核は、子供を害されたことで湧き出た怒り。そしてその姿はあらゆる母たる存在の怒りを飲み込み生まれた集合体なのだ。

カーリーは、ジャック・オ・ランタン達を次々に飲み込んで殲滅していく。それを見た西洋の天使ミカルは、「あんなものをお前たちの国は内包しているのか……」と唖然とした。それに対して、日本の神・七福神の一人・弁財天(べんざいてん)は、「どんな国にだっているもんよ。あれは信仰心じゃないもの」と言った。「母親は信仰心で子供を大事にしているわけでない。どこにだって存在するものであり、たまたま受け皿として神がいたから形となって降誕しただけだ」と付け加えた。

こうして怒り狂ったカーリーにより、ジャック・オ・ランタンが引き起こした一連の騒動は幕を閉じた。

4人の幸子探し

ジャック・オ・ランタンの騒動から一夜明け、絵美が目を覚ますとそこには幼い少女に姿を変えた幸子がいた。それに驚いていると、もう2人の小さな幸子を連れた白虎達が絵美の家にやってくる。ハロウィンの騒動で幸子は魂を交換されたり、いろいろとされたので魂が割れてしまったのだという。一霊四魂(いちれいしこん)に則って、幸子の魂は4つに分裂してしまったのだ。この幼い幸子はその分裂してしまった幸子の魂である。3人の幸子は見つかったが、残り1人の幸子が見当たらない。絵美達は最後の幸子を探しに出かけた。

その頃幸子はジャック・オ・ランタンの残党に襲われていた。そこへ通りかかった死の貴婦人・カトリーナが幸子を助け、泣いている幼い幸子にチョコレートをプレゼントする。幸子を死者の魂と勘違いしたカトリーナは、幸子の手を引き死者のパレードに参加していた。パレードの中にいる幸子を見つけた絵美達は、最後の幸子を無事に保護する。カトリーナはパレードの中心にいる巨大な骸骨の手のひらの上で、「私は死。死のカトリーナ。金持ちも貧乏人も死ねばみんな骸骨!すべて平等たるもの!」と高らかに言い放ち去っていった。4つの魂が揃った幸子は、無事に元の姿に戻ることができたのだった。

神在月最後の日

幸子が下校中に空を見上げると、紙垂(しで/神社などで見かける、しめ縄などにつけて垂らす特殊な絶ち方断ち方をしておった紙のこと)が空中に飾られていた。それを見てあんなものがあっただろうかと幸子は首を傾げる。絵美は幸子に紙垂の役目や出雲大社の「神迎神事(かみむかえしんじ)」などについて説明した。「神迎神事」は出雲に全国の神々を迎える儀式のようなものだ。

幸子達は10月、神在月に入ってから数多くの神々に遭遇し、トラブルに巻き込まれてきたが、それがまだほんの序の口だったことを知る。この「神迎神事」で本格的に神々を迎え、翌日に「神在祭」と呼ばれる神々の祭りがあるのだ。暦の上ではハロウィンも終わり11月に突入しているが、旧暦と新暦混じり合っているため、暦上から少し日付がズレているとのことだった。臨時神在対策課を訪れた幸子と絵美は、晴明に明日から出雲はもっと神々で溢れかえるからよくよく注意をするようにと忠告を受ける。

翌朝、幸子は起きて真っ先に部屋の窓を開ける。窓の外には、様々な神々が降誕しキラキラと輝く出雲の街並みが広がっていた。その光景を目にした幸子は目を輝かせ、心を躍らせるのであった。

『かみあり』の登場人物・キャラクター

主要人物

千林幸子(せんばやし さちこ)

本作主人公。中学2年生。身長158センチ。関西出身のため関西弁を喋る。神々についての知識はほとんどない。
見た目は栗色のセミロングの髪に目が大きく可愛い部類だが、その中身はお笑い系であり基本的にボケ体質。口よりも先に手が出るタイプで行動力がある。少々天然気質で物怖じしない性格のため、様々な神々や悪魔とも気さくに接する。神々を畏怖する意識が薄いため、神々との騒動に巻き込まれないかと絵美にいつも心配されている。神との遭遇率が異様に高いため、クラスメイトからは「神様ホイホイ」と呼ばれている。左側の前髪あたりに髪留めをつけている。
様々な騒動に巻き込まれていくなかで、ヒヌカン・大眼・大眼を通じて藤林長門守、そしてエク・チュアフと4柱の加護を得ることになる。

岡家絵美(おかや えみ)

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