ジュドー・アーシタ（機動戦士ガンダムΖΖ）の徹底解説・考察まとめ

初登場～地球降下

グリプス戦役は終了に伴い、アーガマがシャングリラへ寄港してきた。
ほぼ同時に、Ζガンダムにハンブラビを撃墜されたヤザンを乗せた脱出ポッドも、シャングリラへ到着する。彼はしぶとく助かっていたのだ。

ジュドーは、そんなヤザンを見つける。
しかしヤザンは撃墜された事で、Ζガンダムを逆恨みしており、事情を知らないジュドーをそそのかした。
売れば金になるとして、アーガマからΖガンダムを盗む出させるように仕向けたのである。
この話に乗せられてしまったジュドーは、ジャンク屋の仲間達と協力し、Ζガンダムを盗むべくアーガマへ忍び寄る。

盗みには、ヤザンも同行した。
そしてアーガマへ潜入するものの、ヤザンの横暴な振る舞いに反感を覚えたジュドーは、Ζガンダムを盗むどころか、それを使ってヤザンを撃退してしまう。
これをアーガマ艦長、ブライト・ノアにニュータイプの素質ありとして見込まれスカウトの形でエゥーゴに参加。アーガマの乗組員となる。

アーガマ乗り込み後は、パイロット不在だったΖガンダムを宛がわれた。
当初はネオ・ジオンの士官、マシュマー・セロがアーガマへ「ちょっかいをかけてくるような」襲撃をたびたび撃退。
同じくネオ・ジオンの士官、キャラ・スーンによる襲撃もなんなくかわしていく中、アーガマにΖΖガンダムが配備され、Ζガンダムより乗り換える。

ΖΖガンダム配備と、ガンダムMk-IIや百式の再配備でアーガマの戦力が拡充されると、やがてジュドーはネオ・ジオンの本拠地たる宇宙要塞アクシズへ乗り込み、そこで宿敵となるハマーンと、自身を慕う少女プルとの出会いを果たす。
そのアクシズでは一時期とらわれの身になるも、ほぼ自力で脱出。ハマーンからのネオ・ジオン勧誘を断り、アクシズでキュベレイMk-IIに乗って暴れるプルを抑え、無力化する形で引き連れてアーガマへ生還すると、地球へ降下していった。

地球での活動～第一次ネオ・ジオン抗争終結

ジュドーを乗せたアーガマが降下した先は、アフリカ大陸だった。
アフリカの戦線をジュドーは戦い抜くも、その矢先のダカール市街の戦闘にて妹のリィナが行方を眩ましてしまう。これを死亡したものと思いこんだ事で、ジュドーは一時的に戦意を喪失。
しかし仲間からの叱咤激励のおかげで戦う意志を取り戻すと、再びアフリカでの戦線をΖΖガンダムで支えていく。
そのアフリカ戦線の果てに辿り着いたダブリンでは、かつてグリプス戦役を戦い抜いたものの、精神が崩壊し廃人同然の生活を送らざるを得なくなったカミーユ・ビダンが療養生活を送っていた。

だが、カミーユもいるダブリンには、ネオ・ジオンによるコロニー落としが仕掛けられようとしていた。
ジュドーはこれの阻止へ動くも、失敗。
幸いにもカミーユはダブリンのコロニー落とし爆心地からは離れた位置にいたために無事だったが、コロニー落としそのものと、その阻止を巡った戦いの中でプルをはじめ、多くの命が失われた事に巨大な悲しみと怒りを覚える。
ジュドーは、カミーユからのテレパシーによって「戦いに理由がいるのなら、その怒りが理由だ」と諭され、ネオ・ジオン打倒を決意する。

そして再び宇宙へ上がったジュドー達は、新造の戦艦ネェル・アーガマを受領。
別動する必要性の生じたブライトの代理として、ビーチャがその臨時艦長に就任。ジュドーもその采配に従う形で戦闘を継続する。
宇宙での戦いでは、ハマーンに反旗を翻したグレミーの軍を退けつつも、ネオ・ジオン本隊とも激戦を繰り返し、やがて最終決戦へ臨む。

その最終決戦では、ハマーンの乗機キュベレイと対峙。
ハマーンはニュータイプの能力を持ちつつ、いちモビルスーツパイロットとしても極めて優秀であり、ジュドーはΖΖガンダムの性能をもってしても苦戦して危機に陥ってしまう。
しかしその時、戦争で死んでいった者達の魂がΖΖガンダムを通してジュドーの元へと集結。
巨大な力を機体とジュドーに与えて、ついにはハマーンを撃破した。

このジュドーの活躍のおかげで、総帥を失ったネオ・ジオンは総崩れとなり、第一次ネオ・ジオン抗争は一気にエゥーゴ有利へと傾く。ほぼ勝利目前といっても良いところだったが、その時点になってエゥーゴと連邦の大艦隊が、最終決戦の場に到着。
その行動の真意は、少数の戦力で戦いが落ち着くのならそこに生ずる犠牲はよしとする、エゥーゴや連邦高官によるもくろみであった。
合理的判断という名の、生命への冒涜である。

これにも大きな怒りを感じたジュドーは、エゥーゴと連邦の代弁者として彼の前に立ったブライトを殴り飛ばし、最終的エゥーゴを辞する。
そして、生きていたリィナと再会し、ルーと共に木星船団の一員として地球圏を旅立つのだった。

ジュドー・アーシタの名言・名セリフ／名シーン・名場面

「自分の出来ることを最大限にやりゃあ、他人に利用なんかされるもんか！」

アフリカ降下後、モビルスーツ「カプール」のパイロットとして立ちはだかった、漁師タマンとの会話にて。
タマンは生活のためにネオ・ジオンを頼っており、その結果としてモビルスーツパイロットとして死地に赴くはめになった。
タマンはネオ・ジオンを利用していたつもりだったのだが、事実はその逆であった事をジュドーに喝破されて意気消沈する。

他者に利用されないため、自らの力のみで生き抜く事を旨とするジュドーと、他者を利用しているつもりでされていた一人の漁師という対比である。
しかし、そう豪語したジュドーも、結局は他者＝エゥーゴや連邦といった「大人達の組織」に使い捨てのような戦力として利用される結末を迎える事になるのは、皮肉である。

「あんたは頭で考えてる理屈を言ってる。人は理屈で動くもんじゃない！」

ネオ・ジオンに誘拐されたリィナ・アーシタは、一度アーガマによる救出作戦で奪還された。
しかし、作戦はアーガマを離れたモビルスーツ小隊（ガンダムチーム）にて行われたために、リィナを収容する場所がなく、彼女は地上の小屋で休養していた。
だが、続くガンダムチームとネオ・ジオンの戦闘に巻き込まれ、リィナのいた小屋ば爆砕してしまい、その結果、ジュドーはリィナが死んだと誤解し、取り乱す。

そんなジュドーを、ルーは「感傷に溺れてると今度はあなたが死んじゃうのよ！」と諭そうとするのだが、肉親を失った（と思いこんでいる）ジュドーは、そんな「他人の戯れ言」には耳を貸さずに感情を爆発させた。
完璧超人ではない人間は、愛する者を失うような衝撃から簡単に立ち直れるものではないという事と、同時に、他人にとっては、別の人が受けている悲しみや衝撃の重さというものを完全に理解するのはニュータイプであっても難しい、もしくは、そういう事をも可能にする真の意味でのニュータイプは存在し得ないのではないか、という懸念を暗示しているシーンでもある。

「その潔さを、なんでもっと上手に使えなかったんだ」

ハマーンとの最終決戦の決着直後にて。
ジュドーのΖΖガンダムに対して、一騎打ちを挑んだハマーンは、キュベレイのファンネル（精神波による半自動遠隔操縦兵器）を出し惜しみするように使い、最後まで完全に機能を引き出さなかった（と、される）。
これは、一騎打ちという内容の戦いにおいて、ファンネルは操縦者の意思を汲み取ってある程度自己判断で動くため、使いすぎれば一騎打ちにならなくなるとしたハマーンの判断をジュドーは「潔さ」と捉えたのである。

しかし、ジュドーからしてみればその潔さは、こんな意味のない戦いではなく、もっと人類を導くための政治の世界で用いるべきだったという思いがあった。
「ハマーンは政治の世界にいて、才能もあり、人類をより良い世界へ導く事ができたはずなのに、なぜ、やってくれなかったのだ」というジュドーの悲痛な思いを吐露される瞬間。

ただし、アニメーションの描画という視点から見てみると、ハマーンはファンネルを20基以上使っており、これはキュベレイのファンネル搭載数の設定「10基」の倍である。
これを設定よりも戦闘の華々しさを優先した演出上の嘘ではなく、本当に20基近く使ったのだと真に受けた場合、ハマーンは潔いどころか、予備か追加かのファンネルまで持ち出して、一騎打ちの名目で、そのじつジュドーを全力で殺しに来た「すごく卑怯な人」となる。
そして、ジュドーはそれをはね除けておいて彼女を「潔い」と盛大な皮肉を放った場面と捉えられるので、併せてネタにする事が可能となっている。

ジュドー・アーシタの裏話・トリビア・小ネタ／エピソード・逸話

木星じいさん＝ジュドーの可能性

ジュドーは木星に旅立った後の行方が、ほとんど設定されていない。
そんな設定のない状態を逆手に取って、一部のガンダムの正史（映像化された作品群）ではない外伝的な作品では、彼の後の姿であろうキャラクターが登場する事がある。

その一人が、漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム スカルハート』および『機動戦士Vガンダム プロジェクト・エクソダス』に登場するグレイ・ストークである。
このグレイなる人物は、木星からヘリウムを運搬する「ヘリウム船団」内において、木星じいさんのあだ名で親しまれているという設定であり、ΖΖガンダムのものと似た頭部を持ち、身体はつぎはぎだらけで歴戦を感じさせるモビルスーツ「ガンプ」を隠し持っている。

物語上では、はっきり木星じいさん＝ジュドー・アーシタとは明言されていないが、上記の漫画作品二つは宇宙世紀0130年代の話を描いており、これは宇宙世紀0088年で、10代の少年であったジュドーがちょうど壮年期を迎えている年代である。
このように、木星じいさんの設定は「もしかするとジュドーかもしれない」と思わせぶりだが、詳細はあえてぼかされており、ファンが「ジュドーの歳を取った姿」としてもいいし「似ているだけの別人」とする事もできるようになっている。

ほぼ元祖ハーレム系主人公

『機動戦士ガンダムΖΖ』は、制作当初「明るく、前向きなガンダム」を標榜された。
理由は前作にあたる『機動戦士Ζガンダム』のドラマが陰惨で、最終的には主役カミーユ・ビダンが精神崩壊を起こして終わるという救いようのない結末を迎えてしまった事への反動が、制作スタッフ・視聴者の双方にあった。

そこで『機動戦士ガンダムΖΖ』はコメディ色を強くし、さらに華々しさを加えるため男性の主役が、多数の女性脇役をはべらせる「ハーレム系アニメ」の走りとなるキャラクター構成および人物相関図を持つ事となった。
そのため、ジュドーはルーをはじめ、リィナ、エル、プル、プルツー、ハマーンなどの物語に登場する主要女性キャラクターの多くから好意を寄せられている。

ロボットアニメでいえば、同じような展開は『重戦機エルガイム』によってすでに行われていたが、ガンダムシリーズとしては初であり、かつ、ガンダムシリーズの世間へ持つ影響力の高さから、実質的にジュドーは「ほぼ元祖ハーレム系主人公」の地位を獲得し、それを歴史的事実として不動のものにしている。