巌窟王(アニメ・漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『巌窟王(がんくつおう)』とは、MEDIA FACTORY、GDHにより作成された『モンテ・クリスト伯』を原作とする日本のSFアニメである。全24話のこの物語は原作の復讐劇をベースとしつつ、舞台を19世紀ヨーロッパの舞台から仮想未来のパリへと変え、月旅行や宇宙船、有人操縦式兵器などを登場させることにより、近未来的な映像作品へと昇華させた。また、物語は復讐する者から復讐される者、彼らの子供達へと視線を交えていき、けして一方的にならない復讐の在り方を描いている。

『巌窟王』の概要

『巌窟王(がんくつおう)』とは、アレクサンドル・デュマ・ペール著作の『モンテ・クリスト伯』を原作に、前田真宏によって映像化された日本のアニメーション作品である。全24話のテレビシリーズは2004年10月~2005年3月までテレビ朝日にて放送されていた。舞台は宇宙旅行が日常となった仮想未来、退屈な貴族の生活を厭い友人と共に月旅行に出たアルベールが、謎の大富豪であるモンテ・クリスト伯爵との交流を持ち、彼の壮大で残酷な復讐劇に巻き込まれていく様を描いている。原作を踏襲しながらも、復讐される側である子供達の目線から描かれた世界の理不尽や恋の煩悶、かけがえのない友情を描くことで単なる復讐劇に終わらず、爽やかな青春成長譚としての側面も持つのがこの作品の面白さである。

『巌窟王』のあらすじ・ストーリー

パリの貴族である15歳の主人公アルベールは、日常の退屈を厭い、親友であるフランツと月旅行へと出かける。彼が目指したのは月面都市、ルナのカーニバルであった。その頃、ルナの社交界では東方宇宙からやって来たとされる謎の大富豪、モンテ・クリスト伯爵の話題で持ち切りであった。オペラ座でモンテ・クリスト伯爵の懐中時計を拾ったアルベールは、故あって伯爵との交流を結び、彼の型破りな生き方に魅了されるようになる。
モンテ・クリスト伯爵との交流、月面都市で知り合った美少女のペッポとの逢瀬。夢を見るような幸福の時間中で、しかしアルベールはペッポの裏切りに合う。ペッポはルナでも悪名高い盗賊、ルイジ・ヴァンパの手下であったのだ。親友の命が危ないと知り、モンテ・クリスト伯爵に懐疑的でありながらもフランツは彼に助けを求める。モンテ・クリスト伯爵の人外的な尽力により救出されたアルベールは、彼に感謝の意を表してパリの社交界へと彼を招くこととした。これこそがモンテ・クリスト伯爵の策略とも知らずに。
パリの社交界へと進出したモンテ・クリスト伯爵は、その膨大な資産を前に人々を圧倒させる。時に出自や容貌から疑念を向けられるも、それすらも話題性の一つとして彼は人々を魅了していく。彼を命の恩人として慕うアルベールを中心に、彼の父親であるフェルナン・ド・モルセール将軍、また、アルベールの許嫁であるユージェニーの父、ダングラール銀行の頭取ダングラール男爵へと交流を広げていく。また、彼は自らの魅了を武器とし、ユージェニーの母であるビクトリアに、パリ高等法院首席判事であるジェラール・ド・ヴィルフォール主席判事の後妻、エロイーズまでも陥落させてしまう。
パリ中の人々が彼に魅了される中、モンテ・クリスト伯爵の復讐劇は着実に進んでいく。
惨劇の始まりは、フェルナン、ダングラール、ヴィルフォールに送りつけられた、エドモン・ダンテスと名乗る人物からの葬儀の案内状であった。

『巌窟王』の登場人物・キャラクター

モンテ・クリスト伯爵 / エドモン・ダンテス

CV:中田譲治
東方宇宙の謎の貴族。莫大な富と権力を持ちながら、一般的な貴族とは異なる破天荒な思想を持ち、また博学で優雅な立ち振る舞いは人々を魅了させる。ルナの一件から命の恩人として交友を重ねるアルベールの尽力でパリ社交界へ進出するも、実のところそれは彼の復讐の一手でしかなかった。本名を「エドモン・ダンテス」とする彼は、かつてモレル商会の一等航海士であった。アルベールの母であるメルセデスと婚約していた彼は、けれども彼女に横恋慕を向けるフェルナンと、同僚として彼を妬んでいた談グラールの策略にハマり、結婚式の当日に逮捕されてしまう。そして、彼を無実の罪でシャトー・ド・イフへと投獄した裁判官こそが、ヴィルフォールであった。全てを奪われ、全てに絶望し、半ば己の死すらも願ったエドモン・ダンテスであったが、彼の強固な復讐心に近づく人外の存在が彼に力を貸す。その人外の存在こそが「巌窟王」であり、エドモン・ダンテスは「モンテ・クリスト伯爵」へと変容していく。

アルベール・ド・モルセール子爵

CV:福山潤 / 遠藤綾(幼少期)
本作の主人公であり、パリの貴族。フェルナンとメルセデスの一人息子である。月面都市、ルナで偶然知り合ったモンテ・クリスト伯爵の魅力に惹かれていき、周囲の疑念の目に怒りすらも露わにするほどである。素直で純真な性格ではあるが、15歳という幼さから直情的で子供っぽいところがある。伯爵の復讐に巻き込まれることとなりながらも、マクシミリアンの恋路を応援し、ユージェニーの夢を叶えるなど、人間としての善性が強い青年である。親友であるフランツとは悪友のような関係であったが、彼が自身の身代わりとして命を落とした時には心を引き裂かれて廃人状態にまで陥れられた。終盤ではフランツの死を乗り越え、父親と伯爵の復讐劇を諭すまでに成長した。エンディングでは大使秘書補佐官としてパリに帰郷し、フランツの墓参りの後ユージェニーと再会する。

フランツ・デピネー男爵

CV:平川大輔 / 半場友恵(幼少期)
アルベールの親友で幼馴染。ヴァランティーヌと婚約関係にあるが、彼女に関しては「親同士が勝手に決めたこと」と公言し、彼女を心から愛するマクシミリアンに対して「幸福にして欲しい」と彼女の未来を託す。アルベールとモンテ・クリスト伯爵の「決闘」に対して、彼はアルベールに睡眠薬を持った上で彼の有人操縦式兵器に乗り込み、伯爵を倒そうと彼の心臓に剣を突き立てる。しかし人外の恩恵を受けているモンテ・クリスト伯爵に勝つことは叶わず、彼自身切り裂かれて命を落とす。死の間際、自分の元に駆けつけてくれたアルベールに「16歳の誕生日おめでとう」と告げながら、その命を終える。
アルベールを前に「たとえ結婚できなくても、それ以外にも思う相手を幸せにする方法はある」と語り、命を賭けてアルベールを守ろうとする姿から、彼に対して「友情以上の感情」を抱いているらしいことがうかがえる。決闘前、ユージェニーへ「アルベールへのバーステーカード」として渡した遺言状には「決して誰も恨むな、どんなに傷ついても前に進め」と書き残していた。

マクシミリアン・モレル

CV:稲田徹
宇宙軍騎兵大尉。誰にでも敬語で話す生真面目な男性であり、ヴァランティーヌに一目惚れをする。パリの社交界について爛れた人間関係を聞いた時には「パリの人々は穢れている」と断言するほどの清廉潔白な性格をしている。ヴァランティーヌに愛情を示さないフランツに怒りを向けていたが、モンテ・クリスト伯爵とアルベール、フランツの協力を得た後にヴァレンティーヌを実家に避難させた際、フランツから「幸せにしてやって欲しい」と告げられたことで彼との約束を果たすことに尽力する。
マクシミリアン・モレルの祖父は「モレル商会」の創始者であり、当時の「エドモン・ダンテス」とも親しかった。モンテ・クリスト伯爵が彼の恋情に力を貸したのも、このことが理由である。エンディングでは任務を終え、父の代で売却した船を買い戻す為に軍を除隊する。また、クーデター終結後、ヴァレンティ―ヌと結婚しマルセイユへと帰郷した。

フェルナン・ド・モルセール将軍

CV:小杉十郎太
アルベールの父。元はカタルーニャ系フランス人の漁師でエドモンの親友でありながらメルセデスに横恋をし、ダングラールやヴィルフォールと結託することでエドモンを投獄した張本人。従軍するなかでジャニナ星の国王であったエデの父を騙し討ちで殺した後、彼女とその母を奴隷商人に売り飛ばすなどの悪逆非道の限りを尽くしていた。貴族の地位も金で買ったものであり、貴族議員としての出馬をもくろむが、エデの登場によりスキャンダルの全てを暴露されたことで苦境に立たされることとなる。終盤では過去の栄光を取り戻そうとクーデターを起こし、エドモン・ダンテスとの対決の末に敗北する。息子であるアルベールに諭されて自分の罪を悔い改めた彼は、アルベールにメルセデスとエデの守護を焚くし、エドモンの亡骸の傍で自決した。

メルセデス・ド・モルセール

CV:井上喜久子
アルベールの母親。かつてエドモン・ダンテスの婚約者だったが、フェルナンに横恋慕されていたとは知らず、彼からダンテスが死んだと騙されて、その嘘に気付かないまま結婚した。才色兼備で、社交界の華であるがそれ以上に優しい心の持ち主で、家族を深く愛している。
伯爵に初めて会った時、フェルナン達が気づかぬ中、本能的に伯爵がエドモン・ダンテスであるのを見抜いており、フェルナン達がエドモンを陥れたことを知りながらフェルナンを許そうとするも背後から撃たれ、瀕死の重傷を負うが一命を取り留める。エンディングでは故郷マルセイユに並べて建てられたエドモンとフェルナンの墓に祈りを向ける。

ダングラール

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