零〜紫の日記〜(心霊カメラ〜憑いてる手帳〜)のネタバレ解説・考察まとめ

『零〜紫の日記〜(心霊カメラ〜憑いてる手帳)〜』とは、2012年任天堂から発売された3DS用のゲームソフトである。「紫の日記」に、あるはずのない文字を見てしまった者は、顔の削がれた遺体となり見つかるという都市伝説。主人公はある日、手元に届いた日記に囚われた少女「眞夜」と共に「紫の日記」の謎を解明していく。3DSを射影機に、ARノートを紫の日記に見立て進めていく本作は、より現実世界とゲームとの境界を曖昧にし、恐怖が侵蝕してくる様を体験できる。

衝立の向こう

突然二人のもとに助けを求める女性の声が聞こえてくる。それは助けを求めながらも、衝立の影にいる黒い服の女に怯え怖がる様子で、更には「あの曲をもう弾きたくない、私は人形じゃない」と悲痛な声が聞こえてきた。黒い服の女に見つかる前に助けようと探し出すが、すぐ辺りに物音が響いてしまう。日記の中に衝立の写真を見つけ、射影機をかざすと、急にその衝立の向こう側に明かりが灯り、その声の主である女性と黒い服の女の影が映し出される。怯える女性に黒い服の女は近づき、顔を強い力で掴んだかと思うと、衝立の写真が突如破けた。焦りながらも日記の中を探し、ランプの写る写真を射影機で撮れば、そこに明かりが灯り、気がつくと先ほどの破けた衝立にできた穴を覗き込んでいた。衝立の向こう側には黒い服の女が立ってこちらを見下ろしており、笑いながら立ち去ると、その背後にいた白いワンピースを着た女性が倒れているのが視界に入る。女性は床を這うような動きでこちら側へと近づいて攻撃をしてくる。しかし彼女もまた、顔が削がれていた。
女性を倒し、姿が消え去った後、まるで人形のような声が聞こえてくる。どうやら彼女は楽譜にあったあの曲を弾いてしまったために、黒い服の女に日記に引き込まれてしまったようだ。そうしてそのまま人形のようになってしまっていた。彼女は誰であったのだろうと思案していると射影機からまたもや音が聞こえてくる。新たな「復元レンズ」の封印が解けたようで、失われた過去の状態を見ることができるようだ。そして彼女がいた場所に落ちていた紙を撮ると文字が浮かび上がってくる。そこには彼女が「長谷部紫織(しおり)」であることが書かれていた。長谷部海斗の妹だと気づいた二人は彼らを会わせることにする。長谷部海斗の映る写真に復元レンズを向けると、破れた部分が復元され、長谷部海斗の隣に顔を削がれる前の紫織の姿が浮かんでくる。再びその姿が静かに消えたかと思うと長谷部海斗の日記が落ちていることに気が付く。紫織が失踪前に海斗へ残した言葉が綴られていた。紫織は、黒い服を着た女に、「あの曲を弾いてくれ」「あの悲しい曲を好きだった誰かの代わりに弾いてくれ」とせがまれていたようだ。

眞夜もあの曲を好きだったと言う事に加えて、写真の人形も見覚えがあると言うことから黒い服の女と眞夜は何か繋がりがあり、黒い服の女が探しているのが眞夜かもしれないということがわかった。眞夜も、日記に書かれる「ずっとまってる」と言う言葉は自分に向けられているのではないか、黒い服の女に会えば呪いは終わるのではないか、と自覚した直後、二人に聞こえてきたのは「もう逃さない」という黒い服の女の声。声の聞こえるままに人形の映る写真を復元レンズで撮ると、破けていたところが黒い服の女に変わり、大事そうに人形を抱えて笑っている写真へと変化した。それを見て、黒い服の女も人形に思い入れがあるがその人形の代わりはもう必要ないこと、なぜならずっと探し待っていた眞夜を見つけたから、という考えに行き着くのだった。

古の儀式

眞夜が黒い服の女に会えば呪いは終わるのかもしれない。だがもし間違っていたら、主人公も巻き添えになってしまう。そうならないためにも、黒い服の女に会うことが正しいのか知ってからにしようと古い記録、記憶を調べようとする。すると眞夜が日記から視線を感じると言い出し日記を見てみると、儀式のような写真と絵があった。それを見てとても怯える眞夜に反応するように射影機から怒号のようなざわめきが聞こえてくる。それは、村を救うには神を迎えねばならず、巫女に神を降ろし儀式を早く行わないと村は絶えてしまうため逃げた巫女を見つけ出し、目と口を封じるしかないと言う村人たちの声だった。
そんな二人のもとにまるで老婆のような声が日記から呼びかけるように聞こえてくる。日記を調べ射影機の反応する絵を見て、眞夜は「どこへも行かないように目と口を封じる、それを何度も言い聞かされたのだ」と思い出す。しかしその瞬間紫色の霧が立ち込め、まだ何かその絵に隠されていることがあると察した二人は紫鏡レンズに変えると、絵が無理やり村人に押さえつけられている人の写真へと変化し、老婆が二人の前に現れる。何度か攻撃し、そうして現れたのは「思い出して」と黒い服の女。

二人の意識が飛び、暗い廊下を歩く過去の誰かの視点になる。恐る恐る玄関の方へ向かうと、何人かの村人たちが武器を持ち玄関の扉を壊して侵入してくる。それを見て慌てて家の奥へ奥へと逃げる誰か。厚い扉を閉めて身を潜めていると、村人たちの「贄を探せ」と言う声が響いてくる。そして隠れていた場所も見つかり、連れ去られてしまう。

そこで意識が戻り、目の前には眞夜もいた。今の記憶は黒い服の女の過去の記憶ではないか。逃げたが結局は村人たちに捕まり、あの老婆によって目と口が縫われ儀式が行われた。すると老婆のいた場所に手記が落ちていた。それによると、奇病により村人たちは命を奪われ、それから救うにはもはや常世見(とこよみ)の儀式で神を迎えるほかなく、齢十五を迎える巫女を使うしかないと。巫女となる娘はたった一人で家に住まわせ、人とのつながりを絶つことでようやく「器」となれる。その老婆の役目は巫女の目と口を縫い「器」とすることと、「器」に神を降ろす大役を果たすこと。眞夜と主人公は、その巫女は黒い服の女なのであろうかと考え始める。そうだとすると、日記の中に人々を引き込むのも生前の孤独が関係していて、顔を削ぐ行為は目と口を縫う儀式の再現なのかもしれない。おそらく儀式は失敗し何かの原因から、黒い服の女は闇に囚われてしまった。その原因によって「紫の日記」の呪いがはじまってしまったのだとしたら、黒い服の女が眞夜に思い出させようとしていることは一体何なのか。
思案している二人のもとに、再び老婆が現れる。巫女は孤独ではなく、人とのつながりを持っていた。そのことこそが、この世に未練をもたらし「器」は不完全なものになってしまった。もし悪しき神が降りてきたならば、「器」から溢れたそれは闇となり村を滅ぼしてしまう。「器」に悪しき神を封じ込めどこへも行かないようにしなければならない。老婆の切実な嘆きが伝わってくると同時に、眞夜へ黒い服の女の記憶が流れ込んでくる。黒い服の女は闇に囚われ村人たちを取り込み村を滅ぼしてしまった。そんな光景を見せられても眞夜は何を思い出すべきなのかわからない。眞夜が憶えているのは、あの家の中でずっと一人でいて怖かったこと。

だが眞夜は突然頭を抱えてしゃがみ込んでしまう。少しずつ思い出される眞夜の記憶。どうやら暗くて広い家の中にひとりだったのは黒い服の女ではなく眞夜本人で、神の「器」として育てられた彼女は孤独のあまり老婆が置いていった日記帳を誰かとの交換日記として使い始めた。そのうち自分ではない誰かが答えてくれたことで、日記が二人の繋がりになっていく。彼女は「魔夜」。眞夜にとってただひとりの家族だった。魔夜は自分が作り出した、もうひとりの自分。古の儀式が始まり神が「器」としての自分の中へ降りてきたが、それは悪しきもの「闇」だった。そこで眞夜の意識は途切れ、代わりに魔夜が目覚めた。眞夜ではなく魔夜が闇に囚われ、孤独に耐えかねた彼女は家族を求め続けた。人々を日記から引き込んで、逃げ出しそうになれば顔を削いでいた。ごっこ遊びのつもりで眞夜が始めた交換日記は「紫の日記」となり、知らないうちに彼女の言葉が魔夜に届くようになり、それが二人の世界を繋げる扉のようになっていた。眞夜は、全てを思い出し、闇に囚われ怨霊と化した魔夜の闇をはらわねばと決断する。

最後の扉

目と口を縫われた時、眞夜は闇の中に落ちた。そして目が覚めた時には全てを忘れてあの家にいた。いなくなった眞夜の代わりに残った魔夜が闇に囚われた。眞夜の悲しみ苦しみ、影の部分を全て背負ってくれていたから眞夜自身は闇に囚われずにいられたのだった。今はまた、二人が一つになることを望む眞夜。だがこのままだと共に闇に飲み込まれてしまう。不安になった眞夜のもとに魔夜の声が聞こえてくる。魔夜は「永遠を誓いながら自分の前から消えた眞夜をずっと待っていた、紫の扉を開けて”全てを失った”あの場所へ一緒に行きましょう」と囁いてくる。その声と共に眞夜の姿は消えてしまう。日記の射影機が反応する写真を写せば、紫色の霧で覆われた扉が現れた。先ほど魔夜の言っていた紫の扉はこのことであろう。魔夜を救ってほしいという眞夜の悲痛な声が聞こえると、紫色の霧は消え、扉が開く。
周りを見渡すと、見たことのない異世界に飛ばされており、邪悪なオーラを纏う魔夜と対峙していた。眞夜が時折魔夜と姿を入れ替えながら、射影機で自分たちを止めてほしいと懇願する。射影機の力を使い、二人を封じると、魔夜は泣きながら「もう何も奪われたくない」とうずくまる。眞夜は優しく諭すように、終わりを告げ、もうどこにも行かないと誓う。静かに抱き合う二人の側には、紫色の花が舞っていた。二人の世界を閉ざすことを決め、眞夜は主人公へと悲しく微笑み、紫の扉は閉まっていく。

主人公が気が付くと、周りにはいつもの光景が広がっていた。だが、日記から彼女の気配を感じる。すべての始まりのページを開き、射影機で映すと、そこには「ありがとう」という言葉が浮かび上がってきたのだった。

『零〜紫の日記〜』のゲームシステム

基本システム

ゲーム画面は3種類からなり、現実世界に映し出される眞夜との会話によるストーリー進行、ARノートを使い「紫の日記」を調べるシーン、射影機として画面を覗き怨霊との戦闘のシーンとなる。ストーリー進行時は、「紫の日記」の謎を調べるために眞夜へ問いかける際や謎を考察する時に選択肢が出てくるようになっており、正しい答えを選べばストーリーが進んでいく。ARノートを使用する際も、場面に合わせてレンズを切り替えて撮影するなど、仕掛けがある。

ファインダーモード

怨霊との戦闘時には、まるで射影機を覗いているかのような主観モードとなる。3DSごと動かすことでまるで本当に射影機を構えているかのような操作感。画面中央には霊を捉えるサークルがあり、霊をそのサークル内に収め続ければ攻撃できるゲージが溜まっていく。シャッターチャンスは一番ダメージを与えられる攻撃で、サークルが赤く光る。タイミングよくシャッターを切ることで怨霊に効果的な攻撃を与えることができる。攻撃中に紫色の霧が発生した時は、「紫鏡レンズ」に切り替えて攻撃することで霧を払える。また、暗闇に紛れてしまった霊を見つけ出すには「暗闇レンズ」を使用する。

レンズ

「紫の日記」では今までのシリーズとは違いレンズの攻撃力を強化していくものではない。レンズを切り替えることで、見えなかったものや謎が解き明かされていく仕組みとなっている。

「紫鏡レンズ」

紫の日記にかけられた封印を解くことができるレンズ。紫色の霧を払う。

「暗闇レンズ」

暗闇に潜むものを映し出すことができるレンズ。

「復元レンズ」

レンズを通すことで、失われた過去の状態を見ることができる。

「陰陽レンズ」

陰陽の名の如く、光の部分にある影を、影の部分にある光を映し出す。

『零〜紫の日記〜』の登場人物・キャラクター

主人公(プレーヤー自身)

『零シリーズ』で初となる、プレーヤー自身が主人公という形式。はじめに3DSのカメラで自分の顔を写すことができ、それを登録することで自分の顔が削がれる写真も見ることができる。

jyuka12253
jyuka12253
@jyuka12253

Related Articles関連記事

零〜濡鴉ノ巫女〜(Fatal Frame V)のネタバレ解説・考察まとめ

零〜濡鴉ノ巫女〜(Fatal Frame V)のネタバレ解説・考察まとめ

『零~濡鴉ノ巫女~』は任天堂発売の和風ホラーゲーム『零』シリーズの第6作目(通算9作目)である。キャッチコピーは「死の山、幽婚、神隠し すべては水でつながっている。」。不来方夕莉、雛咲深羽、放生蓮の3名が操作キャラクター。日上山という水をご神体として崇める霊山が舞台。夕莉は消えた恩人や依頼人を、深紅は母を、蓮は死者を写した弔写真を追い、それぞれの事情から怨霊が徘徊する日上山へ踏み込んで怨霊との戦闘や探索をくり広げる。映画さながらの美麗グラフィックと陰鬱な雰囲気がファンを集めている。

Read Article

零~紅い蝶~・零~眞紅の蝶~(Fatal Frame II)のネタバレ解説・考察まとめ

零~紅い蝶~・零~眞紅の蝶~(Fatal Frame II)のネタバレ解説・考察まとめ

『零~紅い蝶~』とは、「零」シリーズの第2作目で、2003年にテクモよりプレイステーション2用ソフトとして発売された和風ホラーゲームである。 霊を射影機に写すことで撃退できることや、民俗学的な視点による謎解きなど、前作『零~zero~』の長所を生かしながらも一つの屋敷から一つの廃村へと舞台が変更されており、より広い範囲で行動することになる。登場人物の中には、前作に因縁のある人間も多く、今作によって明かされる前作の設定なども見どころだ。

Read Article

零~zero~(Fatal Frame / Project Zero)のネタバレ解説・考察まとめ

零~zero~(Fatal Frame / Project Zero)のネタバレ解説・考察まとめ

零~zero~(Fatal Frame / Project Zero)とは「零」シリーズの第1作目で、2001年にテクモよりプレイステーション2用ソフトとして発売された和風ホラーゲームである。 霊である敵は特殊な能力を持つ「射影機」に写すことで撃退でき、恐怖の対象に自ら顔を向けなくてはいけないというゲームシステムによって人気を得た。民俗学的視点から解いていく謎や、敵の霊が一体一体を作り込まれている等、細部にまで拘られた設定も魅力の一つだ。

Read Article

零~刺青の聲~(Fatal Frame III)のネタバレ解説・考察まとめ

零~刺青の聲~(Fatal Frame III)のネタバレ解説・考察まとめ

『零~刺青の聲~』とは、「零」シリーズの第3作目で、2005年にテクモよりプレイステーション2用ソフトとして発売された和風ホラーゲームである。 徐々に眠りから覚めなくなっていくという呪いを解く為に、除霊能力を持つカメラ「射影機」を使って、夢の中の幽霊屋敷と現実世界を行き来しながら謎を解いていくという内容になっている。 シリーズ1作目、2作目の主人公達も登場し、彼女達のその後の様子が知れるところも見どころだ。

Read Article

零~月蝕の仮面~(Fatal Frame IV)のネタバレ解説・考察まとめ

零~月蝕の仮面~(Fatal Frame IV)のネタバレ解説・考察まとめ

『零~月蝕の仮面~』は和風ホラーゲーム・『零』シリーズの第4作目である。「恐怖を体験する。」がキャッチコピー。時代背景は1980年代の日本。全12章の構成で水無月流歌、麻生海咲、月森円香、霧島長四郎の4名の視点で進行する。舞台は朧月島という離島。朽ちた廃墟と化した病院や和風建築の屋敷での探索及び怨霊との戦闘がメインとなる。

Read Article

【内政or合戦?】ゲーマータイプ別『信長の野望』のオススメタイトルまとめ【イベントorキャラ重視?】

【内政or合戦?】ゲーマータイプ別『信長の野望』のオススメタイトルまとめ【イベントorキャラ重視?】

何作も登場している人気作品、『信長の野望』は、タイトルごとに様々な特徴があります。 このまとめではゲーマーの趣向を「内政がしたい人、戦争がしたい人、イベント重視の人、キャラ重視の人」の4つに分け、それぞれのタイプにオススメできる作品を紹介しています。

Read Article

【零シリーズ】美女・美人なキャラクターの画像まとめ【FATAL FRAME、PROJECT ZERO】

【零シリーズ】美女・美人なキャラクターの画像まとめ【FATAL FRAME、PROJECT ZERO】

『零シリーズ』は第1作目『零 zero』から続くサバイバルホラー・アクションアドベンチャーゲームだ。射影機というあり得ないものを写し出せるカメラで撮影することで、除霊したり過去を見聞きできたりするシステムが特徴的。『零シリーズ』では少女の登場人物・キャラクターが主人公となることも多く、可憐な少女たちが怨霊に果敢に立ち向かう姿を見ることができる。

Read Article

目次 - Contents