虎杖悠仁（呪術廻戦）の徹底解説・考察まとめ

出生の秘密

宮城県仙台市にて、虎杖仁（いたどり じん）と虎杖香織（いたどり かおり）の夫婦の子として生まれる。仁は子を持つことを熱望しており、香織との結婚はそれを目的とした部分も大きかった。
しかし、実は仁は「1000年前に大暴れした最強最悪の呪霊・両面宿儺（りょうめんすくな）が母親の胎内で吸収して殺害した、彼の双子の魂」を受け継いだ存在でもあり、宿儺に近しい体質を持っていた。さらに香織は1000年以上もの時間を暗躍する呪詛師・羂索（けんじゃく）が肉体を乗っ取った存在で、仁との間にできた子に胎児の段階から呪術的な強化処置を施す。このため生来超人的な身体能力を有していた。

その後経緯は不明ながら父・仁は死亡。母の香織も、“胎児の段階から呪術的な強化処置を施した人間を作る”という目的を果たしたことで、虎杖の前から姿を消す。その後は祖父・虎杖倭助（いたどり わすけ）によって育てられる。

宿儺の器

高校1年生になり、呪物の回収にやってきた伏黒恵（ふしぐろ めぐみ）と出会う。そこで呪霊に襲われ、負傷した伏黒と友人たちを守るため、学校に隠されていた特級呪物「宿儺の指」の1本を飲み込み、“呪いの王”とも称される特級呪霊・両面宿儺（りょうめんすくな）の受肉体となってしまう。
しかしもともと羂索が施した強化は、“虎杖を宿儺の受肉体としつつ、その完全な復活を防ぐ”というものだったため、自我を失うことなく宿儺の意識を抑え込む。現代最強の術師・五条悟は「1000年誰も手が出せなかった宿儺を完全に葬り去るチャンス」だとこれに注目し、未だ世に仇なす宿儺の指の全てを虎杖に飲ませて処分するという計画を思いつく。虎杖の処刑を唱える呪術界の上層部を抑え、彼を東京都立呪術専門学校（以降は“呪術高専”と略す）に招いて自分の弟子とする。

常に暴走の危険を孕む宿儺を警戒し、時にその力に振り回されながらも、自身もまた宿儺に対抗するために、新たな学友となった伏黒や釘崎野薔薇（くぎさき のばら）と共に呪術師を目指していく。
そんな中、とある事件で致命傷を負う。ほぼ死が確定した状態で宿儺から取引を持ち掛けられ、「宿儺が契闊（けいかつ）と唱えたら1分間肉体の支配権を彼に譲り渡す」という縛り（呪術的な契約）を結ばされた上で蘇生。同時に交わした「目が覚めたら宿儺との取引のことは忘れる」という縛りの影響で、本人はこのことを覚えていない。

特急呪霊との戦い

虎杖が呪術師を目指し始めるのと同時期、「人間の深層心理から生まれた呪霊こそが真の人類であり、霊長として世界を統べるにふさわしい存在である」との思想を持つ特級呪霊一味が活動を開始し、呪術側の勢力と交戦。虎杖もこれに巻き込まれ、特に一味の中でも真人（まひと）という呪霊とは「絶対にアイツを倒さなければならない」と互いに強い敵意と嫌悪を抱き合う間柄となる。

五条の後輩で1級呪術師の七海健人（ななみ けんと）、京都府立呪術専門学校の猛者・東堂葵（とうどう あおい）などと交流しつつ、伏黒や釘崎たちと共に研鑽を重ねていく。そんな中、とある事件で呪胎九相図の壊相（えそう）と血塗（ちけず）と交戦。彼らは羂索によって生み出された人間でも呪霊でもない存在で、ただ“生き残る”という目的のために特級呪霊一味に与していたが、互いに引けなくなりこれを殺してしまう。呪胎九相図の長兄たる脹相（ちょうそう）は、「弟たちを殺された」として虎杖に激しい憎悪を抱くこととなる。

渋谷事変

五条の封印

「人類に成り代わってこの世の覇者になりたい」、「呪術という技術がどこまで発展しうるのか見てみたい、そのためにまずこの世に地獄を生み出したい」というそれぞれの目的のために、どうしても五条を排除したい特級呪霊一味と羂索が一致団結。彼を渋谷に誘い出し、十重二十重に用意した策でこれを封印することに成功する。
虎杖は伏黒や七海といった仲間たちと共に結界で閉ざされた渋谷に突入し、一味に雇われた呪詛師や呪霊たちと戦いながら五条の奪還を目指す。

同時に渋谷に取り残された人々の救出も進める中、単独行動をすることとなった虎杖は、彼を“弟の仇”と付け狙う脹相と交戦。死力を尽くした応酬の末に敗れ、昏倒する。しかしここに至って虎杖もまた羂索によって作られた存在、つまりある意味では“自分の弟”なのだと気付いた脹相は混乱し、彼にトドメを刺すことなく退いていく。

宿儺の暴走

自分たちの目的のために宿儺の力も利用しようと考えた特級呪霊一味により、一気に10本もの宿儺の指を飲まされる。これにより一時的ながら肉体の支配権を奪われることとなり、本人の意識が完全に喪失した状態で宿儺による破壊と虐殺を許してしまう。
気の向くままにその絶大な力を振るい、呪詛師も、特級呪霊も、渋谷に取り残された数千人もの人々をも殺し尽くした末にようやく肉体の支配権を取り戻すも、自身が脹相に敗れた結果招いた惨劇を前に泣き崩れる。その罪悪感から自らの死をも意識するが、「せめて人の役に立ってから終わりにしたい」との思いから立ち上がり、五条が封じられた渋谷駅地下を目指して歩を進める。

しかしそこで虎杖を待っていたのは、因縁深い真人によって、世話になった七海を目の前で殺されるという悲劇だった。激昂して彼に襲い掛かるも、真人は虎杖に精神的なダメージを与えるために釘崎をも手にかけて見せる。「また人を救えなかった」との絶望で戦意を喪失し、真人によって死の一歩手前まで追い詰められる。

真人との決着

真人にトドメを刺されんとしたところで東堂が駆けつけ、彼を援護しながら「託されたものを自分たちが受け継いでいく限り七海は死んだことにはならない、だからここで折れてはならない」と叱咤激励する。これによって心身共に満身創痍ながら再び戦線に加わり、東堂との連携で逆に真人を追い詰めていく。双方が重傷を負う凄惨な戦いの末に、ついに真人に打ち勝ち、彼の魂に“決定的な敗北”を刻み込む。
しかしここに五条を封印した呪具を回収した羂索が現れ、消耗した真人を取り込み、彼の力と術式を我が物としてしまう。五条を取り返そうと戦いを挑むも、その老練な戦術に翻弄され、新たに駆けつけた仲間たちと共に窮地に陥る。

そこに「虎杖は“自分の弟を殺した仇”ではなく、“羂索に騙されて血族同士で殺し合わされた弟の1人”である」と認識して過去のわだかまりを捨てた脹相が乱入し、虎杖たちを援護。この場で彼らを倒すことにこだわっていなかった羂索は悠々と撤退するも、その際に1000年以上の時間をかけて集めた万を超える呪霊を開放し、「この世に地獄を生み出したい」という目的の1つをほぼ達成してしまう。

東京壊滅

東京は渋谷を中心に大量の呪霊が闊歩する魔境と化し、“宿儺の暴走”という形ではあれ無数の人々を殺めた虎杖はその罪悪感から呪術高専を離れる。“兄”を自称して勝手についてきた脹相と、せめてもの償いにと東京で呪霊を狩り続けていたところ、呪術高専での先輩で五条に次ぐ実力を持つとされる乙骨憂太（おっこつ ゆうた）の来訪を受ける。乙骨は宿儺の制御に失敗した虎杖の処分を請け負っており、脹相ともども一蹴される。
しかし乙骨の真の目的は「自分が殺したことにして呪術界の追及から虎杖を守る」ことにあり、“致命傷を負わせて虎杖死亡の証拠を確保し、その後で彼を瞬時に回復する”という荒業でこれを成功させる。その乙骨の手引きで再会した伏黒は、羂索が「死滅回游」という新たな計画を進めていること、そこに自分の義姉が巻き込まれていることを虎杖に伝え、罪悪感に潰されそうになっている彼に「まずは俺を助けろ」と提案。クラスメイトにして戦友である伏黒からのSOSに、虎杖は罪の意識をいったん振り払って彼に協力することとなる。

死滅回游とは、日本各地に設置された広大な結界の中で、術師同士を殺し合わせるという凄惨な代物だった。その地獄絵図の中で「新たな可能性を持つ呪術師が生まれる」ことを羂索は期待しており、すでに何人もの術師や巻き込まれただけの一般人が命を落としていた。これを止める方法を調べるべく、虎杖は仲間たちと共に日本の結界術の第一人者である天元（てんげん）の下を訪ねる。
そこで天元は、羂索が自分を取り込もうと画策していること、そうやって“人間”という生物の規格をも再定義して今以上の地獄を生み出そうとしていることを彼らに説明。そんな天元の護衛のために、脹相などの強力な術師が彼の下に残ることとなる。渋谷事変以降、何も言わずに自分に尽くしてくれた脹相を、虎杖はここで初めて“自分の兄貴分”と認め、礼を伝えるのだった。

その後呪術高専における自身の先輩で、上層部と揉め事を起こして謹慎処分を受けていた秤金次（はかり きんじ）を新たな仲間に加え、虎杖たちは東京の2か所で繰り広げられている死滅回游の結界へと乗り込んでいく。

死滅回游への挑戦

死滅回游には、人間を殺すことで加算される得点を100点分使うことで、新たな総則（ルール）を追加できるという仕様があった。これを利用して、死滅回游を可能な限り殺し合いが発生しにくいものへと変えていき、最終的に終息させるのが虎杖たちの目的である。
すでに100点分の得点を持つ鹿紫雲一（かしも はじめ）、日車寛見（ひぐるま ひろみ）に接触して協力してもらうことが当面の目標となり、虎杖は伏黒と共に後者の捜索を開始する。

虎杖は首尾よく日車を発見するも、かつて弁護士をしていた彼は「死滅回游には“悪人が公正かつ迅速に罰せられるシステム”として現行の法律以上のものに育つ可能性がある」と考えており、協力を拒否。すでに多くの犠牲者が生まれている以上、時間をかけて説得する余裕は無いと判断した虎杖は力づくで従わせようと拳を構え、日車もこれに応戦する。
日車は裁判を模したシステムで相手の罪を暴き、“呪力の一時的没収”などそれに応じたペナルティを与える術式の使い手で、これを用いて虎杖を攻め立てる。なんとか隙を突こうとする虎杖だったが、日車の術で“渋谷事変での大量殺人”を暴かれる。虎杖がこれを素直に認めたことで死刑判決が下されるも、日車は渋谷事変当時の状況から彼が心神喪失状態にあった（＝罪を問える状態ではなかった）ことを知る。

人権派の弁護士として活躍するも、権力によって正義が捻じ曲げられる様を見て激怒し、ついには呪術を用いて人を殺めた日車だが、心のどこかでそれを後悔していた。自分の罪と愚直なまでに正面から向き合おうとする虎杖の中に、自分が見失った正義の精神を感じた日車は、「この少年を死なせてはならない」と戦闘を放棄。100点を使わせてやる旨を告げ、死滅回游に「参加した泳者（プレイヤー）同士で得点の譲渡が可能になる」という総則を追加する。
日車が悪性の人物ではないことを察した虎杖は、今後も呪術師として羂索の野望を打ち破るために協力してほしいと依頼するも、日車はこれを拒否。まずは自分の罪と向き合うと彼に伝えると、いずこかへと去って行った。

「天使」と「堕天」

その後髙羽史彦（たかば ふみひこ）という術者と合流した虎杖は、先んじて天使と接触していた伏黒を発見。結界内のホテルで休息を取りながら今後について話し合う。天使は過去の時代の術師であるらしく、来栖華の肉体を使って現代に復活したが、彼女の自我を奪わずに共存している状態にあった。五条復活のために協力してほしいと要請する虎杖たちに対し、天使は「どうしても見逃せない相手がいる」と語り、交換条件として“堕天”と名付けられたその存在の排除への協力を要求する。刹那、虎杖は宿儺に呼び出され、彼から「“堕天”とは俺のことだ」と笑みと共に告げられる。虎杖が「それで五条が解放されてこの事態が解決できるのなら、天使に宿儺ごと殺されても構わない」と考える一方、ボディランゲージでそれを伝えられた伏黒は「虎杖に早まったことをさせないようにするにはどうすればいいか」と新たな悩みを抱えることとなった。

この時、突如結界内部に米軍の兵士が大挙して突入。各国政府は羂索から「呪術師は新たなエネルギー源になりうる」との話を吹き込まれており、“日本人の保護”を名目に術師の確保に乗り出していたのだった。その真の目的が「呪霊への対抗手段を持たない軍人たちを大量に殺して膨大な呪力を生み出し、死滅回游にさらなる混沌をもたらす」ことだと察した虎杖たちは慌てて避難を開始するが、その途中に兵士たちの襲撃を受ける。伏黒たちと共にこれを退けた虎杖は、「兵士たちを助けよう」と提案。今さら彼らを助けたところで意味がないと苦言を呈する天使を無視し、伏黒や来栖たちと共に動き出す。
この頃には、死滅回游の終息に向けて虎杖たちが進めていた準備もある程度整っていた。まずは戦う力のない津美紀を助けようと考えた一行は、端末を通じて死滅回游のゲームマスターと交渉し、「新たな泳者を参加させた上で100点を消費すれば死滅回游を降りることができる」という総則を追加する。あとは津美紀にそれを実行してもらうだけとなった時、彼女は虎杖たちから譲渡された100点を使って「結界を自由に出入りできる」総則を追加する旨を宣言。嫣然と微笑む彼女を見て、伏黒は驚愕と共に「お前は誰だ」と呻く。実のところ、津美紀はすでに万（よろず）という過去の術師に肉体を乗っ取られており、その状態で“伏黒の姉”を演じ続けていたに過ぎなかった。

万の目的は宿儺と戦うことにあり、「どうせなら広いところがいい」と言ってその場を飛び去る。虎杖たちが慌ててこれを追おうとした瞬間、宿儺が「契闊」と唱える。かねて交わした“縛り”により虎杖の体を乗っ取った宿儺は、天使の頸動脈を抑えて失神させると、自分の力を虎杖の小指に集めて引き千切る。“縛り”の内容は「1分間だけ体の支配権を宿儺に渡す」、「その間決して誰も傷つけない」というものだったが、呪術に関わるようになってから強い罪悪感を抱えるようになった虎杖は、後者に関して自分自身については計算に入れていなかった。宿儺はこうなることを予想してあの内容で“縛り”を結ぶよう持ち掛けていたのだった。
咄嗟に宿儺を止めようとした伏黒につかみかかると、宿儺は引き千切った小指を彼に飲ませる。1分後、意識を取り戻した虎杖が見たのは、“宿儺に肉体を乗っ取られた伏黒”の姿だった。何が起きたのかを把握するより早く、宿儺に殴り飛ばされた虎杖は、いくつものビルを貫通した末に瓦礫の中で倒れ込む。自分の仲間たちが次々に手にかけられていく様を目の当たりにして激昂する虎杖を、宿儺は「もはや用済み」として始末しようとするが、予想外のタフネスを発揮する彼に苦戦。それは虎杖の生来の頑強さだけでなく、肉体を乗っ取ったはずの伏黒の抵抗のせいでもあった。

真紀も戦線に復帰し、宿儺を野放しにさせてなるものかと猛然と襲い掛かるも、この場に駆け付けた裏梅の不意打ちにより虎杖たちは身動きを封じられる。宿儺は「自由を得た以上、もはやあの小僧の生死に興味はない」として、一行にトドメを刺すことなく裏梅と共に飛び去っていく。虎杖にできたのは、ただ悔しさと絶望に身を震わせながらそれを見送ることだけだった。

死滅回游の終焉