岳(漫画・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『岳』とは2003年より『ビッグコミックオリジナル』にて連載が開始された石塚真一による漫画、および原作を基にして作られた映画のことである。山岳遭難救助隊の新人として配属された女性警察官と山を愛する山岳救助隊員との交流を中心として、山を愛する人々の想いや成長過程が細やかに描かれている。美しさだけではなく、時には人間に容赦なく襲い掛かる自然の驚異を体感させてくれる山愛に満ち溢れた作品だ。

高度2400メートル以上の酸素が薄い場所において体内の酸素濃度が低くなることによって引き起こされるさまざまな症状のことで、頭痛や吐き気、めまい、嘔吐、判断力や集中力の低下などの症状がある。軽度の高度障害の場合は高度を下げることによって改善が見込まれる。
一方人間が生存できない程に空気が薄い「デスゾーン」と呼ばれる8000メートル以上の高所では、絶えず酸素ボンベを使用していても息苦しさや頭痛を感じるようになる。酸素ボンベが切れた途端に目の霞みや息切れを感じ、重度の酸素不足に陥ると視力障害を起こして目が見えなくなることもある。酸素不足による視力低下は高度を下げることにより改善するが、「デスゾーン」に24時間以上など長時間留まっていると脳細胞にもダメージを与え、幻覚や妄想、意識が混濁するなどの症状が現れる。また血液がドロドロになってくるため血栓ができやすく、通常よりも凍傷にかかりやすくなるので手足を動かし血流を確保することが重要である。
高度障害を防ぐためには徐々に体を低酸素に慣らしていく必要があり、エベレスト登山を行う前には周辺の村や山に登って高地順応トレーニングを行う。

シェルパ

ネパールに住むシェルパ族という少数民族で山岳ガイド。2500メートル以上の空気が薄い場所で生活してきたため高度障害に強く、エベレストなどの登頂をサポートするのに欠かせない存在。頑強な体力を生かして荷運びを専門とする「ポーター」と呼ばれる者もおり、ポーターの背負う荷物は30kgを超えることもある。
エベレスト登頂ツアーでは事前にガイドやシェルパによって山頂までのガイドロープが張られ、酸素ボンベなどの必要物品の荷揚げを行っている。

エベレストベースキャンプ

出発地である高度2840mのルクラからエベレスト街道を抜けた先にある、高度5400メートル地点にあるキャンプ地。エベレストベースキャンプまでを目的としたトレッキングコースもあり、エベレスト登山を行うものは途中の村やトレッキングコースを利用しながら高地順応のトレーニングを行う。ローツェのレギュラールートである西壁を登るルートはエベレストベースキャンプから続いているため、エベレストだけではなく世界各地から多くのクライマーが訪れている。

クレバス/シェルンド

標高が高く常に気温が低いために溶け残った雪が積み重なった「雪渓」の上にできる割れ目のこと。また雪渓の下に雪解け水が流れている場合は「シェルンド」と呼んで区別する。
いずれも周囲は非常に硬い雪の壁であり、入口よりも内部の方が広くなる構造のために自力での脱出は困難となる。
シェルンドは流れている水の冷気が更に体温を奪うため、着込んだ人間でも30分が限界と言われている。

雪庇(せっぴ)

強風によって雪が庇(ひさし:屋根のこと)のように積み重なった状態。山の尾根の上にできることが多く雪の下は何もない状態のため、雪庇を歩く際には滑り止めのクランポンや雪の深さを確かめられるストック、ピッケル等が必要となる。

クランポン

雪の上でも歩行ができるよう、滑り止めの刃がついたブーツの上に着ける補助器具。標高の高い山では頂上付近は気温が低く、ふもとに雪がない状態でも雪が溶け残っていることが多くある為、頂上を目指す際には必須の道具となる。クレバスの上などに設置された梯子を渡る際には、クランポンの刃が食い込むケースがあるため注意が必要である。

ピッケル

別名をアックスとも言い、登山をする際に欠かせない道具。刃がついた部分は凍り付いた滝や氷河を渡る際の登攀器具になり、スコップで雪洞を作る、柄をストック代わりにして登るなど様々な使い方がある。やすり掛けをすれば繰り返し使うことができるようになっている。

クライムオン/クライミング

壁や岩、ロープなどを登り始める前に安全のため宣言する掛け声のこと。複数人でクライミングを行っている場合登り始めるものは「クライミング」と声を出し、他のものは「クライムオン」と声をかける。

ラック(ロック)

落石を意味する掛け声。英語の「ロック(岩)」と落石の「らく」を合わせた言葉だが、ロックとラックは同じ意味であり特に状況によって使い分けられている事はない。落石は即座に命にかかわる場合が多いので、落石を目撃したら必ず大声で周囲の人間に知らせることが重要となる。

『岳』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

島崎三歩「よく頑張った」

亡くなった人にも変わらずよく頑張ったと声をかけ続ける三歩

三歩が山岳救助を行う場面で必ずと言っていいほど口にする「よく頑張ったね」というセリフ。三歩は山と山に登りに来た人すべてを愛しているため、たとえ登山者の不注意が原因で発生した事故でも決して責めずに優しく言葉をかけている。救助の現場で間に合わずに亡くなってしまった人や、遭難して数年の時が立ち白骨化した人、腐敗が始まりミイラのような状態になってしまった人でもその言葉は変わらない。
大切な人がなくなって立ち直れなくなっている家族の中には、三歩の「よく頑張った」という言葉に涙を流して死を受け入れられるようになる人も大勢存在している。

野田正人「それでも俺は救助が好きだ」

普段厳しい上司の正人が見せた穏やかな表情

阿久津の事故によって異動する事になった正人が、責任を感じて山岳救助隊員を辞めようと考えていた久美に伝えた言葉。普段の勤務では冷静な態度で時に冷たい性格だと取られることも多い正人だが、久美に「事故はだれにでも起きる可能性があり、危険は常に自分の隣にある自分の一部だ」と伝えた後、穏やかな表情で「救助が好きだ」と信念を述べていた。三歩だけが知っていた、正人の情熱や山にかける愛が伝わるセリフだ。

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