岳(漫画・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『岳』とは2003年より『ビッグコミックオリジナル』にて連載が開始された石塚真一による漫画、および原作を基にして作られた映画のことである。山岳遭難救助隊の新人として配属された女性警察官と山を愛する山岳救助隊員との交流を中心として、山を愛する人々の想いや成長過程が細やかに描かれている。美しさだけではなく、時には人間に容赦なく襲い掛かる自然の驚異を体感させてくれる山愛に満ち溢れた作品だ。

パタゴニアのフィッツロイにクライミングに着た三歩が、一緒に登るパートナーを探して声を掛けたスペイン語を話すクライマー。三歩はスペイン語が理解できなかったものの英語とボディランゲージを駆使してコミュニケーションを図り、猛烈な天候の悪さに見舞われたものの共に頂上へたどり着くことができた。頂上でコーヒーと海苔を楽しんでいた三歩はカミロにも差し出し、お互いのチャレンジをたたえあって別れた。
その後ティートンへ戻った三歩のもとに、一文字ずつ懸命に辞書で文字を調べてしたためたカミロからの手紙が届く。
日本に戻ってきた今でもカミロの手紙と一所懸命に書いてくれた事をうれしく思っていた三歩は、仲間に入れず公園でポツンとたたずんでいた男の子にカミロのエピソードを話して男の子が自分から友達に声を掛けられるように背中を押した。

その他の登場人物

横井ナオタ(よこいなおた)

演:小林海人
初登場時は小学4年生の10歳。両親が離婚して父親と二人で生活をしていた。父親はビルの建設を行っており、山に登って父子2人でおにぎりを食べる「オトコメシ」の約束を果たすために下見として山に入る。ところが途中で滑落して動けなくなってしまい、夜になっても父親が戻ってこなかったためナオタが警察署に駆け込んで救助を要請した。
救助に当たった三歩が現場に到着した時には出血は多かったものの生存していたが、早朝のヘリコプターが出る間際に容体が急変しナオタの到着前に亡くなってしまう。ナオタはショックで泣き崩れるも気丈に振る舞い、富山で祖父母に引き取られ新しい生活を開始する。

命がけで救助に当たってくれた三歩を「山の兄ちゃん」と呼んで慕っており、学校の行事に三歩を招待したり学校で作った陶芸教室の作品をプレゼントしている。ゴールデンウイークや夏、冬休みなどの長期休暇中は度々三歩達と過ごしており、ナオタが中学生になった年の夏休みに三歩のガイドで初めて父親が死んだ山に登った。

阿久津が落石事故から意識を回復した後、訪ねてきた三歩から「岳」と書かれた救助時に三歩がいつも被っている帽子を託される。ネパールのローツェに一人で登りに行くことを告げられたナオタは「兄ちゃんは死なないで」と三歩に言葉をかけて見送った。
三歩が北アルプスを去ってから5年後、小学生時代に三歩と登る約束をしたジェニーレイクを前に「岳」の帽子をかぶったナオタが描かれている。

谷村文子(たにむらふみこ)

演:市毛良枝
三歩や久美、ナオタらが頻繁に訪れている谷村山荘の女性主人で通称「オバちゃん」と呼ばれている。元々登山には興味もなかったが、山が好きな男性と出会い富士山に連れてこられる。男性は富士山の頂上でプロポーズする計画を立てていたが足を痛めて歩けなくなってしまい、見かねた文子が男性を負ぶって下山しその後結婚した。
結婚後は夫の知り合いからの伝手でやってきた少年院を出所したばかりの少年を引き取り、山荘での仕事を教えながら我が子同然に接する。少年が結婚して妻子とともに谷村山荘を訪れた際には、一人涙を流して喜んでいた。
夫の死後は山荘を受け継ぎアルバイトの子らとともに切り盛りしているが、年に一度休みを取り夫との思い出の場所である富士山に登っている。

ナオタの父親が山で死んだことを知った時には「強い子だね」と感じ、度々山荘を訪ねてきたときにはナオタを孫のようにかわいがっている。ナオタが学校の陶芸教室で作った「長生き」と書かれたお皿を送ってきたときには、涙ぐんでナオタの成長を噛みしめていた。

小田草介(おだそうすけ)

初登場時は「冒険部」に所属していた大学生。冒険部の活動でパラオに行った際に日本人兵士の遺骨を見つけ、写真を届けるために冬の北穂高岳に一人で入った。登山経験がなかったために装備に対する知識が不足しており、通りがかった三歩にクランポンを借りるも歩きにくさから外してしまい、シェルンドと呼ばれる雪の壁の間に落ちる。
シェルンドは猛烈な寒さのため落ちてから30分が限界だといわれているが、クランポンが引っ掛かったことと、草介を心配した三歩がたまたま様子を見に行った際にすぐ発見され救助されたことにより命拾いする。

三歩に救出された際また山に来ると約束を交わし、社会人になってからはエベレスト登頂を目標にトレーニングに励む。そして三歩の友人であるオスカーが主催するエベレスト登頂ツアーに稼いだ貯金を全額払って退職し、ネパールのルクラでローツェを登りに来た三歩と偶然再会した。道中は荷物を運んでいた動物のヤクが崖から転落したり、隊のメンバーが体調不良に見舞われるなどのトラブルが続くも同行していた三歩やメンバーのアンジェラの活躍もあって無事解決する。

三歩と別れた後のエベレスト登頂中、メンバーのビルが酸素不足によって体調に異変をきたしクレバスに落下するという事故が発生する。ビルは生存していたが引き上げのために担架が必要となり、草介は志願して氷の壁の中に入っていった。自らが三歩に救出された学生時代を思い返し、改めて三歩の凄さを実感する草介。その後アンジェラを助けながら無事エベレスト登頂を果たした。
下山を開始したところで予定外のアタックをしていたインド隊と鉢合わせたオスカー隊は、ブリザードに巻き込まれ酸素ボンベも尽きてしまう。サウスコルのテントまで先行していた草介だが、目前で風にあおられ飛ばされる寸前のところをローツェから駆け付けた三歩に救われた。その後は救助に向かった三歩のサポートを行い、オスカーを救助して戻ってきた三歩と別れて下山した。
ネパールから帰国後は志願して山岳救助隊に入隊し、久美の後輩として北アルプスで救助活動を行っている。

オスカー

三歩がアメリカにいたときのクライマー仲間。エベレスト登頂のツアーガイドをやっており、草介ら10人のクライアントを連れてエベレスト登頂を目指す。仕事に対する姿勢は沈着冷静で責任感があり、体調不良の為夜間にに下の町まで降りることになったビルを心配して眠らずに連絡を待っていた。ビルに付き添って一緒に下の町へ降りた三歩から連絡を受けた後にも一睡もせず、エベレスト登頂のためのトレーニングをこなすなど体力もある。
草介、アンジェラ、リンダを登頂に導くも自身は高度障害のために体調を崩したマイクに付き添い、頂上手前から下山を開始する。
ところが予定外にインド隊が登ってきたためにその場で足止めを食らい、ブリザードのなか酸素不足で動けないマイクとともにヒラリーステップに留まる。酸素ボンベを取りに行ったピートが滑落してしまったため、オスカー自身も寒さと酸素不足で倒れてしまうが、幻覚の中で亡くなったかつての仲間から「オスカーは大丈夫だ」と励まされ、間一髪で三歩に救出された。

ピート

オスカー率いるエベレスト登頂ツアーのスタッフ。体調を崩したビルの搬送やクレバスからの救出活動を行っている。エベレスト頂上からの下山時予定外登頂のインド隊のために酸素が足りなくなり、オスカーとマイクを残してブリザードの中を酸素ボンベを取りに先行する。酸素ボンベ4本を担いで再び登り始めるも、雪庇を踏み抜いて滑落してしまい気を失う。三歩と草介によって救出され、酸素ボンベを持った三歩と別れて草介とともに下山した。

テンジン

オスカーのエベレスト登頂チームに同行しているシェルパ(山岳ガイド)。経験豊富でエベレストの危険をよく知っているため、三歩のサポートをするため頂上へ戻ろうとしていた草介に下山するよう説得した。しかし草介の「生きているから助けに行きたい」という強い想いをを受けて草介に同行し、マイクを背負ったまま滑落しかけていた三歩を救出した。その後崖下に転落したピートを救出するために残った三歩、草介と別れマイクを背負ってテントまで戻る。
エベレストベースキャンプからブリザードが弱まるという情報を受けて、三歩に救出されたオスカーを背負い隊を率いて下山した。

アンジェラ

スペインから参加した女性医師。エベレスト登頂ツアーに参加する前は、アフガニスタンで戦争により傷ついた子供たちを治療していた。爆弾によって両足を失った少年から、亡くなる直前に「エベレスト頂上の話を聴かせてほしい」と言われたことでエベレストに登ることを決意する。エベレスト以外の世界七大陸の名峰を制覇している実力者。エベレスト頂上へのアタック途中では酸素不足によって滑落しかけるも、草介によって助けられ登頂に成功した。
下山途中草介とともにサウスコルのテントまで先行したが、寒さと酸素不足のためにテントの手前で失神。ローツェから救出にやってきた三歩に発見されてテントに運ばれる。オスカーが三歩に救出されて戻った後下山した。

ビル

勤めていた郵便局を退職してエベレスト登頂ツアーに参加したアメリカ人。空港に着いた時からこっそりビールを飲んでいたり、酸素不足のため頭痛や寝不足などの症状が出ていたがオスカーに隠すなど問題行動を度々起こしている。酸素不足によって意識が朦朧としていたためロープから外れていることに気が付かず、雪面で滑ってクレバスに落下する。テンジンやピート、草介らに救出された後は骨折のためヘリで搬送され離脱する。
高校時代からアルバイトを始め、10年間努力してエベレストに登ることを夢見ていた。草介はかつて自分が三歩から言われたように「よく頑張った」とビルに言葉をかけ、また二人でエベレストを登ろうと約束し握手を交わして別れた。

マイク

オスカーが率いるエベレスト登頂ツアーの参加者。妻と子供と別れたショックで酒に酔いつぶれ、道路の真ん中を歩いていた時にリンダの車に轢かれたことがきっかけでリンダと交際が始まる。若い時様々な場所に出かけていたが、リンダとマイクが行ったことがなかった場所がエベレストの頂上だったため、ハネムーンとしてツアーに参加した。道中は喧嘩ばかりしていたが、ヤクが崖から落ちて荷物を担ぎ上げる際にはリンダと息の合った姿を見せていた。
高度7000メートルを超えたあたりから高山病のために食事を受け付けないようになり、睡眠がとれないまま登頂をしていた。オスカーには体調不良を隠していたが高山病の症状が悪化し、頂上手前で時間切れのため登頂を断念する。
下山しようとしたときインド隊の予定外の登頂のために足止めを食らい、酸素を節約しようとしたがボンベのコックを逆に回したために酸素が空になってしまう。オスカーとともに頂上付近で待機することになるが、高山病の影響は大きく酸素不足からくる視力障害を起こすほどに衰弱して瀕死に陥る。マイクに寄り添っていたオスカーもあきらめかけたとき三歩に救われ、重度の凍傷から指を諦めなければならない状態になるも生還して下山する。

リンダ

mtm
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@mtm

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