岳(漫画・映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『岳』とは2003年より『ビッグコミックオリジナル』にて連載が開始された石塚真一による漫画、および原作を基にして作られた映画のことである。山岳遭難救助隊の新人として配属された女性警察官と山を愛する山岳救助隊員との交流を中心として、山を愛する人々の想いや成長過程が細やかに描かれている。美しさだけではなく、時には人間に容赦なく襲い掛かる自然の驚異を体感させてくれる山愛に満ち溢れた作品だ。

三歩がアメリカのティートンでレスキュー隊のリーダーを行っていた時の元チームメイト。同じくチームメイトだったピッツィーとともに来日し、三歩を訪ねた際に成り行きで救助活動を行う。その後日本を気に入ったザックは、三歩に紹介された松本市内の居酒屋「ケルン」でアルバイトをしつつ要請を受けて山での救助活動を行っている。既婚者だったがクライマーの妻をヒマラヤで亡くし、ザック自身は妻を奪った山が大嫌いだったという過去がある。妻の死から数年後、彼女が死んだ場所を見たいという思いからトレーニングを重ねクライマーとしての確かな実力を身に着けていった。

雪山での救助を三歩に依頼されて集合場所までの送迎役としてやってきた久美に一目惚れする。救助を頑張っているからと久美にプレゼントを渡したり、バレンタインの義理チョコをもらったとき三歩に見せびらかすなど度々久美にアプローチをしていた。久美が救助や人間関係で悩みを抱えたときには寄り添って励まし、阿久津の落石事故が要因となって正人や三歩が北アルプスを離れた際は不安を吐露する久美に対して「自分がいるから大丈夫だ」と言葉をかけて久美を支えた。

エベレスト登山を終えネパールから帰国した小田草介が山岳救助隊に入隊するのと入れ替わりにザックは日本を離れ、アメリカのモンタナ州で問題を起こしてしまった子供たちのためのアウトドアスクールで働いている。

牧英紀(まきひでのり)

演:渡部篤郎
昴エアという会社に所属していたヘリコプター乗り。既婚者で6歳になる女の子の父親。
救助の技術はとても高く迅速に行動するが、救助の効率化を図る目的と二度と事故にあってほしくないという思いから要救助者に対して厳しい態度をとっている。

高校3年生の時リーダーを務めていた山岳部の後輩が雪山で滑落するという事故が発生し、責任を感じた牧は事故後ずっと山に入り1年間後輩を探し続けて発見したという過去がある。山岳救助隊員になりたいと言っていた亡くなった後輩の夢を受け継いでヘリコプターでの救助活動を行っていたが、赤字続きのためレスキューから撤退し荷運びに徹するよう社長から通告される。通告後も三歩ら山岳救助隊からの要請を受けてレスキューを行っていたが、社長が妻に牧を説得するよう依頼していたことを知りレスキューから完全に撤退する。

三歩から重傷者搬送の依頼を受けた際に他のヘリをあたるよう要請を断るも、三歩から「1000個の荷運びより一つの命が牧さんでしょ」と言われたことでレスキューを決意。パイロットの青木誠とともに「燕レスキュー」(ツバクロレスキュー)を設立して独立する。会社設立のため800万の資本金が必要となったが、高校時代後輩の救助に当たってくれた当時の山岳遭難救助隊隊長であった新見の呼びかけにより山岳関係者からの寄付で賄うことができた。

三歩が北アルプスを離れてから5年後もレスキューを続けており、時おりパイロットの青木と久美の子供であるのぞみをヘリに乗せて面倒を見ている。

青木誠(あおきまこと)

牧とペアを組んでいる昴エアレスキュー(後の燕レスキュー)のパイロット。埼玉県草加市出身で父親は元消防士。実家から心配されており、煎餅とともによく手紙や電話が来るため返事に困っていた。たまの休日は「山を知るため」に登山を楽しんでいる。
ヘリコプターの操縦技術は優れており、牧からも信頼されている。社長の説得を受けてレスキューから完全に撤退した牧が三歩の救助要請を断った際、説得する三歩に同意して牧にレスキュー継続を決意させた。その後牧とともに燕レスキューを設立している。
三歩が北アルプスを去った後久美と結婚しており、娘ののぞみをもうけた。

山口

遭対協の隊長を務めているヒュッテ山口の経営者。山が大好きで度々仕事の隙をついては山荘を抜け出し登山を行っている。遭対協のメンバーを集めた新年の登山会では例年あるはずの雪庇がなくなっていることに気付き、迅速な捜索活動を行ったことで遭難者の救助を行うことができた。三歩の「よく頑張った」と要救助者に優しい態度が気に食わないと憤る宮川に対して、山口は「三歩によく頑張ったと言ってやるやつはいないんだ」と三歩に理解を示した。
三歩がいなくなってからの5年後も救助活動は続けており、度々久美や草介に救助協力を行っている。

宮川三郎(みやがわさぶろう)

遭対協の副隊長を務めている岳天山荘のオーナー。28年山登りをしているベテランクライマーで、三歩に救助要請の依頼が入った時には「三歩より先に現場へ到着して三歩に救助のサポートをさせる」と意気込んで出動していく。山荘の客や登山者にかっこいい姿を見せたいため勢いよく崖を登ったりするが、年齢を重ねて体力が追い付かなくなっているため登山者の見えないところで荒い息をついて休憩している。

登山者に「事故を起こしてほしくない」という思いから登山者に厳しく接しており、騒ぐ山荘の客に早く寝るよう促したり消灯後の見回りを行ったりしている。
三歩と同じような性格で昔は「危険な場所に出向くのは自分一人で良い」と言い仲間を連れずに一人で出動していたが、登山者には優しく接して危険な場所には自分一人で行く三歩を「甘いから嫌いだ」と従業員で救助隊員の松下に述べている。しかし内心では心配しており、雨の中での救助でピンチに陥った三歩を救っている。三歩がネパールのローツェに単独登攀に行くという話を聞きつけ、山口とともに谷村山荘で酒を交わして見送った。
三歩がいなくなってからの5年後も救助活動は続けており、度々久美や草介に救助協力を行っている。

安藤

演:やべきょうすけ
久美の先輩にあたる山岳遭難救助隊の隊員。阿久津の事故の責任を取って異動になった正人の後任として隊長に就任した。久美が入隊して間もなくのころ救助活動中に遺体を背負って崖を下りていた際に落石に当たり、大腿骨骨折の大怪我をしたことがある。

三歩のクライマー仲間

スコット

三歩が世界中の名峰を登っていた時に南米のフィッツィロイで出会ったクライマー。三歩と同じくヨーロッパや南米の山を一人で登ってきたベテランで、初対面の時は挨拶を合した程度だった。グランドティートンを登っていた三歩が偶然再会し、二人とも山での仕事を探していたためにそのままティートンのレスキューチームに就職した。
2か月でチームリーダーにそれぞれ選ばれるほどの実力者だった三歩とスコットは、お金がたまったころレーニアを目指すクライミングの旅に出る。最終目的地であるレーニアを登っている途中4000メートル付近で高度障害を発症し、クライマーとしての限界を悟った。レーニアから二か月後冬のマッキンリーの山に入ったまま消息不明になり、三歩がローツェでオスカーと再会した際にマッキンリーのクレバスで亡くなっていたことを知らされた。

アンディ

無酸素でのエベレトチャレンジを3度行い、そのうちの2回を頂上付近で発見した遭難者救助のため断念してきたクライマー。いずれの遭難者も助かることはなかったため、三歩とともに挑戦した3度目のエベレストで遭難者を発見した時「自己責任だ」と述べてそのまま頂上へ向かった。頂上まで1時間以内で到着できる距離まで登っていたが、8000メートル級の山を無酸素ですべて登っていた隊長に諭され登頂を断念。
遭難者の救助を選んだものの無酸素の高所で苦戦していた三歩の元へ駆けつけて、遭難者の搬送を交代することを申し出る。そのときすでに遭難者は亡くなっていたが、ベースキャンプまで遭難所の遺体を下ろし切った時隊長から笑顔で迎えられて満足げに微笑んだ。
その後ヒマラヤに一人で入り三歩あてに遺書を残して凍死していたことが、ザックとピッツィーによって明かされた。

デイモン

ヨセミテのハーフドーム(3000メートルに及ぶ巨大な岩壁)を一人で登りに来ていた三歩が出会った、ペンシルバニア州出身のクライマー。出発の前日クライミングの道具をチェックしていた三歩に話しかけ、デイモン手作りのTシャツを褒められたことで親しくなりビールを飲みかわす。翌朝三歩が起きる前に「岳」という帽子と、頂上で会おうというメッセージを残して出発した。
三歩が登頂をトライして8日目、滑落し三歩の目の前を落ちていった。手を伸ばせば届く距離だったが、三歩は自身の命を優先することを選択したためそのまま滑落死したものと思われる。
頂上に立った三歩はデイモンから残された「岳」の帽子をかぶり「帽子ぴったりだったよ、ありがとう」とデイモンを偲んだ。以降三歩は救助の際はその帽子をかぶっており、ローツェに旅立つ前「預かっててくれ」とナオタに帽子を託す。最終話ではグランドティートンの前に立ったナオタが「岳」の帽子をかぶっている。

ドウェイン

三歩がティートンのレスキュー隊リーダーだったころのチームメイト。愛称は「D(ディー)」で入隊当初非常に痩せていたために三歩やザックから「やせのドウェイン」と呼ばれていた。ザックが日本に住み始めてしばらくたったころ、来日するという連絡がザックに入ったため三歩とザックは上高地まで迎えに行く。しかし久しぶりに会ったドウェインは見る影もないほどに太っており、ザックの反対を押し切って登り始めた穂高岳で足を負傷し歩けなくなる。
救助要請を受けて現場に向かった三歩と交代したザックはドウェインの重さにうんざりしながらも背負って下ろしていたが、また山に登りに来たいというドウェインの言葉を聞いて思わず「そんなに太ってまだ自分をクライマーだと思っているのか」と尋ねた。そんなザックにドウェインはスパムを差し出してみせる。それは初めての救助に緊張するドウェインに三歩が贈ったものだった。

「それがあれば絶対に死なない。俺たちクライマーのあかしだ」と励ます三歩から貰ったスパムを未だ大切に持ち歩いているドウェインは、今は無理でも必ず山に挑戦に来ると宣言しまたザックと三歩に会いに来ると伝える。それを聞いたザックは「いつでも待ってる」と笑顔で答えた。

カミロ

パタゴニアのフィッツロイにクライミングに着た三歩が、一緒に登るパートナーを探して声を掛けたスペイン語を話すクライマー。三歩はスペイン語が理解できなかったものの英語とボディランゲージを駆使してコミュニケーションを図り、猛烈な天候の悪さに見舞われたものの共に頂上へたどり着くことができた。頂上でコーヒーと海苔を楽しんでいた三歩はカミロにも差し出し、お互いのチャレンジをたたえあって別れた。
その後ティートンへ戻った三歩のもとに、一文字ずつ懸命に辞書で文字を調べてしたためたカミロからの手紙が届く。
日本に戻ってきた今でもカミロの手紙と一所懸命に書いてくれた事をうれしく思っていた三歩は、仲間に入れず公園でポツンとたたずんでいた男の子にカミロのエピソードを話して男の子が自分から友達に声を掛けられるように背中を押した。

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