岳(漫画・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『岳』とは2003年より『ビッグコミックオリジナル』にて連載が開始された石塚真一による漫画、および原作を基にして作られた映画のことである。山岳遭難救助隊の新人として配属された女性警察官と山を愛する山岳救助隊員との交流を中心として、山を愛する人々の想いや成長過程が細やかに描かれている。美しさだけではなく、時には人間に容赦なく襲い掛かる自然の驚異を体感させてくれる山愛に満ち溢れた作品だ。

マイクの再婚相手。離婚のショックで酒を飲み、酩酊したマイクを轢いてしまったことがきっかけでマイクと交際する。自身も離婚経験があり前夫との間に20歳になる娘がいるが、「マイクと結婚すれば幸せになれる」という娘の一言が後押しとなってマイクと結婚した。若い時様々な場所を訪れていたが、二人しか共有できない場所を作るためオスカーのエベレスト登頂ツアーに参加した。マイクの体調不良をオスカーに伝えようとするもマイクから止められ、そのまま頂上へのアタックに参加しリンダは登頂を果たす。
下山途中ブリザードに巻き込まれた際は力尽きて倒れかかるも、テンジンやピートのサポートによって無事サウスコルのテントまで辿りつく。三歩によってマイクが救出されたことを無線で聞いた際には、ほっとした様子をしていた。オスカーが三歩によって救出されテントに戻った後、メンバーと一緒に下山した。

インド登山隊

オスカーのチームがエベレストの頂上から下山しようとしたところ、予定外に頂上へアタックしてきたチーム。オスカーはインド隊のチームリーダーを無線で呼び出し、明日以降のアタックを明言していたインド隊が登ってきていることを抗議したが、インド隊のリーダーは「国の威信をかけて登っている」と返答しそのままアタックを強行する。ヒラリーステップでは狭すぎてすれ違いができないため、オスカーチームはインド隊が過ぎるまで足止めされることとなった。
オスカーはインド隊に下山するように警告するも聞き入れられず、インド隊メンバーは頂上でブリザードに巻き込まれ動けなくなってしまう。
インド隊のメンバーは次々と倒れていき、三歩がオスカーとマイクのもとに到達した時点では全員亡くなっていると思われていた。ところが三歩がオスカーを下ろし終えたとき頂上付近にいたインド隊の一人から救助を求める無線が入ってくる。限界の体を引きずって三歩は現場へ到着するも、インド隊の最後のメンバーが呼びかけに答えることはなかった。

映画版『岳-ガク-』の概要

島崎三歩役の小栗旬(中央)と椎名久美役の長澤まさみ(右下)

2011年5月に小栗旬(島崎三歩役)および長澤まさみ(椎名久美役)によって、実写映画版『岳-ガク-』が公開された。監督は片山修が務め、東宝から配給されている。
キャッチコピーは「生きる。」「標高3190m 気温-25℃ 命は命でしか救えない」

原作漫画(第11巻まで)を基にして作られたオリジナルストーリーで、山岳遭難救助隊の新人として派遣された椎名久美にスポットを当てて作られている。特に物語序盤に出された「山に捨てたらいけないものはなんだ?」という三歩からの問いかけに対して、時折挫折や葛藤を抱えながらも答えを見つけ成長する久美の心情が見どころだ。

映画版『岳-ガク-』のあらすじ

山岳遭難救助隊の新人隊員として北アルプスにやってきた椎名久美(長澤まさみ)は、初めての救助現場でボランティアで山岳救助活動をしている島崎三歩(小栗旬)と出会う。
山岳遭難救助隊隊長の野田正人と幼馴染だった三歩から救助や登山の技術指導を受けていた久美だが、三歩の軽い性格が合わず三歩に苦手意識を持っていた。そんな久美に三歩は「山に捨てたらいけないものなんだ?」と問いかける。ゴミと答えた久美に対して、三歩は不正解だと言って笑いながら久美を雪に突き落とし「宿題」とした。

救助を続けていた久美はある日の現場で、要救助者が目の前で亡くなってしまうという事態に遭遇した。遺体を担いで搬送しようとした久美だが重さで全く動けない。合流した三歩は泣き崩れる久美を宥めるも、崖から遺体を下に投げ落としてしまった。
その光景にショックを受けた久美は命を軽視していると感じて、遭難者に一方的に八つ当たりするなど勤務態度にも変化が生じる。宥める三歩にも反発した久美は一人離れて別行動を取るも崖から落ちて重症を負い、三歩に救助される。しかしヘリコプター救助士の牧から「アマチュアだな」と言われた事にショックを受けた久美は欠勤するようになってしまった。
上司である野田正人や三歩に背中を押されて現場復帰した久美は、三歩に救助隊に入隊した経緯を話す。
三歩と同じくらい山が大好きだった山岳救助隊の父親は、救助活動中の事故で亡くなってしまった。救助隊に入隊する1年前、父親の使っていたテープレコーダーが見つかる。父親が亡くなる直前のテープには「どんなときでも立ち止まらず」という言葉が残されていた。
話を聞いた三歩は「まっすぐ上を見て歩き続けろ」と言葉を引き継ぎ、「山に捨てたらいけないものは命だ」と過去久美に問いかけた答えを明かす。そして久美に「生きよう」と伝え、遭難者が遺した赤いマフラーをかけた。

ある日三歩は、救助が間に合わず目の前で父親を亡くした少年の横井ナオタの元を訪れに山を離れていたが、嫌な予感を感じて戻ってみると吹雪に包まれた山の中で三組の遭難事故が発生していた。極限状態の冬山で救助隊員の命がけでの救助が始まる。

『岳』の用語

長野県山岳遭難救助隊

長野県警の地域課が管轄している組織。山での遭難者の捜索や滑落者の救助のほか、登山届の受付や北アルプスでのパトロールを行っている。遭難者の捜索には一定の期限が設定されており、期限を過ぎるといったん打ち切りの措置が取られる。その後の捜索には日割りで一日ごとに料金が発生するため、捜索を継続するかどうかの判断は家族に委ねられている。三歩が北アルプスにいた時代には野田正人、安藤、椎名久美、阿久津敏夫などのメンバーが所属している。またネパールから帰国したのち小田草介が志願して入隊している。
また作中では岐阜県の山岳遭難救助隊や、富山のヘリ救助隊などの存在が描写されている。

山岳遭難防止対策協会(遭対協)

民間のボランティア団体によって運営されている組織。基本的には長野県警の山岳救助隊からの依頼を受けて出動し遭難者の捜索活動や滑落者の救助などを行っている。遭対協のメンバーは隊長の山口(山さん)、副隊長の宮本(宮さん)、島崎三歩、ザックなど。ボランティア団体だが三歩は救助の出動ごとに長野県警から救助費が支払われているという描写がある。

登山届け

登山を計画しているものが、名前、住所、人数、登山ルート、入山予定時刻、下山予定時刻などを書き警察署などに届け出るもの。アメリカなどの海外でも登山計画書を記入する必要がある場合があり、レンジャー(レスキュー隊)事務所などに提出する。
山岳遭難救助隊では登山届に記された下山時刻などをチェックし、予定時刻から極端に遅れている人がいる場合には遭難や滑落の可能性があるため捜索活動を行う。

北アルプス

長野県、岐阜県、富山県の三県にまたがり南北150キロにも及ぶ広大な山岳地帯で、人気のある登山スポット。奥穂高岳や槍ヶ岳が作中では頻繁に登場している。長野県では松本市にある北部警察署の地域課が管轄しており、登山届の受付や北アルプスのパトロール、遭難、滑落者の捜索及び救助活動を行っている。

グランドティートン

アメリカ、ワイオミング州にあるティートン国立公園にそびえる4000メートル級の名峰。国立公園はグランドティートンにちなんで名づけられており、公園内には複数の湖と山々がそびえている。かつて三歩が世界中の山を登り歩いていた際に訪ねた山で、以前に別の山で出会ったクライマーとグランドティートンで偶然再会し、ともにレスキュー隊のチームリーダーになったというエピソードがある。
三歩とナオタといつか登りに行くという約束を交わし、最終話では成長したナオタがグランドティートンの前に立つ姿が描かれている。

ローツェ

ネパールにある8516メートルを誇る名峰で標高は世界で第4位。ヒマラヤ山脈のエベレストの南に位置しており、ローツェの頂上とエベレストの頂上は直線距離で3キロメートル程度である。レギュラールートであるエベレストベースキャンプを通っていく西壁ルートと、3000メートルを超える岩壁を登っていく南壁ルートがある。三歩はレギュラールートから登頂した経験があるが、阿久津の事故をきっかけに救助ではなくクライマーとして南壁ルートをソロ(単独)で登ることを決意した。
南壁をソロで登ろうとしたチャレンジャーは多くいたが、落石と雪崩によって命を落とし登頂に成功した者はいないとされている難しい山である。三歩は頂上付近まで登っていったが、隣のエベレストにブリザードが迫っていることを察知してオスカーたちの救助のために登頂を断念した。

エベレスト

ネパールのヒマラヤ山脈にそびえる8848メートルの名峰。別名チョモランマ。世界第一位の標高であり、世界各地からその頂上を目指してクライマーが訪れている。商業目的のエベレスト登頂ツアーも多く存在しており、草介が参加したツアーの参加費用は一人につきおよそ8万ドルだった。
無数の氷河の割れ目の上を通る「クンブ氷河」や「バルコニー」と呼ばれる開けた場所に至るまでの急こう配の上り坂、高さおよそ12メートルの垂直の壁「ヒラリーステップ」など数多くの難所があり、命を落とすクライマーも多い。さらに最終のキャンプ地が設営される「サウスコル」より上は8000メートルを超える高所であり、人間が生存できないほど酸素濃度が薄いために「デスゾーン」と呼ばれている。
最終キャンプ地からエベレスト頂上までの高低差は1.8キロメートルあり、通常の登頂ツアーでは酸素ボンベを使用してのアタックとなる。

高度障害

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