獣王・クロコダイン（ダイの大冒険）の徹底解説・考察まとめ

獣王クロコダインの切り札。闘気を片腕に収束させ、籠手や肩当てが弾き飛ぶほどに膨張させた後、それを解き放つことで竜巻状の衝撃波を生み出す。その威力はすさまじく、ロモス城の戦いで初披露した際はダイたち数人をまとめて戦闘不能に追い込み、バルジ島の決戦では複数の攻撃呪文を弾き飛ばし、無数の魔物を巻き込みつつ、炎魔塔をも倒壊せしめた。
竜の騎士の力を発動させたダイに対して「いかに今のお前の肉体が鋼のような強度でも、至近距離からこれを食らわせれば砕けぬはずがない」と言い切るほど、クロコダインはこの技に自信を持っており、後に実際に成熟した竜の騎士であるバランにすら手傷を負わせている。収束する闘気の量によってかなり自由に威力を調整できるらしく、牽制や目くらましとして使用することも可能。ザボエラにトドメを刺したのも、威力はごく弱いながらこの技だったと思われる。

後にパプニカ王国の老騎士バダックから「痛恨撃とは名前が物騒で良くない」とアドバイスされ、獣王会心撃に名称を変える。ドラゴンクエストシリーズでは味方のクリティカルヒットを“会心の一撃”、敵のクリティカルヒットを“痛恨の一撃”と表記しており、これは「クロコダインが主人公の味方になった」ことを暗に表しているエピソードである。

獣王激烈掌（じゅうおうげきれつしょう）

魔王軍との決戦を控えて新たな力を欲したクロコダインが、バルジ島近海の大渦に自ら飲み込まれることで着想を得て編み出した新しい必殺技。まず獣王会心撃を放ち、もう一方の腕で“逆回転の渦を描く”獣王会心撃を繰り出して双方を重ねる。闘気の奔流の中で身動きの取れない相手を、それぞれ逆に回転する渦に捉えることで“捩じ切る”という強烈な技である。
完全な状態で決まればオリハルコン製の魔法生物であるシグマの腕をもたやすく捩じ切るが、ミストバーンに放った際は手刀の一撃で無効化された。これは相手が一切の物理攻撃が通用しない状態だったためで、この技自体は終盤の敵にも通じたと思われるが、苦労して編み出したわりには見せ場が少なかったことも事実である。

焼けつく息（ヒートブレス）

体内で猛烈に加熱した息を吹きかけ、瞬間的に敵の動きを奪う、技というよりは生態的な能力。クロコダインの奥の手であり、実際に連発することは難しいのか、作中で披露したのはわずかに二回。二回目の使用の際は冷気呪文のマヒャドを浴びたダイとポップに吹きかけて、半ば氷漬けになっていた彼らを助けるという、攻撃的な能力を味方の救出のために用いる興味深い展開となった。

クロコダインの来歴・活躍

勇者たちとの出会い

百獣魔団長クロコダイン

地上のモンスターたちの間でその名と実力を知られていたクロコダインは、魔王軍に参加しその先兵となる。六大軍団の一つ、百獣魔団の団長に就任し、大魔王バーンと直属の上司である魔軍司令ハドラーに忠誠を誓った。
その後ロモス王国の攻略を任されるが、王国とはいえロモスは小国であり、「自分が戦うに値する戦士はいない」と早々に見切りをつけ、部下となったモンスターたちに好きなように暴れさせていた。

ダイとの邂逅

ある時、そんな日々に終止符が打たれる。ハドラーからじきじきに「次なる勇者の抹殺」の勅命が下されたのだ。当初は「子供ではないか」と乗り気でなかったものの、ハドラーが手傷を負わされたと聞いて俄然興味を持ち、自ら出向いてダイの実力を確かめようとする。
夜の森の中、ついにクロコダインはダイとポップを発見。自身が百獣魔団長であることを告げて襲い掛かる。その圧倒的な実力にポップは恐れをなして逃げ出すものの、戦場から逃げ出す弱者に興味は無く、ダイと交戦。あと一歩まで追いつめるも、騒ぎを聞いて駆けつけたマァムと、彼女に連れられて戻って来たポップの援護でトドメを刺し損ね、そればかりか夜明けの光が目に入った一瞬の隙を突かれてダイに左目を切りつけられる。

ザボエラの奸計

不利を悟って撤退するも、左目以上にプライドを傷つけられて荒れ狂うクロコダイン。そんな彼を、魔王軍所属のザボエラという魔法使いが訪問する。魔王軍六大軍団の一つ、妖魔士団の長であるザボエラは、卑劣な手段を好む男で、戦士としての誇りを第一とするクロコダインからすればあまり顔を合わせたくない相手だった。
ザボエラはクロコダインがダイに不覚を取ったことを知っており、「今度負ければ軍団長の地位も危うくなる」と言葉巧みに彼を誘導。一応は手助けをしたいという体裁を取っていたこともあり、クロコダインは迷いながらもザボエラの用意した“秘策”を受け取ってしまう。

ロモス城の戦い

ダイと決着をつけるべく、部下を率いてロモス王国に進軍。王を手にかける寸前で割って入ったダイと交戦する。たった数日の間に呪文を修得し、さらなる力を手に入れたダイに瞠目。「今ここで倒しておかねば」との想いを強く抱き、ザボエラの秘策を使用する。
彼に渡された魔法の筒の中から出てきたのは、ダイの育ての親のモンスターであるブラスだった。大魔王の邪気を浴びて正気を失ったブラスを事実上の人質にされ、反撃できないダイを蹂躙する。それを見たマァムや城兵たちに「それでも戦士なのか」と罵られるも、武勲の無い誇りなど張り子同然だと苦しい言い訳を口にすることしかできなかった。
一気に勝負を付けようと、最大の大技である獣王痛恨撃を放ち、ダイ、マァム、その場にいた城兵たちをまとめて戦闘不能に追い込む。