行け!稲中卓球部(古谷実)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『行け!稲中卓球部』とは1993年から1996年まで『週刊ヤングマガジン』に連載されたギャグ漫画。古谷実のデビュー作である。
コミックスは全13巻で完結。累計2500万部発行。1996年、第20回講談社漫画賞一般部門受賞作品。1996年アニメ化。
「稲豊市立稲豊中学校」の卓球部に所属する2年生6人が主な登場人物。特に女子にモテない前野、井澤、田中の3人が、学園生活で若い中学生特有の性欲を持て余し、抑えきれずに女子生徒や部員の肉親、通りすがりの女子までも巻き込むセクハラ行為の限りを尽くす。

『行け!稲中卓球部』の概要

『行け!稲中卓球部』とは、稲豊中学校卓球部を舞台とした古谷実作のギャグ漫画である。
卓球を舞台にしたストーリーはときどきあるが、ほとんどが卓球以外の学園生活日常生活が描かれる。
主人公前野と井沢、田中の3人を中心としたエロ、お下劣、変態的な行動を中心に展開する学園スポーツギャグ漫画。
部長の竹田と木之下は県内屈指の実力の持ち主だが、他の4人は初心者並の実力。上達を目指して練習をするわけではなく、毎日をおもしろおかしく過ごしている。
特に性欲の強い前野、井沢、田中の3人はルックスが良くなく女子にモテることは難しい。しかし人並みに彼女は欲しいという願望は強く、幸せなカップルに八つ当たりし妨害をすることを生き甲斐としている。
その中で「死ね死ね団」や「サンタ狩り」など、幸せなカップルを妬み、その幸せを妨害するユニットや活動が生み出された。その後井沢に彼女ができて、前野との仲に危機が訪れるが、様々な障害を乗り越えて更に深い友情で結ばれる。カンチョーワールドカップのように非公式ながら、下品で下らないスポーツには情熱を燃やし、卓越した集中力で優勝を収める。
ストーリーはギャグ漫画のため、卓球大会に向けて練習したり、試合をする描写は極端に少ない。また時がたっても学年が上がったり卒業するといったことは描かれない。
男性の欲求をストレートに表現した内容が男子中高生を中心に受け入れられ社会現象となった。その影響は国内に留まらず、台湾では作中の「死ね死ね団」を模倣した集団、「情侶去死去死団」が出現した。
幸せなカップルを妨害することが生き甲斐で人気のデートスポットでカップルに嫌がらせをするといった活動を行うなどニュースで取り上げられる事象が起こった。

『行け!稲中卓球部』のあらすじ・ストーリー

卓球部の部活と中学生活が舞台

稲中卓球部は2年生6人だけの部員で構成される。
キャプテン竹田と木之下は県内屈指の実力者だが、主人公前野、井沢、田中、田辺は初心者の域を脱していない。
しかし練習に熱心なわけではなく、「はみちんサーブ」や「おてもとサーブ」などふざけた技の研究に費やしており、キャプテン竹田を悩ませている。
キャプテン竹田は強豪校「岸毛中学校」渋谷とのライバル関係にあり、実力は拮抗している。しかし竹田、木之下以外の4人は完全に実力不足。練習もまじめに取り組もうとしない。
そこへマネージャーとして中学生離れした美貌を持つ岩下京子が入部する。前野達の性欲にさらに拍車がかかるが、卓球大会で優勝すれば岩下京子とセックスできる券を与えると岩下自身が提供したことで、前野の才能が一気に開花。快進撃を続けてついに決勝戦へと進むのであった。急激に卓球の実力が開花した前野は全勝で大会を終えた。しかしそれは前野に変装した卓球の達人老婆、岸本ありさだった。

新入部員町田くんの活躍

キャプテン竹田は団体戦を勝ち抜くため、前野、井沢の強化を試みるが全く練習に取り組まない。竹田は二人に見切りを付けて新しいメンバーを探すことを考えた。
しかし試合まで時間がない。そこでマネージャー岩下京子を男装させ、1年生「町田ひろし」として出場させることにした。練習に参加するなりメキメキと上達する町田くん。
このままでは前野か井沢のいずれかがレギュラーから外されてしまう。何とか竹田に認めてもらうべく雑草抜きやおばあちゃんの手助けなど良いことをしてアピールするが実らず、前野はメンバーから外されることとなった。
さらにグレる前野。竹田はそんな前野に目もくれず町田(岩下)を強化するため無理な練習を課す。そのためついに岩下が音を上げてしまう。竹田は岩下の機嫌を治すためについに岩下(町田くん)とキスをするのだがその場面を前野と井沢に目撃されてしまう。町田くんを男と思い込んでいる前野達は竹田がホモであると確信する。
竹田は誤解を解こうと木之下だけに打ち明けようと木之下の家まで行くものの、ホモだと思いこんでいる木之下が前野も呼び出しており、やけ酒を呑んで泥酔した前野・井沢が乱入する。町田くんの正体を打ち明けるタイミングを逃し、さらに前野は町田くんに惚れてしまう。そして前野は町田の応援に専念することにした。
肝心の卓球大会だが、町田くんはプレー中に巻いていたサラシがとれてしまい女性であることがバレ、失格となり初戦敗退するのであった。

井沢に彼女ができる

地味でイケてない女子生徒、神谷ちよこ。木之下のファンだった彼女はバレンタインデーに木之下にチョコを渡そうとしていたところを井沢にそのポテンシャルを見いだされる。木之下好みの女子に変えてやると言い井沢は神谷の才能を次々と開花させる。メガネをやめさせ髪型を変え巨乳をアピールする服装をさせた。そして木之下に告白する神谷だったがあっさりと振られてしまうのだが神谷はそのまま卓球部のマネージャーのように毎日遊びに来るようになった。それは神谷が井沢に惚れているからであった。ついに勇気を振り絞って井沢に告白する神谷。しかし井沢はすんなりOKしない。何故なら井沢は前野の報復を恐れていたのだ。そこで神谷は隠れて交際することを提案。さらに死ね死ね団に襲われたカップルは幸せになるという噂を流して後ろめたさを解消することに成功。後日徹底した工作も虚しく交際していることが前野にバレてしまうのであったが、その後も交際は続いていった。

カンチョーワールドカップ出場

相変わらず卓球には興味のない前野たち。ある日出会ったイケメン高校生、松沢から誘われカンチョーワールドカップに出場することになった。カンチョーとは3人対3人で行われる格闘技。攻撃はカンチョーさすのみ。防御はケツ締めて逃げるのみ。前後半15分ずつ。相手が全員ダウンしたら勝ち。カンチョー以外に手や脚を出したらPK(ペナルティーカンチョー)を取られる。同点の場合PK(ペナルティーカンチョー)戦で決着をつける。
参加は4チーム。松沢チームは1回戦、太っているという理由でキャッチャーズと名付けられた中学生らしき3人組と対戦。2人を軽くダウンさせた所、リーダーのエンゲルバーグが棄権しなんなく決勝進出を果たす。
前野達は一回戦で小学生チームと対戦。サッカーで鍛えた小学生はフィジカルで稲中チームを圧倒。井沢が早々にダウンする。あせった田中は無謀な攻撃に出たためファウルを取られPKを献上。あっという間に前野は一人となってしまう。しかしそこから前野が反撃。カンチョーされそうになった所を放屁で防御し一人倒す。その後は逃げ回られて屁も尽きて万事休す。最後の力を振り絞った前野はウンコをひねり出すことに成功。防御が完璧になった前野は二人を順番に抹殺し勝利を納めるのであった。
松沢チームとの決勝戦。一回戦でイエローを食らった田中はカレーを持ったままプレーすることになり開始早々狙われる。あえなくダウンする田中。しかしそのスキをついて前野と井沢が松沢以外の二人を攻撃しダウンを奪う。2対1で有利となった前野チームだったが、井沢が奇襲に溺れて返り討ちにあう。前野と松沢との一騎打ちは長期戦となり最終的に両者座り込んでしまう。延長までもつれるが決着がつかず、PK戦となった。PKは先制が超有利。前野がじゃんけんで勝ち、PKを制して見事優勝を収めるのであった。

女子バレー部にトレード

大会を前にしても全く練習しようとしない前野、井沢、田中の3人。ついに竹田は3人をトレードに出して野球部の1年生3人を獲得する。野球部でも使い物にならない前野達3人はさらに女子バレーボール部にトレードされてしまう。女装した3人は貴重な戦力としてライバル校との練習試合に女装して参加する。顔面ブロックを武器に最初は活躍したがブロックしかできないことを見抜かれてあっさり敗北。
女子バレー部顧問はライバル校に男子を使っても負けた事をバレたくないので3人に女装させて帰らせた。

女装させられた3人

女装して帰らされた3人。井沢は早く帰ろうと促したが、前野はこのまま帰ったらタダの負け犬になるので女を楽しむと怒りに満ちていた。するとエステティックサロン豚の巣店長から声をかけられエステティシャンのバイトをすることになった。見るからに怪しいエステ。店長も太っているくせに「だいたいこんなんで痩せようってのがバカなのよ。豚は肉屋にいけって感じ」とか言う始末。客も老いたデブが揃っていたが、なぜか一人だけ若くて美人の女性がいた。3人が取り合いになりそうになったが店長が田中にやるように指示する。前野と井沢は豚どもをチョップしたり競りにかけたりしていたが、田中は美女の胸を豪快にもんでいた。そして股間に差し掛かったとき、田中は「こんなんがいる!」といって、いかりや長介の唇になり女性器を表現した。前野と井沢も女性の股間を凝視。三人揃って「ダメだこりゃ!」と叫び店長に追い出されてしまうのであった。

稲豊市選抜チーム

稲豊市の卓球が稲豊市中学卓球の強化を図るため選抜メンバーを結成することになった。卓球強豪校の岸中からは渋谷が選ばれた。稲中からは竹田と前野が選ばれた。木之下は補欠として選ばれる。前野は前大会で卓球の達人岸本ありさを替え玉にしており、個人戦で優勝。岸中の渋谷にも完封で勝利しており、その圧倒的な実績が評価されて選出された。当然替え玉であったことはバレていない。
竹田たちは前野に辞退をすすめるが、こんなチャンスは二度とこないと辞退を固辞する前野。選抜メンバーの練習になんとかついていけるように特訓する前野だったがそんな付け焼き刃が通用するはずもない。
顔合わせの際に急遽行った練習では一球も打たずに自ら卓球台に飛び込んで負傷し退場する。
さらに懲りずに合宿に参加する前野。短期間で実力アップを目指したが叶うはずもない。結局またしても岸本ありさを替え玉に使う作戦にでるのだが井沢と田中に岸本ありさを発見される。前野は選抜メンバーを首になった。

最終回

最終回は特になんの前触れも無く訪れた。いつものように卓球の練習をする竹田と木之下。練習せず遊ぶ前野達。ふと神谷が6人が一年生の入部当初どんな感じだったのかをたずねた。そこで回想が始まる。
入部したての1年生6人はまだよそよししく自己紹介のあとはフルーツバスケットで親睦を図っていた。学校の帰り道、前野と井沢は方向が一緒だったが会話をかわすことはない。そこで井沢が前野に話しかけて二人は一気に打ち解けていった。だが飛び出してきたトラックを避けたときに井沢が壁と電柱の間に挟まれてしまい、前野は「まだあまり親しくないから」と言い残して先に一人で帰ってしまう。次の日の朝も井沢はまだ挟まっていた。
そして連載も終了するのであった。最終回らしい展開だが特に大きな盛り上がりもなく終了した。

『行け!稲中卓球部』の登場人物・キャラクター

稲中卓球部

前野(まえの)

主人公の前野

CV:岡野浩介(アニメ)/千葉繫(パチンコ)/福山潤(ムービーコミック)

主人公。稲豊中学卓球部2年生。下の名前は最後まで明かされなかった。
卓球部キャプテン竹田曰く「自分が利口だと思っているたちの悪い大バカ」。
卓球の実力レベルは低い。「はみチンサーブ」「ウミガメサーブ」などの必殺サーブ(一発ギャグ)の開発に余念がない。試合では通用しない。
しかし生まれながらのスケベ力を活かし、女が賭けの対象になると、集中力を発揮し一瞬の卓球能力は凄まじく向上する。
卓球以外の競技などでも同様にスケベ、エロを目的とした行動には常軌を逸した実力を発揮する。
学校の成績も悪い。クラスの不良からも一目を置かれるほどの変態である。

性格は悪い。思いやりがなく、他人に厳しい。女性に好かれる容姿ではない。
笑いを取ることに執念とも言えるほど全力を注ぐ。目立ちたがりで自己顕示欲が激しい。

医者に変装して学校の健康診断に潜入し、女生徒の裸を見る。生きたセミを食べる。老婆を強姦(未遂)するなど、現実世界なら犯罪レベルの荒業で性欲と好奇心を満たす。
その発想力と実行する精神は尊敬に値する。

モテない容姿ながら女生徒2人から数日の間に告白されることもあり(井沢の妨害により交際に至らなかったが)意外とモテる一面もある。
常に彼女が欲しいと熱望しているが、3年の先輩、優等生でかわいい若林貴子から好かれ迫られた際はなぜか避けている。
神谷ちよこの友達、キクちゃん(ブス)から好意をよせられ、付き合ったことがある。ただし、キクちゃんのメガネに止まったハチを倒す際に目潰しを食らわせ1話で破局している。

死ね死ね団隊長(前野と井沢の二人が結成したユニット、幸せな男女を妬んで妨害活動を行う。詳細は後述の用語を参照)
第一回カンチョーワールドカップ優勝メンバー。(カンチョーで戦う格闘技の大会。前野と井沢と田中の3人で参加。詳細は先述のストーリー参照)

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