妄想代理人(アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ
『妄想代理人』とはマッドハウス製作の今敏監督によるテレビアニメ作品で2004年2月2日からWOWOWにて全13話放送された。癒し系マスコットキャラクター・マロミを生み出した事で一躍脚光を浴びたクリエイターの鷺月子は、次のヒットキャラクターを期待する周囲にプレッシャーをかけられていた。ある日月子が通り魔・少年バットに襲われ、その後も次々と被害者が出る。少年バット事件を担当する刑事の猪狩慶一と馬庭光弘は、捜査を進める中で被害者が他人に言えない秘密や心の闇を抱えているという共通項に気付く。
CV:桃井はるこ
月子が生み出した犬のマスコットキャラクター。ピンク色にタレ耳、黒目がちの大きな瞳が特徴。作中にて社会現象を巻き起こすほどの人気を博し、グッズがバカ売れする。月子が所有するマロミのぬいぐるみは彼女の前でだけ動いて言葉を話すが、これは月子の妄想に起因する。「月ちゃんは大丈夫」「月ちゃんは悪くないよ」など口当たりがいいことしか言わず、常に月子を庇い慰める役割。
月子が激しい自己嫌悪に駆られるたび彼女を擁護する為、自分を正当化したい月子の分身と思われる。
モデルとなったのは昔月子が飼っていた同名の犬。この犬が轢き逃げされたのがきっかけで月子は少年バットを生み出すに至った。
猪狩慶一(いかり けいいち)
CV:飯塚昭三
少年バット事件を担当する所轄署の刑事で巡査長(係長)。昔気質で硬派な48歳。
しばしば自分を時代遅れと揶揄する頑固者。少年バットの逮捕に執念を燃やしていたが、模倣犯の狐塚が署内で殺害された事がきっかけで職を追われ工事現場の警備員に転職する。
病弱ながら献身的な妻の美佐江と夫婦2人支え合ってきたが、彼女が精神を病んでしまったのと、少年バットの捜査に忙殺されたのがきっかけで疎遠になっていった。物語の後半では現代社会に自分の居場所がないという疎外感に追い詰められて思い出の街に取り込まれるが、美佐江の最期の言葉をきっかけに返り咲く。
馬庭光弘(まにわ みつひろ)
CV:関俊彦
猪狩と共に少年バット事件の捜査に携わる若手刑事。29歳。
やや軽薄だが人あたりの良い性格で、猪狩が脅かし役なら馬庭が宥め役。ゲームにも造詣が深く、狐塚の妄想にノリノリに見えるほど柔軟に対応した。
神出鬼没な少年バットに翻弄されながらも捜査にあたるが、狐塚誠が署内で殺害された一件で職を追われる。無線マニアで自宅には装置が置かれており、退職後も無線で情報収集をし、独自に少年バットを追っていた。
彼も少年バットに感化され次第に妄想と現実の境目をなくし、赤いマントと帽子、ゴーグルをかける事で、打倒少年バットを掲げるレーダーマンへと変身した。
最終話では白髪の老人のような容貌と化し、病院の駐車場に謎の数式を描き殴っている。
謎の老人
CV:槐柳二
病院に入院しているよぼよぼの老人。病室を抜け出しては病院の廊下や駐車場に謎の数式を描き殴っている。
主に次回予告を担当し、一見支離滅裂だが次回の内容を暗示するような意味深なセリフを語る。狐塚(聖戦士)の妄想の世界では老師キートゥルとして登場し、一行を導いた。
現実でも終盤から馬庭に「老師」と呼ばれ、寝たきりの忘我状態のうちに少年バット事件の示唆を与える。
謎の老婆
CV:京田尚子
事件現場の近くでゴミを漁っていたホームレスの老婆。大きな風呂敷包みと小柄な体躯が特徴。月子が襲われた事件の重要参考人で目撃者でもある。
息子の会社の倒産で一家離散の憂き目に遭い、ホームレスとしてテント生活を余儀なくされていた。孫とも生き別れになっていたが、台風により川に転落後運ばれた病院にて、報せを受けて飛んできた孫娘と再会を果たす。
少年バット
CV:阪口大助
正体不明神出鬼没の通り魔。黄金のバットとローラースケート、赤い野球帽が特徴の少年。背格好は小学6年生程度。
精神的な悩みを抱えた人間の前に現れ、バットで彼らをぶん殴ることで救済する。壁や空間をすり抜けて移動するなど人間離れした芸当をこなす。少年バットに狙われたら生還は不可能だが、唯一猪狩の妻・美佐江だけは、毅然とした態度で退けている。人々の負の感情に感応し、バケモノのような巨体や鋭い牙を獲得する。
物語終盤ではマロミに縋れなくなった人々の心が少年バットを無限に増長させたことで、街をまるごと覆うほどの黒い影となって沢山の人々を巻き込む。
その正体は10年前、飼い犬を死なせてしまった月子が現実を否定した事で生まれた存在。月子は自分の不注意で愛犬を死なせた罪の意識から、責任転嫁できる通り魔・少年バットを生み出した。最終的に月子が現実を受け入れた事で消滅する。
少年バットによる被害者
川津明雄(かわづ あきお)
CV:内海賢二
第1話から登場。少年バットによる通り魔事件を取材するルポライターで37歳。下世話で押しが強い中年男。
交通事故の加害者であり、謎の老人の息子に入院費と慰謝料を請求されて追い詰められていた。マロミの生みの親である月子が被害者となった通り魔事件を執拗に嗅ぎ回るが、少年バットに襲われ第2の被害者となる。猪狩や馬庭とも顔見知りであり、事件に首を突っ込むなと牽制されていた。
鯛良優一(たいら ゆういち)
CV:山口眞弓
第2話から登場。月子が被害に遭った第1と川津が被害に遭った第2の事件現場の近所に住む小学生。自惚れが強い性格で家庭教師の蝶野晴美に片想い中。
成績優秀・運動神経抜群なクラスの人気者であり、生徒会長にも立候補していた。
イッチ―の愛称で皆に親しまれていたが、野球帽・ローラースケート・年齢などの特徴が不幸にも少年バットと一致してしまったせいでいじめの標的にされる。生徒会選挙の対立候補である牛山尚吾を目の敵にしていた。
尚吾と下校中に彼が少年バットの犠牲者になった事で、自分への疑いがますます強まると恐怖し部屋にひきこもるが、妄想の世界において少年バットに襲われ第4の被害者となる。
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目次 - Contents
- 『妄想代理人』の概要
- 『妄想代理人』のあらすじ・ストーリー
- 少年バット
- 犯行
- 模倣犯
- 狂言
- マロミ
- 破裂
- さようなら
- 『妄想代理人』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- 鷺月子(さぎ つきこ)
- マロミ
- 猪狩慶一(いかり けいいち)
- 馬庭光弘(まにわ みつひろ)
- 謎の老人
- 謎の老婆
- 少年バット
- 少年バットによる被害者
- 川津明雄(かわづ あきお)
- 鯛良優一(たいら ゆういち)
- 牛山尚吾(うしやま しょうご)
- 蝶野晴美(ちょうの はるみ)/まりあ
- 蛭川雅美(ひるかわ まさみ)
- 狐塚誠(こづか まこと)
- 蛭川妙子(ひるかわ たえこ)
- その他の人物
- 亀井正志(かめい まさし)
- 老人の息子
- 鳩村真祐(はとむら まさひろ)
- 優一の母
- 担任の先生
- 笠明彦(かさ あきひこ)
- 精神科医
- ダブルリップのボーイ
- 半田順次(はんだ じゅんじ)
- 真壁俊介(まかべ しゅんすけ)
- 司会者
- 主人公
- ヒロイン
- 主婦たち
- 蛭川の妻
- 柴崎みどり(しばさき みどり)
- ニュースNA
- 妙子をいじめる少年
- 妙子の友人
- 尚吾の母
- ニュースNA
- ウェイター
- 署員
- 刑事
- かもめ
- 冬蜂(ふゆばち)
- ゼブラ
- サラリーマン
- 男性
- 女子高生グループ
- 鴨原美栄子(かもはら みえこ)
- 団地の主婦たち
- 少年
- 猿田直行(さるた なおゆき)
- 高峰明弘(たかみね あきひろ)
- 平沼芳雄(ひらぬま よしお)
- 龍田慎一郎(たつた しんいちろう)
- 織田伸長(おだ のぶなが)
- 鰐淵良宏(わにぶち よしひろ)
- 鹿山里子(しかやま さとこ)
- 蟹江瞳(かにえ ひとみ)
- 熊倉武則(くまくら たけのり)
- 佐藤道子(さとう みちこ)
- 猪狩美佐江(いかり みさえ)
- 犬飼悟郎(いぬかい ごろう)
- 月子の父
- バーニーちゃん
- 『妄想代理人』の用語
- ダブルリップ
- マロミ狩り
- マロミまどろみ
- スタールビー
- ムーンサファイア
- 男道
- M&F(エムアンドエフ)
- NBN(NIPPON BROADCASTING NETWORK)
- レーダーマン
- 解離性同一性障害
- 『妄想代理人』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 「覚えてる、子供の頃?楽しかったよね……全部壊してあげる」
- 「よし……逝きますか。遠くへ」
- 「ね。休みなよ」
- 「たとえ世の中が間違っていようと正しいことはきっとある、だから俺達は生きていける」
- 「俺の居場所がないってことはとっくにわかってるんだよ、居場所がないって現実こそが俺の居場所なんだ!」
- 「マロミ……ごめんなさい……」
- 『妄想代理人』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 10話に登場した鰐淵良宏は2話の絵コンテ担当としてクレジットされているが、これは今敏監督のペンネームである
- 13話にて、10年前の月子がマロミのリードを手放した理由は初潮を迎えたから
- 13話のラストシーンは1話の冒頭にループする
- 8話のサブタイトル「明るい家族計画」は、冬蜂・ゼブラ・かもめの関係から何も生まれない皮肉をこめたもの
- 『妄想代理人』の主題歌・挿入歌
- OP(オープニング):平沢進『夢の島思念公園』
- ED(エンディング):平沢進『白ヶ丘-マロミのテーマ』