ゼロ・グラビティ(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ゼロ・グラビティ』とは、鬼才アルフォンソ・キュアロン監督によって2013年に公開されたアメリカ映画。主演はサンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーが務めた。宇宙で極限状況下に置かれた者たちのドラマを、VFXを駆使した3D映像でリアルな宇宙空間の臨場感を再現したSF・ヒューマン・サスペンス。スペースシャトルで船外活動中に予期せぬ事故によって宇宙空間へ放り出され、無重力の世界の中、救助も期待できない絶望的状況で漂い続ける2人の宇宙飛行士の運命を描く。

ISS船長(声:バシャール・サヴェージ)

冒頭の『エクスプローラー号』船外活動のシーンで、ヒューストンと交信する。

『ゼロ・グラビティ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

マット「宇宙の何が一番好きだ?」ライアン「静けさよ」

冒頭、『エクスプローラー号』の船外活動を行っているマットとライアン。宇宙から見る地球の眺めに感嘆しながら、マットはライアンに「宇宙の何が一番好きだ?」と問いかけると、ライアンは「静けさよ」 と答えた。

本作中で最も美しいシーン名シーンであり、ライアンの「静けさよ」という言葉は後の悪夢のような展開を全く予感させない印象的な名セリフである。

「諦めることも学べ!」

マットはライアンをロープで引っ張ったままISSにたどり着いた勢い余ってISSに衝突。マットが宇宙空間に放り出されそうになると、ISSの着陸船から開いていたパラシュートのワイヤーに引っかかったライアンは、マットと繋がっているロープを掴んだ。だがマットはライアンを助けるため自らロープのフックを外してしまう。宇宙空間へ漂流するマットは通信が途切れるまでライアンに語りかける。「何としても助け出す」というライアンに、マットは「諦めることも学べ!」 と命令しながら宇宙の彼方に消えて行った。

宇宙に投げ出されてしまったマットはもう助からないことを自覚しており、冷静にライアンを諭す。悲しい別れの名シーンであり、マットの「諦めることも学べ!」 は、ベテラン宇宙飛行士ならではの男らしい引き際の名セリフである。

「宇宙なんて大嫌い!」

ISSの中でひと息ついたライアンだったが、ISS内で火災が発生。火の手が激しく、危険を感じたライアンはソユーズに避難した。なんとかISSからソユーズを切り離そうとするがパラシュートが絡まって離れない。ライアンは船外に出てパラシュートを外そうとする。と、そこへ膨大な量の宇宙ゴミがすごいスピードでで接近してきた。なんとかパラシュートを外したライアンだったが、ISSは宇宙ゴミに衝突され大破してしまった。そんな状況のISSを見たライアンが「宇宙なんて大嫌い!」 と悪態をついた。

初めてのスペース・ミッションを楽しむはずが、スペースシャトルでもISSでも散々な目にあってしまうライアン。「宇宙なんて大嫌い!」 はそんな彼女の宇宙に対する本音であり、名セリフとなった。

「もう逃げない。地球に帰るわよ」

ISSのソユーズ船内で一度は死を覚悟したライアン。だが姿を現したマットの幻影から逆噴射を利用する方法を聞き励まされた彼女が決意を新たにし、ソユーズの逆噴射のスイッチを押す前に「もう逃げない。地球に帰るわよ」と力強く放った 。

宇宙で散々な目に会い、死までも覚悟したライアンだが「もう逃げない。地球に帰るわよ」と言った彼女のセリフは、死んでいった全ての乗組員たちの魂が乗り移ったかのような力強い名セリフとなった。

『ゼロ・グラビティ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

ハリウッドでは異例の”2人だけ”の出演

本作の出演者は、サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーの2人だけであるが、これはハリウッドの超大作映画では極めて異例のことである。
エンドロールにもブロックとクルーニーだけが“出演者”としてクレジットされている。ブロックは撮影を振り返り、「すべてが挑戦だった。話す相手も誰もいない、何も音がない状態が当たり前で、ジョージと同じシーンの撮影があったときもマイクを使っての会話でとても孤立している感じだった。」と語る。
因みに公開されたポスターは全2種類で、それぞれにブロックとクルーニーが大きくデザインされている。

特殊装置によって全編の宇宙空間を再現

キュアロン監督は宇宙空間での光を再現するため「LIghtbox」と名付けた特殊装置を本作のVFXの大半を担当したFRAMESTOREのティム・ウェバーと共同開発した。これは4096個のLED電球を敷き詰めたパネル169枚を高さ約6メートル、幅約3メートルの立方体に配置し、LEDの照明によって地球の反射や太陽など、あらゆる角度からの光源を作り出し、擬似的な宇宙空間を作り出すというものである。俳優はその中で演技をすることによって、画面合成用のグリーンバック(背景)で撮影をして編集時に合成作業をしなければならないという不便さが解消。擬似的とはいえ自分の周りに宇宙空間が形成されているため演技の手助けにもなっている。また、12本のワイヤーで俳優を吊るして操り人形のように動く仕組みを作り、それをロボットアームを応用して作られた小型カメラでさまざまな角度から撮影するという手法を取っている。因みにサンドラ・ブロックは5カ月間訓練し、装置の張力を感じさせず演じられるようになったそうである。

『ゼロ・グラビティ』の受賞歴

第71回ゴールデングローブ賞
<受賞>
監督賞(アルフォンソ・キュアロン)
<ノミネート>
作品賞/ドラマ部門
主演女優賞/ドラマ部門(サンドラ・ブロック)
作曲賞(スティーヴン・プライス)

第20回全米映画俳優組合賞
<ノミネート>
主演女優賞(サンドラ・ブロック)

第67回英国アカデミー賞
<受賞>
監督賞(アルフォンソ・キュアロン)
撮影賞(エマニュエル・ルベツキ)
英国作品賞(アルフォンソ・キュアロン、デヴィッド・ハイマン、ホナス・キュアロン)
作曲賞(スティーヴン・プライス)
音響賞
特殊視覚効果賞
<ノミネート>
作品賞(アルフォンソ・キュアロン、デヴィッド・ハイマン)
主演女優賞(サンドラ・ブロック)
オリジナル脚本賞(アルフォンソ・キュアロン、ホナス・キュアロン)
プロダクトデザイン賞
編集賞

第86回アカデミー賞
<受賞>
監督賞(アルフォンソ・キュアロン)
作曲賞(スティーヴン・プライス)
音響編集賞(グレン・フリーマントル)
録音賞(スキップ・リーヴセイ、ニヴ・アディリ、クリストファー・ベンステッド、クリス・ムンロ)
撮影賞(エマニュエル・ルベツキ)
視覚効果賞(ティム・ウェバー、クリス・ローレンス、デイヴ・シャーク、ネイル・コーボルド)
編集賞(アルフォンソ・キュアロン、マーク・サンガー)
<ノミネート>
作品賞(アルフォンソ・キュアロン、デヴィッド・ハイマン)
主演女優賞(サンドラ・ブロック)

『ゼロ・グラビティ』の主題歌・挿入歌

エンディングテーマ曲:Steven Price「Gravity」

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