ゴブリンスレイヤー(第3話『思いがけない来客』)のあらすじと感想・考察まとめ

ゴブリンスレイヤーと女神官が冒険者ギルドに戻ると、エルフの土地での活動が活発になっているゴブリン退治の依頼が来ていた。依頼に来た3人の冒険者であるエルフの妖精弓手、ドワーフの鉱人道士、リザードマンの蜥蜴僧侶と共に、一行はゴブリン退治へ向かう。
今回は「ゴブリンスレイヤー」第3話『思いがけない来客』の内容(あらすじ・ストーリー)と感想・考察を紹介。
「ゴブリンスレイヤー」第3話『思いがけない来客』のあらすじ・ストーリー
自分で決めること

神様によって振られたサイコロ
ナレーション「昔々、今よりも星の明りがずっと少なかった頃、光と秩序と宿命の神々と、闇と混沌と偶然の神々は、どちらが世界を支配するか、サイコロ勝負で決めることにしました。神様は何度も何度も何度も、気が遠くなるほどサイコロを振りました。」

妖精弓手(左)、鉱人道士(中央)、蜥蜴僧侶(左)
辺境の街の冒険者ギルドには、珍しい来客が来ていた。受付嬢が対応しているのは、エルフの妖精弓手とドワーフの鉱人道士、リザードマンの蜥蜴僧侶の3人組だ。
特に、珍しいエルフである上に、容姿端麗な女性の姿をした妖精弓手へと、近くにいた冒険者たちの目線は集まっている。
新米戦士「おい見ろよ。すっげぇ美人。」
見習巫女「ちょっと。」
少女「あれは上(上位種)のエルフ。本物の妖精の末裔ですよ。」
少年「確かに、耳が長いですね。他のエルフよりも。」
妖精弓手はそんな冒険者たちのヒソヒソ話を気にする様子もなく、受付嬢に「オルクボルグ」という人物がいないかと何度も確認していた。
受付嬢「オークですか…?」
妖精弓手「違うわ、オルク。オルクボルグ。ここに居ると聞いたのだけれど。」
受付嬢「冒険者の方でしょうか?」
その時、鉱人道士が妖精弓手に声をかけた。
鉱人道士「馬鹿め。ここはヒューム(只人。人間のことを表す種族名)の領域じゃい。耳長言葉(エルフ語のこと)が通じるわけがあるまいて。」
妖精弓手「なら、何と呼べば良いのかしら?」
鉱人道士「かみきり丸に決まっとろう。」
受付嬢「あの、そういう名前の方は…。」
鉱人道士「おらんのか?」
妖精弓手「やっぱりドワーフはダメね。頑固で偏屈。自分ばっかり正しいと思ってる。」
鉱人道士「ったく、エルフときたら、金床にふさわしい心の狭さだからの。」
妖精弓手は胸が小さいことを暗に指摘され、「なっ…!」と顔を赤らめながら絶句する。そして妖精弓手は「それを言ったら、ドワーフの女子なんて樽じゃない!」と鉱人道士に言い返し、2人は言い争いを始めた。
その時、後ろから蜥蜴僧侶が2人に声をかけた。
蜥蜴僧侶「すまぬが2人とも。喧嘩ならば、拙僧に見えぬ所でやってくれ。拙僧の連れが騒ぎを起こしてすまぬな。」
蜥蜴僧侶に謝られた受付嬢は、「あぁいえ、慣れてます。」と苦笑いを浮かべた。しかし受付嬢は心の中で、「でも、珍しい取り合わせ…。ハイエルフ(エルフの中でも特に妖精に近い上位種)と種族的に仲が悪いドワーフ、滅多に見ないリザードマン…。しかも3人とも銀等級…。」と呟いていた。
そんな受付嬢に、今度は蜥蜴僧侶が話しかけた。
蜥蜴僧侶「つまりオルクボルグ、かみきり丸とは、その者の字名でな、拙僧も人族の言葉に明るい訳ではないのだが…小鬼殺し、という意味だ。」
受付嬢「あぁ!ゴブリン!」

女神官は応接室について行こうとするが、ゴブリンスレイヤーに「休んでいろ。」と止められる。
ちょうどその時、ギルドの玄関ドアが開き、帰還したゴブリンスレイヤーと女神官が入ってきて、受付嬢の方に来た。
ゴブリンスレイヤー「終わった。」
受付嬢「お帰りなさい、ゴブリンスレイヤーさん。」
女神官「ただいま帰って来ました。」
受付嬢「ご無事で何よりです。」
女神官「はい、何とか。」
ゴブリンスレイヤー「今ゴブリンと言ったな。どこだ?」
受付嬢「それは…どうぞ。」
受付嬢は3人の来客の方を手で指し示した。ゴブリンスレイヤーは来客の方を見ると、「ゴブリンか?」と問いかけた。
妖精弓手「違うわよ。あなたがオルクボルグ?そうは見えないけど。」
ゴブリンスレイヤー「当然だ。俺はそう呼ばれたことはない。」
蜥蜴僧侶「拙僧らは小鬼殺し殿に用事があるのだ。時間を貰えるかな?」
ゴブリンスレイヤー「構わん。」
受付嬢「でしたら、2階に応接室があるので、よろしければ。」
ゴブリンスレイヤーと来客たちは2階へ向かい、女神官も彼らの後を着いて行こうとする。しかし、ゴブリンスレイヤーに「休んでいろ。」と言われて、止められた。
置いてきぼりを食らったような表情の女神官を残して、4人は応接室へと入ってしまった。

女神官に声をかけた新米戦士(中央)と見習聖女(右)
1人だけで残された女神官は、寂しさからため息をついてしまう。すると、新米戦士と見習聖女が女神官に話しかけてきた。
新米戦士「君、同じ白磁だろ?よかったら、俺らと一緒に行かないか?」
女神官「いえ、せっかくですけれど、私はもう他の方と…。」
見習聖女「あのいつも兜被ってる奴でしょ?」
新米戦士「分かってるよ。でもおかしいじゃんか。あいつ、銀等級のくせに、ゴブリン退治ばっかやってて。普通、もっと大物を狙うはずだろう?」
見習聖女「新人引き回して囮にしてんじゃないか、って話も聞くわよ。」
2人は女神官のことを心配して声をかけてくれたようだ。女神官は「そんなことは!」と言い返しかけたが、そこへ魔女がやってきて、「ほら、野暮はダメよ。」と言って2人を遠ざけた。

女神官(左)と魔女(右)
女神官と魔女は並んで座り、魔女はゆったりとした特徴的な話し方で、女神官との会話を始めた。
魔女「それで?彼と一緒にいる子、で良いのよね?」
女神官「あ、はい。ご一緒させてもらってます。」
魔女「ご一緒ね…。彼、大変でしょ?鈍いものね。真に力のある言葉、呪文の無駄遣いね。私もね、前に変な依頼受けたことあるの。彼から。」
女神官は魔女を方を見た。その時、魔女の豊満な胸に思わず目がいってしまい、「えっ?」と呟いて顔を赤らめた。
魔女「変なこと、想像したでしょ?」
女神官は慌てて目を逸らし、「い、いえ…。」と必死に取り繕った。
魔女「スクロール(魔術用に使用される巻物のこと)にちょこちょこっとお手伝い。大変よね。彼とご一緒するの。」
女神官「私なんかじゃ、ついていくだけで精一杯で…迷惑かけてばかりで…。」
魔女「それに彼かなりキテるものね。そりゃあね、ゴブリン退治だけって言ったって、何年もほぼ休みなしだもの。それ自体は世の中のためになるしね。下手な怪物退治よりよっぽど。だからと言って、ゴブリン退治だけやっていれば良いわけじゃないけど。都ではデーモンがいっぱい。世の中には怪物がたくさんね。人を助けるなら、さっきの子たちと一緒でも出来るでしょ?」
女神官「…それは…そうですけど…。」
魔女「ごめんなさいね。道はいっぱいね。正解なんてないの。難しいからせめてご一緒するならきちんと自分で決めなさいな。」
魔女はそう言って立ち去った。女神官は魔女の言葉を反芻し、「自分で決める…。」と呟いた。
新たな依頼

応接室で向き合うゴブリンスレイヤーと妖精弓手、鉱人道士、蜥蜴僧侶。
一方、応接室ではゴブリンスレイヤーと妖精弓手、鉱人道士、蜥蜴僧侶が向かい合って話していた。
妖精弓手「あなた、本当に銀等級なの?」
ゴブリンスレイヤー「ギルドは認めた。」
妖精弓手「信じられないわ。だって見るからに弱そうなんだもの。」
鉱人道士「バカを言うもんじゃないぞ、耳長の。見たとこ、皮鎧は動きやすさ重視、楔帷子は短剣での不意打ち防止、兜もそうだろう。剣と盾はちっこいが、狭苦しいとこでぶん回すのを考えて、と見た。」
妖精弓手「せめて、もっと綺麗にするべきじゃないかしら?」
ゴブリンスレイヤー「金臭さを消す為に必要な措置だ。奴らは鼻が良いからな。」
鉱人道士「ハイエルフと言えど、退屈に飽きて森を飛び出したばかりの若輩者ではな。これを機に年長者をちっとわ見習わんか。」
妖精弓手「私、2千歳。あなた、おいくつ?」
鉱人道士は思わず言葉に詰まり、「百と七つ。」としぶしぶ答えた。それを聞いた妖精弓手は爆笑し、「あらあら~、随分と老けていること!確かに、見た目だけは年長者だわ!」と言い返した。
そこへ蜥蜴僧侶が口を挟んだ。
蜥蜴僧侶「年齢の話はよせ。定命の拙僧らは肩身が狭い。」
ゴブリンスレイヤーは3人の盛り上がりをよそに、「俺の何の用だ?」と淡々と聞いた。その言葉で3人も真剣さを取り戻し、話し始めた。
妖精弓手「都の方でデーモンが増えてるのは知ってると思うけど。」
ゴブリンスレイヤー「知らん。」
妖精弓手「その原因は、魔人王の復活なの。奴は軍勢を率いて、世界を滅ぼそうとしているわ。」
ゴブリンスレイヤー「そうか。」
妖精弓手「私たちは、それであなたに協力を…。」
ゴブリンスレイヤー「他を当たれ。ゴブリン以外に用はない。」
妖精弓手はイライラするのを耐えてゴブリンスレイヤーと話していたが、そっけない返事に我慢が出来なくなり、机を叩いて大声を出した。
妖精弓手「分かっているの!?悪魔の軍勢が押し寄せてくるのよ!世界の命運がかかっているって理解してる!?」
ゴブリンスレイヤー「理解はしている。だが、世界が滅びる前にゴブリンは村を滅ぼす。世界の危機はゴブリンを見逃す理由にならん。」
「あなたね!」とさらに言いつのろうとした妖精弓手を、「待て待て耳長の。儂らとて、混沌を何とかさせに来たわけじゃなかろう。」と鉱人道士が妖精弓手の腕を掴んで抑えた。
蜥蜴僧侶「小鬼殺し殿、拙僧らは小鬼退治の依頼をしに来たのだ。」
ゴブリンスレイヤー「そうか。ならば受けよう。どこだ?数は?巣の規模は?シャーマンやホブは確認しているか?」
ゴブリンスレイヤーがゴブリン退治の依頼だと知るとあっさりと態度を変えたことに妖精弓手はあっけに取られ、「なにコイツ…。」と思わず呟いた。
蜥蜴僧侶「連れが述べた通り、今悪魔の軍勢が進行しようとしている。それで、拙僧らの族長、人族の諸王、エルフとドワーフの長が集まって会議を開くのだがな…。」
鉱人道士「儂らはその使いっぱしりとして雇われた冒険者じゃ。」
妖精弓手「いずれ大きな戦になると思うわ。アンタは興味ないんでしょうけど。」
鉱人道士「問題は、近頃エルフの土地であの性悪な小鬼どもの動きが活発になっておるということだ。」
ゴブリンスレイヤー「チャンピオンかロードでも生まれたか?」
妖精弓手「チャンピオン?ロード?」
鉱人道士「ゴブリンどもの英雄や王、連中にとっての白金等級というところだ。」
蜥蜴僧侶「拙僧らが調べたところ、大きな巣穴が1つ見つかったのだが。」
ゴブリンスレイヤー「ゴブリンごときに軍は動かせない。いつものことか。」
妖精弓手「ヒュームの王は私たちを同朋とは認めないもの。勝手に兵士を動かしたら、難癖をつけられてしまうわ。」
蜥蜴僧侶「故に、冒険者を送り込む。なれど、拙僧だけではヒュームの顔も立たん。」
妖精弓手「で、オルクボルグ、あなたに白羽の矢が立ったわけ。」
ゴブリンスレイヤーは3人が持ってきたゴブリンの巣がある遺跡の地図とゴブリンの数を確認し、報酬は好きにしろとだけ言って部屋を出て行った。
妖精弓手はその背中を見送りながら、「あいつ1人で行くつもり…?」と信じられないという表情をして呟いた。

「一緒に行きます。」と行った時の女神官の表情。
ゴブリンスレイヤーが受付に依頼の内容を伝えていると、女神官が駆け寄ってきて「ゴブリンスレイヤーさん、依頼ですよね?」と声をかけた。「あぁ。」という返事を聞くと、女神官は「ならすぐに準備を。」と言って準備を始めた。しかしゴブリンスレイヤーは、「いや、俺1人で行く。」と女神官に告げた。
それを聞いた女神官は、怒りでブルブル震えながら、「そんな!せめて決める前に、相談とか…。」と言いかけたが、ゴブリンスレイヤーは「しているだろ。」と的外れな返事をした。女神官は驚いてゴブリンスレイヤーを見た後、「あ、これ相談なんですね。」と合点がいった様子で言った。
ゴブリンスレイヤー「そのつもりだが。」
女神官「選択肢があるようでないのは、相談とは言いませんよ。」
ゴブリンスレイヤー「そうなのか。」
女神官はにっこりと笑って、「一緒に行きます。放っておけませんから、あなた。」と明るい声で告げた。
一方、妖精弓手と鉱人道士、蜥蜴僧侶は2階から降りる階段を下りながら、女神官とゴブリンスレイヤーのやり取りを見ていた。
鉱人道士「儂だって、ああ分かりづらい性格はしとらんのぉ。見応えのある奴じゃ。」
蜥蜴僧侶「依頼を出して着いて行かぬのは、拙僧も先祖に顔向けできませんな。」
妖精弓手「理解できない未知の存在、ね…。それを見たくて森を出たのよ。まったく、年長者には敬意を払うべきだと思わない!?」
仲間と過ごす夕べ

ゴブリンの巣穴の近くまで行くと、その日の夜になったので、ゴブリンスレイヤーと女神官、妖精弓手、鉱人道士、蜥蜴僧侶はその場で夜を明かすことにした。
夕飯を作っている鍋を囲みながら、「みんな、どうして冒険者になったの?」と妖精弓手がふと気になった様子で尋ねた。
鉱人道士「そりゃあ、美味い物食う為に決まっとろうが。耳長はどうだ?」
妖精弓手が「私は、外の世界に憧れて…。」と言いかけた時、焼き立ての肉を食べ始めた鉱人道士が「こりゃ美味い!」と突然叫び、「聞きなさいよ!」と妖精弓手は思わず突っ込んだ。
そんな妖精弓手の様子を気にもかけず、鉱人道士は「なんじゃいな、この肉は?」と蜥蜴僧侶に聞いた。
蜥蜴僧侶「沼地の獣の肉ですぞ。」
妖精弓手「沼地…。」
鉱人道士「野菜しか食えん兎もどきには、この旨さは分からんよ。」
肉は食べたくなさそうな妖精弓手に、女神官は「良かったら、スープ食べます?」と自分が作ったスープを分けた。妖精弓手はスープを飲むと「うーん!優しい味ね!」と満足そうに言った。
蜥蜴僧侶「拙僧は異端を殺して位階を高め竜となるため。冒険者になった理由です。」
次に4人は思わずゴブリンスレイヤーの方を向き、ゴブリンスレイヤーは「ゴブリンを…。」と言いかけたが、「アンタのは何となく分かるから良いわ。」と妖精弓手に遮られた。
そして妖精弓手は女神官の方を見て、「これは、私もお返しをしないといけないわね。」と言って、スープのお礼にとエルフの保存食を差し出した。
妖精弓手「人にあげてはいけないのだけど、今回は特別。」
保存食を食べた女神官は、「美味しい!」と言い、「良かった。」と妖精弓手も安心したように返した。
鉱人道士「となると儂も対抗せねばならんのう。ドワーフの穴倉で作られた秘蔵の火酒よ。」
妖精弓手「火のお酒?」
鉱人道士「まさか耳長の、酒も飲んだことないなんざぁ、童みたいなことは言わんよな?」
妖精弓手「バ、バカにしないでよ!あるわよ!」
妖精弓手が一口酒を飲むと、あまりの度数の強さに顔を真っ赤にして咳き込んだ。女神官は妖精弓手の背中を撫でて、水を渡した。
鉱人道士「ほれ、かみきり丸。お前さんも飲め。」
ゴブリンスレイヤーも酒を飲んだが、素面のままのようだ。

段々楽しい雰囲気になっていく夕食の席。
しばらくすると酒に酔った妖精弓手が、ゴブリンスレイヤーの兜を取ろうとしたが、酔っているため上手く取ることが出来ないという光景が繰り広げられていた。
妖精弓手「う~ん…何で食べてる時も兜脱がないわけ~?」
ゴブリンスレイヤー「不意打ちで頭を殴られれば、意識が飛ぶからな。」
ゴブリンスレイヤーは真面目に答えた。そんな妖精弓手の様子を見て、鉱人道士は「おぉ…目が座っとるわい…。」と思わず呟き、女神官も苦笑いを浮かべていた。
妖精弓手「食べてばっかりいないで、あなたも何か出しなさいよー!」
ゴブリンスレイヤーは少しの間黙り込んだ。
女神官「あれは考え込んでますね。」
鉱人道士「分かるのか?」
しばらくすると、ゴブリンスレイヤーはチーズを取り出し、「これで良いか?」と聞いた。
蜥蜴僧侶「何ですかな、これは?」
ゴブリンスレイヤー「チーズだ。牛や羊の乳を発酵させ、固める。」
蜥蜴僧侶はチーズを手に取って興味深そうに見ていた。
鉱人道士「鱗の、お前さんチーズを知らんのか?」
蜥蜴僧侶「拙僧らにとって獣とは狩るもの。育むものではありません。」
妖精弓手「貸してー。切ってあげるー。」
妖精弓手が5人分に切ったチーズをそれぞれが串に刺し、火にかざした。少しだけチーズが溶けてきたところで食べるのだ。
チーズを食べた蜥蜴僧侶は、あまりの美味しさに「うぉぉぉ!甘露!甘露!」と叫んだ。
鉱人道士は「酒に合うのぉ。」、妖精弓手は「甘ーい!バナナの実みたいね!」と言って喜んだ。
女神官「これって、あの牧場のですか?」
ゴブリンスレイヤー「そうだ。」
女神官「美味しいですね。」
女神官もチーズを喜んで食べた。
一方、チーズを食べ終わった妖精弓手はゴブリンスレイヤーが持ち物に何を入れているのか気になり、鞄の中身をこっそり見ようとした。しかし、ゴブリンスレイヤーが「触るな。危険だ。」と強い口調で言ったため、思わず妖精弓手の手が止まった。
妖精弓手はふて腐れて、「み、見ようとしただけ…。」と言い訳がましく言った。
ゴブリンスレイヤー「見るな。危ない。」
妖精弓手「それってスクロールでしょ?私、初めて見たんだもの。」
妖精弓手はゴブリンスレイヤーの鞄の中身から覗く巻物を指さして言った。
蜥蜴僧侶「失われた古代の呪法により、魔法を封じた巻物。一度紐解けば、例え赤子であれど呪文を行使できるという。」
鉱人「おうよ。だが書かれている呪文は千差万別な上に使い捨て。大抵は骨董品として好事家や研究者に高値で売り払うのが使い道じゃが…。」
女神官は魔女の「スクロールにちょこちょこっとお手伝い。」という言葉を思い出し、魔女が言っていたお手伝いとはスクロールに関わることだったのだと気づいた。
妖精弓手「じゃあさ、せめて何の呪文かくらい教えてよ。」
ゴブリンスレイヤー「ダメだ。お前が捕まって、ゴブリンに漏れでもしたらどうする。」
妖精弓手「あなた、私のこと嫌いでしょ。」
ゴブリンスレイヤー「選り好みはしない。」
鉱人「耳長の、ムダじゃムダじゃ。そやつ儂らより偏屈だもの。かみきり丸。」
妖精弓手「オルクボルグだからね。」
蜥蜴僧侶「小鬼殺し殿ですからな。」
ゴブリンスレイヤー「俺はゴブリンスレイヤーだ。」
ゴブリンスレイヤーの的を外した返しに、女神官は思わず笑ってしまう。

2つの月
しばらくして、蜥蜴僧侶がゴブリンスレイヤーに自分が疑問に思っていたことを尋ねた。
蜥蜴僧侶「1つ気になっておったのだが、小鬼どもはどこから来るのだろう?拙僧は地の底に王国があると教わったが。」
女神官「私たちは、誰かが何か失敗すると、1匹湧いて出ると聞いています。」
妖精弓手「何それ?」
女神官「躾のための言い伝えです。失敗するとゴブリンが来るよっていう。」
すると鉱人道士が慌てた声で、「大変じゃぞ!そこの耳長娘を放っておけば、ウジャウジャ増えるということではないか!」と言って妖精弓手をからかった。
妖精弓手「まぁ失礼しちゃう!明日には私の弓の腕をハッキリ見せてあげるんだから!」
鉱人道士「おぉー怖や怖や。」
そんなふざけた雰囲気の中、ゴブリンスレイヤーが突然、「俺は月から来たと聞いた。」と切り出した。
妖精弓手「月?あの空に浮かぶ2つの?」
ゴブリンスレイヤー「そうだ、緑の方だ。あの緑の岩でできた場所からゴブリンは来る。」
妖精弓手「それじゃあ、流れ星はゴブリンなわけ?」
ゴブリンスレイヤー「知らん。だが月には草も水も木もない。岩だらけの寂しい場所だ。奴らはそうでないものが羨ましくて、妬ましい。だからやって来る。だから誰かを妬むとゴブリンのようになる。」
女神官「どなたから教わったのですか?」
ゴブリンスレイヤー「姉だ。」
女神官「お姉さんがいらっしゃるのですか?」
ゴブリンスレイヤー「あぁ、いた。」
妖精弓手「じゃあ、あなたは月からゴブリンが来るって信じてるわけね。」
ゴブリンスレイヤー「少なくとも姉は何かを失敗したことはないはずだ。」
そこでゴブリンスレイヤーが黙り込んだ。どうやら座った態勢のまま眠ってしまってようだ。
女神官はゴブリンスレイヤーに毛布をかけ、他の4人も眠ることにした。
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