Lobotomy Corporation(ロボトミーコーポレーション)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『Lobotomy Corporation』とは、韓国のMoon Projectが開発したシミュレーションゲームである。
2016年にアーリーアクセスが始まり、シナリオやシステム面の改善を経て2018年に正式版がリリースされた。ゲームの目的は、巨大企業ロボトミーコーポレーションの管理人となって、不思議な存在「アブノーマリティ」を管理すること。公式で対応している言語は韓国語と英語のみだったが、現在では日本語に対応している。

アブラムは「ここまでを繰り返し、疲れ果て、先に進むことも戻ることも諦めたX」であり、Aの用意するシナリオの結末の1つである。
「このまま孤立した時間の中で無限にやり直す虚無こそがカルメンに対する贖罪である」と言ったアブラムはXに自身(無限にやり直すことで贖罪とする)を選ぶように言う。
しかしXはそれは間違っていると言い、アブラムの手を振り払う。そして、48日目のアブラムを越えて49日目へと進む。

49日目に現れたのはアダムと名乗る男性であった。
彼もまた、アブラムやアベルと同じようにこれまでのXの選択の結末の一つであると名乗る。
アダムは「コギトによって生まれたアブノーマリティは化物などではなく人間の本来の姿であり、病を治すというカルメンの願いに従って全人類をアブノーマリティ化させることこそ正しいと信じているX」であり、Aの用意するシナリオの結末の1つである。
「あなたがAであるならば、カルメンの願いを叶えるべきだ」といったアベルはXに自身(全人類のアブノーマリティ化という結末)を選ぶように言う。

しかしXはそれは間違っていると言い、アダムの手を振り払う。そして、50日目のアブラムを越えて50日目へと進む。

50日目に現れたのは、アベルやアブラム、アダムを少し若くしたような外見の男性であった。
彼は自分を何とは名乗らず、本題を話し始める。
カルメンの言う通りこの世界は心を失っていると肯定し、その心を失った人々に心を取り戻させるにはどうしたらいいか。それは「種を植え、芽吹かせることである」と言う。
そのために必要なものこそが、この施設で生産されるエネルギーであった。職員を犠牲にしてまでアブノーマリティから得られるエネルギーには、人間の生への渇望や情動が込められている。それらを解放することで、心を失った人々に情動というものの存在を思い出させる。そうすることで人間らしさを取り戻す。
エネルギーを種にたとえた彼はそれこそが真にカルメンの願いに沿うことであると述べる。
そのためには何をするべきかを問うXに、彼は「いつもやっていることだ」と答え、いつもどおりアブノーマリティの世話をし、エネルギーを蓄積することであると補足する。

いつもどおりアブノーマリティの管理をするX。作業が進み、エネルギーが蓄積されるに従い、徐々に施設が傾いていく。
最終的に180度上下反転する形で施設が回転するのと、エネルギーの蓄積が終わるのとは同時であった。
1日目から数えて50日間、膨大なエネルギーを蓄積した施設は地上へ向けて発進する。
地表に飛び出た施設はそのまま、上空へとエネルギーを放出する。光の柱となったエネルギー体はまるで木のように上空へと枝を伸ばす。
その枝からこぼれ落ちたエネルギーは地表の街へと降り注ぐ。エネルギーを浴びた人々はカルメンの願い通り、「病が解かれていった」。

光の柱を見、ついにXが結末にたどり着いたことを知るセフィラたちは、自分たちの役割の終わりを感じ取った。
セフィラとして設定された役目が終われば施設ごと作動を停止し、永久に停止できる。
だが、アンジェラだけは違っていた。役目が終わったとしても、セフィラとは違って停止命令は出ていない。
Aの描いたシナリオのエンディングには自分の始末のことなど何処にも書いていなかったのだ。
それならば好きなことをすると述べたアンジェラは自身に無限にやり直しの舞台を作ることを強いたAへと復讐すると告げる。
「飛び立ったものはいずれ落ちる。あなたの夢が、あなたの理想が、音を立てて崩れ落ちていきますよ」

輝いていた光の柱は、3日目で突如として立ち消えた。
そのかわり、まるで光などなかったかのような暗闇が4日間訪れた。
この3日間の昼と4日間の夜は「白夜」「黒昼」と呼ばれた。

セフィラを停止させたアンジェラは欲望のままに生きるのだと、もういないA(X)に向かって宣言する。
「Xが撒いた「種」によって人々は心を取り戻す。しかし同時に、自我が崩壊した人々も出てくるでしょう。
そのすべてを私は記録する。そうして得た知識を集めるの。そして知識を集めた本を作り、本を集めて書庫を作る。
世界で一番大事な私だけの図書館を作りましょう。そして、私と同じように捨てられた哀れな存在たちと共にするのよ」
髪を切ったアンジェラの背後には、無数のアブノーマリティが立っていた。

そして、Lobotomy Corporationのロゴマークが表示され、物語はここで終わりとなる。

『Lobotomy Corporation』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

レガシー版と正式版の違い

レガシー版と正式版では、大きく異なる部分がある。
まずストーリーの展開。正式版では、レガシー版のイベントのひとつであるBが自らの名前(Benjamin)を綴ってメッセージを送るくだりが消えている。
正式版では、Bが誰であるかは明かされないまま話が進み、B=Benjamin=ベンジャミンであるということはシナリオ終盤にホクマーと初対面してようやく判明する。

他の大きな違いとしては、アブノーマリティへの作業にまつわるシステムがある。
レガシー版にはE.G.Oがなく、職員の武器は警棒とピストルだけという丸腰に近い装備であった。
そして職員にはそれぞれ「楽観主義」「合理主義」などの信条が設定されており、「このアブノーマリティは楽観主義の職員が作業を行うと脱走する」「合理主義の職員が作業を行うと、その職員はアブノーマリティに殺される」というようなシステムであった。
作業自体もレガシー版では「食事」「清掃」「娯楽」「暴力」から「本能」「洞察」「愛着」「抑圧」に名前が変わっている。

エージェント「ジョシュア」

エージェントは(プレイヤーが自由につけることもできるが)システムでランダム決定された名前を持っている。
ジョシュアはランダム決定される名前の候補のひとつである。

バグにより、新しく雇用する職員の名前がすべてジョシュアになるという事態が発生することがあった。

レガシーから長らく発生していたバグで、プレイヤーからはゲームシステムになぞらえて「すべての職員の名前をジョシュアに変えるという情報汚染型のアブノーマリティ」と揶揄されていた。
このバグについては開発も認識しており、何度も修正パッチが配られた。しかし別の要因でバグが起きるなどで「情報汚染型アブノーマリティ ジョシュア」はしぶとく残り続けた。
しかし2018年の正式版アップデートと共についに修正され、ジョシュアバグは完全に撲滅された。
その際には正式版のアップデート欄に「情報汚染アブノーマリティ「ジョシュア」制圧完了」とわざわざ書かれるなど、かなり印象的なバグだった。

「管理人!管理人!」

このネタに由来するアブノーマリティ「何もない」。

動画投稿サイトのプレイ実況によくつけられるコメント。
コメントの元ネタ自体は、アブノーマリティのひとつ「何もない」のエンサイクロペディアの記録から。

アブノーマリティ「何もない」は正体が不定で、「何もないが確かにそこに存在している」と形容するしかないアブノーマリティである。
「そこにある、が、何もない」という「何もない」は、空白の自分を埋めるため、近くの生物を殺してその皮をかぶることでその生物になりきるという生態がある。
施設に収容された「何もない」は作業をしに来た職員の普段の行動、話す習慣、好き嫌い、見たもの全てを模倣する。そして隙があれば殺し、職員になりきるために皮をかぶる。そして観察により学習した職員の言動を繰り返して人間に紛れるというレポートがエンサイクロペディアに書かれている。
「管理人!管理人!」とはそのエンサイクロペディアのレポート内にある記述で、殺された職員が最期に連呼したであろう言葉である。
(「何もない」に殺されそうになり「管理人!(見ているなら助けてくれ!)」とあげた悲鳴)

イベントシーンなどで「何もない」「何もなかった」というような台詞が登場すると、アブノーマリティ「何もない」の存在とかけて視聴コメント欄に「管理人!管理人!」と書かれる。
そして、「管理人!管理人!」のコメントを指して「おい、何もないがコメントを書き込んでるぞ!」「脱走したのか!」とさらなる返信がつけられる。
この一連のコメントは動画投稿サイトのコメント欄でよく見られるお決まりの流れとなった。

「触れてはならない」による初見殺し

「触れてはならない」に触れてしまった時に現れるロゴ。同時に大音量で警告音がする。

アブノーマリティ「触れてはならない」に由来するネタ。

「触れてはならない」はスイッチの形をしたアブノーマリティで、触ると不幸が起きるという設定を持っている。
これは単にフレーバー的なものではなく、実際に「触れてはならない」に何らかの操作を行うことで、職員の全滅や全アブノーマリティの脱走などまさにプレイヤーにとっての「不幸」が起きる。
作業を行うため「何もない」が収容されている部屋をクリックすることも、エンサイクロペディアを開くためにクリックすることもしてはいけない。
もしクリックしてしまうと、画面が揺れて「押すな」と叫ぶ音声が流れる専用の演出が入る。
それを無視してさらにクリックすると、反転したLobotomy Corporationのロゴが画面に現れゲームが強制終了する。
職員の死亡やアブノーマリティの脱走というゲーム内の現象だけでなく、ゲームそのものにまで影響を及ぼすまさに「触れてはならない」存在である。

新規プレイヤーが「触れてはならない」に触れてしまい、ゲーム―オーバーになってしまうというのはLobotomy Corporationの「あるある」「初見殺し」のひとつである。

シナリオのメタ要素

「触れてはならない」のように、シナリオには、いくつものメタ的な要素が含まれている。

ゲーム中の一時停止や倍速再生、さらにはアブノーマリティのデータを引き継いでのニューゲームですら、単なるゲーム的なものではなく「技術提携したTimeTrack社の時間操作技術によるもの」と設定が与えられており、「一時停止中は実際に時間が停止している」「プレイヤーがゲームを起動していない時は、ゲーム内のキャラクターも眠りについている」「プレイヤーがゲームをリセットした場合、ゲーム中のキャラクターも記憶除去処理を行ってリセットされている」ということになっている。
そういったようにゲーム的な操作と世界観設定が結びついているため、時空間干渉能力がある設定のアブノーマリティは一時停止や倍速再生を封じることができる。

作中でホクマーやアベルたちが指す「無数のX」とは、物語上の設定のことではなく、プレイヤーがゲームオーバーになるなどしてニューゲームを始めた場合のことや、このゲームを購入した他のプレイヤーのことなども総合して指している。
そして、46日目で「この先は過酷だから準備を整えた方が良い」というのも、「これからの作業パートでは全アブノーマリティ脱走などの事態が起きるので、もし脱走してもそれほど危なくないように危険性の低いアブノーマリティで固めた方がいい。もし危険なアブノーマリティを収容しているのならニューゲームを始めて比較的安全なものを揃えるべきだ」というゲームプレイ上の攻略のことを指している。

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