マッドマックス(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
主演のメル・ギブソンとジョージ・ミラー監督の名前を一躍世界に轟かせることになった1979年公開のバイオレンスアクション映画。 全編で繰広げられる壮絶なカーチェイスと時折映しだされる残酷描写により、低予算ながら大ヒットし後にシリーズ化された。警察官のマックスは、愛する妻子が暴走族に殺されてしまい、復讐の狼と化して、特殊追跡車「V8インターセプター」で一人孤独な闘いを仕掛けていく。
『マッドマックス』の概要
「マッドマックス」(Mad Max)は、オーストラリア製作のバイオレンスアクション映画作品。本国は1979年4月、日本では同年12月に公開された。
監督・脚本は本作が長編デビューとなるジョージ・ミラー、撮影は「ドラゴン/ブルース・リー物語」「ドラゴンハート」のデイヴィッド・エグビーで彼も映画デビューとなる。製作はジョージ・ミラーが師と仰ぐバイロン・ケネディが担当。
主演のメル・ギブソンは当時23歳。初の主役で脚光を浴びスターの座を掴み、ジョージ・ミラー監督とともにその名を一躍世界に轟かせることになった。
特殊撮影や舞台設定など、国内外の多くの作品に影響を与え、全編で繰広げられる壮絶なカーチェイスと時折映しだされる残酷描写により、甘いマスクであるメルの個性が深い悲壮感を帯びて、観る者の胸を痛切に締めつけ世界的に大ヒットし、以降シリーズ化となる。
制作費35万ドルという低予算で作られた映画であるため「制作費と興行収入の差が最も大きい映画」としてギネスブックに掲載された(のちに「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」に抜かれる)。
予算の大半をフォード・オーストラリア製のファルコンXBを改造したインターセプターを始めとする車輌の改造に費やしたため、金銭的な余裕は無かった。そのため撮影の多くで既存の建物を利用しており、特殊警察(M.F.P)が入っていた司法省のビルは昔の水道局のものを、地下駐車場はメルボルン大学のものを使っていたという。
また、スタントマンによるアクション・シーンでは、無謀な撮影により2名の死者が出たと噂されたが、グース役のスティーヴ・ビズレーや元撮影スタッフなどのインタビューなどでは否定されている。
オーストラリアの俳優はオーストラリア特有の訛りがあるため、配給会社の判断でアメリカ人が吹き替えた英語版に差し替えられた。しかし、監督のミラーに事前の断りも無く声を差し替えてしまい、監督はその事に対して不満を露わにしているという。
『マッドマックス』のあらすじ・ストーリー
近未来のオーストラリア。治安が悪化し暴走族による犯罪事件が後を絶たなかった。
そんなある日のこと、ナイトライダーと呼ばれる凶悪犯が、新米の警官を殺害の上、特殊装備の特別追跡用パトカーを奪って女と逃走した。パトロール中のオーストラリア連邦警察メインフォース・パトロール(M.F.P.)の警官たちは、連絡を受けるとすぐに追跡を開始するが、ナイトライダーの乱暴な運転とスピードに翻弄され追跡不能になってしまう。バイクで追跡していた同僚のグースから救援の連絡を受けた若い警官・マックスは、愛車のインターセプターの脅威のスピードでナイトライダーを追い詰める。車のすぐ後ろをピッタリとくっついてくるインターセプターに恐れをなしたナイトライダーは、ハンドル操作を誤って工事現場に突っ込み大破するのだった。
3日ぶりに家に戻ったマックスは、最愛の妻・ジェシー、幼い息子・スプローグと、くつろぎのひと時を過ごす。だが、TVでは先日の事件が報道され、危険な仕事に就くマックスを心配するジェシーだった。
翌朝、M.F.P.本部でグースに地下の駐車場へ連れて行かれたマックスはそこで特殊装備のパトカー・インターセプターを更に改良しV8エンジンにより600馬力を発揮するという驚異の特別追跡車「V8インターセプター」を見せられる。マックスは信じられないほどの凄い装備に大興奮する。
そんなマックスに、M.F.P.の隊長であるフィフィは、「ナイトライダーを葬ったことで奴の仲間がお前を狙っているから気を付けろ」と警告する。
街には、ナイトライダーの友人だったトーカッターをリーダーとする暴走族「アウトライダー」の面々が集まり、住民を脅かしていた。
たまたま街に来ていた若いカップルが恐れをなしてマイカーで逃走すると、アウトライダーのメンバーはバイクで追跡、車をズタズタにした上、女性に暴行をはたらいた。マックスとグースが現場に駆けつけると、男性は恐怖のあまり逃走し、女性は鎖でボロボロになった車に繋がれていた。そこにアウトライダーのジョニーという男がドラッグのせいで朦朧として残っていた。ジョニーはその場で逮捕され、レイプ容疑で裁判にかけられることになった。だが、街の人間も、被害者も、報復を恐れて誰一人法廷に現れなかった。そんな状況では裁判にならず、結局ジョニーは無罪放免となり、仲間の元へ帰ることになる。
その後、ジョニーはトーカッターの命令により、自分を逮捕したグースに対して仲間と報復行動に出る。ジョニーたちはパトロールに出たグースを待ち伏せ、車を横転させてガソリンに火を着けた。グースは全身まる焼けで病院に運び込まれるが死亡。ショックを隠し切れないマックスは、警察の仕事に不安を感じ悩んだ末、フィフィに辞表を提出する。しかし有能なマックスを失いたくないフィフィは彼に2~3週の休暇を与え、それでも気持ちが変わらなければやめてもいいと説得する。
休暇を取ったマックスは、妻・ジェシーと息子・スプローグを連れてドライブの旅に出る。その途中、タイヤの修理でマックスが車を降りている間、ジェシーがアイスクリームを買いに近くの海岸まで行くと、偶然にもアウトライダーの連中に遭遇する。絡んできたトーカッターの股間を蹴り逃げてきたジェシーは、マックスを促しその場を去る。マックスはその土地の保安官に事情を話し、老女の経営する農場を紹介してもらい、そこへひとまず身を寄せて車の修理をすることにした。だが、アウトライダーはジェシーを追って来ていた。それを知ったマックスが銃を持って跳び出した隙に、トッカーターは遊んでいたスプローグを捕えてジェシーに近付く。何とか息子を取り返し修理中の車で逃げるジェシーだったが、車は途中でエンストしてしまう。そして車を捨て息子を抱いて必死に走るジェシーをアウトライダーの数台のバイクが轢いて去って行った。マックスが駆け付けた時すでに遅く、スプローグは死亡、ジェシーは一命は取り留めたものの瀕死の重傷を負ってしまうのだった。
悲しみに暮れていたマックスだったが、やがて復讐の鬼となる。警察のガレージから勝手に特殊装備のパトカー・インターセプターを更に改良した「V8インターセプター」を持ち出し、上下黒革の服で完全武装したマックスは、アウトライダーに復讐を開始する。V型8気筒エンジンを駆使し、まずはアウトライダーのメンバーを血祭りにあげてゆくマックス。だが、それを知ったジョニーから連絡を受けたトッカーターと部下のババが危険区域の道路でマックスを待ち構えた。マックスは左足を銃で打ち抜かれ、さらに右腕をバイクで轢かれてしまう。止めを刺そうとしたババをかろうじて銃で倒したマックスは何とか立ち上がるが、トーカッターは勝ち誇ったようにその場を去る。
インターセプターに乗り込んだマックスは、驚異のスピードでトッカーターのバイクに追いつく。必死に逃げるトッカーターだったが、正面から走って来た大型トレーラーと正面衝突し、大破したバイクと共に死亡する。
復讐を終え朦朧として一昼夜走り続けたマックスは、ある橋の袂に停めてあるジョニーのバイクを見つける。そこで事故車の荷物を漁っていたジョニーに銃を突きつける。ガソリンが漏れている車に彼の手首を手錠でつなぎ、約10分後に引火するよう仕掛けをする。そして「爆死したくなかったら手首を切れ」と彼に糸ノコを渡しそのまま立ち去るのだった。それから数分後、インターセプターで走るマックスの背後で爆発が起こった。
『マッドマックス』の主な登場人物・キャラクター
“マックス” マクシミリアン・ロカタンスキー(演:メル・ギブソン)
本作の主人公。
M.P.Fに所属し、数多くの暴走族を鎮圧・逮捕してきた有能な男。
寡黙な性格だが、妻・ジェシーと息子・スプローグへの愛情は深く、家族3人で穏やかに暮らしていた。
トーカッター率いる暴走族に家族を殺されてからは、心を閉ざして復讐鬼と化す。
“ジェシー” ジェス・ロカタンスキー(演:ジョアン・サミュエル)
マックスの最愛の妻。
まだ幼い一人息子・スプローグを育てる専業主婦で、危険と隣り合わせの仕事に就いているマックスの事を常に気に掛け、愛情を惜しみなく注ぐ。
旅行中にアウトライダーと鉢合わせしてしまい、トッカーターに付きまとわれ、挙句の果てにバイクで轢かれてしまい瀕死の重傷を負う。
ジム "グース" レインズ(演:スティーヴ・ビズレー)
マックスの親友で、同じくM.F.Pに所属する。
カスタマイズされたバイクに乗って職務に就く。寡黙なマックスと対をなす陽気な性格で、犯罪者が釈放されると聞いて激昂するといった一面も持つ。
逮捕したアウトライダーのジョニーに恨まれ、パトロール中を襲撃され、生きたまま車を焼かれると言う残忍な復讐を受け、全身大やけどで死亡する。
フレッド “フィフィ” マカフィー(演:ロジャー・ワード)
M.P.Fの隊長で、坊主頭とひげが特徴の大男。
「フィフィ」と呼ばれている。マックスに全幅の信頼を寄せており、「この時代にはヒーローが必要だ」と言った。
実はインターセプターを発注させた本人でもある。
トーカッター(演:ヒュー・キース・バーン)
暴走族「アウトライダー」のリーダー。
マックスの追跡を受けて死亡したナイトライダーの仇討ちの為に、執拗にマックスに付きまとい、彼の周りの人間へ残忍な報復をし、怒りを買う。
最期はカーチェイスの末にトレーラーに衝突して死亡した。
ババ・ザネッティ(演:ジョフ・パリー)
暴走族「アウトライダー」の部下でトーカッターの右腕。
寡黙な性格である。マックスとの一騎打ちで、足と右腕を怪我をさせながらもマックスにとどめを刺そうとして、逆に撃ち殺されてしまう。
ジョニー・ザ・ボーイ(演:ティム・バーンズ)
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目次 - Contents
- 『マッドマックス』の概要
- 『マッドマックス』のあらすじ・ストーリー
- 『マッドマックス』の主な登場人物・キャラクター
- “マックス” マクシミリアン・ロカタンスキー(演:メル・ギブソン)
- “ジェシー” ジェス・ロカタンスキー(演:ジョアン・サミュエル)
- ジム "グース" レインズ(演:スティーヴ・ビズレー)
- フレッド “フィフィ” マカフィー(演:ロジャー・ワード)
- トーカッター(演:ヒュー・キース・バーン)
- ババ・ザネッティ(演:ジョフ・パリー)
- ジョニー・ザ・ボーイ(演:ティム・バーンズ)
- クロフォード “ザ・ナイトライダー” モンタザーノ(演:ヴィンス・ギル)
- 劇中登場車輌と「V8インターセプター」について
- 『マッドマックス』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- “I am the Nightrider. I'm a fuel injected suicide machine. I am the rocker, I am the roller, I am the out-of-controller!”
- ”Crazy'bout”
- “The Nightrider. That is his name... the Nightrider. Remember him when you look at the night sky!”
- “I'm scared, Fif. You know why? It's that rat circus out there. I'm beginning to enjoy it.”
- 『マッドマックス』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- ジョージ・ミラーとメル・ギブソンの出会い
- 劇中の暴走族は本物だった
- 撮影中にスタントマンが死んだ
- 『マッドマックス』の予告編映像