ヘルボーイ(Hellboy)のネタバレ解説・考察まとめ
「ヘルボーイ」とはアメリカの人気コミックを映像化した2004年制作のアメリカ映画。異界から産み落とされた悪魔の子ヘルボーイが、人間によって育てられ、正義のヒーローとして、半魚人や念動発火能力を持つ女性と共に、邪悪な者たちと戦うアクション・アドベンチャー。監督は、「ミミック」「パシフィック・リム」のギレルモ・デル・トロ。個性的な風貌のロン・パールマンがヘルボーイを快演し、彼の代表作のひとつとなった。
若くて純真な新人捜査官。
ヘルボーイに初めて会った時、彼の存在は噂には聞いていたが、まさか実在するとは思っていなかったので驚いてしまう。
ヘルボーイにボウヤ扱いされてヘコんでしまうこともあるが、教授から余命わずかな自分に代わり、ヘルボーイのお目付け役になってくれ、君ならできると言われ、ヘルボーイと向き合おうとする。
ロシアで、ラスプーチンによってヘルボーイが悪魔の魂を宿した時、彼に人間の心を取り戻させる活躍を見せる。
ラスプーチン(演:カレル・ローデン、日本語吹替:谷昌樹)
帝政ロシアの怪僧として知られる実在した人物。
大戦末期に、異界の扉を開くラグナロク計画をナチスと共に指揮するが、実行に移す最中に連合軍に邪魔され、扉の向こう側に吸い込まれてしまう。だが、数十年後、イルザやクロエネンの血の儀式によって蘇り、異界の凶暴な魔物サマエルを現生に解き放ち、ヘルボーイを利用して再びラグナクロ計画を実行し、世界を破滅に導こうと暗躍する。
クロエネン(演:ラジスラブ・ベラン)
ラスプーチンの忠実なしもべである、最強の殺し屋。自ら唇を切り取っているので、一言も話さない。
防毒マスクを着用し、武器は両腕に付けたトンファー型の剣。素早い身のこなしで相手が何人でも一瞬にして切り刻み、死に至らしめる。
胸にぜんまい仕掛けの機械が埋め込まれていて、ぜんまいを巻くことで仮死状態を装うこともでき、BPRDにもその方法で侵入しブルーム教授を殺害した。
『ヘルボーイ』の見どころ
怪獣映画やモンスターが大好きな“オタク監督”と自称するギレルモ・デル・トロだけに、彼の作品に登場する異世界の生き物(クリーチャー)など、人間以外のキャラクター描写にはクリーチャー愛を十分に感じさせるが、「ヘルボーイ」でも見どころは、異端の存在であるヘルボーイや半魚人エイブなどを丁寧な性格描写を交え愛情たっぷりに描いているところだ。
ヘルボーイと同じ異端者であるリズとの恋模様、ヘルボーイと育ての親ブルーム教授との親子愛など、ドラマ的要素を加味し、単なるアクション・アドベンチャーにとどまらず、作品を深みあるものにしている。
そして、監督ならではのイマジネーション溢れるダークでファンタスティックな映像も、数あるコミックヒーロー作品のなかでは異質で、「ヘルボーイ」ならではの映像世界に浸ることができる。
なお、DVDソフトは、劇場公開版より12分ほど長いディレクターズ・カット版となっており、キャラ描写に奥行きがプラスされ、物語がより豊かになっている。
また、デル・トロが、ほんの一瞬だがカメオ出演している。(博物館から逃げたサマエルが町の祭りの群衆の中に飛び込む場面で、仮装した群衆の一人。顔が出ているのでDVDで静止すると発見できるかも)
『ヘルボーイ』の名シーン・名場面
ヘルボーイとサマエルの地下鉄構内バトル
サマエルの卵を探しに地下に潜ったとき、ヘルボーイに襲いかかってきたサマエルと繰り広げるバトルだが、取っ組み合ったまま通風孔から地下鉄のプラットフォームに落ち、大勢の乗客たちが逃げまどう中、構内をぶっ壊しながら凶悪なサマエルに傷つけられてもひるまず必死に戦うヘルボーイ。迫力たっぷりの激闘で興奮させられまくりの名シーンだ。
サマエルを倒した後、ホームに取り残されていた段ボールの中の子ネコを、持ち主の少女に返すところも、ヘルボーイの優しさがうかがわれニンマリだ。
ヘルボーイとビビモスのバトル、そして彼とリズの愛の抱擁
巨大化した異界の怪獣ビヒモスの触手に体を締め付けられ、太刀打ちできないヘルボーイが、あっさりと飲み込まれてしまうが、強力爆弾をビヒモスの体内で爆発させ、木っ端微塵にするクライマックス。怪獣好きのデル・トロならではの迫力満点のシーンだ。
ビヒモスを倒した後、ヘルボーイがリズを抱き寄せ、初めて本心を打ち明けて口づけを交わし、青い炎が二入を包み込むロマンティックな場面をラストに持ってくるところは、なんともニクイと思わせるベリーナイスなラストシーンだ。
『ヘルボーイ』のスタッフ&キャスト
監督:ギレルモ・デル・トロ
1964年、メキシコ・ハリス州に生まれる。
10代の初めに映画に興味を持ち、グアダラハダ大学入学後にアメリカに渡り、特殊メイク界の大御所ディック・スミスに師事。帰国後、特殊メイク・造形の会社を立ち上げ、数々のテレビ番組や映画に関わる。
92年に初の長編映画「クロノス」を監督し、カンヌ国際映画祭・批評家週間グランプリに輝く。その後、「ミミック」「デビルズ・バックボーン」「ブレイド2」を撮り、ファシスト政権時代のスペインを舞台にしたダーク・ファンタジー「パンズ・ラビリンス」がアカデミー賞6部門ノミネートされ、各国の映画祭でも賞も獲得し、世界的に高い評価を受ける。
ヘルボーイに扮したロン・パールマンは、「クロノス」に出演しており、「ブレイド2」や大怪獣vs巨大ロボット・アクション「パシフィック・リム」にも顔を出すなど、デル・トロとは懇意の間柄のようだ。
監督最新作は、63年の冷戦下のアメリカを舞台に、言葉を話せない孤独な女性と半魚人のラブストーリー「ザ・シェイプ・オブ・ウォーター」(17)。主演は「GODZILLA ゴジラ」のサリー・ホーキンスで、半魚人に扮するのは「ヘルボーイ」でも半魚人を演じたダグ・ジョーンズ。
ギレルモ・デル・トロ フィルモグラフィー(監督作のみ)
・「クロノス」(93)
・「ミミック」(97)
・「デビルズ・バックボーン」(01)
・「ブレイド2」(02)
・「ヘルボーイ」(04)
・「パンズ・ラビリンス」(06)
・「ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー」(08)
・「パシフィック・リム」(13)
・「クリムゾン・ピーク」(15)
ヘルボーイ役:ロンパールマン
1950年、アメリカ・ニューヨーク州生まれ。
ミネソタ大学で美術の修士号を取得。81年に「人類創生」の猿人役で映画デビュー。特異な風貌と190センチもある長身の個性派俳優。87年からアメリカで放映されたテレビ版「美女と野獣」の野獣役が好評を博し、ゴールデングローブ賞テレビ部門主演男優賞を受賞。
ギレルモ・デル・トロ、ジャン・ピエール・ジュネ(「ロスト・チルドレン」「エイリアン4」)など個性的な作風の監督に起用されることが多い。
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目次 - Contents
- 『ヘルボーイ』の概要
- 『ヘルボーイ』のあらすじ・ストーリー
- 『ヘルボーイ』の主な登場人物・キャラクター
- ヘルボーイ(演:ロン・パールマン、日本語吹替:谷口節)
- エリザベス・シャーマン / リズ・シャーマン(演:セルマ・ブレア、日本語吹替:本田貴子)
- エイブラハム・サピエン / エイブ・サピエン(演:ダグ・ジョーンズ、日本語吹替:てらそままさき)
- ブルーム教授(演:ジョン・ハート、日本語吹替:山野史人)
- ジョン・マイヤーズ(演:ルパート・エヴァンス、日本語吹替:置鮎龍太郎)
- ラスプーチン(演:カレル・ローデン、日本語吹替:谷昌樹)
- クロエネン(演:ラジスラブ・ベラン)
- 『ヘルボーイ』の見どころ
- 『ヘルボーイ』の名シーン・名場面
- ヘルボーイとサマエルの地下鉄構内バトル
- ヘルボーイとビビモスのバトル、そして彼とリズの愛の抱擁
- 『ヘルボーイ』のスタッフ&キャスト
- 監督:ギレルモ・デル・トロ
- ヘルボーイ役:ロンパールマン
- リブート版「ヘルボーイ」が制作決定